国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成24年11月15日(木)11:57~12:09

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議は、委員は全員出席であります。議題事項
については、「人事案件」について説明がありまして、原案どおり決定いた
しました。その他警察庁から報告事項について報告がございました。

      私からは以上であります。

  大臣にお伺いします。ストーカー規制法改正の関係なんですけれども、自
民党の世耕議員の方から、メールの送信を対象とするような改正案について
準備をしているというような一部報道もありましたし、そう準備もされてい
るようなんですけれども、今国会、情勢が不安定ですが、提出すると当時は
おっしゃっていたんですが、その辺も含めて、大臣の改正についての所感を
改めてお伺いできますでしょうか。

答  (大臣)この議員立法でありますが、最近、ストーカー事件が頻発する中
で、改正が必要であるということは、皆さんが承知しているとおりでありま
す。今回の逗子市における事件においては、本当に亡くなった方に対して、
御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。

   そういう状況の中で、このストーカー規制法、確かにメールの連続送信等
を規制することは、私もしようと思っておりまして、これについての法改正、
是非あるべきものと思っておりますが、解散になりますので、これは選挙後
の次期国会に委ねられていくことになると思います。とにかく警察庁として
は、できるだけの協力をしていきたいと考えております。

  大臣にお伺いします。反社会的勢力による被害を防止するための企業アン
ケート調査が取りまとまって、前回調査、10年前が21パーセントの企業
が不当な要求に応じた、今回はまだ18パーセントが応じていることについ
ての所見と、あと、もう一点が去年の10月までに全国で整備されました暴
力団排除条例について、9.9パーセントの企業が知らないということ、こ
れについてお願いします。

答  (大臣)今回のアンケート調査の結果によりますと、最近における暴力団
排除の気運の高まりの中で、反社会的勢力からの被害を防止するための企業
の方々の自主的な取組が着実に進展していることがうかがわれますが、他方
で、何らかの形で不当要求に応じてしまっている企業や暴力団排除条例を知
らない企業も一定の割合で存在することも明らかになっております。

   このような調査の結果を踏まえて、今後とも、相談窓口の周知や保護対策
の充実を通じて、不当要求の被害に遭った企業の方々が警察に相談しやすい
環境の整備に努めるとともに、様々な機会を通じて、暴力団排除条例の更な
る普及を図ってまいりたいと考えております。

  長官にお尋ねします。先ほどもちょっと大臣からもお話がありましたが、
神奈川県逗子市の女性殺害事件に関連して、一部報道等で殺人事件発生前の
脅迫事件の際の逮捕状を示す際であるとか、読み上げの際に加害者側に被害
者側の住所等が伝わった可能性が指摘されています。刑事訴訟法の規定とか
で、逮捕状を示すこととか、要旨を告げることとか、そもそも逮捕状は裁判
官が発行するという制度の中で、法を適正に執行すべき警察として、同種の
事案に対して現行法上でできる運用面の工夫と、現行法では対応しきれない
課題についての御所見と、あわせて何か具体的な対策を既に進められている
のであればお聞かせください。

答  (長官)今回の殺人事件の被疑者を昨年6月に脅迫罪で逮捕いたしました。
その逮捕する際に、被害者の方の結婚後の姓(を含む)、氏名と被害者の住
所を神奈川県警の捜査員が被疑者に対して読み上げ、又は告げたというのは
事実であるとの報告を受けております。そして、それがきっかけで被疑者が
被害者の住所等を特定することになったのではないかとの報道があることも
十分承知しております。刑訴法の規定がどうなっているのかということです
が、皆さん、御承知のことと思いますけれども、被疑者を逮捕する場合には、
被疑事実の要旨を記載した逮捕状を被疑者に示さなければいけない。それか
ら、被疑者を逮捕した後、直ちに犯罪事実の要旨を告げた上で、弁解の機会
を与えなければならないとなっております。これは、被疑者の身柄を拘束す
るという重大な処分でございますので、それに当たって適正手続を保障する
という観点から設けられた制度でありまして、我々も大変重要な制度である
と認識しております。

