国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年8月18日(木)11:32~11:48

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は全員出
席であります。議題事項については、「国家公安委員長に対する行政文書開示
請求に関する決定について」などお手元の資料のとおりの説明があり、原案ど
おり決定をいたしました。また、報告事項につきましては、お手元の資料のと
おりの報告が警察庁からございました。

   昨日は、子ども達による「霞が関見学デー」ということで、18名のお子さ
ん達が保護者の皆さんと一緒に加わりました。

   最初に警察と聞くと怖いですかって聞いたら、誰も手を挙げる子はいません
でした。お巡りさんと警察とどちらが親しみやすいかという質問をしましたが、
中には警察というお子さんもいたりしました。私なんかが小さい頃には、何か
いたずらをしますとお巡りさんに言いつけるよとか、警察にとか言われたもの
で、何となく子ども心に警察は怖いところなのかなと思ったことがありました
が、今はきっと保護者の皆さんの教育が行き届いているのではないかというふ
うに思いながら警察に対するしっかりした認識、イメージそういうものを持っ
てもらっているのではないかなと感じました。もっとも警察に関心を持って応
募された方ばかりですから、むしろそのパーセンテージが高いのかもしれませ
んけれども、大変心強く思った次第でございます。以上、ちょっとした昨日の
感想でございました。

  大臣にお伺いします。発災から5か月が経過しましたけれども、津波などで
拾得した金庫などについて、今どのような措置が行われているか改めてお伺い
したいのと、あと発災から5か月ということで改めて大臣の御所見をお願いし
ます。

答  (大臣)まず金庫の事についてお答えしたいと思いますが、以前にここで3,
500個ぐらいとか申し上げたことがありましたが、その後もいろいろ集計が
ありまして、先月10日までに合計約5,700個の届出がなされたところで
ございます。

   被災地の警察署におきましては、業者に委託し金庫の開扉を順次進め、通帳、
権利証等の在中物件を手掛かりとして遺失者の特定に努めた結果、在中してい
た現金の総額約23億6,700万円に対しまして、その約96%に当たりま
す約22億7,000万円が返還をされたところでございます。ちなみに7月
10日現在でございます。

   こうした事務の過程におきましては、膨大な金庫に対し、警察署の保管庫に
は収納しきれず、会議室、車庫や借り上げたプレハブ等を使用せざるを得なか
ったということもございましたし、行方不明者の捜索、被災地の警戒等に追わ
れる中、事務体制の確保に苦慮したこともございました。また、金庫内部に泥、
海水が入り込んでおり、腐敗・変質を防ぐために在中品を一点ずつ洗浄・乾燥
させる必要もあり、様々な苦労があったと聞いています。金庫ですから防水か
というふうに私なんかは思っておりましたが、金庫の中には多くの海水や泥も
入っているということで、それを洗うことに大変苦労をしたと聞いています。
また、中には空っぽの金庫も3,500個と言ってる頃には確か長官から2割
ぐらいはあったと聞いておりますが、これはおそらくホテルや旅館の客室の金
庫などではないかというふうに思います。いろいろな苦労話もエピソードもあ
ったということでありますが、大切な現金であり、書類であるということで被
災者の皆さんにできるだけ早くお返ししたいということで懸命に努力をし、一
定の成果があったんではないかというふうに思っております。

