定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成20年日(木)

午前10時00分 午前11時40

第2 出席者 泉委員長、佐藤、吉田、葛西、長谷川、田尾各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、警備局長、情報通信局長

長官官房審議官(交通局担当)

第3  議事の概要

  議題事項

(1)衆議院議員鈴木宗男君提出警察組織における裏金問題を実名で訴えた現職警察官に対する警察庁の対応等に関する質問に対する答弁書(案)について

官房長から、鈴木宗男衆議院議員提出の質問主意書に関し、国家公安委員会に係る質問及び答弁案について説明があり、その内容を了承した。

(2)犯罪捜査規範の一部を改正する規則案等について

刑事局長から、警察捜査における取調べ適正化指針の実施等取調べの適正化をより一層確保するための所要の規定の整備を内容とする「犯罪捜査規範の一部を改正する規則案」等について説明があり、原案どおり決定した。

(3)警察における取調べの一部録音・録画の試行について

刑事局長から、裁判員裁判における自白の任意性の効果的・効率的な立証に資するための方策を検討することを目的として、警察における取調べの一部録音・録画の試行を実施することについて説明があり、その内容を了承した。

佐藤委員より、「昨年末、『警察捜査における取調べの適正化について』を国家公安委員会として決定し、これを受け警察庁が『警察捜査における取調べ適正化指針』を定めたわけだが、今回の取調べの一部録音・録画の試行は、これらの関係でどのような位置付けになるのか」旨、質問し、刑事局長から、「いわゆる可視化の議論には二つの流れがあり、その一つは、不適正な取調べを抑止するために録音・録画を行うというもの、もう一つは、裁判員裁判を前提に、被告人の供述調書の任意性について裁判員にもわかりやすく立証するための手段として録音・録画を行うというものであるが、実際には、この両者が混在した形で議論されている。警察の立場であるが、まず、出発点として、刑事司法というものは、犯罪について真相を解明し、犯人を適正に処罰するという目的の制度であり、この目的が達成されないということでは、そもそも制度の趣旨が満たされないが、その際、被疑者、被告人等の人権を不当に侵害してはならないのは当然であり、また、裁判員裁判の円滑な運用に配慮することも当然であるというものである。その上で、前者の議論、すなわち、取調べの適正化ということは、基本的には警察の内部努力として実現すべき問題であり、後者の任意性の立証方法については、検察における試行の状況などを踏まえ、今回、警察においても試行しようとするものである。もとより、この両者の議論にはオーバーラップする部分もあるが、基本的な考え方はただ今申し上げたようなものである」旨の説明があり、長官から、「取調べの録音・録画は、昨秋の国家公安委員会決定及びこれを受けた取調べ適正化指針の流れ以前から、強く主張されていた。全面的な録音・録画は、取調べの機能を損ない、到底実施できないが、今回試行しようとするものは、自白の任意性立証の方法として、ある程度まとまった供述が得られた段階で調書の読み聞け部分等について録音・録画を行い、調書を完成させていくということも考えられるのではないか、というものである」旨の説明があった。

佐藤委員より、「試行することに異論はないが、その結果を今後どのように扱っていくのか。また、本格的に採用することにした場合には、例えば、犯罪捜査規範等に規定することになるのか」と質問し、刑事局長から、「検察庁においては、取調べの一部録音・録画の試行を実施した後、検証を行い、今年度から全国の検察庁で本格試行することとしているが、その際、実施細目を定めたガイドラインを作成している。警察においても、いずれ何らかの内部規範は必要になるであろう」旨、長官から、「警察の場合、取調べを行う者の数は優に万を超え、検察庁とは事情が異なる。その一人一人に今回の試行の趣旨を徹底するのは相当に手間がかかる作業となるが、これが最も重要なことである」旨の説明があった。

葛西委員より、「試行とはいえ、検察庁同様、この方向での実施を見込んだものであると思うが、他方、取調べの全過程の録音・録画の実施を求める声も強い。今回の方向性はどのように受け止められることになると考えているか」旨、質問し、刑事局長から、「前回の定例会議で報告した与党の提言の中にもあるように、取調べの全過程の録音・録画の弊害については、一定の理解を得られており、今回の方向性についても理解されるのではないかと考えている」旨、説明があった。

佐藤委員より、「可視化の問題だけを取り上げるのではなく、諸外国との比較においても様々な捜査手段を含めた捜査、取調べ手段全体の中で可視化の問題をどのように位置付けるべきかという点から検討することが大切なのではないか」旨、発言し、刑事局長から、「与党のPTを含め、今後はその方向で議論が深められていくのではないかと考えている」旨、長官から、「諸外国の刑事司法制度の調査については、定例会議でもご指摘をいただいており、時間はかかると思うが、何らかの報告をしたい」旨、説明があった。

田尾委員より、「任意性の立証方法としての試行であるから、立証に役立ったかどうかという観点から検証するのであろうが、これをどのように検証すればよいかということ自体、一考を要する問題である。さらに、今回の試行におけるような録音・録画が取調べの機能を損なうことになるかどうかといった点も検証の対象としなければならない。検察と警察では、刑事手続の中での役割が異なり、録音・録画について考慮すべき事項も異なる。検察では、裁判員裁判対象事件について一律に録音・録画を実施するようだが、警察がそれと全く同じということにはならないのではないか」旨、発言し、長官から、「録音・録画の対象事件やそのタイミングについては、『いいとこ取り』との批判を受けないようにする必要があろう」旨の説明があり、田尾委員より、「いずれにせよ、試行に当たっては、録音・録画を行う事件の選定と、どの段階で録音・録画を実施するかということがポイントになると思われる」旨、発言し、長官から、「いろいろ問題もあるので、都道府県警察だけに任せておく話ではない。試行を実施する警察を十分指導していきたい」旨、説明があった。

