定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成22年5月20日(木)

午前10時00分 午前11時55分

第2 出席者 中井委員長、吉田、葛西、長谷川、田尾、髙木各委員

長官、官房長、生活安全局長、刑事局長、警備局長、情報通信局長

長官官房審議官(交通局担当)、首席監察官

第3  議事の概要

  議題事項

(1)人事案件について

官房長から、人事案件について説明があり、原案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、奈良県警察の警部補及び巡査部長が、暴力団会長等と不適切な交際をした事案に関し、同県警察は、国家公安委員会の了承が得られれば、5月20日、監督責任として、地方警務官の生活安全部長を本部長注意の措置とする予定である旨、警視庁の警部補が、女性用下着を窃取しようとするなどして3月28日に現行犯逮捕された事案等に関し、同庁は、国家公安委員会の了承が得られれば、5月21日、監督責任として、地方警務官の交通部交通規制課長を警視総監注意の措置とする予定である旨の説明があり、原案どおり了承した。

(3)「警察法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等について

長官官房審議官(交通局担当)から、「高速自動車国道法及び道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する等の法律が成立した場合に、その施行に伴い必要となる関係法令の規定の整理をするものである」旨の説明があり、原案どおり決定した。

 (4)貿易担当大臣会合の開催に伴う静穏保持法に基づく外国公館等周辺地域の指定に関する協議について

警備局長から、「6月5日から6日までの間、日本APEC貿易担当大臣会合が開催される。同会合の開催に伴い、外務大臣から国家公安委員会に対し、6月5日及び6日の2日間、同会合場所である札幌コンベンションセンター周辺地域を静穏保持法に基づく地域に指定したい旨の協議があり、これに同意したい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(5)国家公安委員会への請願、意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

  報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)警察庁長官に対する開示請求の決定等について(行政機関情報公開法関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関係の開示請求に対する決定について報告があった。

(3)平成21年度における取調べ適正化規則の施行状況等について

官房長から、平成21年度における取調べ適正化規則の施行状況及び同年度において全国警察に対して行った実地点検・指導の結果について報告があった。

髙木委員より、「この件に関連して、捜査の適正化ということについて、被疑者段階から国選弁護人を付ける制度が始まっていると思うが、実際に、被疑者段階で国選の弁護士を求める者に対応している率はどのくらいあるのか。また、警察として、当該制度について教示しているのか」旨の発言があり、官房長から、「その件については、現場においても、弁解録取書の作成段階から教示を徹底させている」旨の説明があり、刑事局長から、「弁解録取書の様式自体に、定型文として印刷されており、弁解録取書を作成する段階で間違いなく告知されるシステムになっている。国選弁護人を付けるために必要な条件もあり、これも合わせて説明することを徹底させている。委員お尋ねの率については、あらためて御報告する」旨の説明があった。

 (4)北海道警察における公文書一部非開示決定処分取消請求訴訟の第一審判決について

官房長から、5月19日に言い渡された北海道警察における公文書一部非開示決定処分取消請求訴訟の第一審判決について報告があった。

 (5)「社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくり事業」の実施結果について 

官房長から、「社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくり事業」の実施結果について報告があり、葛西委員より、「どうしてこの事業を警察がやるのか」旨の発言があり、官房長から、「被害者に身近な所にいるのが警察であること、そして、被害者のことや命の大切さを考えてもらうことが、犯罪の抑止や地域での防犯意識の醸成に役立つという理念の下、当該モデル事業を試行したところ、各県に非常に好評であったので、全国で行うことにしたものである」旨の説明があり、長官から、「題名が、なぜ警察がやる仕事なのかとの誤解を与えているのかもしれない。これは、犯罪を起こす者は、得てして規範意識が低下しているものなので、被害者や遺族の生の声を聞くことによって、特に若い人たちの規範意識を高め、犯罪を抑止しようとする事業で、短期的に治安回復に効果が出るというよりも、中長期的に見て、規範意識を向上させ、治安回復につなげるための施策である」旨の説明があった。

