定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成20年(木)

午前10時00分 午前11時25

第2 出席者 泉委員長、佐藤、吉田、葛西、長谷川、田尾各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、警備局長、情報通信局長

首席監察官、情報公開・個人情報保護室長

第3  議事の概要

  議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「3月26日付けを始めとする地方警務官等287名の人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、長崎県警察の巡査長が自宅のパソコンでファイル共有ソフトを使用するなどした事案に関し、同県警察は、国家公安委員会の了承が得られれば、3月7日、監督責任として地方警務官の警察署長を本部長注意の措置とする予定である旨の説明があり、原案どおり了承した。

(3)「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について

交通局長から、道路交通法の一部を改正する法律の施行等に伴う「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について説明があり、原案どおり決定した。

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。

 2  報告事項

(1)警察庁長官に対する開示請求の状況等について(行政機関情報公開法関係)

情報公開・個人情報保護室長から、2月29日までの間に警察庁長官に対してなされた行政文書の開示請求の状況及び開示請求に対する決定並びに異議申立てに対する決定について報告があった。

(2)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

 (3)平成19年中における生活経済事犯の検挙状況について

生活安全局長から、ヤミ金融事犯は、取締りの強化により、検挙件数、検挙人員とも大幅に増加したこと等平成19年中における生活経済事犯の検挙状況について報告があった。

(4)アダルトビデオ制作・販売会社役員らによるわいせつ図画販売・頒布事件の検挙について(警視庁)

生活安全局長から、3月1日に警視庁が検挙したアダルトビデオ制作・販売会社役員らによるわいせつ図画販売・頒布事件の概要等について報告し、あわせて、参考事項として、税関が行った写真集輸入禁止処分に係る取消訴訟において最高裁がその写真集のわいせつ性を否定して当該処分を取り消す判決を言い渡したこと及びその写真集についての過去の国内における販売の経緯や、その写真集の写真を含むパンフレットについてわいせつ性を肯定した最高裁の判決などについて紹介があった。

葛西委員より、「わいせつ性の判断をめぐる最近の情勢について説明があったが、最高裁判決の判断基準は率直に言ってわかりにくい。この写真集についてはともかく、わいせつ物については、従来どおり厳正に取り締まるべきだ」旨、発言し、生活安全局長から、「この判決を曲解する者も出かねないところであるが、今回の写真集については、いろいろな条件の下でわいせつ性が否定されたのであり、今後とも個別に判断して検挙すべきは検挙していく」旨の説明があった。

佐藤委員より、「いわば自主規制団体である日本ビデオ倫理協会による規制が機能しないことになると、警察の事件検挙による以外にわいせつなビデオの蔓延を抑止する方法はないということになりかねない。少年の健全育成に悪影響を与えるなどわいせつビデオはすでに大きな社会問題であり、今後、社会全体としてどのような対応をすることが必要かを考える必要があるのではないか」と、発言した。

(5)諸外国の刑事司法制度について

刑事局長から、イギリス、韓国、台湾及びイタリアと我が国の刑事司法制度との相違点等について報告があった。

佐藤委員より、「今回、調査対象にイギリス、韓国、台湾及びイタリアを選んだ基準は何か」旨、質問し、刑事局長から、「これらは、いずれも取調べの録音・録画を行っている。欧米諸国のうち、ドイツや米国の連邦及び多くの州では、録音・録画を行っていない。韓国、台湾については、我が国と刑事司法制度が似通っている面もあり、調査対象とした」旨、説明があり、さらに同委員より、「録音・録画を行っていない国についても調査することが必要である。外国の制度については調査する以上は、時間がかかっても全体像がわかるような形の調査が必要である」旨、発言し、長官から、「ご指摘を踏まえ、調査したい」旨、回答があった。

長谷川委員より、「録音・録画を行っている国では、司法取引、通信傍受、おとり捜査等の捜査手段を取っているとの説明だが、録音・録画を行っていない国ではどうなのか。それら全体の中で、日本はどういう位置付けなのか説明してほしい」旨、田尾委員より、「取調べの可視化の観点からは、取調べに弁護人がどの程度関与しているかについても各国の状況を調査してほしい」旨、それぞれ発言した。

3 その他

(1)3月5日に福岡地方裁判所小倉支部において言い渡された北九州市殺人・放火事件の無罪判決に関して、吉田委員より、「取調べの適正化に関する最近における一連の取組みとは直接の関係はないように思うが、本事件についてどのように考えているか」旨、質問し、刑事局長から、「本件は、被告人が留置施設内で同房者に対して行った犯行告白を証拠申請したものであり、取調べの適正化とは別の問題であると考えている」旨、官房長から、「刑事収容施設法第16条第3項に『留置担当官は、被留置者の捜査に従事してはならない』旨規定され、これが捜・留分離の原則である。本件被告人に係る留置手続に問題はなかったと聞いているが、被留置者の同房者から被留置者に係る事件について話を聞き、証拠化することについてどのように評価すべきか、慎重な検討を要する」旨の説明があった。

(2)吉田委員より、「先日(2月26日)、警視庁滝野川警察署の警察官が少年に対してけん銃を抜いて威嚇したとされる事案が発生したが、今回の警察官の行為について市民から寄せられる意見は、大半がこれを支持するものであったとも報道されている。一般市民と警察組織との間には認識にずれがあるのではないか。また、このようなことが、けん銃使用に関し、警察の第一線に混乱を生じさせているのではないか。7年前にけん銃使用規範が改正されたが、これは、それまで過度に抑制的だったけん銃使用を必要なときには適正に使用するという趣旨であり、その精神は大事である。第一線の警察官が事なかれ主義に陥ると、精強な第一線警察の構築とは反対の方向に向かってしまうのではないか」旨、発言し、官房長から、「相手に対してけん銃を向ける行為は、けん銃の『使用』に当たるが、今回のケースでは、警察官職務執行法に定める使用の要件を満たしていない。平成13年のけん銃使用規範の改正は、使用の要件を変えたわけではなく、過度に抑制的であった部分について時代の要請に応えるべく改めたものである。使用要件に当たらないけん銃の使用には厳正に対処すべきだが、具体的な処分内容は、個々の事案に応じ、国民の常識にかなうものであるべきだろう」旨の説明があった。

葛西委員より、「警察官に対して、いつ刃物やけん銃が使用されるかわからないという最近の状況では、できるだけ素早くけん銃を抜き、構え、相手を威嚇するということが犯罪に対する抑止力になり、殉職事案も少なくてすむのではないか」旨、発言し、長官から、「けん銃使用が必要な場合に躊躇なく使用するというのは重要なことだが、今回のケースのように、けん銃の使用要件に該当しないのに、少年が注意に従わないからといって腹を立て、けん銃を抜くに至るということについては、許されない行為である」旨の発言があった。