国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年3月28日(月)15:30~15:54

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要   この形の会見は三回目になると思いますが、本日もだいぶ事態のステップが進んできておりますし、その中で皆さんの御質問がもしあった場合に即座に、具体的な対応について正確にお答えできますように各局長にも立ち会っていただいて行いたいと思います。

さて、警察では、これまでに全ての都道府県警察から1万人を超える警察官を岩手・宮城・福島県警察に派遣するなど、組織を挙げて災害警備活動に全力を尽くしてまいりました。本日現在では、被災地の県警察合計約3県で8,000人と全国からの派遣部隊合計3,000人、合計1万1,000人体制で臨んでおります。現在現地におりますのが3,000名ですが、それぞれ交代をしながら全国の都道府県警察から御協力をいただいて、その数がついに1万名を超えたということであります。引き続き、災害警備活動に万全を期してまいる所存であります。

福島第一原子力発電所から30キロメートル圏内においては、放射性粉塵用防護服、マスク、線量計を着装携行させるなどして、警察官の健康管理にも配慮しながら、合計約600人の体制により、各種の警察活動を行っております。また、福島第一原子力発電所の周辺地域からは、自主避難している方々も含めますと多数の住民が避難をしており、貴重品等を残したまま無人となっている家屋や店舗が多数ありますことから、これらを対象とした窃盗等の犯罪の発生が懸念されております。既に発生をしている犯罪も見受けられるわけでありますが、こうした状況を踏まえ、10キロメートルないし20キロメートル圏内においては、機動隊を投入するなどして、避難した地域におけるパトロールのほか、御遺体の発見に伴う収容等を行っているところであります。また、10キロメートル圏内におきましては、昨日、徹底した放射線管理の下で御遺体の捜索を行ったところでありますが、引き続き、必要に応じて部隊を投入することといたしております。また、避難されている方々の不安をできる限り軽減するため、避難所に警察官を立ち寄らせるなどして、これらの方々からの相談対応に当たらせているところであります。引き続き、避難地域におけるあらゆる違法行為の防止・牽制と住民の安心の確保に努めてまいります。

他方、警察庁では、こうした様々な警察活動に当たる被災県警察の要望を踏まえ、出動服、手袋などの必要な装備資機材を迅速に送付するなど、支援体制を強化することとしております。3月23日には、警視庁と連携をして被災3県で活動する警察部隊の後方支援を行うチームを発足させております。全国警察が一体となって仲間達と心を一つにして、努力をしてもらっております。

次に刑事局関係でありますが、3月28日現在、岩手、宮城、福島の3県で収容された御遺体約1万800体のうち、ほぼ100パーセントについて検視等が終了しております。具体的には99.7パーセントであります。今回の震災では、津波による犠牲者が多数ございますので、居住地から相当離れた場所で発見されていることや、所持品等が失われていることから、身元確認が非常に困難である中で、警察においては、一体でも多くの御遺体を御遺族等にお引き渡しできるよう身元確認に全力を尽くしております。これは阪神淡路大震災と極めて違うことの一つであります。阪神淡路大震災の場合は、ビルが潰れてその中にいらっしゃるということで、言うならば今回のように流されて別のところへ行ってしまっているということは無かったわけですので、そういう意味では条件が全く違うわけであります。現在までに約8,000体、約74パーセントの身元の確認をし、約7,600体、約70パーセントでありますが、御遺体を御遺族にお引き渡ししております。ただ物理的にお渡しをできたというわけではございませんで、法的に御遺族に御覧をいただき、そして法的な意味でお引き渡しをしたことで、しかし、御遺族の御都合、御意思によってそのまま御遺体を安置所にお預かりしているものも含まれます。身元が確認できていない御遺体については、指紋・掌紋、DNA型鑑定資料、これは爪などでありますが、歯牙形状の採取を徹底しており、引き続き、身元確認に全力を尽くしてまいりますが、収容から相当期間が経過した身元不明の御遺体も多いことから、そのような御遺体につきましては、市町村へのお引き渡しが必要となってきております。警察としては、断腸の思いでありますが、しかしそのままお預かりしたままにしておくということにも限界があります。できる限り御遺族の御心情、御遺体に対する敬意を払ってまいりますが、やむを得ず法律に基づいて市町村へお引き渡しをする時期が近づいてきているということであります。すでに福島県におきましては、3月23日からお引き渡しを始めており、岩手、宮城両県におきましてもその準備を進めていただいております。

