警察刷新会議第5回会議議事要旨
1.日時
平成12年4月28日 15時ころから17時25分ころまで
2.場所
グランドアーク半蔵門4階「富士」
3.出席者
氏家座長、樋口座長代理、大森委員、大宅委員、中坊委員、後藤田顧問
保利国家公安委員会委員長、那須国家公安委員会委員、岩男国家公安委員会委員、新井国家公安委員会委員、磯邊国家公安委員会委員、渡邊国家公安委員会委員
田中警察庁長官、佐藤警察庁次長
4.議事要旨
(1)監察と公安委員会の現状について
事務局から、監察の現状及び公安委員会の現状について、概略次のような説明が行われた。
監察の現状について
1 監察の意義
監察とは、警察の能率的な運営及びその規律の保持に資するために行う行政監督上の調査行為をいい、警察庁の行った最近の監察の例としては、被害者対策の推進状況、来日外国人犯罪対策の推進状況、突発重大事案対策の推進状況、不祥事案対策の推進状況等がある。
2 監察の態勢
警察庁
警察庁では、長官官房首席監察官が中心となって以下の事務を担当している。
- 関係各局部に協力させ(首席監察官又は長官が指名した者が責任者となり、関係各局部から所要の補佐官が同行。)、都道府県警察に対する業務に関する監察を実施すること
- 警察庁職員に対する監察を実施すること
- 地方警務官に対して国家公安委員会が行う監察を補佐すること
平成11年にあっては、監察項目に指定した「突発重大事案対策の推進状況」についての監察のほか、「不祥事案対策の推進状況」についての「特別監察」などを合計16件実施した。
管区警察局
管区警察局では、総務部監察官が中心となって以下の事務を担当している。
- 関係各部に協力させ(局長が指名した者が責任者となり、関係各部から所要の補佐官が同行。)、独自に又は警察庁が全国的な観点から指定した監察項目につき都道府県警察に対する業務に関する監察を実施すること
- 管区警察局職員に対する監察を実施すること
- 管轄区域内の地方警務官に対して国家公安委員会が行う監察を補佐すること
平成11年にあっては、独自に又は警察庁の指定した項目についての監察のほか、「不祥事案対策の推進状況」についての「特別監察」を合計117件実施した。
都道府県警察
都道府県警察では、監察課等が中心となって以下の事務を担当している。
- 関係各部に協力させ、警察本部各所属及び警察署に対する業務に関する監察を実施すること
- 都道府県警察職員に対する監察を実施すること
業務に関する監察としては、「総合監察」として、その年の重要テーマについて実施しているもののほか、証拠品の保管状況等個別具体のテーマについて随時実施しているものがある。
公安委員会の現状について
国家公安委員会
- 国の警察機関として、警察に関する諸制度の企画、警察装備、警察職員の活動の基準、監察等に関し警察庁を管理(「管理」とは、大綱方針を定め、警察行政の運営がその大綱方針に即して行われるよう指揮監督することをいう。)。また、国家公安委員会規則の制定や警察庁長官・地方警務官の任免等、法律に定められた事務をつかさどる。
- 毎週1回、定例会議を開催し、警察の施策等について所要の報告を徴し、所管の法令案等の決裁を行い、委員会としての意思を決定。また、全国警察本部長会議や全国公安委員連絡協議会等に出席。
- 委員長及び5名の委員。委員長は国務大臣。委員の任期は5年で、現在、経済界、学界、言論界、法曹界、官界出身者から選出。
都道府県公安委員会
- 都道府県警察を管理するとともに、運転免許の行政処分及びこれに係る聴聞の実施、法令又は条例の特別の委任に基づく都道府県公安委員会規則の制定等、法令に定められた事務をつかさどる。
- 毎週1回ないしは隔週1回定例会議を開催し、警察の施策等について所要の報告を徴し、運転免許や風俗営業法に係る行政処分を行うなど、委員会としての意思を決定。また、府県議会、警察署長会議、警察学校入校・卒業式等に出席。
- 都道府及び指定県では5名、それ以外の県では3名の委員。委員長は委員の互選により選任され、任期1年。委員の任期は3年で、主に企業役員、医師、弁護士等から選出。
(2)国家公安委員会委員とのフリートーキング
国家公安委員会の各委員から意見等が述べられた後、質疑応答等が行われた。
国家公安委員会委員の意見等
1 国家公安委員会の活動状況
- 国家公安委員会の委員として自分の専門性を活かして役に立ちたいと思い、交通問題、少年非行問題、女性警察官の採用等について自ら調べて意見を述べてきた。また、市民のニーズや意識を把握するための調査も行ってきた。
