国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成25年1月10日(木)12:22~12:35

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  国家公安委員長の古屋でございます。本日の国家公安委員会定例会議の状
況について御説明を申し上げます。委員は、全員出席です。議題事項につき
ましては、「平成24年度の警察庁の補正予算要望の概要」並びに「平成2
5年度警察庁予算概算要求案」の説明でございます。また、「国家公安委員
会・警察庁防災業務計画の修正」等々につきまして説明があり、原案どおり
決定させていただきました。その他警察庁から報告事項について、報告がご
ざいました。

      このうち平成24年中の刑法犯の認知・検挙件数では、認知件数がピーク
であった平成14年の半分以下に減少するなど、これまで進めてきた犯罪抑
止対策が一定の効果を挙げているというふうにいうことができると思います。
一方では、世論が大変注目をする、注目を集めるような凶悪な犯罪というも
のが後を絶っていません。そういう意味で今後とも犯罪防止、そして、抑止
対策を一層推進するように警察としても全力で取り組んでいただくことを督
励してまいりたいと思います。

      以上であります。

  大臣にお伺いします。刑法犯の認知・検挙状況などで、それに関しまして、
大臣の所感があればお願いいたします。

答  (大臣)138万件と、戦後最多を記録した平成14年から半減をして、
昭和55年以降、32年ぶりに、140万件を下回ってきたと、私はその数
字は一定の評価をしたいと思います。

   刑法犯検挙件数並びに検挙人員についても減少しましたが、最悪の検挙率
が平成13年の19.8パーセントでしたけれども、検挙率が31.7パー
セントということで、対前年比で0.5ポイント上昇いたしました。そうい
う意味では、国民が不安に感じる重要犯罪、重要窃盗犯についても検挙率は
上がってきているということは評価してもいいのではないかと思います。

   刑法犯認知件数の減少というのは、やはりこれは全国の警察が関係機関や
地域住民とともに犯罪抑止対策というものを徹底しているということが要因
として挙げられると思います。政府による治安対策、そして、やはり自治体
とか、防犯ボランティアの方々の地道な活動というものが、犯罪抑止のため
にかなりの効果を挙げているのではないかなと思います。ちなみに、防犯ボ
ランティアは平成15年が18万人だったんです。それが平成23年には2
70万人、数値にして15倍になっていますので、そういう意味での効果は
あったと思います。

   しかしながら、まだ国民が治安に対して不安感を抱いているということも
否定できません。24年7月のアンケートでも、不安を抱いているという方
が大体50パーセントぐらいいらっしゃるので、今後も治安対策の一層の推
進が求められると考えております。

   これまでの成果を着実に定着させるとともに、国民の安全・安心の観点か
ら地域住民や関係団体、自治体とも更なる連携を推進して、いわば連携協働
ということだと思いますけれども、犯罪の抑止に努めるとともに、1件でも
多くの事件を検挙して、国民の期待に応えられるよう引き続き初動捜査の高
度化、あるいは科学捜査の徹底というものも追及をして、犯罪の検挙件数の
アップに努めていきたい、そのように指導を今後ともしていきたいと思って
います。

  長官にお伺いします。110番のリスポンスタイムが、昨年の全国平均で
前年比8秒遅くなっていて、1分以上遅くなった県もあるようなんですけれ
ども、現在進めている初動警察刷新強化について所見をお願いします。

答  (長官)昨年の1月から11月末までのリスポンスタイムは、全国平均で
7分01秒ということで、対前年同期と比べて8秒遅くなっているというこ
とは、正に御指摘のとおりでございます。

   この状況を全国で見てみますと、早くなった県と遅くなった県とまちまち
でございまして、遅くなった県については、その原因をおそらく精査してい
ると考えております。ただ、ざっと聞いた感じでは、通報に基づく出動件数
が増えているとか、それから、1事案当たりの処理時間が延びているとか、
そういった背景があるようでございます。いずれにしましても、警察に助け
を求める人たちのもとに一刻も早く駆けつけるということは、警察にとって
極めて重要な使命でございますので、今後ともパトカー等の機動力を効果的
に活用し、迅速に現場に駆けつけることができるように、各都道府県警察を
指導してまいりたいと考えております。

   初動警察の強化一般についてでございますけれども、これは従来からやっ
ておりますけれども、引き続き、通信指令機能の強化であるとか、人材の育
成強化であるとか、事案対処能力の向上等、こういった対策を引き続き強力
に推進してまいりたいと考えております。

  長官にお尋ねします。富山県警の警察官が逮捕された事件の犯行告白文に
ついてですが、告白文には他の2社にも送ったと書かれています。しかし、
県警は事実確認をせずに2年後に出版社から差し押さえています。もっと早
く事件が解決された可能性も指摘されていますが、これについての経緯と長
官の評価と所見についてお伺いします。

