国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年8月4日(木)12:17~12:34

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は全員出
席であります。議題事項につきましては、人事案件について説明があり、決裁
をいたしました。報告事項につきましては、本年上半期の統計がまとまる時期
であり、それら、お手元の資料のとおり報告がございました。

  大臣にお伺いします。平成16年に当時24歳だった小出亜紀子さんが殺害
された事件で、警視庁の捜査の怠慢を認める判決が決定しましたけれども、こ
の件で遺族が警視庁に対して謝罪と検証を求めておりまして、今日、警視庁が
遺族の方に対して、何らかの回答をするようですけれども、改めまして、何故
このような捜査の怠慢が生まれたと思われますでしょうか。大臣の御所見をお
教えください。

答  (大臣)怠慢といいますか、結局、間違いが裁判上も明確にされたというこ
とであります。その原因については、警視庁で、また警察で厳しくこれから検
討もなされると思いますが、謝罪につきまして警視庁において適切に対応する
こととなっていると承知をいたしております。

   御指摘の事案につきましては、警視庁の捜査権限不行使を違法と認めるなど
とした東京高裁の判決に対して、警視庁が上告をしていたところ、本年5月3
1日付で上告を棄却する最高裁の決定があったというふうに承知をいたしてお
ります。

   まずは本事件により亡くなられた方の御冥福を心からお祈りを申し上げます
とともに、御遺族に対しましては、心からお悔やみを申し上げます。このよう
な事案が起こりましたことを誠に遺憾に思っております。

   最高裁決定を厳粛に受け止め、今後とも、全国警察を挙げて相談業務の更な
る充実強化、特に、男女間トラブルに起因する相談事案については中々微妙な
関係ではありますから警察がそこに関与することについて躊躇する部分もあっ
たのかも知れませんが、やはりできるだけ踏み込んだ対応に取り組み、国民の
皆さんの期待に応えられる警察を確立するように警察庁を督励してまいりたい
と改めて思う次第であります。

  大臣にお尋ねします。オウム真理教犯罪被害者救済法についてですが、この
度、各都道府県公安委員会における裁定がすべて終了したとのことですが、改
めまして、これまでの施行状況について大臣の御所見をお聞かせください。

答  (大臣)忘れ得ない事件でございましたが、これらについて我々としてもこ
れを大きな教訓としながら今後も対応をしていく必要があると思います。

   全国警察が一丸となって、最後の被害者の一人まで給付金を受けていただく
という信念の下に法の施行から申請期限までの2年間に、約6,600人の被
害者の方々を把握し、その約99パーセントに対して制度教示を実施したとこ
ろであります。

   その結果、申請期限である平成22年12月17日までに、6,084件の
申請を受け付け、先般、全ての申請について都道府県公安委員会による裁定を
終えたところでございまして、これにより、約30億円の給付金を支給させて
いただき、オウム真理教犯罪被害者救済法の目的がほぼ達成できたものという
ふうに考えております。

   この間、関係機関・団体や報道機関の方々から多大な御協力をいただきまし
たことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

  長官にお伺いいたします。警察庁は、事業者を巻き込んだ協議会を発足させ
るなど、サイバーインテリジェンス対策の強化を打ち出されていますが、この
狙いと長官の御所見をお聞かせください。

答  (長官)近年、標的型メール攻撃が発生しておりますけれど、これは表面化
しにくいということと、全体像を把握することが困難であるという性格がある
わけです。こうした事案によって、我が国の治安、外交、安全保障等に重大な
影響を与えるサイバーインテリジェンスの脅威が現実のものとなっていると認
識しております。

   そこで、警察としては、民間事業者と連携、あるいは外国の治安情報機関も
含めた関係機関等との協力関係を強化しまして、このサイバーインテリジェン
スによる被害の未然防止に努めてまいる所存であります。将来、大事にならな
いために、今から先手を打っていこうということです。

   その第一歩として、具体的には、この事業者等と「サイバーインテリジェン
ス情報共有ネットワーク」を確立するということ。そして、「サイバーインテ
リジェンス対策のための不正プログラム協議会」を設置することです。これが
すべてではありませんが、こういうことを先に先にとやっていく必要がありま
す。その重要な一歩ではないかと思っております。

  長官にお伺いします。今年上半期の特殊詐欺に関する被害状況がまとめられ
ました。これについての長官の御所見と依然として被害者の多い振り込め詐欺
対策について今後一層取り組みを強化するためにどのようなことが必要とお考
えになっているのかお聞かせください。

答  (長官)上半期の情勢認識ですが、既に御案内のとおりでありますが、昨年
増加に転じましたオレオレ詐欺の増加傾向が続いているということなど、依然
として厳しい状況にあると認識しております。

