定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成17年1月27日(木)

午前10時午後0時15分

第2 出席者 荻野、安崎、川口、大森、佐藤各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、警備局長、情報通信局長

首席監察官

第3 議事の概要   

1 議題事項

(1)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「警視庁の警部補が収賄罪で逮捕された事案に関し、国家公安委員会の了承が得られれば、監督責任として、上司の元課長らを本部長訓戒等の措置としたい。」旨の説明がなされ、原案どおり了承した。

大森委員より、「収賄事件で逮捕された職員の上司に対する処分について、従前の処分とのバランスは取れているのか。」旨、質問し、首席監察官より、「『懲戒処分の指針』を見直し、監督責任の適用の明確化を行った平成14年7月以降で見ると、今回のように上司に認識可能性の小さい事案については、その監督責任は訓戒ないし注意であり、この程度が相当であると考える。」旨、説明があった。 

(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、1月25日に行われた衆議院本会議における質疑の状況等について報告がなされた。     

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「富山県警察の事務吏員が、平成16年8月7日、知人の腹痛診療に際して、自己名義の警察職員共済組合員証を貸し与え、代金の一部である15,530円の支払いを免れた事実で、平成17年1月10日、逮捕されるなどした事案に関し、同県警察は、同月28日、同事務吏員を懲戒免職の処分にする予定である。」旨、また、「大阪府警察の巡査長が、平成17年1月4日、大阪府交野市内の同僚宅に侵入したところを家人に発見され、逮捕された事案に関し、同府警察は、1月26日、同巡査長を懲戒免職の処分にするとともに、上司の署長らを本部長注意等の措置とした。」旨の報告がなされた。    

(3)平成16年の懲戒処分者数について

首席監察官から、「平成16年における全国の警察職員の懲戒処分者数は、懲戒免職36人、停職70人、減給242人、戒告140人の計488人であった。」旨の報告がなされた。

(4)「非行防止教室等プログラム事例集」について

生活安全局長から、「文部科学省と警察庁が連携して、非行防止教室等に関する先進的な取組事例を収集・紹介し、その実施の際の計画・指導上のポイント等をまとめた『非行防止教室等プログラム事例集』を作成したが、今後、全国の学校、教育委員会、警察署、少年サポートセンター等に配布し、広報啓発活動に活用する予定である。」旨の報告がなされた。

川口委員より、「この事例集の中でも、子供達に対して命の大切さや人の物を盗んではいけないといった基本的なことを教える必要がある旨の記載があるが、なぜこうしたことをしなくてはならない社会になってしまったのかをよく考える必要があると思う。以前、私が国家公安委員会で紹介したあるテレビ番組のように、多くの子供が死んでも生き返ると本当に思っているのであれば、自分の命・人の命の大切さや、それゆえ人を傷つけてはいけないということ等についてきちんと考えられないのではないかと思う。最近も、ある雑誌に『生き返りを信じる子どもたち、なぜ』という見出しの記事があり、その中には、大学生の中にも生き返りを信じている者がいることや、生と死に関する小中高生を対象としたアンケート調査の結果等が記載されていた。こうした記事等を見ると、子供達が何を考えているのかについて本当の実態が分からない状態で、ただ、何をしてはいけないというようなルール等を教育してもだめではないかということを痛感した。対策等を考えることも大切であるが、子供達の実態をまず念頭においておかなくてはならないと思う。」旨、発言し、生活安全局長より、「最近の子供達については、生き返りの話だけではなく、様々な世の中のルールなり基本となるところをきちんと教えなくてはならないという実態があることは事実であり、今回の事例集も、そうした点も踏まえて作成している。」旨、説明があった。

荻野委員より、「本件の取組みについては、警察と学校とが子供達を取り巻く現在の状況や問題点等について認識を共有し、今後是正すべきこと等を考える一歩となるものとして評価したい。また、この問題は、警察や学校だけでなく、家庭や地域も含めた社会全体で取り組むものであり、そのような点も視野に入れて対応していただきたい。」旨、発言し、生活安全局長より、「非行防止教室については、平成15年中に1万5千回近く開催しているが、そのうち、5千回位は保護者や地域住民に参加してもらって開催しており、家庭や地域にもその輪を広げる努力をしているところである。」旨、説明があった。    