田尾委員より、「被害者支援に関して、本年のモデル事業として被害者の二次被害防止等のための施策として、愛知県で、病院に性犯罪被害に遭われた方の心のケアを担当してくれる方を配置し、女性警察官を関与させるワンストップセンターの運営を実験的に行うことになっていたと思うが、現在、どういう状況であるのか」旨の発言があり、官房長から、「最も重要なのは、この性犯罪被害者対応拠点モデル事業に協力してくれる病院があるかどうかということで、これについては調整が終わり、そこに常駐する支援員についても選定したところ。そして、女性警察官も在駐させることとしているほか、当該病院は警察署のすぐそばだとのことなので、病院から連絡が来たら急行するということも実施しようとしている。一方で、関係者の都合で、夕方までで終了しなければならないという問題があり、これについては、先日、委員長からも御示唆を頂いて、愛知県警察に対しては時間について何とかならないかということを伝えている。例えば仕事が終わってからセンターを訪れる人もいるわけであるから、今後工夫していかなければならない。また、民間の支援員の方は家庭の主婦であったりするなどで、なかなか時間の調整がしにくいところもあるようである。ただ、そのような場合でも警察官と医師は対応できるので、少し不完全な形ではあるかもしれないが、ある程度夜間でもできるのではないかと思っている。現在、最終的な調整を行っている」旨の説明があり、田尾委員より「捜査という面からいうと、この施策に検察も関与させるべきではないのか。現実に裁判では、警察の調書ではなく、検察官の調書が出る場合が多い。そういう観点からは、検察も合わせて関与させるような仕組みの方がより良いと思うし、あるいは、証拠の取得方法として、録画を取り入れるなどして法廷では証言しなくて済むような、そういう仕組みも含めて考えていった方が良いのではないか。そういう点では、韓国で行っている、被害者への調べなどが一度で終わる『ワンストップサービス』の制度は、非常に進んでいるとの印象を受けるので、参考になると思う」旨の発言があり、官房長から「日本の場合、現時点では検察は入っていない。おそらく韓国は、犯罪捜査権そのものが警察にはないので、制度上、検察が最初から絡んだということになるのだと思う。我々の施策の場合は、初動の場面、被害者との最初の接触の場面を念頭に置いて行っているので、その場面で検察官が現場にいるというのは考えにくい。ただし、日本の制度上、どうしても検察官の所へ行ってもらわなければならない場面が出てくるのは事実であるため、被害者に対する調べは一度では済まないと思う。少し工夫させていただきたい」旨の説明があり、委員長より、「朝9時から夕方5時まで在駐してくれるのは良いことだが、事件の届けや発生はやはり夜だろうから、夜に在駐していただけるように工夫してほしいと申し上げているところである。被害者の二次被害の軽減のため、夜間でも対応できる施策を是非スタートさせたいと考えている」旨の発言があった。

(6)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(2)で説明のあった、奈良県警察の警部補及び巡査部長が、暴力団会長等と不適切な交際をした事案に関し、同県警察は、5月20日、両名を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、当時の上司6名を本部長訓戒等の措置とする予定である旨、警視庁の警部補が、女性用下着を窃取しようとするなどして3月28日に現行犯逮捕された事案等に関し、同庁は、5月21日、同警部補を懲戒免職処分とする予定である旨及び広島県警察の警部補による特別公務員暴行陵虐事案に関し、同県警察は、5月20日、同警部補を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、上司2名を本部長訓戒等の措置とする予定である旨の報告があった。

(7)日本証券業協会における暴力団排除の取組みと警察からの情報提供について

刑事局長から、日本証券業協会における暴力団排除の取組みと警察からの情報提供について報告があった。

(8)第2回日本APEC準備会議の開催について

警備局長から、5月13日、第2回日本APEC準備会議が開催された旨の報告があり、長官官房審議官(交通局担当)から、同会合において、「日本APEC開催に伴う交通対策」が決定されたこと等について報告があった。

(9)天皇皇后両陛下の第61回全国植樹祭御臨場等(神奈川県・静岡県)に伴う警衛警備について

警備局長から、「天皇皇后両陛下は、5月22日から5月24日までの間、第61回全国植樹祭御臨場等のため、神奈川県及び静岡県へ行幸啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を実施する」旨の報告があった。