   また、5か月経ちましたが、お亡くなりになられた、いわゆる死者と数えら
れる方々が1万5,000人以上、行方不明の方々が4,000人以上いらっ
しゃいます。阪神淡路に比べますと本当に規模といい、また、行方不明の数と
いい桁違いに多いわけでありまして、いわゆる圧死された方々が九十何パーセ
ントという阪神淡路に対して、津波による溺死、水死の方が九十数パーセント
という今回の震災の質の違いというものも痛感させられます。警察としては連
日、全国から多くの、ピーク時は5,000人に近い部隊を派遣をし、パトロ
ールや遺体の捜索を始めとして様々な活動をやってまいりましたが、本当に警
察一家と言ってもいいぐらいに、皆さんが心を一つにして頑張ってくれている
と、また、通信が途絶えた僻地につきましては、情報通信部隊が大変な苦労を
して情報を繋いでくれた、こういうことも私自身大変感銘を深くしているとこ
ろであります。警察学校の生徒達も御遺体を洗うために苦労してくれましたし、
今なお警察OBの皆さんが手薄になりがちな被災地以外の地域における交番の
留守番をしていただいたり、また、隊員達が苦労しているというので下着を差
し入れたり、食料を差し入れたりということで、正にみんなが心を一つにして
頑張っております。そういう中で警察官達の感想文をたくさんいただいており
ますが、本当に現地のみなさんに励まされ元気をいただき、そして感謝をされ、
そのことによって警察官になって良かったという、達成感と使命感を持って再
度、また三度派遣地へ行く警察官の皆さんもおられる。その行く度にまた復興
が目に見えていることにやりがいを感じながら、なおモチベーションを高く頑
張ってくれていることに本当に敬意を表したいというふうに思っているところ
でございます。ただ、阪神淡路の時には、以前申し上げましたが神戸市を中心
にして、尼崎市、芦屋、川西、伊丹など大都市が多いですから、行政能力を喪
失しないで、それが健全に機能することによって復興作業、見舞金の給付も含
めていろいろなことがスピーディに行われましたが、今回の場合には、市町村
の行政規模も小さいですし、また多くの公務員の被災者も出しているわけであ
りまして、行政能力を喪失した自治体もあるわけであります。こういうことに
ついて、県や国からできるだけ手を差し伸べて、全体として取り組んでいかな
ければいけませんけれども、しかし、まだ自治体ごとにかなり格差があるよう
でありますし、国としても一日も早く被災者の皆様が平常の生活に少しでも早
く戻ってもらえるようにより一層努力をしていくことが必要だなと思っており
ます。警察としても、応援部隊はどこかの段階で打ち切らざるを得ない段階は
来ますが、しかし、被災者の皆さんの御希望がある限りは期限を今から予定す
るのではなくて、御希望がある限りは精一杯頑張っていこうという決意で警察
としては臨んでいるということを申し上げておきたいと思います。

  長官にお尋ねします。今年上半期の来日外国人の犯罪情勢がとりまとめられ
ましたが、全体として減少傾向が続く一方で、偽装結婚の検挙件数の増加です
とか、犯罪のグローバル化といったものが更に進んでいるような状況が見受け
られますけれども、そのあたりの傾向と今後の対策等について御所見をお願い
します。

答  (長官)今年上半期の総検挙件数・人員というのは前年同期と比べて件数が
微増、人員が減少したところでありますけれども、基本的には来日外国人犯罪
情勢というのは、依然として厳しい状況にあるという認識に変わりはないわけ
であります。件数というのは、あくまで検挙した件数でありますから、そのよ
うな認識に立たなければいけません。

   その上で特徴として何点か挙げるとすれば、1つは世界的規模で活動する犯
罪組織の日本への浸透、構成員の多国籍化等の犯罪のグローバル化というべき
現象がみられ、それを支援する犯罪インフラや違法なヤードが継続的に発覚し
ている点です。2点目は、昨年大幅に減少しました窃盗犯の検挙件数が増加に
転じ、また、前年同期と比べてグローバル化事犯及び犯罪インフラ事犯の検挙
件数・人員が増加している点です。3点目は、刑法犯検挙人員に占めます正規
滞在者の割合が9割を越えているという点などが特徴として挙げられます。

   今後の対策としては、1つは犯罪インフラ事犯を含む外国人犯罪の取締りの
強化であります。2つ目は外国人犯罪組織の実態解明の推進ですが、これは非
常に大事なことであります。さらに3つ目として国内関係機関、外国治安機関
等との連携の強化であります。やはり警察だけではなく外国も含めて、よりダ
イナミックに網を掛けていくことが必要だと思います。このようなことを一層
徹底するなど、犯罪のグローバル化戦略プランや犯罪インフラ対策プランに基
づく諸対策を推進していくことであります。

   この犯罪のグローバル化というものは、日本の治安にとって引き続き大きな
脅威であると認識しております。外国人犯罪というものは、全体が見えていな
いわけであり、見えないうちに着々と犯罪インフラ等が構築されてはいけない
ということで、グローバル化対策や犯罪インフラ対策という取組みを全国一体
となって進めているところであります。これを更に強力に推進すれば、ボディ
ブローのような効果が出て着実に相手の組織を弱体化することができるのでは
ないかと期待しております。攻め方は分かっており、戦略的に新しいアプロー
チをしているわけですから、これを全国一体で強力に推進していくことに期待
したいと思います。