(5)通信傍受法第29条に基づく平成16年における通信傍受に関する国会への年次報告について

刑事局長から、「平成16年中は、警察において、組織的な薬物密売事犯4事件に関し、携帯電話を対象とする5件の傍受令状の発布を得て傍受を実施し、その結果、計12人を逮捕した。」旨の報告がなされた。

安崎委員より、「振り込め詐欺のような事案の捜査について、通信傍受法が適用できれば効果があると思うが、現行法上適用することにどのような課題があるのか。薬物犯罪の捜査に限定された現在の運用は警察の自制として評価できるが、法律で認められている、他の限定された悪質犯罪にもこの規定を忠実に守りながら適用することはできないのか。こうしたことは素人考えに過ぎるのか。」旨、発言した。

荻野委員より、「通信傍受法の適用罪名を見ると、すべて麻薬特例法違反であるが、これ以外のものには適用できないのか。安崎委員からも指摘があったように、素人から見れば、振り込め詐欺などにこれを適用できればもっと成果が上がるのではないかと思う。我々が気が付かないところで、新たな犯罪が発生し深刻な事態に発展しかねない状況の中では、これにどのように対処すべきかをよく考えておく必要があるのではないか。その意味で、通信傍受法の改正について、いかなるタイミングで、どのように切り出すかということも今後の一つ大きな問題であると思う。また、麻薬特例法違反以外にも適用してみて、どうしてもうまくいかないという例があるのであれば、それも法改正を進める一つの材料になると思う。」旨、発言した。

刑事局長より、「通信傍受法の適用罪種は限定されており、振り込め詐欺のような詐欺事案については同法を適用することはできないが、その運用実態については確実に実務に定着しつつある段階であり、今後更に活用されていくだろうと思われる。確かに我が国の法律は、諸外国に比べて非常に限定された枠組みとなってはいるが、振り込め詐欺のような事案にまで法の適用を拡大していくことについてはまだ慎重な声の方が多いのではないかと思われる。」旨、また、長官より、「適用罪名の片寄りは、薬物犯罪では現実に携帯電話が多用されているなど、それぞれの犯罪実態の特質から来ているものと思われる。また、通信傍受法の適用罪種の拡大に当たっては、同法が傍受に際し通信事業者の立会いを求めていることから、その立会人の負担をどうするかという問題もある。」旨、さらに、次長より、「振り込め詐欺について言えば、口座の不正売買とプリペイド携帯電話を規制することにより、これを抑止するための環境はかなり整備されると思われる。」旨、それぞれ説明があった。

大森委員より、「通信傍受法の適用罪名の拡大問題については、私は若干立場を異にしている。この問題は、憲法で保障された通信の秘密の保護という市民社会の原則と犯罪の抑止という公共の福祉とのバランスの中で考えなくてはならない事柄である。仮に適用罪名を刑法犯一般にまで拡大するとなれば、これは市民社会の原則自体を変える必要が出てくると思われる。現在、憲法改正が現実のテーマになろうとしているが、それ自体をどう考えるかの問題も含めて、本件の調和点をどこに見出すかを考えていくべきだろうと思う。」旨、発言した。

荻野委員より、「大森委員の今の御意見に全く異論はない。通信の秘密の保護という原則と公共の福祉とのバランスの中で考えるべきは当然である。ただ、通信の秘密の保護に関する議論に比べると、公共の福祉とは何かという問題についての掘り下げた議論はこれまでほとんどなかったように思う。そこで、通信傍受法を契機にして、公共の福祉というテーマを具体的に論議することが必要だろうと考えた。私の真意はそこにある。」旨、発言した。

長官より、「通信傍受法に関しては、薬物事犯についてようやく運用が定着しつつある段階であり、もう少し実績を積み重ねた結果として、どのような問題点があるのか等を指摘しなければなかなか説得力を持ちにくいのではないかと思われる。」旨、説明があった。