次に、交通局関係でありますが、運転免許証、先日も申し上げましたが本人確認書類として極めて有用でありますので、運転免許証を無くした被災者に対する再交付については、被災した県警察におきましても、優先的に業務を開始するよう努力しております。地震の被害が著しい岩手、宮城及び福島県警察のうち、岩手県警察においては3月13日から業務を開始しておりましたが、宮城及び福島県警察は、施設の被害が大きいこと等によりまして、これまで業務を停止しておりました。このうち、福島県警察におきましては、本日3月28日から、福島及び郡山の両運転免許センターにおいて再交付業務を始めております。

最後に、一つ御紹介を申し上げたい話がございます。この度の震災により、多数の警察官が殉職しておりますが、その御遺族に対し、我が国とスカイマーシャル、いわゆるハイジャック防止の警察官ですが、スカイマーシャルの運用に当たって交流のある外国の警察官から弔慰金が送られてまいりました。世界的な警察官同士の友情、心を一つにして助け合おうという気持ちが広がっているということでありますが、その口上の一部を披露いたしますと、「彼らは津波が迫る中、逃げ遅れた人を救出するために高台に自らが避難することはしなかったのでしょう。そうした彼らの行為は警察官としての宿命であり、彼らの勇気と行動は世界の警察官全てが共感できるものであります。国は違えど同じく国の平和を守るために生きた彼らのことを我々は同じ仲間、兄弟のように思っております。尊い仲間の命が失われた中、我々にできることは無いだろうかと話し合い、有志で残された家族のために見舞金を集めました。十分な額ではありませんが、どうか御遺族に渡していただきたい」こういう口上でございました。この弔慰金は、しかも日本の習慣をわざわざお調べになったんだと思いますが、日本流の香典袋に入れられていたと聞いております。彼らは日本の習慣を文献で調べてわざわざ香典袋を用意して下さったのだと思います。彼らの同僚に対する愛情と御遺族への細やかな心遣いを感じますし、改めて殉職された警察職員の崇高な使命感を誇りに思わせていただいているところであります。

問  長官にお伺いします。地震が発生してから半月余りが過ぎまして、これまで数多くの警察部隊が現場で救出・救助だけではなく御遺体の収容、検視、それから福島で原発からの退避など様々な分野で懸命に活動していると思います。今回被害が甚大であることから、まだそういった活動を始められていないといった地域もあるというように聞いています。こうしたことを考えますと今後、相当長期間に及ぶ大規模警備になってくると思います。その点を踏まえて長官の決意をお聞かせ下さい。

答 (長官)これまで投入されました警察部隊については、先ほど大臣のほうからお話があったところであります。今後についてということでありますが、地震が発生しまして既に半月以上経過しておりますが、引き続き、未だ行方の分からない方々の捜索活動を行っていくことが必要となっている一方で、更に今後は、住民が避難した地域や避難先地域におけるパトロール、あるいは、被災地の復興に向けた支援、それから当然のことながら一般治安の維持活動と、こうした様々な警察活動を行う必要があります。

加えて福島原発周辺における活動については、先ほど大臣からもありましたが、放射線量の管理を徹底しながら、今まで以上に必要に応じた部隊展開を行うこととしておりますほか、現在進んでいる自主避難に際して必要な場合には、十分な支援を行うなど、国民の期待に応える活動を展開していく所存であります。

この度の地震は、未曾有の災害であるということでありますから、警察として、引き続き、被災県警察の要望も踏まえながら、全国から大規模な部隊を投入するとともに、その部隊への支援体制も確立するなどして、長期にわたって必要な態勢を確保していく所存であります。いずれにしても、正に全国警察の総力を挙げて機動的に対応して、被災地における安全・安心の確保に万全を期していきたい。これは全国警察一枚岩でやっていく必要があると思います。どの県というのではなく、全国警察が本当に一枚岩になって必要に応じて必要な部隊を投入していく、そのタイミングを的確にやっていきたいと思います。

問  長官にお伺いします。身元不明の御遺体の市町村への引渡しに関してですが、これまでどれくらいの数の御遺体を引き渡されたのかということなどを含めた現状と、これからの警察としての対応などについてお聞かせ下さい。

