国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年4月7日(木)11:41~12:02

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は、長谷川委員が所用のためご欠席であります。本日は、お手元の資料のとおりの報告が警察庁からございました。「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」の中間報告が取りまとめられ、公安委員会でその概要について報告が行われました。また、震災関連につきましては、犯罪対策閣僚会議の下の関係省庁ワーキングチームで決定された「被災地等における安全・安心の確保対策について」その他、各種警察措置の現状について報告がございました。定例会議の内容は以上でございます。

問  長官にお伺いします。現在、福島第一原発における周辺における行方不明者の捜索活動や住民が避難している中でのパトロール活動について、現在の取組みの状況や今後の方針についてお聞かせください。

答  (長官)これまで各種警察活動を実施してきておりますが、4月5日からは20キロ周辺の主要道路上におきまして、約250人の部隊により検問を実施しているほか、20キロ圏内の捜索については福島県警察と本日警視庁から派遣されました約240人の部隊を合わせまして約360人の体制により、南相馬地区等における捜索を実施しているなど、30キロ圏内におきましては合計で約950人の体制により、20キロ圏内におきましては約600人の体制により様々な警察活動を実施しているところであります。多くの避難民の一番の心配は残された自宅のことでありますから、パトロールの強化等によって犯罪の発生を牽制・抑止することに力を入れてまいりたいと思っております。いずれにしましても原発周辺というのは状況が変化し続けているわけでありますから、警察としましては変化に迅速に対応する姿勢で臨んでおります。引続き必要に応じ、更なる部隊を投入し、万全を期していきたいとこういう考えであります。

問  大臣にお伺いします。昨日、海江田経産大臣が福島第一原発の周辺で避難されている方の一時帰宅について前向きな発言をされました。その際にもし戻るときには警察官による同行をもって、安全管理をしたいということも発言したようなんですが、このことについて何かお考えや具体的に決まってらっしゃることがあれば教えてください。

答  (大臣)まだ直接依頼があったわけではありませんが、そのような検討がなされていることは承知をいたしております。またそういう御意見が被災者の方から多く出されているということもお聞きしております。警察のほうとしても一時帰宅される場合には、経産省など関係機関とも連携をとりながら、車両の準備、帰宅される方々が乗車するバスの先導等の支援を行うことはあり得るということで、いざというときには準備ができるようにということは考えているところでございます。今後とも避難されている方々の安心と安全も確保するために可能な限りの対応をしてまいりますし、原発周辺で避難されている方々のご自宅は必ずしも津波や地震で壊れている家ばかりではないわけでありまして、まだしっかりした家も残存しているわけでありますし、その中にはいろんな資産も当然のことながら残されている、そこに対して被災者の方々が一時帰宅をしたいというお気持ちになることはすごく当然でありますので、そのお気持ちは大事に受け止めながら警察としては、その際はできるだけの事をしたいという心構えは持っております。

問  長官にお尋ねします。月曜日に被災地を視察されましたけれど、改めてその所感をお聞かせいただきたいというのと、そして現地で大規模な部隊を投入したいという御発言がありましたが、具体的にどのようなことが狙いで、どのような規模になりそうなのかについて、お考えがあればお聞かせください。

答  (長官)まず、後段の部隊の投入についてでありますけれども、現在警察庁の支援体制を強化するために、支援調整チームを支援対策室に改組しまして、4月5日から本日にかけて職員を現地に派遣しております。そして現地警察のニーズ等を具体的に聴取しております。その上で今後の支援体制を具体的に検討していくと、こういう段取りであります。
 前段の御質問でありますけれども、現地の未曾有の惨状を直接私も目の当たりにしまして、御遺族や避難所での生活を長く続けておられる被災者の方々の御心痛というものは、計り知れないものであるというふうに感じました。それが率直な感想であります。現地に行かないと中々分らないことでしたが、町を一瞬にして失うとか、家を失うとか、家族知人を失う喪失感というのは、相当なものではないのかということを感じました。同時にこうした現地の厳しい勤務状況の中で昼夜を分かたず、警察職員が高い士気を保持しながら勤務して、住民の安心・安全の確保に全力を尽くしているという姿に対して心から敬意を表した次第であります。本当にこれは長期にわたるわけでありますから、全国警察も当然支援しますけれど、現地の警察は頑張って欲しいと思ったわけであります。
 その上で何点か今回、震災について現地視察して思ったことを述べますと、一つは、ご案内のとおり今回の震災というのはご遺体の捜索や引き取りといったことがまだ道半ばであるということだと思います。これから瓦礫の山とか水没した所、あるいは海の中といった所にご遺体が相当あるということでありますから、これがどれだけの時間がかかるかなと思いました。また、私は石巻の遺体安置所を視察して激励して参りましたけれども、あの時点でも650体の遺体が置かれており、そのうち300体のご遺体が身元不明で、350体の身元が確認されているのですけど御家族の事情によって引き取ることができずにとりあえず警察で安置してある、そういう光景を見ますと、今回の震災の特徴や悲惨さを現している証左ではないかと感じた次第であります。また町ごと、村ごと一瞬にして壊滅したところが少なくないわけでありますが、そういう状況をみますと、一つは復興の困難さというのを感じると同時に、やはり震災後の治安ということを考えますと、これまでと違う条件を前提にして我々は治安というものを構築していかなければならないのではないかと思います。つまり震災の前の地域社会、地域共同体というのが治安の基盤であるわけですが、その上に立って警察の機能というのが相まって良好な治安が成り立っていたとすれば、今回治安の前提である地域社会、地域共同体が一瞬のうちに崩壊したということを踏まえて、これからの治安を考えていかなければいけないわけで、やはり新しい知恵といいますか努力が必要であろうと思います。
 最後は、今回の震災は、あまりにも広範囲でそして強烈であるわけでありますから、役場の機能というのが不全になったところが少なくないのと先ほど言ったように地域社会が崩壊するという中で、警察という機能が従来のプロパーの機能以上に公的機能として、よりその役割が期待されているのではないかと感じました。そういう意味で全国警察挙げて的確に対処していきたい。

