国家公安委員会委員長(代理)記者会見要旨

1 日時 平成24年3月8日(木)12:31~12:47

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の委員会定例会議の状況について申し上げます。松原委員長は、国会用
務のため欠席でございます。委員は全員出席です。議題事項につきましては、
案件表のとおり、人事案件、あるいは民法等の一部改正法の施行に伴う関係内
閣府令の整備、あるいは原子力の関係、交通の方法に関する教則の関係、防災
業務計画の修正といった点でございます。これらについては、原案どおり決定
いたしました。報告事項については、この資料のとおりでございます。

  長官にお伺いします。東日本大震災から間もなく1年を迎えようとしていま
すけれども、警察としては行方不明者の捜索をはじめとする様々な業務をやら
れてこられましたが、改めて1年を振り返っての御所感と、首都直下地震等、
今後の大規模災害に対する危機管理体制の在り方についても御所見をお聞きか
せください。

答  (長官)昨年3月11日に大震災が発災をして1年を迎えるということであ
りますけれども、あっという間に1年が過ぎたという感じがいたします。ただ、
被災地の方々にとっては、おそらく長い1年間だったのではないかということ
で、心からお察し申し上げる次第です。今回の災害は、月並な言い方になりま
すけれども、未曾有の地震、大津波、そしてこれまでに経験したことのない原
子力災害ということで、当初は先の見えないような日々が続きましたけれども、
関係者の御努力で一応の安定は取り戻すことができたのではないかと考えてい
ます。ただ、犠牲者が2万人近いという状況でございますし、多くの方々がま
だ仮設住宅等で大変不自由な生活を強いられていますし、また、原発について
は、まだまだ本格的な収束ということには程遠いという状況にあるわけであり
ます。警察でも、こうした中、30人の殉職者を出しました。改めて全ての亡
くなられた方々に対して、心から哀悼の意を表すとともに、御冥福をお祈りし
たいと思っています。

   警察では、この間に岩手・宮城・福島の被災3県に対して、延べで91万人
以上の警察職員を派遣いたしました。もちろん被災3県の職員も全力を挙げて
警備活動等に従事したわけであります。具体的に申し上げますと、被災者の避
難誘導から始まり、救出救助、行方不明者の捜索、御遺体の収容、検視、身元
の確認、交通整理、パトロール、防犯指導、また相談対応、検問等と大変多岐
にわたる活動に従事してきたわけであります。これらに従事してきた職員に対
して、敬意を表したいと考えています。ただ、まだ行方不明者が3,200人
以上ということでございます。また、原発周辺では未だに被災者の方々が御自
宅に帰れないという状況が続いておりまして、まだまだ困難な状況が続くので
はないかと考えております。警察庁としましては、被災3県に対して、御承知
のように、750名の警察官の緊急増員を行いましたけれども、このほかに警
備部隊の特別派遣を継続するなど、被災者・被災地に寄り添った支援をこれか
らも続けてまいりたい、そしてまた、被災地、被災住民の方々の安全・安心の
確保というのは、復旧・復興の正に基盤をなすものですので、その確保のため
にこれからも万全を期してまいりたいと考えております。

   それから今後の震災等への対策についてというお尋ねでございますけれども、
私は昨年10月に就任した際に、第一に災害対策に係る危機管理体制の再点検・
再構築ということを掲げまして、警察庁を含む全国警察に対して、その旨の指
示を行ったわけであります。そして、11月には警察庁において、今回の震災
における警察活動の検証を行いまして、これを公表いたしました。そして、同
時にこれを踏まえながら、今後の災害対策を検討するために、次長を長とする
「災害対策検討委員会」を設置いたしまして、警察庁を挙げて集中的な検討を
進めてきたところでございます。また、全国の都道府県警察においても、警察
本部長を長とする対策委員会を設置いたしまして、約90項目に及ぶ事項につ
いて検討が進められておりまして、できるところから順次実施に移されている
と承知をいたしております。警察庁では、本日の国家公安委員会において、こ
れまでの検討結果を取りまとめて、御報告を申し上げました。内容としては、
発災後、被災地に緊急展開をして事態に即応するための部隊を1万人に拡充す
るほか、長期間にわたって現地の様々なニーズに応えるための「警察災害派遣
隊」を新設する、首都直下地震対策の発生を見据えた警察庁の業務の継続性の
確保を図る、津波対策強化のための国家公安委員会・警察庁の業務計画の改定
を行う、また、大規模災害に伴う交通規制実施要領の作成を行うといったこと
を決定したところでございます。

   災害対策は事前の準備ということが極めて重要であります。今回の経験を踏
まえて、見直すべきは大胆に見直して、突発的な緊急事態に即応できる態勢を
備えることにこれからも全力を尽くしてまいりたいと考えております。今回、
一応の結果について公表したところでございますけれども、まだ積み残した課
題も多く、真に機能する対策の充実に向けて、今後とも引き続き検討を重ねて
まいりたいと考えております。同時に災害の発生を想定した各種訓練、必要な
装備資機材の確保、施設の改善等にも努力をしてまいりたいと考えております。

   それから全国の都道府県警察に対しても、真に機能する対策を樹立し、万全
の体制が構築されるよう指導し、また、その検討状況をフォローしてまいりた
いと考えております。