   すなわち、まとめて言えば、刑訴法によれば、逮捕の前と後の2度にわた
って被疑事実の要旨を告げ、又は示すことが我々には求められているわけで
ございまして、その内容を恣意的に隠すということは不適当であると考えて
います。したがって、問題の所在は、報道にありますように、捜査員が読み
上げたかどうかという問題ではなくて、そもそも逮捕状に記載しなければい
けない被疑事実の要旨の記載の在り方、書き方の問題であると考えておりま
す。

   警察としましては、一方で適正手続を保障する観点から、被疑事実を被疑
者が理解できるように事実を明確に特定して記載することが求められていま
す。他方で、本件のようなストーカーであるとかDV等の事案においては、
被害者を保護するという観点から、被害者が知られたくないと思っていらっ
しゃる住所等の情報を被疑者側に知られないようにするための工夫をすると
いうことも同時に求められているという立場にあるわけでございます。

   ちょっと前置きが長くなりましたけれども、そこで今回の事件については
どうかということでございますけれども、昨年6月の逮捕状請求書と逮捕状
の被疑事実の中に被害者の結婚後の姓と住所が記載されているということは
事実でありまして、運用上、この被害者の御意向を踏まえれば、この記載内
容について運用で配慮し、工夫すべき余地があったのではないかと思ってお
ります。しかし、いずれにしましても、この事件に限らず、こういった問題
というのは、刑事手続全体の中で考えていくべき問題でありまして、関係機
関とも協議しながら検討していかなければならない問題だと認識しておりま
す。そのために、警察庁では、逮捕状請求書や裁判官の発する逮捕状の記載
方法について既に関係機関との検討を開始したところでございまして、この
検討結果を踏まえて、速やかに適切な対応をとりたいと考えております。

  運用での配慮とおっしゃったんですが、もしよければ、もう少し具体的に
お願いします。

答  (長官)今も申し上げましたように、趣旨は適正手続を担保するという観
点から被疑者が逮捕される根拠となった事実というものを分かりやすく被疑
者に告げるということにあるわけでありまして、基本的には、そのためには
被疑者が誰に対して、いつ、どこで、何を、どういうふうにやって、結果が
どう生じたかということを特定する必要があるわけでございますけれども、
被疑者において、ある程度推察可能というか、特定可能な情報であるならば、
それをそのまま書かなくても被疑者側が理解できればいい書き方というのが
あるわけですから、具体的に申し上げるのはなかなか難しいですけれども、
そういった工夫というのは行う余地が運用上もあり得ると考えております。

  最後におっしゃいましたけれども、逮捕状を請求する際に、逮捕状に被害
者の名前を書かないというような方向性ということもあるのでしょうか。

答  (長官)いろいろ考えなければいけないと思うのですが、一般的には、被
害者を特定しないということは恐らく難しいと思います。被疑者側の防御権
を保障するという意味において、誰に対してやったかということは非常に重
要な要素になるわけですので、これを全く記載をしないということは恐らく
難しいのではないのかと思いますけれども、いろいろ考えてみたいとは思い
ます。

  大臣にお伺いします。明日、衆院解散ということになりましたが、民主党
からも離党議員も相次いでいますが、総理の決断について、大臣として一言
コメントをお願いします。

答  (大臣)解散権は、総理の専権事項ですから、我々が云々することではな
いと思うんですが、昨日の党首会談は、総理の方から積極的に踏み込んでい
った結果だと思うのです。総理の発言ですから、非常に重いですからそうい
う方向に向かっていくことは、ほぼ決定と言っていいでしょう。是非はいろ
いろな意見はありますけれども、私が個人的に思うことは、解散と決まった
ら、きれいに選挙に向かって進んで、有権者に向かって、自らの信ずること
を訴えて、信を問うというのが我々政治家に求められた姿だと思います。

  長官、先ほどの話に戻って恐縮なんですが、協議されている関係機関とい
うのは、どこかというのは。

答  (長官)現在、法務省とは検討を開始しています。いずれ、やはり逮捕状
の記載の話なので、最高裁にも御相談をしなければいけないと考えておりま
す。