定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成24年4月26日(木)

午前10時00分 午前11時40分


第2 出席者 松原委員長、長谷川、田尾、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
警備局長、情報通信局長

首席監察官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「5月11日付け地方警務官1名の人事案件について
発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(2)入管法等改正法の施行に伴う内閣府令等の改正案に係る意見の募集
について

官房長から、入管法等改正法の施行に伴う内閣府令等の改正案に係
る意見の募集について説明があり、原案どおり決定した。

(3)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「広島県警察の警部補が、酒気帯び運転をしたと
して、4月8日に現行犯逮捕された事案等に関し、同県警察は、国家
公安委員会の了承が得られれば、4月26日、監督責任として、地方
警務官の警察署長を本部長注意の措置とする予定である」旨の説明が
あり、原案どおり了承した。

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を
要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、内容を
一部修正の上、その内容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)警察庁長官に対する異議申立てに係る決定について(行政機関情報
公開法関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関係
の異議申立てに係る決定について報告があった。

(3)平成23年中における地方警務官に係る株取引等報告書及び所得等
報告書について

官房長から、「国家公務員倫理法の規定に基づき、地方警務官から
平成23年中における株取引等報告書及び所得等報告書が国家公安委
員会に対して提出され、これを国家公安委員会委員長が受理し、その
写しを国家公務員倫理審査会へ送付することとしている」旨の報告が
あった。

(4)平成23年度第4四半期監察の実施状況について

首席監察官から、警察庁等が都道府県警察等に対して行った平成2
3年度第4四半期における監察の実施状況について報告があった。
 前田委員より、「暴力団排除に係る取組の推進状況については、全
国で暴力団排除条例が制定され、暴力団排除に向けた体制が出来上が
ったわけであるが、実際の取組はこれからであると思う。警察が前面
に出て暴力団を排除していくという姿勢をはっきり示すことができた
が、現場の意識としては必ずしもまだそうなっていないのではないか
と思う。暴力団は全国に均等にいるわけではなく、都市部で多く認知
しているわけであるから、全県一律ではなくそのようなところを重点
的に監察を行えばよいのではないか。基本的な捜査資料の管理状況等
についてであれば一律に監察を行うことでよいと思うが、暴力団排除
への取組については、重点的に特別な監察をしばらく行わないと動く
ようには恐らくならないと思う。また、暴力団情報の部外への提供に
ついては、是非適切に提供してもらいたいが、提供できないケースも
あると思われるので、できない場合は、できない理由と当該情報をき
ちんと保管管理し、あとで分からなくなるようなことのないようにし
てもらいたい」旨の発言があり、首席監察官から、「今回の監察にお
いても、警察署を選んで行っているが、基本的には御指摘のように、
例えば、繁華街を抱えていたり、管内に暴力団の事務所が多く所在す
るような暴力団情勢の厳しい警察署を重点的に選定している。引き続
き、暴力団排除に係る取組の推進状況については、それぞれの都道府
県警察で随時に監察を行っていくこととしており、御趣旨を徹底する
よう努めてまいりたい」旨の説明があった。

