国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年6月23日(木)11:57~12:09

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は全員
出席です。議題事項につきましては、警備業の要件に関する規則等の一部を
改正する規則案について説明がありまして、原案どおり決定をいたしました。
報告事項につきましては、お手元の資料のとおりの報告が警察庁からありま
したが、この際、特に東日本大震災に伴う警察措置として、宮城県警察及び
福島県警察が実施した集中捜索について若干申し上げたいと思います。

 宮城県警察では、未だ多数の方々が行方不明となっておられますことから、
6月16日から6月18日までの3日間、18日が震災発生後100日目で
ありましたが、沿岸警察署の捜索重点地区を中心に約1,400名体制で集
中捜索を実施いたしました。自衛隊、海上保安庁等もそれぞれ体制をとり、
集中捜索に参加していただいております。福島県警察におきましても、同じ
期間で体制をとって集中捜索を実施しております。

 今回の集中捜索では、宮城県におきましては11体の御遺体を収容し、福
島県では御遺体の発見には至りませんでした。捜索に従事した警察官は、民
家に流れ込んだ土砂をかき出し、泥まみれになった家財道具を一つ一つ拾い
上げ、また、沼地におきましては自ら泥だらけになりながらも、一刻も早く
御家族にお引き渡ししたいとの気持ちで捜索に当たったと聞いております。
また、今回の捜索に従事した宮城県警察学校の初任科学生の中には、「少し
でも役立てるよう、早く被災現場で捜索に当たりたかった。微力ながらも、
思いがかなった。」との声があったとのことで、大変心強く感じた次第であ
ります。また余談になりますが、出身地の警察署から私的に聞いた話ではあ
りますが、若い警察官を中心にそれぞれ全国から派遣をしておりますが、自
分の持ち場に帰った時に被災地での出来事を報告会として、先輩達に報告を
しているようであります。むしろ応援に行って逆にこっちが元気づけられま
したと、警察官になったことの意義、使命感というものを改めて強く致しま
したということで報告をされていたというようなことなども聞いております。
正に全国の警察の一体感というものをそれぞれ随所に見る思いが致しており
ます。被災地では、今も大量の瓦礫が残っており、捜索を阻む要因となって
おります。今後とも自治体と連携を取りながら、引き続き行方不明者の方々
の捜索に取り組んでまいりたいと思います。この前、宮城県に行きましたと
きも直接現場で聞いたところでありますが、瓦礫の仮置き場から本置き場へ
移す、その時が最後の機会なんだからといって、そこにもきっちり目を光ら
せて、最後の最後まで御遺体を見逃さないようにという苦労、努力を懸命に
してもらっているところであります。

  長官にお伺いします。埼玉県深谷市の選挙違反事件で、昨日、県警が調査
結果を公表しました。それに関しましての御所見をお聞かせください。

答  (長官)本件につきましては、捜査の過程において不適切な取調べが行わ
れたのではないかとの指摘がなされたということを受けて、埼玉県警察にお
いて、本件捜査に従事していない職員による調査チームを編成しまして、詳
細な調査を行ったところであります。調査の結果、供述を強要するなど違法
にわたる捜査は認められませんでしたが、一方で、取調べを受けた方は、被
疑者として取調べを受けるという経験が初めてであったり、高齢者が多かっ
たこと等に鑑みますと、取調べに際して、一部に一層きめ細かく配慮する余
地があったとの報告を受けているところであります。警察庁としては、今後
とも、適正捜査の徹底について、都道府県警察を指導してまいりたいと思っ
ております。

  大臣にお伺いします。先日、コンピュータウィルスの作成罪などを盛り込
んだ改正刑法と捜査機関による電子データの差押え等を規定した手続法が制
定されましたが、警察は国際協力の流れの中で、武器を手に入れる一方でこ
うした規定の濫用を懸念するとの声も一部で聞かれています。今後のサイバ
ー捜査の在り方と今回の法改正、法制度の意義について御所見をお聞かせく
ださい。

答  (大臣)急速に進歩するコンピュータを取り巻く色々な環境がありますの
で、それを遅滞なくカバーしていくことは大変なことでございますが、特に
コンピュータウィルスは、短期間のうちにインターネット上に広がるもので
ありますので、今回のコンピュータウィルス作成罪の創設によって、被害の
拡大防止を図ることが可能になったと考えております。警察としては、本法
におけるウィルス罪を適用して、サイバー空間における国民の安全と安心を
確保してまいりたいと思っております。

   国際協力も必要でありますが、もちろん的確な適用をしていかなければな
りませんし、その的確な適用という意味で、警察としては、通信履歴の保全
要請を含め、法に定められた要件を厳守しながら、通信事業者における負担
や捜査上の必要性を考慮した上で、適切にサイバー犯罪の捜査を進めてまい
りたいと考えております。

   特に通信事業者に対しては、最小限必要なもの、そして最小限必要な期間
ということをもちろん含めながら過剰な負担をお掛けすることがないように
注意をしつつ、一方で捜査の徹底を図っていく心構えが必要なんだろうと思
います。

  長官にお尋ねします。先頃、警視庁が摘発した外為法違反事件についてで
あります。北朝鮮への車の不正輸出という容疑で貿易業者が検挙されました
が、去年の北朝鮮の核実験以降、日本政府が北朝鮮に対して輸出について制
限をかけていて、これまで複数の事件を検挙しておりますが、今回初めて経
由地が韓国というのが出てまいりましたけれども、今回の摘発の意義とそれ
らを含めて、取組みについてお聞かせください。

答  (長官)御指摘のように、対北朝鮮措置違反事件でこれまでいろいろ摘発
をしているということであります。今回は初めて韓国を経由地とする検挙事
例ということが新しい点だと思います。いずれにしても、第三国を経由した
迂回輸出入等の違法行為の厳正な取締りは、対北朝鮮措置の実効性を確保す
るため重要だと認識しております。

   警察庁としては、今後各県に対する指導調整の一層の強化ということと、
関係行政機関等とのより緊密な連携を通じて、北朝鮮との間の迂回輸出入事
件の取締りを更に徹底していきたいと思ってます。

   いろいろ摘発しておりますが、相手の方も更にいろいろな策を講じてくる
でしょうから、我々は更に先へ進まなければいけないわけですが、もう一つ
重要なのは、全都道府県の摘発能力を一律に高めるということであります。
全都道府県が同じ高い摘発能力を持てば、一層摘発できるのではないかと私
は期待しております。それが対北朝鮮措置の実効性を更に確保することに繋
がっていくんではないかと思いますので、一層の奮闘を期待したいと思いま
す。

   (大臣)併せて、拉致問題担当大臣としては、長官の今のお答えが徹底さ
れることを大いに期待しております。