定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成22年10月14日(木)

午前10時00分 午前11時40分

第2 出席者 長谷川、田尾、髙木、山本各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、

情報通信局長

長官官房審議官(警備局担当)、首席監察官

第3  議事の概要

  議題事項

(1)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「青森県青森警察署における被留置者逃走事案に関し、警察庁長官は、監督責任により、青森警察署長を懲戒手続に付する必要があると認め、本日、国家公安委員会に規律違反の申立てを行う」旨の説明があり、その結果、国家公安委員会において懲戒審査会に審査を要求する旨を決定した。

(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

  報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」について

官房長から、「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」について報告があった。

(3)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「大阪府警察の警部補が、平成21年9月、警察署留置施設内で、女性被留置者と情交関係をもったとして、9月29日に通常逮捕された事案に関し、同府警察は、10月19日、同警部補を懲戒免職処分とする予定である」旨、「神奈川県警察の巡査部長が、同僚から現金等を窃取しようとしたとして、8月23日に通常逮捕された事案等に関し、同県警察は、10月15日、同巡査部長を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、上司を本部長注意の措置とする予定である」旨及び「山口県警察の巡査長が、児童買春したとして、9月9日に通常逮捕された事案に関し、同県警察は、10月14日、同巡査長を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、警察署長を本部長注意の措置とする予定である」旨の報告があった。

田尾委員より、「大阪の件について、この者は留置の担当者ではないのか」旨の発言があり、首席監察官から、「この者は当該署の留置係長である」旨の説明があった。

(4)痴漢事犯対策について

生活安全局長から、痴漢事犯対策に関し、インターネットによる意識調査の概要、被疑者の意識調査の概要、首都圏における取締り強化期間の実施結果及び今後の取組みについて報告があった。

(5)「万引き防止官民合同会議」の開催について

生活安全局長から、「警察、関係機関、業界団体、ボランティア団体等が一体となった官民総ぐるみの万引き防止対策を全国的に展開していくため、『万引き防止官民合同会議』を開催することとした」旨の報告があった。

田尾委員より、「この調査によれば、高齢者が万引きを行う件数が最近多くなっており、それらの者は必ずしも所持金がないわけでもなく、困窮してはいなさそうだということであり、さらに『孤独』ということが、主な動機として挙げられているところであるが、『孤独と万引き』には、どのような関係性があると分析しているのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「被疑者に関する調査は、これまで、北海道と警視庁で実施されているが、4人に1人が動機について、『孤独だった』と答えている。独居高齢者が多いと思われるが、孤独がなぜ万引きに手を染める動機となるのか、両者のつながりについてはよく分からない。ただ、やはり、家族や地域の住民、周辺の人々とのつながりがあって、支え合う人間関係が安定していれば、犯罪に手を染めずに済むといったことは言えるのではないかと思う。最近、各地で、ボランティアも参加しながら、独居高齢者あるいは高齢者だけの世帯に出向いて、週に1度10分程度話し相手になるといった取組みが始まっている。独居高齢者等は、情報の途絶や孤立化している場合も多いので、防犯情報等を届けることができるほか、孤独感・疎外感もいやされるということである。また、高齢の被疑者については、検挙時に数千円、数万円が財布にあったとしても、それを使ってしまうと後はもう補填が効かないということもあり得るので、更に掘り下げて調べると、経済的な理由が万引きの動機として出てくる可能性はある」旨の説明があった。

(6)第43回全国少年補導職員等研修会の開催及び皇太子殿下の御接見について

生活安全局長から、「10月19日から21日までの間、第43回全国少年補導職員等研修会を開催する。研修参加者は、10月21日、東宮御所において皇太子殿下の御接見を賜る予定である」旨の報告があった。

(7)第9次交通安全基本計画の中間案について

交通局長から、平成23年度から27年度までの5か年を計画期間とする第9次交通安全基本計画の中間案について報告があった。

長谷川委員より、「第9次交通安全基本計画においては、24時間交通事故死者数を3,000人以下にするという目標を定めるとのことであり、さらに政府は平成30年までに死者数を2,500人以下とすることを目標とするとのことであるが、その根拠は何か」旨の発言があり、交通局長より、「第8次交通安全基本計画においては、『5,500人以下』という目標を掲げていたが、期間中にこの目標を達成した。このため、当時の政府が次の目標を定めようとした際に、まず『世界一安全な道路交通環境を作ろう』ということがあり、そのために、平成30年を目途に現行抑止目標の5,500人の半減に当たる2,500人以下としたものである。平成30年を目途に2,500人以下とするためには、次期交通安全基本計画終了年度には3,000人以下とする必要がある。具体的な根拠については、内閣府が、長期のトレンド分析を行い、減勢傾向から見た数字として、『3,000人』と導き出している。また、個別政策では、例えば、『信号機の設置によりこの程度減ってきた』というような計算ができる」旨の説明があり、長谷川委員より、「この件に限らず、政府目標を定めるためには、どういう根拠で何を目標にすると達成が可能なのか、あるいは逆に非常に困難なことなのか、という合理的な理由を、多少なりとも見えるようにして欲しいと思う」旨の発言があった。

(8)食料安全保障担当大臣会合の開催に伴う警備について

長官官房審議官(警備局担当)から、「10月16日から17日までの間、新潟県新潟市において2010年APEC食料安全保障担当大臣会合が開催される。これに伴い、所要の警備を実施する」旨の報告があった。

