定例委員会の開催状況

第1   平成20年1113日(木)

午前10時00分 午前125

第2 出席者 佐藤委員長、佐藤、吉田、葛西、長谷川、田尾各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、交通局長、警備局長、情報通信局長

首席監察官、刑事企画課長

第3  議事の概要

  議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「11月8日付け人事案件1名について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、鹿児島県警察の巡査長が青少年に対して淫行するなどして11月6日に懲戒免職となった事案に関し、同県警察は、国家公安委員会の了承が得られれば、11月13日、監督責任として、地方警務官の警備部長を本部長訓戒の措置とする予定である旨の説明があり、原案どおり了承した。

また、本件に関連し、警備局長から、「本事案の問題点としては、幹部による監督の実態のような本件に固有の事情と、限られた人員の中で終日警戒を実施するための勤務ローテーションの在り方のように他県でも参考とすべき事情とがあり、その両面にわたり、適切な対応をとり、再発防止を図りたい」旨の説明があった。

(3)犯罪による収益の移転防止に関する法律第17条第1項の規定に基づく意見陳述の実施について

刑事企画課長から、犯罪収益移転防止法の規定に基づき、同法違反が認められる東京都内の郵便受取サービス事業者2業者について、国家公安委員会から所管行政庁である経済産業大臣に対し、当該事業者への是正命令を行うべき旨の意見を述べることといたしたい旨の説明があり、原案どおり決定した。

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。

 2  報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)平成20年第3四半期における地方警務官に係る贈与等報告書について

官房長から、「国家公務員倫理法の規定に基づき、地方警務官から平成20年第3四半期における贈与等報告書が国家公安委員会に対して提出され、これを国家公安委員会委員長が受理した。このうち、指定職以上の職員に係るものについて写しを国家公務員倫理審査会へ送付した」旨の報告があった。

(3)東京都足立区内における女性監禁殺人事件に係る民事訴訟の第一審判決について

官房長から、平成16年1月に東京都足立区内で発生した女性監禁殺人事件に関し、警察の捜査義務懈怠等により被害者の殺害という結果が生じたとして被害者の両親が提起していた民事訴訟について、11月7日、東京地方裁判所において、捜査権限不行使の違法性等を認め、東京都等に慰謝料の支払を命ずる判決が出された旨の報告があった。

葛西委員より、「本件では、警察官が積極的な活動をためらうことになるような法制上等の問題があったのか。もしそうなら、この際、警察官が活動するに際して隘路となっているような法制の整備を打ち出すようなことも一つの方法ではないか」旨、発言し、官房長から、「本件は、制度的な問題というより、運用面ないし警察官の意識の問題ではないかと思われるが、警視庁において、事案の経緯を確認するなど改めて調査を行っている」旨、長官から、「本件の場合、国賠訴訟の判決が先行しており、過去の桶川事件などでは警察の調査活動が先行している。国賠訴訟における判断とは別に、今後の相談対応に生かすためにも、本件のような状況の下でいかなる対応をすべきであるのかなど調査検討が必要である」旨の説明があった。

田尾委員より、「個々のケースにおいて、警察官がより積極的に活動すべきであったのか、あるいはそこまでやる必要はないのか、警察法2条に関する判断は微妙なものであろう」旨、発言した。

(4)船舶を利用した大量覚せい剤密輸入事件の検挙について

刑事企画課長から、11月11日、警察、税関、海上保安庁及び麻薬取締部の4機関合同捜査により、外国貨物船を利用した覚せい剤密輸入事件を検挙し、覚せい剤約332㎏を押収した旨の報告があった。

(5)シートベルトの着用状況について

交通局長から、10月1日から18日までの間、警察庁と社団法人日本自動車連盟が合同で実施した全国におけるシートベルトの着用状況の調査結果について報告があった。

(6)団体規制法に基づく警察庁長官の意見陳述について

警備局長から、団体規制法第12条第2項の規定に基づき、公安調査庁長官から警察庁長官に、オウム真理教に対する団体規制法第5条第4項(観察処分の期間更新)の処分請求に係る意見を求められたことから、警察庁長官からは、同項の処分請求が必要である旨の意見を陳述することとした旨の報告があった。

(7)麻生内閣総理大臣の米国訪問(金融問題に関する首脳会合出席等)に伴う警護警備について

警備局長から、麻生総理大臣は、11月13日から16日までの間、金融問題に関する首脳会合出席等のため、米国を訪問する予定であり、これに伴い、所要の警護警備を実施する旨の報告があった。

3 その他

(1)官房長から、現在策定中の「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」(案)について報告があった。