  長官にお尋ねします。大阪で警察官による飲酒運転の水増しや証拠品のねつ
造などが明らかになっていますが、不祥事への長官の御所見をお伺いします。
あと、飲酒運転検問時の不正の再発防止策について、もしも案がございました
らお伺いします。

答  (長官)大阪で、御指摘のように飲酒検知を巡る不正事案が発覚しておりま
して、大変ご心配をお掛けしているところでございます。大阪府警では現在、
鋭意捜査を重ねて、捜査を継続しているところでございますけれども、これが
事実であれば、大変に遺憾であると考えております。府警において、これから
捜査を進めて、全容を解明した上で厳正に対処すると承知をいたしているとこ
ろでございます。この飲酒取り締まりの問題につきましては、警察庁において、
既に3月6日付けで全国警察に対して通達を発しておりまして、適正な飲酒検
知器の運用、取締機器の管理・使用状況の点検、指導教養の徹底ということを
内容としておりますけれども、今後、府警による全容の解明を受けて、警察庁
としても更なる再発防止対策を検討してまいりたいと考えております。

   それから、御指摘のように大阪府警では、証拠のねつ造事案というものも発
覚しております。これも同じように厳正に対処するものと承知をいたしており
ます。今後の不祥事の防止対策ということでございますが、大阪府警以外にも
様々な問題があるわけでございますけれども、それぞれ内容が違いますので、
一概にここを直せば全体が良くなるという話でもなかろうと思います。まずは、
個別の事案ごとに全容をきちんと解明して処分すべきは厳正に処分をし、そし
て個別の事案に即した再発防止対策というものをきちんと決めてそれを徹底す
る、遵守していく、ということの積み重ねが大事なのではないかと考えており
ます。

   それから不祥事全般の防止という観点では、警察庁において平成24年度の
第一四半期において「警察改革の精神を踏まえた非違事案防止対策の推進状況」
というものを、全国統一の監察の実施項目として総合監察を行うことにしてお
りまして、これによって現場に対する危機意識の醸成と全国警察を挙げた取組
の一層の推進を期するとともに、警察改革の精神の再徹底を図ってまいりたい
と考えております。

  長官にお尋ねします。長崎ストーカー殺人事件についてでありますが、検証
結果も出て、防止策についても出されたところであり、昨日は全国の担当課長
会議で長官も訓示をされたところでありますが、また今後このような事案が出
てきた時にどのようにするのかというようなところは完全に浸透ができるかど
うか、という課題もあります。改めて今回の事件についての長官の御所見と、
この事件ではストーカー規制法が適用されていなかったという反省点もあると
思いますが、この法律についての長官のお考えも併せてお尋ね申し上げます。

答  (長官)検証への所見ということでございますけれども、まずはじめに、今
回の事件で亡くなられたお二方、お二人の女性のご冥福をお祈り申し上げます
とともに、ご遺族の皆様方に心からお悔やみを申し上げる次第でございます。
関係の3県では、この事案を大変重く受け止めて、これまで事件経過の検証を
進めてまいりまして、先日、お話があったようにその結果の公表を行ったとこ
ろでございます。その検証の中で、一つには危機意識の不足と事件化の遅れと
いうことが指摘されております。それから、ストーカー規制法適用への消極的
な姿勢、警察署における部門の枠を超えた組織的対応の不備、警察署と警察本
部、県警相互間の連携の不備、また、そのほかにもございましたけれども、そ
のようなことを自ら指摘をして再発防止対策も併せて公表したところでござい
ます。3県警察は謙虚かつ真摯に検証を行ったものと認識をしております。警
察庁としましても、この結果を踏まえて、同種事案の再発防止に向けて通達を
発しまして、また昨日、お話があったように全国の関係課長を集めて緊急の会
議を開催して、詳細な指示を行ったところでございます。

   警察の本旨は、犯罪や事故の予防であり、未然防止である、また、個人や社
会の安全・安心の確保であるということ、そして、職務執行は国民の立場に立
って行うべきであるということは、これまでも警察庁として常々強調してまい
ったところでありますけれども、それが未だ十分に浸透していないということ
は大変残念であり、また、警察庁としてもまだまだ努力が足りないということ
を痛感した次第でございます。全国の警察職員には今回の事件を貴重な教訓と
して、この種事案の再発防止のために全力を挙げていただきたいと思います。
また、警察庁としても、そのためにできる努力は最大限してまいりたいと考え
ております。

   それから、ストーカー規制法の問題でございますけれども、昨日の会議でも
申し上げましたが、私は今回の事案について言えば、ストーカー規制法の不備
がその一因であるということは考えておりませんし、そういった言い訳がまし
いことを言うことは適当ではないと考えております。しかし、この事案とは別
にしまして離れて考えてみると、現在、全国で色々なストーカー事案があると
思いますが、それぞれ中身が違うと思います。それぞれ事案に個性があり、そ
れぞれ様々な形態のものがあろうかと思っています。加えて、このストーカー
規制法が制定されてから、12年が経過するわけでございますけれども、その
間、改正が行われていないという状況もございます。そこで現場には12年間
の積み重ねの中で、いろんな意見とか、それからまた問題意識といったものが
あろうかと思いますので、是非それをまず聞いてみたいという気持ちはござい
ます。その上で、ストーカー対策全般をより的確に行う、より効果的に行う、
前進させるといった観点から、運用、制度の両面で改善すべき点があるかどう
か、といったこともよく研究をしてみたいと考えているところでございます。