大阪公聴会の概要 警察刷新会議

1.日時

平成12年5月13日 14時ころから16時50分ころまで

2.場所

ザ・フェニックスホール(大阪市)

3.出席者

氏家座長、樋口座長代理、中坊委員、後藤田顧問

4.概要

氏家座長あいさつ

一連の警察不祥事で警察の存在そのものが問われており、この会議に対する国民の皆様方の期待は強い。会議の基本方針として、国民の皆様の御納得の得る結論を出す、国民の皆様を主軸とするスタンスでこの会議を進めていくこととしており、今回、御当地でいろいろな方の御意見を伺ってみたいということで公聴会を開催した。本日は、是非皆様方の腹蔵のない御意見をお聞かせいただきたい。

意見発表(敬称略)

1.金澤健太郎(横浜市、大学生、22歳)

全国の20歳以上の方を対象に公募を行い、国家公安委員会が委嘱する「警察モニター制度」の創設を提案する。情報公開という「内から外」への流れとともに、国民の声を聴くという「外から内」への議論も必要であり、この2つの流れで風通しのよい組織が望めるものと思われる。何よりも重要であるのは、国民の意見を直接聴くという姿勢を制度として確立することにある。

既に議論されている警察署評議会と共通するものがあるが、警察モニター制度の方は警察行政全般についての総合評価的な意見提言を受けるものと位置付けることにより、両者のすみ分けができ、相互補完的な役割を果たすことになる。

警察も行政機関の一つとして、公の奉仕者であるとの観点を忘れないでいただきたい。また、国民の側も単なる誹謗中傷ではなく建設的な意見提言を行う姿勢が必要である。

2.金子武嗣(大阪市、弁護士、52歳)

大阪弁護士会では毎年3日間、警察官による人権侵害電話相談を受けるが、過去5年間で188件に上る。これは警察官の外に対する規律のなさの現れである。また、今回の一連の不祥事は、内部に対する規律のなさの現れである。組織の根本が病んでいるときは、その病理現象は内と外に現れる。今回の警察の問題も、正にこれにほかならない。

問題点は3つある。キャリア制度や情報公開などの「組織面」、個人の人権より公の秩序維持を重視する「理念と教育」、公安委員会が十分権限を行使していない「外部チェック」の問題である。

これらの中で、「警察官の人権教育の欠如」について特に指摘をしておきたい。警察が組織として欠けているのは、市民の生命、身体、財産の権利保護に全力を尽くし、被害者の救済と被告人等の人権への配慮確立である。今求められているのは国際人権のスタンダードを踏まえた警察官への人権教育のシステムを作ることである。

3.西山孝昭(京都市、保護司、60歳)

1番目は、交番の活性化で、必要とされる警察となってもらいたい。最近の交番は鍵がかかっていたり、戸は開いていても誰もいない場合が多い。これでは何のために交番があるのか分からず、かえって反感がつのる。交番に誰かを常駐させてもらいたい。全てに精通する人でなくても、警察OBなど、相談や訴えを受け付け、振り分けることができる人でよい。

2番目は、国民からの相談や訴えなどの確実な処理体制をお願いしたい。警察官が放置する原因は、1つ目は、仕事を増やすことは体を張ってでも阻止するという公務員体質・本来の使命感の欠如、2つ目は社会情勢の変化に対応できていなかったこと、3つ目はこれらをチェックする監督体制の甘さがあったことであると思われる。そこで、受け付けた相談、訴えをすべて上司に報告させる、複数の人で処理する、経過・結果をチェックをする、申出者に経過・結果を伝えるなどの方策を採ってはどうか。

4.沼田孝七(京都市、無職、71歳)

1つ目に、キャリアの現場実践の実施を提案する。体験が少ないキャリア組は、下級者とともに、市民と直接触れることの多い交番勤務などで寝食ともにする期間を少しでも長く体験し、同じ釜の飯を食ったという仲間の意識に通じていただきたい。

2つ目として、民事不介入の考え方を改め、市民のよきアドバイザーとしての存在感、信頼感を生むよう努める。警察に相談すること自体、危険度が高いシグナルであるという受け止めが必要である。そこで、例えば「よろず相談」といった窓口を設け、元警察官や経験豊富な婦人警察官などを配置し、威圧感を与えない対応が行われるようにすること、併せて刑事事件に発展しそうな事案は必ず記録を作って報告し、関係者に周知することが必要である。

3つ目に、縦割り行政を改善し、横の連携を深め、所轄による縄張り意識から来る隠ぺい工作や内的処置などを皆無とするよう、事実の早期開示の実行が必要である。

5.廣瀬寛(神戸市、会社員、56歳)

警察運営にマーケティング発想を導入して、「ポリス・シチズン・サティスファクション(PCS)」を実現する中で改革を進めていく。警察が「シチズン・満足」を追求してもおかしくないし、むしろ追求すべき。警察署から始まって、警察本部、警察庁までシチズン・ニーズを受け止める体制を作る。各レベルでCS計画を策定、進捗度を測定する。これは地域特性を重視したシステムでなければならない。このような組織を自浄機能に期待して警察内部、その中枢に設けてはどうか。最後は警察が自助努力で復元してもらいたい。