佐藤委員より、「計画案の中に『多文化共生』という標題の項目がある。多文化共生という考え方自体を否定するものではないが、計画案のこの項目に書かれている施策は、出入国・在留手続に係る『利便性』の向上、外国人に対する生活支援や外国人が日本社会の一員として各種の『住民サービス』を享受することができるようにするための各種の支援の充実等を主眼とするもので、施策の中に『地域住民と外国人の共生』という言葉は出てくるが、『文化』に触れたところは全くない。こういう内容の施策を『多文化共生』という定義のあいまいな言葉でくくるのはいかがなものかと思う」旨、発言し、官房長から、「有識者ヒアリングの中で用いられた学者の言葉をそのまま使ったものであるが、とりまとめを行っている内閣官房に、委員御指摘の趣旨を伝えたい」旨の説明があった。葛西委員より、「自分の考えに基づいて正確な言葉を用いるべきである。『消費者の目線に立った生活経済事犯への対応の強化』というのもあるが、『目線』という言葉も迎合的に聞こえる。また、『治安再生』という用語もあるが、これでは今の日本の治安は崩壊しているということになってしまうのではないか。世界的に見れば、我が国の現在の治安情勢も決して悪いわけではない。より完璧性を期するとか、昔より悪くなったので元に戻すという意味であるなら、例えば、『治安の回復』というような別の用語にしたほうがよいのではないか」旨、発言し、官房長から、「平成14年に刑法犯の認知件数が285万件を超え、治安情勢は正に『崩壊』ともいうべき戦後最悪の状況に至り、昭和期の治安水準を取り戻すべく対策を講じてきた結果、ようやく刑法犯認知件数も減少して状況は大分改善してきた。しかし、刑法犯認知件数はいまだ昭和40年代の1.3から1.4倍であり、また、凶悪な事件も頻発している状況にあり、まだ『再生』途上であるという認識で今後とも一層の対策を講じていく必要があると考えている」旨、長官から、「『復活』というと、元に戻すという意味になるが、ここでは、以前は存在しなかった新たな治安かく乱要因に対処するとか、ボランティア団体の活動など犯罪対策を多角的に展開するとかいったニュアンスを込めて『再生』という言葉を用いている」旨の説明があった。

田尾委員より、「計画案に、『携帯電話の通話履歴の保存期間の延長』や『社会・経済情勢の変化に応じた有効な捜査手法の導入・活用の検討』が盛り込まれていることは評価できる。特に、通話履歴の保存期間の延長は、振り込め詐欺の捜査だけでなく、捜査全般にとって強力な武器になると思うので、実現してほしい」旨、発言し、官房長から、「計画案は、まだ関係省庁と協議中であり、成案にどのように盛り込めるか不明だが、少しずつでも前に進めるように努力したい」旨の説明があった。

委員長より、「以前、総務副大臣をしていたので携帯事業者側の事情もよくわかっている。保存期間を延長するには多額の費用を伴うことは否定できないが、先方の理解も相当深まっており、良い方向に進むと思う」旨、発言した。

(2)吉田委員より、「最近、大麻事件の検挙が相次いで報道されており、大麻が蔓延しているように思われる。飲酒運転の撲滅や振り込め詐欺の撲滅と同様に、大麻についても官民一体となったキャンペーンができるのではないか。来年の5月には薬物の取締強化月間が設定されているが、このような月間を実施することは大切だと思う。また、先般の定例会議では、大麻を使用する行為の法規制の必要性についても議論があった。大麻の事件では、麻薬取締官が取り扱うことも多いようだが、厚生労働省に属する小規模な組織では実効に乏しいのではないか。警察として大麻の取締りについてどのように考えているか」旨、質問し、刑事企画課長から、「麻薬取締りが厚生労働省に属するのは、医薬行政との関連性に着目したものである。中央省庁再編のとき、いったんは麻薬取締りを警察に統合する案がまとまったが、最終的には現状組織という形で政治決着した」旨の説明があり、葛西委員より、「大麻については、合法にされている国もあるとのことであるが、規範意識の問題として考えると、比較的有害性の低いものとはいえ、一度規制を緩めると他にも及び薬物全体の規制に悪影響があるということか、それとも、有害性の大小にかかわらず一律に規制することが、かえって薬物に対する罪悪感を薄めてしまうことになるのか、いずれであろうか」旨、質問し、刑事企画課長から、「薬物の種類によって、検挙される者の属性に違いがあるのは事実で、大麻の場合、初犯の者が多く、覚せい剤のような常習者は少ない」旨、長官から、「警察として粛々として取締りを行うのは当然であるが、警察力の配分という観点からいえば、薬物取締りの重点がより覚せい剤にあるのではないかと思う」旨の説明があった。委員長より、「私の地元では、かつて、麻の栽培が盛んであった。当時は、栽培農家の人たちが、畑で知らず知らずのうちに吸引し、頭がぼうっとなるということがあったようで、そのような事情が現在のような大麻取締法の制定の背景にあるようである」旨、発言し、長官から、「大麻取締法の在り方などを含め、部内的にもう少し勉強したい」旨の説明があった。