答 (長官)現時点で市町村に引渡しを行った数は55体であります。私としては、やはり御遺族や亡くなられた方のお気持ちを考えれば、身元が判明しないまま市町村にお引き渡しをせざるを得ないのは、正に断腸の思いであります。大臣から先ほどお話がありましたけれども、今般の震災は、身元確認に大変苦労しております。阪神・淡路大震災の犠牲者の大半は居住地で亡くなられたというのに比べて、条件が相当違うということであります。一つは、大規模かつ広範囲の津波で犠牲になった方が大半だということにより、御遺体が津波に流されてお住まいから相当離れた地域で発見されているという点であります。もう一つ大きな点は、津波により家屋が流されてしまったり、御家族の全員が犠牲になっておられるケースもあることなどから、御遺体から得られた指紋等と対照する資料自体を得ることが困難になっているということであります。また、更に今後、遺体が発見されれば、より困難になってくるのではないかと思います。そういう意味で、身元確認に非常に苦労している状況がございます。

警察としては、市町村へ御遺体を引き渡す前に、指紋・掌紋、DNA型鑑定資料、歯形の採取を徹底して、着衣や所持品も含めたこれらの資料を基に、引渡し後も引き続き身元確認に全力を尽くしてまいりたいと思います。非常に困難な状況でありますけれども、御遺体一つ一つを大切にしながら、警察としては全力を尽くしていくことが我々の使命だと思っています。

問  大臣と関係局長に伺います。先日、神奈川県警が出動服を現地に送ったというお話がありました。現場は厳しい現場だと思いますし、できるだけ装備をきちんとしたものでというのもあると思いますが、その辺の後方支援に関して御所見をお伺いします。

答 (大臣)正に全国の警察官みんなが、自分達の仲間が被災県3県の警察はもとより支援部隊に至るまで大変苦労していると、自分達も何らかの形で心を一つにして協力をしていきたいという自発的な視点から、こういう神奈川県警の協力、具体的には出動服を現地に送ったという話ですが、出動服に限らず、いろいろな形で支援をしていこうということで具体的な行動が始まっているということであります。先ほど長官も申しましたように、これからも長期にわたるものでもあります。せっかく懸命に頑張っておりましても、自らが倒れたり病気になったりしては、十分にその使命を果たせません。必要最小限度の物は、正に自ら警察官同士の助け合いや協力で調達をしていくという気持ちで努力をしている姿でございました。私も大変、その警察官同士の友情に敬服をしているところであります。具体的なところは警備局長からお願いいたします。

答 (警備局長)現場の状況なんですけれども、浸水とか倒壊家屋や瓦礫の山が大変多く、また足場も水や泥に浸かっているということで、新たな物資を調達することは極めて困難だと報告を受けております。特に、現場で活動している警察官は、今申し上げたような状況の現場で活動しておりますので、被服とか装備品などが汚れたり、あるいは損傷している状況であります。しかしながら、断水であり洗濯もできない着替えもできないという状況であります。先ほどお話がありました出動服は、そうした中で是非送ってほしいということで、警視庁、埼玉県警、愛知県警、福井県警、神奈川県警から合計約1,200着の出動服を送ることとしております。それ以外にも、例えば手袋やゴーグル、胴付きゴム長靴など現場で使ってもらう物を送ってもらうことにしております。また、福島の原発周辺では放射線対策に資する装備品等も送ることとしております。先般、警察庁の緊急災害警備本部の中に、警視庁と連携をして被災県警察における部隊の受援や物資の調達などに関する連絡調整を行う「支援調整チーム」を発足させました。現地のニーズを受け取りながら、どういう支援ができるのかを検討しまして、物資や装備品等を送ることによりまして、長期化する中で質の高い活動が継続できるように警察庁としても全力を挙げて支援をしていきたいと考えております。

問  大臣、先ほど原発の10キロ圏内でも御遺体の捜索を昨日から始められたと仰ってましたが、これはどのぐらいの体制でやっておられて、現に御遺体の収容などはあったのでしょうか。

答 (大臣)具体的には警備局長お願いします。

答 (警備局長)体制は、必要に応じて中へ入って活動するという体制を整えております。昨日のことについては、具体的にはまだ報告を受けておりません。