また、警察のモラルを高めるには、警察は、21世紀にどんな安全な社会を作るのかというビジョンを組織内外に提示してほしい。そういう戦略をまず組織内で理解を深め、一線の警察官に日々の仕事の価値、重要性を徹底することが必要である。

キャリア制度は必要であるが、制度が機能するにはキャリアの質が高いのが暗黙の前提である。

6.木村正人(産経新聞大阪府警担当キャップ)

一連の不祥事を見ると、1つは各都道府県警察の本部長が判断を誤った場合、誰がどの様に歯止めをかけるかの問題。もう1つは現在の警察活動が、市民の要望に十分応えられているかという問題がある。

1つ目の問題には、公安委員会が監察事案について本部長と同席して報告を受けることができるようにする。中途退職者の一件一件について報告を担当者に求めることができるようにする。警察官の職務執行に対する苦情を電話で受け付ける監察110番のような制度を公安委員会の下に設け、その情報を監察の現場に下ろして処理させる。以上の権限を公安委員会に認め、法的に根拠付けることにより、不祥事や職務執行に問題が起きた場合、法令を遵守し、問題が適正に処理されているかを公安委員会がチェックできるようにすればよい。

2つ目の問題は、現場が忙しすぎることが背景にある。しかも週休2日制の導入で、実質人員が全国で2万人程度の減少になった。欧米にくらべ、警察官1人当たりの負担人口が格段に多いため、現状を解消するには、警察の人員が適正に配置されているか見直しを行い、スクラップアンドビルドを徹底した上で警察官の数を少なくとも1割増やさなければならない。

警察官の99パーセントは誇りと使命感をもって任務を遂行している。締付けばかりが強くなり、角を矯めて牛を殺すことがないよう、現場の声を十分に聞いて刷新を行う必要がある。

7.四方修(元大阪府警本部長)

今日新聞紙上その他で問題視されている問題は、極めて一時的現象的問題であって、警察内部が抱えている問題はもっとたくさんある。問題が出てきた理由の1つが、戦後の日本が抱えている日本病ともいうべき、自分の生き甲斐を国家社会につくすことに求める人が減ったという変化である。2つ目が、学校教育における道徳教育がなくなり、自己の利益を中心に考える風潮が著しく強くなって、いわゆる志のない人が増えたことである。そういう社会風潮が、キャリア、ノンキャリアを問わず、警察にも及んでいる。警察学校における教育、あるいは現場における教育に力を入れなければならない。

戦後の日本の警察制度は、行政警察の姿が薄くなり、司法警察が前面に出てきた。戦後どんどん防犯活動が鈍くなっている。国民が一番願っているのは、犯罪の被害者にならないということであって、被害者になってから捕まえてもよろこぶわけではない。

キャリアにとって重要なのは、志とリーダーシップである。頭脳が良くても、志がなく、リーダーシップが取れなければただの事務屋に終わってしまうが、そういうキャリアが増えていることが問題である。

8.田代和(大阪商工会議所会頭)

不祥事が全国的に多発する背景には、警察組織における広範にわたるモラルの低下と、警察制度が戦後半世紀以上を経過する間に生じた制度疲労が存在する。

提言の第一は、現在十分ではないといわれている公安委員会の事務所スペースと調査のための人員を必要最小限にでも整備することである。公安委員会の事務局には、新しい監察を推進する部門と住民の苦情や意見を汲み上げる部門を設置することとしてはいかがか。

第二は、通常の業務監察の他に、組織の風通しを良くするという新たな視点、観点から、教育的な監察制度を設けるなど、警察における監察制度の刷新である。また、警察官に対する教育制度の充実も必要である。

第三は、サイバーポリス、電脳警察の確立である。これまでの組織や役割分担にとらわれず新しい目で対応を考える必要があり、早期にそのための体制を整備していくことが求められる。

会場からの意見(敬称略)

岡花清(福井)

県警本部の警視から聞いた警察の課題として、要領のいい人が昇進する昇進制になっていることと、OBからいろいろ注文があってそれが大きな不祥事につながっている場合があることが挙げられると聞いたので参考にしてもらいたい。

日向宏太郎(大阪)

ローマ字でKOBANと書いてあっても老人や外国人には分からない。
警察官を増やすか、配備を考えるかして、交番を常駐にしてもらいたい。
警察は、裁判所のように疑わしきは罰せずというのではなく、疑わしきを徹底的に追いかけるものであってほしい。

なお、会場から更に意見発表の機会が欲しいとの要望があったため、公聴会の終了後、樋口座長代理と中坊委員が会場に残り、数人の意見発表が行われた。主な意見は次のとおり。

  • 市民が積極的に協力するよう、被害者や目撃者への対応を改めるべき。
  • 警察行政に精通した人を公安委員会に常駐させれば不祥事は解決する。
  • 現在の階級は多すぎる。3段階くらいでよいのでは。
  • 身内への監察がどうしても甘くなっている。

速報版のため、事後修正の可能性があります。