第4から第6(警察刷新に関する緊急提言)

第4 警察における監察の強化を

監察、公安委員会及び苦情処理という相互に連関する3つの問題について討議した結果、別紙2「監察、公安委員会及び苦情処理の在り方」を取りまとめた。

警察職員の不祥事に関し厳正に処分を行い、不適切な業務運営を是正するためには、何よりも警察内部の自浄能力を高めることが先決である。このためには都道府県警察の監察担当官の増強はもとより、警察庁や管区警察局において体制の増強、管区警察局「監察部(仮称)」の設置などを図った上で、都道府県警察に対して監察を頻繁に実施するなど、国の関与を強めるべきである。国の関与強化の観点からは、都道府県警察の首席監察官を国家公安委員会の任命とするなど人事面で警察本部長からの相対的独立性を確保することも有益である。

これにより、警察本部と警察庁との二重の監察が強化されることとなる。

なお、第三者機関による外部監察制度の導入の適否についてであるが、警察の組織や業務に精通している者が当たらなければ実効ある監察とはなり得ないこと、職員の不祥事の調査は捜査活動と密接に関連する場合も少なくないことから警察以外の組織に行わせるのは適当でないこと、厳正な処分を行い業務運営上の問題点の解決を図るためには監察と人事の緊密な連携が不可欠であることなどから、いわゆる外部監察は必要ないものと考える。後述するように、公安委員会が第三者機関的に監察点検機能を十分に果たし得ることからも、このような結論に達したものである。

第5 公安委員会の活性化を

1.「管理」概念の明確化

公安委員会が形骸化しているのではないかとの国民の批判に関し、公安委員会の警察に対する「管理」(別紙3「警察法上の『管理』について」)がいかにあるべきかについて議論した。制度の本来の趣旨に立ち返って「管理」概念を明確化し、公安委員会の活性化につなげるべきである。

このため、公安委員会が警察に対して所要の報告を求める場合には、警察は速やかにそれに応じるべきであること、必要に応じて公安委員会が改善の勧告等ができるということを何らかの形で法令上明確にする必要がある。

2.監察点検機能の強化

公安委員会は、警察本部長による監察が十分でないと認めるときはこれを是正すべきであり、第三者機関的な監察点検機能を果たすことが重要である。こうした考え方は、市民の代表として警察活動をチェックするという公安委員会の制度趣旨にも合致するものである。

具体的には、別紙2の2(1)のとおり、

  • 都道府県公安委員会のイニシアティブにより、必要があると認める場合は、いかなる調査が更に行われるべきかを個別的、具体的に指示するようにする。
  • 警察本部長がこれを誠実に処理しているかについて、公安委員会が公安委員のうち1名を監察管理委員(仮称)に指名して機動的に確認することができるようにする。
  • 当該都道府県警察の職員、場合によっては、警察庁職員等を監察調査官(仮称)に任命の上、これに補助させて確認することができるようにする。

こととすべきである。

これにより、国による監察の強化と併せて、警察本部長から独立したチェックが二重に行われることになる。

なお、警察法上、公安委員会の指示に従わない警察本部長がいる場合には、公安委員会は懲戒・罷免勧告権という人事上の権限を行使して警察本部長の更迭を求めることができることとされている。こうした権限と監察管理委員(仮称)や監察調査官(仮称)のような新たな制度が有機的に運用されれば、公安委員会の監察点検機能は飛躍的に強化されるであろうと確信する。

3.管理能力の強化

公安委員会の審議機能の充実のためには、公安委員をより幅広い分野から選任することとし、高い識見に基づいて警察行政の在り方に深くかかわり、国民の視点に立った提言を行うことが必要である。

また、警察庁及び警察本部内に公安委員会事務担当室(課)を設置してスタッフを増強するとともに、執務室を整備するなど真に効果的な補佐体制を確立すべきである。

さらに、都道府県公安委員会については、法律上委員は非常勤とされているが、地方の実情によって、適任者の確保が可能であるかとの問題を考慮の上、常勤とすることができるようにすることが適当である。

第6 住民からの相談に的確な対応を

1.困りごと相談(仮称)の充実強化

日本の警察は伝統的に国民を保護する役割を期待されてきた。現在も全国に約1万5千の交番・駐在所を擁し、24時間体制で地域住民のために働き続ける警察は、何か困ったことがあるときの拠り所として国民から頼りにされている。こうした交番・駐在所や警察署に持ち込まれる多種多様な相談の中には、国民が警察に切実な気持ちで解決を求めている不安や不満が多数含まれており、鋭敏な触覚をもって警察がこれらを把握し、誠実に対応することは、国民からの信頼を確保していく上で不可欠と言えよう。

一方で、地域社会や家庭で本来解決されるべき問題が警察に持ち込まれる傾向が強まっていることも否定できず、この傾向を懸念する。警察本来の業務として取り組むべき切実な相談への対応を阻害するおそれがあるからである。従来、警察における相談業務は「困りごと相談」などと呼ばれてきたが、警察が対応する相談の範囲・限度について国民に多少なりとも具体的なイメージを持ってもらうような名称に変更することも一案ではないかと考える。警察はすべての相談について対応する権限と能力を持っている訳でないことはもちろんであり、他機関との連絡体制を確立し、所管責任を持つ別の機関がある場合には確実にこれに引き継ぐことが必要である。

相談を機敏に把握し、これに誠実に対応するためには、まず、空き交番をできるだけ解消するとともに、相談業務を担当する警察職員を増配置したり、経験豊かな元警察職員等を国民と警察の橋渡しをする非常勤の困りごと相談員(仮称)に任命するなどにより相談体制を強化すべきである。また、警察本部長や警察署長は、相談への対応、判断を担当者任せにせず、的確に内容を把握し、組織的な対応を図るべきである。

さらに、従来、業務の評価の重点を専ら事件の捜査、解決などに置いてきたが、相談業務や被害者保護などの業務についても、適切に評価すべきである。

2.「民事不介入」についての誤った認識の払拭と部内教育の充実

国民は、個人の権利と自由を保護し、社会の安全を守る警察の役割に大きな期待を寄せている。警察官は、悪を憎み、被害者とともに泣くという警察の原点にいま一度立ち返るべきである。警察職員には、「警察を頼る」という何気ない言葉が持つ重みをかみしめてほしい。

警察にとって、事前に犯罪を防止することは重要な責務の一つである。放置すれば刑事事件に発展するおそれがある場合には、必要な措置を講ずるのは当然である。このことを警察組織内に徹底させて「民事不介入」についての誤った認識を払拭させなければならない。また、相談に的確に対応し、さらに将来的に事件に発展するおそれはないかを誤りなく見通すには、経験と能力が求められるこのため、住民からの相談に当たる警察職員の力量を向上させるため、部内教育を充実させる必要がある。

また、告訴・告発について、様々な理由をつけてその受理を保留することが見受けられるが、国民の告訴・告発に関する権利を侵害しないよう留意すべきである。