(5)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「静岡県警察の警視らが、部下職員らが窃盗や詐
欺等を犯したことを認知しながら、敢えて捜査を行わず、犯人を隠避
した事案に関し、同県警察は、4月26日、同警視らを懲戒免職処分
等とする予定である。また、警察庁は、監督責任が認められる前静岡
県警察本部長について、所属省庁に対し措置依頼する」旨の報告があ
った。
 長官から、「警察改革以降、不祥事の隠蔽は絶対にあってはならな
いということを強く指導してきているが、このように組織的に署長が
隠蔽するという事案は、恐らく警察改革以降初めてではないかと思う。
これまで繰り返し繰り返し強く指導してきたところであるし、今、不
祥事の隠蔽のような事案が発生することは、警察に対する信頼を非常
に揺るがすことになり、絶対にあってはならないものである。この事
案は非常に重く受け止めて、今後このようなことが絶対にないように
厳しく指導してまいりたい。この署長は監察部門の勤務経験者であり、
このようなことをやってはいけないということを一番知っていなけれ
ばいけない者であり、そのような意味からも衝撃を受けている」旨の
説明があった。
 長谷川委員より、「以前も話したが、上の人がおかしいことをして
いるときに、下の人はどうすればいいか。この部下たちも進言はした
のか」旨の発言があり、首席監察官から、「副署長が3件目の事案の
ときに、『本部の監察に通報しなくてよいのか』と署長に進言したと
いうことはある」旨の説明があり、長谷川委員より、「結局、誰かが
気づいても上の人の意向どおりになってしまったということが、これ
までも結構繰り返されているように思う。上の人が何かよくないこと
をしていて、下の人はそれに気づき、場合によっては進言しているに
もかかわらず、結局自浄作用が働くこととならなかった。警察はピラ
ミッド型の統制組織であり、普通は上の人の言うことを聞いてもらわ
ないと困る組織であるので、そのような関係が非常に強いのかもしれ
ないが、下の人が正しいことを考えて進言したときに、きちんと自浄
作用が働くような、強い上下関係を超えて何かできるということをも
っと推進しなければならないのではないか。不祥事に関与した者の誰
かが気づいているというケースはこれまでも繰り返し出ていると思う
ので、しっかり考えてもらいたい」旨の発言があり、長官から、「こ
のようなことは隠せないということを分かっていない。この副署長が
本気でおかしいと思ったのであれば、誰かに相談し、その人が監察に
通報するなど、そのようなケースはこれまでもかなりあるが、この事
案では全くそのような対応はとられていない。やはり意識が甘いと思
う」旨の説明があった。
 山本委員より、「以前、地方視察に行った際、警察本部長から、目
安箱のようなものを設けているという報告を受けたことがあるが、そ
のような試みは全国的に多いのか、それともかなり少ないのか」旨の
発言があり、首席監察官から、「目安箱や監察110番など県によっ
て様々な呼び方をしているが、組織の中で、上司から変な指示をされ
たり、同僚が変なことをしているときなどに、匿名でも通報ができる
仕組みは、ほとんどの県にある」旨の説明があった。
 首席監察官から、1(3)で説明のあった広島県警察の警部補によ
る酒気帯び運転等事案に関し、「広島県警察は、4月26日、同警部
補を懲戒免職処分とする予定である」旨の報告があった。