(9)平成22年度原子力総合防災訓練について

長官官房審議官(警備局担当)から、「原子力災害対策特別措置法に基づき、10月20日及び21日、静岡県御前崎市に所在する中部電力株式会社浜岡原子力発電所において実施される原子力総合防災訓練に、警察庁も参加し、情報収集訓練、職員の派遣訓練等を実施する。また、静岡県警察においても、交通規制や住民の避難誘導訓練等を実施する予定である。今後とも、このような訓練を通じて、原子力災害発生時に迅速かつ的確に対応できるよう努めて参りたい」旨の報告があった。

3 その他

(1)田尾委員より、「先般、取調べ中の言動に関し告訴された大阪府警の事案について、取調べの状況が、その音声とともに報道されていたが、誰もがこれはちょっとひどいのではないかとの印象を持っている。本件は一過性のものと見るべきではなく、警察活動の信頼性に様々な影響を及ぼす事案であると思う。被疑者の取調べについては、その適正化のために制定した国家公安委員会規則を昨年の4月から施行するなどして、第一線に対し、様々な指導・教養を実施してきたところであるが、現実には、真に実効性ある教養として受け止められていなかったのではないかと危惧している。本件に関する警察庁としての受け止め方はどのようなものであるのか」旨の発言があり、刑事局長から、「今回の件については、大阪府警に対し、この事案の全貌を明らかにすべしという指示を出し、詳細を調査しているところであるが、現在、警察の組織を挙げて取調べの在り方について考え、適正化を図っているという状況に対する認識が欠けていたと言わざるを得ない。指導・教養や捜査指揮の問題もあるだろうと考えており、警察庁としては、今後とも基本方針を厳しく指導・徹底してまいる所存である」旨の説明があった。

 山本委員より、「先週、盛岡において開催された日本弁護士連合会の人権擁護大会に出席して来たところである。そこでの報告においては、いわゆる自白を求める捜査の過程の問題性というものが浮き彫りにされていた。このような中で、大阪の事案のようなものを一般の人が見たときに、やはり、取調べの可視化を何らかの形で実施していくとの方向に行かざるを得ない、と思うのではないかとの印象を持ったところである。仮に、取調べの可視化が実現される場合には、警察ではどのような捜査手法をどのように使っていくのか、特に、被疑者に対し真実の供述を求めるに当たり、どの範囲の追及ならば許されるのかということについて、是非研究し、適正な方向にいくようにしていただきたい。また、可視化の実現の過程においても、本当の悪人をどんどん逃がしてしまうことにならないよう、捜査現場での実態を十分に意識した形での対応をしていただきたい」旨の発言があり、長官から、「委員御指摘のとおり、大阪の事案は、取調べの在り方について、国民の関心が高まっている中、警察の取調べに対する信頼という意味において、絶対にあってはならないことである。第一線に対する指導・教養をさらに徹底してまいりたい」旨の説明があり、長谷川委員より、「人間は一生懸命に仕事をしていると、そのような状況にある自分を客観的に見るというメタ思考が消えてしまうことが多いので、全体の中で自分が何をしているのか、いつも自分を自分で見つめる、俯瞰する目を持つように誰かが喚起してあげないといけない」旨の発言があり、長官から、「その役割は、幹部が行わなければならない。幹部が捜査員に対してときどきリマインドしないといけないと思う」旨の説明があった。

 髙木委員より、「国選弁護人を依頼する対象が拡大したところであるが、その結果、例えば弁護士が被疑者に対して行う助言等によって、第一線での捜査が困難になっているといったことはあるのか」旨の発言があり、刑事局長から、「弁護士の活動が捜査の進捗に及ぼす影響に関して明確なデータはないが、事実として被疑者が取調べに対して否認あるいは黙秘するというケースが最近増加しており、殺人等の捜査本部を設置して捜査する、いわゆる重大凶悪事件について見ると、否認が非常に増えている。その背景として、弁護人の防御がより早い段階から始まるなど、弁護方針が影響しているケースが多いと思われるが、捜査にとっては非常に大きな、乗り越えていかなければいけない壁になりつつあると考えている」旨の説明があり、髙木委員より、「捜査と弁護の関係については、様々な議論が行われてきたところであり、例えば、捜査側と弁護側での捜査段階におけるルールを作るといっても、大変難しい問題のあるところだと思う。いずれにせよ、可視化の問題も含め、泥臭い議論が行われないと、捜査に大きな影響があるだろうと思う」旨の発言があり、刑事局長から、「警察庁の調査によれば、可視化を実現している国の捜査構造においては、取調べの比重は、概して日本よりも相当に小さい。そうした国々には、被疑者の取調べをほとんどせず、また取調べをしても否認することが大変多い国や、被疑事実を認める場合でも、司法取引により認めていくというケースが非常に多い国がある。また、これらの国々では、取調べで真実を明らかにしていくということがそれほど期待されていない反面、DNAの採取、通信傍受、司法取引、おとり捜査的な手法といった、現在の我が国では制限されている手法を相当に駆使して捜査を行っているという構造のところがほとんどである。この調査結果を受けて日本はどうするのかということについては、捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会で議論していただいている。被疑者の供述を得にくくなっているという現実は直視しなければならないと認識しており、それを前提に、日本においても、諸外国の捜査手法について研究していく必要があると思う」旨の説明があった。