国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年6月30日(木)11:38~11:49

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は、長
谷川委員が所用のため御欠席であります。議題事項につきましては、暴力団
対策法に基づく「極東会の指定の確認について」説明があり、決裁をいたし
ました。報告事項につきましては、お手元の資料のとおりの報告がありまし
たが、この際「東日本大震災関係業務に関する特殊勤務手当について」、一
言申し上げたいと思います。

 以前も申し上げましたとおり、東日本大震災における各種警察活動につい
て、人事院と手当の増額等の協議を重ねてまいりましたが、今般、特殊勤務
手当の特例が措置されることとなりました。御苦労いただいた諸君の労苦に
少しでも報いたいとそういう気持ちでございます。具体的には、福島第一原
子力発電所周辺での作業に係る手当の新設、2番目に長期間又は危険区域で
の作業に係る手当の加算、3番目に御遺体の取扱いに係る手当の加算等が措
置されております。被災地の厳しい現場で活動している警察職員の努力、苦
労の実態が評価されたものと考えております。

 なお、多くの警察職員は地方公務員でありますから、その特殊勤務手当の
改善につきましては、総務省と協議を行うとの報告を受けており、私からも
総務大臣にはくれぐれもよろしくということはお願いしておりますが、引き
続き適正な処遇の実現に向けて努力してまいる所存であります。

  長官にお尋ねします。取調べの録音・録画を全国の警察が、この2年間、
試行してきました。その実施状況と検証結果が公表されましたが、その内容
についての御所見をお願いします。

答  (長官)この度、警察庁において本年3月末までの2年間の全国試行の結
果について検証を行ったところであります。その結果、一つは現在の試行に
よる録音・録画は裁判員裁判における自白の任意性の効果的・効率的な立証
方策となりうると、次に現在の試行であっても取調べの真相解明機能に影響
を及ぼす場合があることから、十分な配慮が不可欠であるなどとされたとこ
ろであります。

   いずれにしても、今回の検証結果を踏まえて、より効果的な立証方策を研
究すべく、今後はより柔軟に多様な試行を積み重ねることとしていきたいと
思います。また取調べの録音・録画の今後の在り方の検討に資するよう、引
き続き必要な改良を加えながら試行を今後も継続してまいりたいと考えてお
ります。こういう方針ですので、これまでの検証結果を踏まえて、慎重にい
ろいろ配慮しながら、より試行を進めていくということだと思います。

  大臣にお伺いします。昨日、群馬県と栃木県の県境で起きました5件の女
児殺害、失踪事件につきまして御家族の方々が家族会を設置されました。こ
れは、大臣が以前5つの事件については同一犯の可能性も否定できないと仰
られた発言が一つのきっかけになったと伺っておりまして、御家族の方々は
再捜査を警察に求めておられます。中には時効になった事件もあるのですが、
これにつきまして大臣の御所見と今後警察としてどのように対応していかれ
るのかお考えをお聞かせください。

答  (大臣)昨日、家族会が開かれましたことは、お聞きをいたしております。
御家族の皆様の痛ましい御心情が縷々語られたこととお聞きしておりますが、
私も人の子の親として、その心情を痛いほど感じるものであります。ただ個
人的心情は別にいたしまして、そのことをしっかり受け止めながら、警察と
しては全力を尽くすことが必要だと思います。

   御指摘の事件は、いずれも女児を被害者とする非常に痛ましい事件であり、
残念ながらこれらが時効成立あるいは未解決となっていることにつきまして
は、誠に遺憾であると受け止めております。

   お尋ねの「家族会」が発足したとの報道につきましては、先ほども申し上
げましたように承知をいたしております。いずれにしても、関係する群馬・
栃木両県警察において、御家族に対し、その心情に配慮しつつ、適切に対応
するよう警察を督励してまいりたいと思います。

   国会でも有田議員の御質問に答弁をいたしましたとおり、これらの事件は、
いずれも幼女を対象とする誘拐殺人事件や行方不明事案であること、行方不
明になった場所等が近接していることから、一般的には同一犯人による犯行
の可能性を否定できないという認識を持っております。

   なお、今後の展望につきましては、一般論として申し上げますと、公訴時
効が完成すれば捜査は行わないものということになってはおりますが、これ
らの未解決事件のうち、現在も被害女児の所在が不明となっている「横山ゆ
かりちゃん事件」については、群馬県警察において、あらゆる可能性を排除
することなく、鋭意捜査中であるものと承知をいたしております。

   また、この「横山ゆかりちゃん事件」のみが今のところ時効ではなく未解
決事件となっておりますので、この事件の解決が、仮にすべての事件が同一
犯の犯行であるとすれば、一つの突破口になるということもあるのだろうと
思います。いずれにしましても、同一犯であるかどうか分かりませんけれど
も、この「横山ゆかりちゃん事件」にあらゆる可能性を求めて適切に捜査を
進めていくよう、督励をしているところでございます。

  長官にお尋ねします。警視庁が摘発をした臓器移植法事件についてであり
ます。まだ捜査中で全容解明はされていないところでありますけれど、登場
人物が医者であり暴力団であり、それから犯行の道具として養子縁組という
制度を使われたことが今までの調べで明らかになっておりますが、この事件
の意義、それからこの事件から透けて見える問題点について、長官がお考え
になっていることをお聞かせください。

答  (長官)公正性が求められる移植医療に暴力団が介在することは許される
ことではなく、警察としては、今後、捜査を徹底し、その全容を明らかにし
ていくことが第一であると考えております。

   また、本来その趣旨にのっとり適法になされるべき養子縁組制度が偽装さ
れ、犯罪インフラとして暴力団に悪用されたことが非常に問題であると思い
ます。

   そうした中、一部で報じられております日本移植学会が倫理指針を改定し
「養子縁組から数年」を条件とする方針との動きは、犯罪インフラ対策の観
点からも有意義なものと考えております。警察としても、犯罪インフラ対策
をより一層強力に進めていかなければならないと改めて感じました。また、
そのような決意をもって、犯罪インフラ対策を広範かつ深く全国的に推進し
ていくことにより、様々な治安上の問題が克服されていくのではないかと思
います。そういう点で、非常に重要な意義を持った事件であり、捜査であり
ますので、徹底した解明を望みます。