答  (長官)本件につきましては、平成22年6月に文藝春秋社から連絡があ
って、以後、そのCD-R、これを提出していただくべくやり取りがずっと
行われてきたと承知していますが、その具体的な経緯は、富山県警が捜査を
行っていますので、私から説明するのではなくて富山県警から説明するべき
である、現にしていると考えていますので、コメントは控えたいと思ってい
ます。

   ただ、一般論として申し上げれば、こういった犯人に関する情報ないしは
犯人の特定につながり得る極めて重要な情報が報道機関に寄せられた場合に、
取材源の秘匿ということと、それから犯人の検挙及び続発するかも知れない
犯罪の抑止という公益とのバランスをどう取るべきなのかということについ
て、警察も考えなければいけませんけれども、是非報道機関側におかれても
御検討いただきたいと考えています。

   ただ、本件について申し上げれば、2年余りかかったことについては、も
っと早くならなかったのかなという思いはございます。

  長官にお尋ねします。年頭の初めての記者会見ということで、今年、警察
行政はどのような項目に重きを置いて進められるのか、長官の所信をお尋ね
します。

答  (長官)私は年頭に当たって、1月4日に職員の皆さんに挨拶をいたしま
して、2点お話をいたしました。一つは、今、進めています「『警察改革の
精神』の再徹底のための施策の推進について」ということと、もう一点は、
「更なる治安の向上について」と、2点の話をいたしました。まず、警察改
革関係でありますけれども、これは職員の各位にも言ったのでありますけれ
ども、これは単に不祥事防止のための対策ではないんだと、これは警察が真
に本当の意味で国民本位のものとなるように、その体質を改善する運動であ
り、また、同時に治安を向上させるための基盤の強化のための運動であると
話をいたしました。特に、体質改善という部分では、国、地方の全ての警察
職員が犯罪や事故の被害から国民を守るという明確な目的意識を持って、ま
た、何が国民のためになるかということの一点に判断基準を絞って活動する
ようにということを申し述べまして、そして職員全てがこの仕事に誇りとや
りがいを感じて日々職務に当たるようにしてほしいということを、まず話を
しました。

   それから、こういった意味で、警察というのは、犯罪や事故の被害から
「国民を守る」こと、犯罪の被害に遭っている、また事故の被害に遭ってい
る「国民を救う」こと、そしてまた、困っている「国民を助け、支える」と
いう、そういった警察でなければならないし、そういった警察となるように
全力を挙げて努力をしてほしいということを述べたわけでございます。

   もう一点は、更なる治安の向上についてということで話をいたしましたが、
今大臣からもお話があったように、刑法犯の認知件数はピーク時の半数以下
に減ってまいりました。また、交通事故死者もピーク時の4分の1近くにな
ろうとしているということで、治安情勢は全般的に見て、私は相当好転して
いると考えています。しかし、未だ国民の治安に対する不安感というものは
高いものがあるということでありますので、警察はこれに慢心したり、油断
することなく、むしろ「世界一安全な国、日本を作る」という気概を持って、
更なる努力をしてほしいと話をしました。そのためには、更なる犯罪抑止対
策を進めるとか、交通事故抑止対策を進めるということはもちろんでござい
ますけれども、この他に国民の安全を脅かし、また、国民が不安感を覚える
ような個別な問題についての対策を進めていかなければならないと思ってお
ります。

   その一つは、サイバー犯罪、サイバー攻撃対策でございまして、警察の対
処能力の向上を含めて、早急にこの対策は打ち出してまいりたいと考えてお
ります。二つには、暴力団対策でございまして、特に北部九州地区の対策で
ございますけれども、新しい暴対法の効果的適用を含めて、更に強力に進め
てまいりたい。三つには、女性、子供、高齢者を守る対策の推進でございま
して、DVとかストーカー対策とか、児童虐待対策を今後とも着実に進めて
いきたいと考えております。また、高齢者でございますけれども、振り込め
詐欺とか特殊詐欺、悪質商法等の被害から守らなければいけない。また、交
通死亡事故では、死者の半数以上が高齢者でございまして、また、昨年は若
干ながら高齢者の死亡事故が増加したということもございますので、この高
齢者の交通事故抑止対策を強化していかなければならないと思っています。
このほか、脱法ドラッグの問題、また、今年は参議院議員選挙もありますの
でその違反取締りの問題、また、東日本大震災での被災地の安全確保対策、
また、要人の来日等も予想されますので、その警備活動のほか、道交法の改
正や、また、捜査の在り方の検討もしなければいけない。様々な問題を抱え
ていますので、一つ一つ着実に推進してまいりたいと考えております。