10)皇太子殿下の第21回全国「みどりの愛護」のつどい御臨席等(兵庫県)に伴う警衛警備について

警備局長から、「皇太子殿下は、5月22日から5月24日までの間、第21回全国「みどりの愛護」のつどい御臨席等のため、兵庫県へ行啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を実施する」旨の報告があった。

3 その他

(1)警備局長から、口蹄疫の発生状況等に関する警察の対策の実施状況について報告があり、髙木委員より、「口蹄疫対策に関しては、牛にワクチンを投与するなどのことが報道で大きく取り上げられているが、どのような病気であるのか」旨の発言があり、警備局長から、「口蹄疫は、牛のように蹄が偶数個ある動物がかかる病気で、症状としては、水疱のようなものが口内に広がって、食事ができなくなる。そのために肉がやせてしまうので、その肉を人間が食べても害はないものの、売り物にはならなくなるとのことである。口蹄疫は、感染力が非常に強く、治療薬もない病気であるとのことで、基本的に、感染地域の家畜は全て殺処分することになっているが、そうした家畜の処分場所、埋め場所が間に合わないことから、ワクチンを投与してこれ以上の感染、病気の進行を抑えつつ、順次処分していこうということに決まった」旨の説明があった。

(2)委員長より、「御案内のとおり、吉田委員は、近く御退任となるので、吉田委員から挨拶をお願い致したい。」旨の発言があり、吉田委員より、「5年前に時の小泉純一郎首相から任命され、以来、今日まで5人の首相、8人の国家公安委員長、同じく8人の国家公安委員の謦咳に接することができ、それぞれ大変勉強になった。退任に当たり申し上げたいことは3点ある。1点目は、日本の警察を5年間、自分なりの目で見てきたが、この間、日本警察は、もう十分にプライドと自信を持っていいレベルに達したと思う。およそ10年前、国民の強い批判を浴びた経験を、うまく活かしたと思っている。実績においても、規律の良さについても、少なくともOECDレベルの国の中では、日本の治安は、トップクラスと言っていい状態にあると思う。しかしながら、全体的に何となく自信がない、弱腰な部分があると思うので、き然とすべき所ではもっと堂々としていてほしいと思う。2点目は、相変わらず不祥事が後を絶たないのが、大変残念である。先週、京都に出張した際、京都の学生防犯ボランティアの諸君と会うことができたが、その中で、『就職するときは警官になりたい』と言う男子学生、女子学生が何人かいた。彼らの目の輝きを見ていると、地域社会と警察がもっと交流し、親和性を高めることによって、現職の警察官たちも自分の使命感というものをもう一回思い出すかもしれないと思った。今は、処分を厳しく行うなど、圧力をかける不祥事対策になっているが、圧力以外の方法も駆使して不祥事の一掃に向けて、キャンペーン的かつ総合的に取り組んでいただきたいと思う。3点目は、最初の4年間、警察の中立性についてはあまり意識しないでやってきたが、政権交代があったことからいろいろ考えることがあった。もし警察が特定政党の御用達機関になってしまったら、警察というのは国民の信頼を一気に失ってしまう、やはり、中立性を維持することが非常に大事だと思った。結果、中井委員長が就任されたが、適正に警察が活動できるように努力していただいており、率直に評価いたしたいと思っている。私としても、この5年間の様々な経験が私の財産になったように思う。本当に皆様ありがとうございました」旨の発言があり、委員長より、「御退任に当たり、代表して御礼を申し上げたいと思う。吉田先生におかれては、5年間、御精勤をいただき、日本中の公安委員会、また、時には海外にもお出かけをいただき、様々な御調整や、御調査にも御苦労をいただき、感謝申し上げる。同時にマスコミ御出身らしく、国民というところに目線を置かれ、そして、独特のユーモアをもって、公安委員会で我々を御指導・御鞭撻をいただいたことは、誠に有意義なことであったと考えている。この5年間の御経験を、今後御健筆をふるうことを通じて、公安委員会というものの業務や警察の仕事に対する国民の理解を、一層広げるために活かしていただけるよう、お願いをも申し上げる次第である。5年間、大変温かい目で警察というものを御覧いただき、そして御指導いただいたことに心から感謝を申し上げ、これからも一層お元気での御活躍をお祈りして御挨拶としたい。ありがとうございました」旨の発言があった。