- 公安委員会では、警察庁から説明・報告を受け、それに対して質問したり、回答に対してさらに詳しく追及をしたりした上でその報告を了承している。再調査をさせることもある。
2 国家公安委員会への補佐体制
- 警察庁は国家公安委員会の事務局そのものであり、監察を含む運営に関して別の事務局を設けることは、二重構造となってしまい、よろしくない。
- 国家公安委員会の委員になってさまざまな仕事をしたが、自分の経験やネットワークを使ってやってきた。事務局や机がなければできないことではない。ただでさえ人が足りないときに強大な事務局スタッフを作ることが本当に必要なのか。もっとほかに必要なところはたくさんある。
- 大きな事務局は必要ないが、10人から20人の「課」とか「室」程度の補佐体制は必要である。
- 事務局の規模は、秘書ではちょっと足りないが、公安委員付とか公安委員会室というくらいで、何か調べてくれと頼んだらちゃんと調べてくれる組織が必要。
- 執務できるスペースができ、手足となって動いてもらえる職員がつくのであれば、もっといろいろと仕事ができる。
3 監察の在り方
- 都道府県警察の監察官は、本部長、警務部長が人事権を握っており、なかなかその意に反することはできるものではない。都道府県警察の監察の責任者は警察庁長官の直轄にする必要がある。
- 監察に行くのは警察の中で最も優秀で重要な人という伝統を作ることが重要。
- 監察は捜査的なことが必要であり、内部のプロでないといけない。第三者がやって機能するのか疑問である。
- 株式会社の組織で社外取締役、社外監査役の議論があるが、内部の人間がちゃんと監査する、監査しやすいような組織にすることが大事だと思う。
- 監察計画に沿って行う鳴り物入りの監察には極めて疑問があり、抜打ち的に行うべきと国家公安委員会でも申し上げている。
4 その他
- 公安委員会委員の選出方法が不透明だと思われているが、自分の経験からみるとかなり透明になされている。
- 政治からの中立性を確保するという役割は、戦後十分果たしてきたといえる。しかし、警察の管理については、制度疲労を見つけ得ず、かつ、これを是正する有効な手が打てなかったとすれば、公安委員として批判も甘んじて受けなければならない。
- キャリア制度を含めた人事政策の問題、不祥事を防止するための監察制度、公安委員会制度の3つの問題について、国家公安委員会として何らかの対応をしなければいけないと考えている。
質疑
- Q 「管理」のための「大綱方針」は毎年どのようなものを定めているのか。
- A 国家公安委員会規則の制定のほか、被害者対策、来日外国人対策、組織犯罪対策、サイバーテロ対策などその都度その都度の課題に対する基本的考え方の提示、全国本部長会議の指示等で大綱方針を示している。
- Q 「持回り決裁」は頻繁にあるのか。
- A 大変例外的である。緊急性が認められる場合で、過去、国際緊急援助隊の派遣、人事等で事例がある。
- Q 警察法第5条第2項に定めている21もの仕事をやらないといけないとなると、週1回の定例会だけで処理しきれるのか。
- A 各部局から上がってくる報告を聞いて、判断している。人生、職業を通じてある程度経験や常識が培われており、大局的立場で判断するものと思っている。
- Q 選任の過程が問題になったことはないのか。
- A 国会の承認事項であり、案は内閣が作成する。主体は官邸で、警察庁は意見を求められればアドバイスをするという格好になっている。
- Q 報酬が高いとの批判もあるが。
- A 他でかなりの収入がある方は日当しか出ないことになっている。
警察刷新会議の委員等の意見
- A 公安委員の先生方の話を承って、やはり非常に高い見識の下での極めて常識的な意見を承ったと思う。敬意を表したい。
- A 警察庁は国家公安委員会の管理の下に業務を執行する機関であり、独立の機関とはいえない。公安委員会の「管理」の中身は何か、よく考えるべき。もう少し活性化したらよいのではないかというのは常識だと思う。さればといって、大きな事務局を置いて二重組織にする必要もない。「事務局」というより「事務室」程度でよい。
- B アメリカではサイバーテロ対策など時代の変化に対応している。ニューヨークの駐車問題もすぐ対応して市民の評判もよい。事態がどんどん新しくなっているときに警察も変化に対応していくべき。
5.次回以降の会議予定
次回は5月8日13時30分から。
議題は、監察と公安委員会の在り方について。
速報版のため、事後修正の可能性があります。