警察法上の「管理」について

1 「管理」の意義

一般に、行政機関相互の関係を表す場合における「管理」の用語は、「監督」又は「所轄」と対比して、下位の行政機関に対する上位の行政機関の指揮監督が、内部部局に対する場合と大差ない位に立ち入って行われることを示すときに用いられる。

国家公安委員会と警察庁との関係について、警察法第5条第2項において用いられている「管理」の意味も、基本的にはこれと変わるものではないはずである。

ただ、警察法においては、

国家公安委員会を警察に関する最高行政機関と位置付けながらも、警察事務の執行については、別個の組織として警察庁を設置してこれに行わせ、自らはその執行を管理する責めに任ずることとし、
国家公安委員会は、警察行政の民主的運営の保障と政治権力からの中立性の確保のため、合議制の機関とされ、その構成員たる委員には、警察の職務経験を有する者は排除され、社会各界の有識者が充てられることとされていること

等にかんがみ、国家公安委員会による「警察庁の管理」は、「国家公安委員会が警察行政の大綱方針を定め、警察行政の運営がその大綱方針に則して行われるよう警察庁に対して事前事後の監督を行うこと」を一般原則とするのが相当であるとされてきた。

2 「管理」の形態

警察の捜査活動や警備実施に関する事務など警察運営に関する専門的・技術的知識が必要とされる事務については、公安委員会は、上記のような原則的な形態での管理の任に当たることで相当かつ十分とされよう。

しかし、警察事務の執行が法令に違反し、あるいは国家公安委員会の定める大綱方針に則していない疑いが生じた場合には、その是正又は再発防止のため、具体的事態に応じ、個別的又は具体的に採るべき措置を指示することも、「管理」の本来の意味が上記のものである限り、なんら否定されないものというべきである。

いずれの場合においても、公安委員会の行う「管理」に内在するものとして、警察庁は、適宜、国家公安委員会に対して警察事務の執行につき所要の報告を行うべき職責を有し、また、国家公安委員会から報告を求められたときは、速やかにそれを行うべきものである。

3 地方警察関係

以上の理は、地方公安委員会と地方警察本部等との間においても、妥当する。