(6)桶川事件に係る国家賠償請求訴訟の控訴審判決について

刑事局長から、「1月26日、東京高等裁判所において、いわゆる桶川事件に係る国家賠償請求訴訟の控訴審につき、控訴棄却の判決があった。」旨の報告がなされた。

大森委員より、「本判決の当否に関する判断は別として、御承知のとおり、この桶川事件は、警察改革の原点のような事件であり、本判決が殺害との関係で不法行為の成立を否定したという点を捉えて、警察改革の意識が緩むということのないようにしていただきたい。この判決の中でも、警察が名誉毀損等の加害行為を回避するための適切な職権行使を怠ったということは認定しているわけであり、ただ、厳密な法律的な分析から、殺害との関係では、そうした認定に至ったのであろうと思われる。本判決によって、この桶川事件が警察不祥事の象徴的な事例であるということをいささかも否定するものではないという点は忘れないようにしていただきたい。」旨、発言した。

刑事局長より、「本判決も踏まえ、改めて実務能力の向上に努めるとともに、民事不介入等を口実にして、やるべき仕事をしないといったことがないよう今後とも気を付けてまいりたい。」旨、また、長官より、「御指摘のとおりであり、警察改革の意識がいささかも緩むことのないよう十分注意してまいりたい。」旨、それぞれ説明があった。

(7)六本木ヒルズ内設置の自動回転扉における業務上過失致死事件について(警視庁)

刑事局長から、「警視庁は、平成16年3月26日、六本木ヒルズ内に設置された自動回転扉において発生した男児被害にかかる業務上過失致死事件に関し、本年1月26日、自動回転扉の製造会社及びビル管理会社の関係者6名を業務上過失致死罪で書類送致した。」旨の報告がなされた。       

(8)平成16年中における薬物・銃器情勢について

刑事局長から、「覚せい剤事犯の検挙人員は減少したが、密輸入事件が急増した。また、大麻事犯及びMDMA等錠剤型合成麻薬事犯については、検挙人員が過去最高となり、押収量についても大麻樹脂、MDMAが過去最高となるなど20歳代を中心に乱用の拡大が進んでいる。他方、銃器発砲事件の発生件数は減少したものの、けん銃使用事件(けん銃様のものを含む。)の認知件数は平成6年以降、最高となった。また、けん銃の押収丁数は減少したが、押収の半数以上を暴力団が占めている。」旨の報告がなされた。

安崎委員より、「MDMAの乱用が拡大しているとの報告があったが、これに関連し、以前に脱法ドラッグの横行に対して法規制が遅れているのは問題であると申し上げた。最近、全面規制の方向で関係省庁の検討が進み、審議会での検討を経て、次期通常国会に法案提出の見込みである旨の報道があった。これはこれで前進であり結構だが、被害の拡大が懸念されている割には、お役所仕事のスピードの鈍さにいささかがっかりしている。ブラックバスの規制は、政治家の判断により、元々の役所のスケジュールより早く行われるようになったようだが、脱法ドラッグ規制については、これが国民生活に与える影響の重大さを考えれば、そうした件以上に急がねばならないのではないか。」旨、発言し、刑事局長より、「脱法ドラッグについて、厚生労働省がそうした方向で検討を開始したということは聞いている。また、東京都でも、脱法ドラッグを知事指定の規制薬物として条例で規制することを検討している。仕事のスピードの点は御指摘のとおりであるが、国会で法律を成立させるためには、それなりの手順・手続も求められ、脱法ドラッグについては、種類も多く、その乱用実態や当該物質の内容等についての調査分析等も踏まえた上で、対処する必要があるということから、どうしてもある程度の時間がかかると聞いている。」旨、また、生活安全局長より、「脱法ドラッグの規制については、昨年も、厚生労働省に対して強く要請している。同省でも、脱法ドラッグが次々と発生していることを受け、規制の手続を早めるとともに、一つ一つの薬物ごとに規制するやり方ではなく、もう少し包括的に捉えていこうと考えているようであり、前進はしているものと理解している。」旨、それぞれ説明があった。