   加えて、昨今、未公開株や社債等の有価証券等の取引を装う詐欺等、匿名性
の高い犯行ツールを利用した詐欺が多発しているということでありますので、
これも深刻な状況にあるという情勢認識をしております。

   それに対してどういう対策をとるかということですが、二本立てで、まず一
つは、検挙活動の更なる強化であるということだと思うんですが、特に重点と
して、受取型オレオレ詐欺の増加を踏まえた現場検挙の徹底ということと、犯
行拠点の摘発に向けた合同・共同捜査の推進などが挙げられると思います。

   第二の柱は未然防止ということでありますけれども、これまで対策を色々や
ってきているわけでありますが、それにもかかわらず高齢者の被害が減少しな
いという実態があります。そういうことを踏まえ、この際、なぜ騙されるのか
という原点に立ち帰って改めて検証を行うことが必要であり、そして更に踏み
込んだ対策を考えていくことが大事ではないかと思います。具体的には、例え
ば、高齢者に加えてその子供世代も対象とした複線的な注意喚起をすることで
す。二つ目は、金融機関等において作成されておりました顧客向けチェックリ
ストの見直し等による声掛けの強化。さらには、警視庁で始まっていますが、
留守番電話作戦のように、現場ならではの発想により、新たに取り組まれてい
る施策を全国的に展開することです。これらは例示でありますが、更に色々な
ことを考えていく必要がある。つまり、更に切り込んだ施策ができないか、今
後、関係機関や団体の知恵や経験を広く求め検討していくことが大事だと思い
ます。

   加えて、特殊詐欺というのは犯罪インフラ利用事犯の典型であるわけであり
ますから、今進めている犯罪インフラ対策プランに基づく対策を強力に推進し、
こちらの方からも攻めて追い込んでいくことも大事です。

   いずれにしても、最後の堅い岩盤をどう打ち破るかということが最後の課題
であり、一番難しい課題であります。これを突破する知恵が必要であるという
ことです。

  長官にお尋ねします。子供を守る対策についてでありますが、先般、少年課
の上半期の統計が出てまいりましたけれども、その中で、児童虐待が相変わら
ず高水準で推移をしており、児童ポルノ事件の摘発も過去最多であり、被害者
も過去最多であるということです。そういういたいけな子供達が相変わらず心
身の被害を受けている状況が続いているわけでありまして、これについての長
官の御所見と対策についてお尋ねしたいと思います。

答  (長官)まず児童虐待の関係でありますけれど、虐待等の深刻な被害に遭っ
ている子供達を早期に救出保護することは警察の重要な責務であると認識して
おります。この観点から児童相談所等の関係機関との連携を一層強化してまい
りたいと思います。何が一番大事かというと児童の救出救護でありますから、
これを実現するために更なる努力が必要であると思います。

   もう一つは児童ポルノでありますが、これは被害児童の心を深く傷つける悪
質な犯罪であるだけでなく、インターネット上で流通・拡散することによって、
その傷というのは更に深く、広くいつまでも続くものであります。

   このため、警察では、児童ポルノの根絶を目指し、これまで様々な施策を推
進してきたわけであります。しかしながら、児童ポルノによる児童の悲惨な被
害に思いを致し、その実態を最もよく知る立場にある警察が児童ポルノの根絶
に向けた取組を更に牽引する必要があると思います。

   どういうことをこれから更にやって行くかということでありますが、ブロッ
キングを回避して行われるファイル共有ソフト利用事犯の集中的な取締りです
とか、全国協働捜査方式の効果的な実施、あるいは情報収集、分析の強化によ
る児童ポルノ愛好家グループ実態解明及び取締り等の最近の施策等を更に推進
することはもちろんでありますけれども、それに加えて、社会に警鐘を鳴らす
ことによって、関係事業者その他民間の一層の取組を促すなど、社会全体で児
童の被害を防ぐ機運が更に高まるよう取り組んでまいりたいと思います。警察
だけでできることはないけれども、警察が牽引をしていくことが大事ではない
かと思います。

   いずれにしても、被害児童のことに思いを致せば我々の目標は一つであり、
被害児童を激減させること、この一点の目標に向かってどれだけ進んだかとい
うことが、我々の仕事の成果のメルクマールだといえると思います。

   (大臣)一言追加させていただきます。警察庁としては、警察庁長官が今仰
ったとおりであります。私がちょっと思ったのは、国会で与野党協議であると
か、また与党内の部会であるとか、かなり精力的に議論をしているところであ
ります。子供達の人権をしっかり守るという視点から国会内においての議論を
前向きに尽くしてもらいたいというふうに政治家の一人として思っているとこ
ろです。敢えて付け加えさせていただきます。