委員長より、「いわゆる可視化の問題や取調べの適正化の問題については、本日もいろいろ議論があったように、今後更に詰めていかなければならない。定例会議以外の場も含め、引き続き各委員と十分な意見交換をしていってほしい」旨、発言した。

(4)「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集について

交通局長から、道路交通法の一部を改正する法律の施行等に伴う「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集について説明があり、原案どおり決定した。

(5)交通安全施設等整備事業の推進に関する法律施行規則の一部を改正する命令案について

交通局長から、交通事故防止を一層推進するため、交通の安全を確保しつつ円滑化に資する観点から、特定交通安全施設等整備事業を実施すべき道路の指定の基準を改正する「交通安全施設等整備事業の推進に関する法律施行規則の一部を改正する命令案」について説明があり、原案どおり決定した。

(6)無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する国会報告について

警備局長から、団体規制法の規定に基づき、平成19年中の同法の施行状況について国会に報告する旨の説明があり、その内容を了承した。

(7)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。

 2  報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)銃砲に係る2つの総点検の結果について

生活安全局長から、平成19年12月に長崎県佐世保市で発生した猟銃使用殺傷事件を受けて実施した「17万人/30万丁・総点検」及び「銃砲行政の総点検」の結果とその改善策の案、今後の取組みについて報告があった。

葛西委員より、「事件を受けて総点検を実施し、対応策を講じること自体はよいが、これはいわば、不審な人が『銃器を使って』事件を起こしたことについての現象面での対応である。この事件において直視すべき根源的な問題は、地域における不審情報を警察がきちんと把握し、これに対応できるかということにあるのではないか。銃砲行政担当者の増員といった限定的な話にとどまるのではなく、より普遍的な問題として、警察の情報収集力を高める必要があるのではないか。地域警察官が各家庭を訪問するとか、交番を活用するとか、種々の工夫があってしかるべきではないか」旨、発言し、生活安全局長から、「今回の報告書でも、民間団体との連携にも言及しているが、より一般的に、地域に潜在する各種の情報をいかに把握するかという問題であると思う。巡回連絡についても、他に膨大な業務量を抱える地域警察官が十分には行えていないという問題もある」旨、長官から、「高層マンションに象徴される都市化の進展などにより、牧歌的なお巡りさんの巡回連絡のイメージがそのまま通用するわけではないが、重要な問題である」旨の説明があった。

(3)FATF相互審査(現地調査)の実施状況について

刑事局長から、3月6日から21日までの間、マネー・ローンダリング対策等に関するFATF勧告の実施状況の審査がFATF事務局長等8名の審査団により実施されたの報告があった。

(4)「幼児2人同乗用自転車」検討委員会の開催について

長官官房審議官(交通局担当)から、幼児2人同乗用自転車に求められる条件や開発の可能性、安全な利用・普及に必要な事項等について検討するため、部外有識者からなる検討委員会を設置したこと、第1回委員会を4月3日に開催すること、本年夏ころを目途に、幼児2人同乗用自転車に求められる条件について中間とりまとめを行う予定であること等の報告があった。

(5)「平成20年春の全国交通安全運動」の実施等について

長官官房審議官(交通局担当)から、4月6日から15日までの間、「全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底」等を重点とした春の全国交通安全運動を実施する旨の報告があった。

(6)G8開発大臣会議に伴う警備について

警備局長から、4月5日から6日までの間、東京都内において開催されるG8開発大臣会議に関し、所要の警戒警備を実施する旨の報告があった。

(7)天皇皇后両陛下の「日本ブラジル交流年・日本人ブラジル移住100周年にちなみ、日系ブラジル人が多数在住する地域を御訪問」(群馬県)に伴う警衛警備について

警備局長から、天皇皇后両陛下は、4月7日、日本ブラジル交流年・日本人ブラジル移住100周年にちなみ、日系ブラジル人が多数在住する地域を御訪問のため、群馬県へ行幸啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を実施する旨の報告があった。

(8)情報セキュリティ対策のための環境整備の推進状況について

情報通信局長から、情報セキュリティ対策を推進するために各都道府県警察で行われている公務使用私有パソコン等の一掃や自動暗号化ソフトウェアの導入等の環境整備の推進状況について報告があった。

3 その他

(1)長官官房審議官(交通局担当)から、自動車安全運転センターの平成20年度予算及び事業計画の認可について、長官が専決処理した旨の報告があった。

(2)自転車通行環境の整備に関し、吉田委員より、「モデル地区の一つである幡ヶ谷の自転車用の道路を見てみた。午後6時ころは自転車の通行も多かったが、路面に標示があるのみで柵等は設置されていないので、路上駐車等があると自転車は車道の中央に出なければならず、かえって危険ではないかと感じた。また、夜9時ころには自転車の通行はほとんどないのに、狭い道路に自転車専用レーンを確保するというのは、むしろ自動車の円滑な走行を妨げることになるので、設定時間を考慮することも必要ではないか」旨、発言し、交通局長から、「自転車通行環境整備モデル地区の施行状況については、近く、報告する予定である。いずれにしても現在モデル事業として実施しており、ご指摘のような点をどのように改善していくかは今後検討していきたい」旨の説明があった。