国家公安委員会委員長(代理)記者会見要旨

1 日時 平成28年3月10日(木)11:40~11:50

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要   本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。河野委員長は、国会出席のため途中退席されました。議題事項については、「『古物営業法施行規則の一部を改正する規則案』に対する意見の募集」などについて説明がありまして、原案どおり決定いたしました。その他、警察庁から報告事項について報告がありました。以上です。

問  長官にお尋ねします。山口組分裂問題についてお願いします。先週の会見で長官は「山口組分裂に伴う二つの組織の間でのいろいろな事件について、対立抗争としては認められない」というような御発言がありました。今週の月曜日には、警察庁として対立抗争状態にあるというような発表がありました。発表に伴って、暴力団事務所への車の突入や発砲事件がぴたりと止まったというようなアナウンス効果があったと思います。この一週間の間で対立抗争と認められない状態から対立抗争に認定されたというふうに、一転して見解が変わった経緯、今後の対策について御所見をお聞かせください。

答  (長官)最近、両団体の傘下組織関係者らが絡む事件が非常に頻発したわけでありまして、更に全国に拡散し、広がったという状態、それから銃器発砲等の大変悪質な事案が増えて、手口が凶悪化したというようなことを総合的に勘案しまして、この度六代目山口組と神戸山口組とが対立抗争状態にあると判断したものであります。つまり、抗争認定直近の事件の発生状況等からみて、もはや傘下組織等それぞれの個別の事情というよりは、両団体の広域的対立構造が要因となった一連のものであると捉えるべきと判断いたしました。また、一連の事件は被疑者が特定されていないのも多いわけでありますけれども、先週後半から被疑者の検挙が相次いで、事件の抗争性がより強く認められたということも判断の一因でございます。したがって、各傘下組織の個別の事情如何にかかわらず、全国どこでも両団体間の事件が起こり得る状態となったとみるべきであって、全国警察での警戒と取締りの強化が必要と判断いたしました。
 このような観点から、3月7日、警察庁及び関係都道府県警察に「集中取締本部」を設置して、全国警察を挙げて市民生活の安全確保と抗争の早期防遏、両団体の弱体化を目的とした集中取締りを実施することといたしたものであります。
 今後、全国で警戒を強化して、対立抗争の危険から徹底して市民を守るとともに、両団体の中枢幹部を含む構成員等の大量検挙、あるいは資金源の遮断、銃器摘発等を徹底して、抗争の早期防遏と組織の弱体化、壊滅に向けて全力で取り組む方針であります。

問  長官にお尋ねします。平成27年の薬物・銃器情勢がまとまりました。危険ドラッグの使用が疑われる死亡事案が大幅に減少する一方で、大麻関連の検挙人員が増えるなど、新たな傾向が見られました。長官の御所見をお願いします。

答  (長官)薬物情勢については、覚醒剤事犯の検挙人員が引き続き1万人を超えるなど、検挙人員が高水準で推移しておりまして、依然として厳しい状況であると認識しております。
 このうち、今御指摘のありました大麻事犯の検挙人員が、5年ぶりに2,000人を超えまして、特に20歳代以下の人口10万人当たりの検挙人員が増加しているところであります。
 他方で、危険ドラッグにつきましては、その対策に一定の効果が上がっているものの、インターネットを利用した密輸・密売等流通ルートの潜在化がみられるという状況にあると思います。
 危険ドラッグ事犯の取締強化を背景に、危険ドラッグから大麻の乱用に移行した者もみられるということでありまして、特に若年層における大麻の乱用傾向の増大を懸念しているところであります。
 大麻につきましては、覚醒剤と併せて、末端乱用者の取締り、密輸・密売組織の摘発を強化する方針であり、また危険ドラッグに対しても引き続き警戒を徹底していきたいと考えております。

問  長官にお尋ねします。東日本大震災から明日で5年になります。この間、警察としては、捜索であるとか御遺体の検視、身元確認、安全の取組、いろいろな取組をしてきたところですけれども、警察としての5年間の取組について、それから今後、まだ行方の分からない方がいらっしゃいますし、身元の分からない御遺体もまだあります。今後の取組について、また特別出向者という全県、各県から被災3県に1,700人という警察官の方が入られていますけれども、特別出向者の方は被災地の方々にとっても心強い存在でもあるのかなと思いますが、特別出向者の今後の在り方とか考え方も含めて御所見をお願いします。

答  (長官)震災から5年を迎えるわけですけれども、今なお2,561人の方が行方不明となっておりますほか、被災3県では、いまだ多くの被災者が仮設住宅等で不安な日々を送っておられるところであります。復興はまだ道半ばと認識しております。
 被災3県に対しては、発災以降、全国警察から延べ132万人以上の警察職員を特別派遣いたしまして、現在もなお、約150名の特別派遣部隊が福島県内の避難指示区域等において警戒警ら活動に従事しております。
 これまでに延べ65万人以上の警察職員が行方不明者の捜索を実施いたしましたほか、仮設住宅周辺で警戒警ら、犯罪の取締り、防犯指導といった被災地の安全安心の確保を推進してまいりましたが、被災3県における刑法犯認知件数も、震災前と比較して約30パーセント減少し、年々減少率が大きくなってきているというところであります。
 警察といたしましては、被災地の復興には治安の確保がその前提であるという認識の下、引き続き各種警察活動を推進し、被災地の安全安心の確保に努めるとともに、再び起こり得る大規模災害に備えまして、広域緊急援助隊の対処能力の向上も含め、全国警察での万全な態勢の確立を図っていく所存であります。
 なお、今御質問のありました特別出向者についての今後の考え方でございますが、これまで3県に対する特別増員を埋める形で延べ1,700人以上が、原則1年単位で3県に出向し、地元警察と一体となって仮設住宅等の被災者支援等に当たってきたところであります。
 特別増員の数の減少とともにその規模が縮小し、現在は、3県合わせて200人余りとなっておりますが、先般、被災地を訪問した際にもそれぞれの出向者が被災地で大きな貢献をして、また、本人達にとっても、あるいは出向元、送り出している県にとっても非常に貴重な経験となっているということを実感いたしました。
 特別出向は、数は減少しても全国警察と被災地を結ぶいわば「絆」であり、警察庁としては、被災県警察の必要がある限り、引き続きそれに応える方向で対応してまいりたいと考えております。