問  大臣にお伺いいたします。取調べの高度化についての中間報告が、このたび取りまとめられました。法務省のほうでも同様の検討をやっておられて法制審のほうに諮問されるという動きもあるようですけど、大臣としては今後この議論をどうやって続けていかれるおつもりなのか、御所見をお聞かせください。

答  (大臣)検察と警察の研究の中で、可視化の問題がひとつ共通点として上げられるのですが、私は検察のほうは、色んな検察の不祥事等もありましたので、検察の在り方検討会議というかたちでスタートしたと思っております。その中の一つとして可視化のことも取り挙げられているということで、これから法務省のほうは在り方検討会議の答申を受けて法制審議会へ移行するとかという報道も承知しておりますが、これは法制審議会となると刑法や刑事訴訟法の改正等も含めて議論されるのでありましょうが、若干警察とレベルの違う分野の話が含まれているかというふうに思います。ただ共通項につきましては法務省から、我々にも十分ご連絡いただきたいと思いますし、先般、江田法務大臣ともお互いに連絡連携を取り合うようにしましょうということは、私的に申し合わせたところでございます。今後とも法務省とはしっかりと連携をとっていきたいと思っております。これは事務方も含めてです。それで私のほうとしては、昨年の2月に国家公安委員長の下に作られた研究会が2年を目途として研究が始まり、先般、そのちょうど折り返し地点のところで中間報告を出していただきました。いわゆる可視化の問題だけではもちろんありませんけど、捜査手法や取調べの高度化を図るという意味でその一環として、いうなら自供重視が日本の特色とも言われている。これらのことに代わるものとして、どういう方法があり得るか、可視化を取り入れるとすれば、国民の人権をいかに守るかという視点での可視化、一方では治安をいかに維持していくかという公益をどう守っていくか、これが相矛盾するジレンマとしてではなくて、両立させなければいけないわけでありますから、その両立させる方法を色んなかたちで議論してもらっております。中間報告の特色は、諸外国においては我が国にはない様々な捜査手法を有しているということ、それには我が国がやっていることであっても、より比重を持たせて強力にやっている、例えば、DNA鑑定のための素材であるとか、データベースであるとか、それから傍受でありますとか、防犯カメラでありますとか色々なものについて、もう文化が違うというくらいに諸外国はそれぞれ色んな機能を充実させる、その中の一環として自供はどの程度の比重を持たせるか、このくらいに文化の違いもあるわけでありますから、そういう意味では我が国における取調べは、諸外国に比べて真相解明上の意義役割が大きかった。それはそれでいいのか、または、若干比重を変えてもいいのか、というこれらのことについて諸外国の例を様々学習しながら世界の捜査手法が色々ある中で、我が国の特色というものも浮き彫りにしたというのが今回の中間報告の性格だと言っていいと思います。そういう意味でこれからは、他の手法も総合的に含めて、どういう日本の伝統や民族性や、そしてまた警察検察の機構・機能、そういうものを総合的に考えながら日本の捜査文化をどう構築していくか、その中で可視化をどう位置づけるかという議論を詰めて行うのがこれからの一年間だと受け止めております。法務省のほうでワンステップ踏み出されたようですけど、そこは捜査手法については関連性が深いわけでありますから、今後とも法務省が独走するとか、警察が独走するとかではなくて、お互いにそれぞれの立場からの研究を、また議論を進めながら最終的には一致したものが作れるようにというふうに考えております。

問  長官にお尋ねをいたします。山口組の組長である篠田建市が9日に刑を終えて府中刑務所を出所します。警察は山口組とその中核組織の弘道会に対する集中取締りを続けておりますが、この出所を機に山口組は組織の立て直しを図るという指摘もあります。この出所を警察としてどう受け止め、今後どのように対処するのかをお聞かせください。

答  (長官)警察としては、山口組組長の出所を受けて、その動向や暴力団情勢に与える影響を注視していきたいと、こういう姿勢であります。そして引き続き全国警察挙げて中枢幹部やその資金源となっております暴力団関係企業、共生者の取締りを徹底するとともに、暴力団排除条例の周知徹底とその活用を図るなどしまして、社会全体で暴力団を排除するための取り組みというのを一層強めてまいりたいという姿勢であります。引き続き、全国警察挙げて取り組んでいきたいと思っております。