(9)平成16年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締状況について

交通局長から、平成16年中の交通死亡事故の特徴及び死者数減少の理由並びに道路交通法違反の取締状況について報告がなされた。    

10)平成16年中における暴走族の実態及び取締り結果について

交通局長から、「暴走族構成員数の減少とともに、い集・走行回数等が前年と比べ減少し、15年連続で10万件を超えていた110番通報件数が8万件台となった。」旨の報告がなされた。       

11)皇太子殿下の「第60回国民体育大会冬季大会スケート競技会」御臨場等に伴う警衛警備について

警備局長から、「皇太子殿下は、1月29日から30日までの間、「第60回国民体育大会冬季大会スケート競技会」御臨場等のため、山梨県へ行啓になるが、本行啓に伴い、関係警察で警衛警備を実施する。」旨の報告がなされた。    

12)広域緊急援助隊の運用の改善について

警備局長から、「新潟県中越地震の災害対応等を踏まえて、広域緊急援助隊の運用の改善を行うとともに、装備資機材の充実強化を図ることとした。」旨の報告がなされた。

佐藤委員より、「警察として、このような機会を捉え、運用の改善、装備資機材の充実強化を図ることは大事であるが、他方、自衛隊や消防との関係もある。それぞれが競争しながら切磋琢磨していくことは全体的な能力向上のために大切だが、同時に互いの協力関係も大事である。その辺りはどのようになっているのか。」旨、質問し、警備局長より、「毎年、防災訓練や大規模地震を想定した訓練が全国各地で行われているが、その中では、ほとんどの地域で、警察、自衛隊、消防の合同訓練が行われている。また、現実に災害が発生した場合においては、非常災害対策本部が設置される場合は別として、都道府県知事の下で、役割分担が決められ、それぞれの活動に取り組むこととなる。新潟県中越地震においては、警察と消防が共同して生き埋めとなった子供の救出活動を行うなどしている。」旨、説明があった。

佐藤委員より、「通信手段については互いに連携できるのか。」旨、質問し、警備局長より、「基本的には相互それぞれの通信体系をとっているが、現場や県庁等に置かれた対策本部に各機関が要員を派遣し、緊密に連携しながら対応している。さらに、必要があれば、相互に無線機を交換するようなことも可能である。」旨、説明があった。     

13)我が国におけるインターネット治安情勢の分析について(平成16年度第3/四半期)

情報通信局長から、平成16年度第3四半期における、インターネットに接続されている全国の警察施設に対するサイバー攻撃の監視結果及びその分析結果について報告がなされた。

3 その他

(1)官房長から、愛媛県警察における捜査費等不適正執行に関する現職警察官による内部告発に関し、「愛媛県警察生活安全部地域課鉄道警察隊の巡査部長は、1月20日、愛媛県警察の捜査費等の執行に関して、『昭和48年から平成7年にかけて、警察署の会計課長らに電話帳から抜粋した住所、氏名のメモを渡され、金額が記された領収書に書けと言われた。』旨等の記者会見を実名で行った。同県警察では、事実関係を確認するため、本人から事情聴取を実施したところであり、今後関係者からの聴き取り等所要の調査を進めることとしている。」旨の報告がなされた。

(2)安崎委員より、「今回、警視庁と山口・大分県警察の合同捜査本部が振り込め詐欺の被疑者を逮捕したことは大変良かった。この種の合同捜査あるいは広域捜査の必要性・有効性は、犯罪が横行する舞台の拡大に伴って、今後益々増大すると思う。重要事案については、捜査立上げの初期の時点から、こうした方向を考えれば、検挙の効率も上がるのではないかと期待する。」旨、発言し、刑事局長より、「最近の合同・共同捜査の進歩は目覚ましいものがあるが、今後とも、事案の性格、軽重等も踏まえ、こうした方向でやってまいりたい。」旨、説明があった。

(3)大森委員より、「会社役員宅に対する一連の事件は、民主主義に対する挑戦である疑いがある。これに対して警察がどのような対応をとるかは非常に重要な問題だと思う。機会を見付けて、委員長が出席する席において、我々の意見を出し合ってみたい。」旨、発言した。