(6)繁華街・歓楽街を再生するための総合対策の推進について

生活安全局長から、「繁華街・歓楽街を再生するための総合対策を
商工会、地域住民、自治体等と連携協働して継続推進する」旨の報告
があった。

(7)知能犯罪に関する告訴・告発の受理・処理状況等について

刑事局長から、知能犯罪に関する告訴・告発の受理・処理状況等に
ついて報告があった。
 山本委員より、「知能犯罪に関する告訴・告発の受理・処理状況の
概要を踏まえると、被害がなかなか無くならずに発生している犯罪を
防いでいくということについて、既に警察に与えられている手法、手
段だけでは防ぎきれないと思わざるを得ないようなものもあるのでは
ないか。そのような犯罪に対しては、やはり新しい捜査の手段という
ものを具体的に提案していくということが警察においても必要なので
はないかと感じる。被害が起きているものについて、本当に封じるた
めの手立てがもっとないのか、このような情報が得られれば対応する
ことができるのではないかといったことを是非考えてもらいたい。大
きな被害を受けた人がたくさんいるにもかかわらず、結果としてそれ
が放置されていると言ってもいいような実態があるのではないかと思
うが、それは国として全力を挙げても状況を改善できないということ
はないのではないか。そういう点からみると努力が足りないと言われ
ても仕方がない。警察は自分から、『こういうことをやらせてくれ』
ということには謙抑的であると感じている。それは、戦前の警察に対
する批判といったことを念頭に置けばやむを得ない面もあるのかもし
れないが、現実に被害が起きていることを考えれば、やはり考え方を
変えて、被害を本当に防止、予防することができるように工夫し、そ
のために法的な手当が必要なのであれば、提案していくということに
是非取り組んでもらいたい」旨の発言があり、刑事局長から、「知能
犯罪の告訴・告発だけをとっても多種多様であり、中には、告訴を受
けながら他に被害者がどんどん増えるというような現在進行形の事案
もある。そこをいかに柔軟に、実質的に見極めて、受理した順番で処
理するということではなく、そのようなものを最優先で捜査するとい
ったことは従来から指導はしているが、現実はなかなかそのようにな
っていないところもある。やはりそういうことではないということを
しっかりと認識させ、まさに被害者の目線から見た告訴捜査というこ
とを、これからもしっかり指導していかなければならないと考えてい
る」旨、次長から、「例えば、昔の豊田商事事件など、今でも似たよ
うな話はあるが、以前に比べ、会社が存続していても警察は果敢に捜
索に入るなどの捜査を進めるようになっている。しかし、それでも時
間がかかるのは事実であり、一つには権限についても問題はあろうか
と思うが、もう一つは、それぞれの業種に監督官庁があることから、
行政の方の活動も促しながら連携して被害の拡大を防いでいくことが
重要であると思っている」旨の説明があった。

(8)福岡県及びその周辺における暴力団対策について

刑事局長から、福岡県及びその周辺における暴力団対策について報
告があった。
 長谷川委員より、「以前、暴力団対策に関して、『暴力団対策は、
進化生物学でいう捕食者と被食者の関係のように、進化的・軍拡競争
的になるだろう。その場合、どちらが勝つかというと、切羽詰まって
いる方が勝つことになる』という話をしたことがあったが、結局、暴
力団対策は軍拡競争のようになってきたのではないかと思う。同じ方
法で攻撃をする、それを防御するということを続けていくと、双方と
も非常にコストがかかるだけで効果がなくなるところまで行きつく。
そこで何が起こるかというと、どちらかが全く違うやり方に戦略を変
え、従来どおりのようなコストのかけ方では通用しなくなり、新たな
局面になる。今は暴力団対策として、暴力団がかけるコストに対して
更にコストをかけて防御していかなければならないが、もう少し長い
目で見たときに、全く違う方法で対策をとるには何がよいかというこ
とを考え、戦略を変えることを考えた方がよいと思う」旨の発言があ
り、刑事局長から、「そのような従来のやり方と違う方法の大きな一
つが、今回の暴対法改正に盛り込まれた内容であると思っており、是
非とも早期に成立させていただきたいと思っている。戦略を変えると
いう点では、まさにその手法であると思う」旨の説明があった。

(9)京都府内で発生した小学生等多数が被害者となる交通事故について

交通局長から、4月23日に京都府で発生した死者2名、重軽傷者
8名の交通事故について、交通事故の概要、捜査状況、今後の対策に
ついて報告があった。また、警察署員が被害者の個人情報を被疑者の
親族に提供していた事案について報告があった。
 山本委員より、「警察が被害者の情報を加害者の親族に伝えていた
ということであるが、考えられない事態であり、どうしてそのような
ことが起きてしまったのか。全く特殊な例で、軽率な者がたまたまい
ただけであり、他にはそのようなことをする者はいないというふうに
判断してよいのかどうかが分からない。他方、このようなことが起き
ないようにするための対策とはどのようなものかということを考える
と非常に難しい。弁護士業務でも、新たに弁護士になった人の力量に
ついて、かつては弁護士として常識だったことが、こんなことも分か
っていないのだろうかというようなことも身近で起こっている。そう
いう意味では、警察だけではない、教育力の低下といったものの影響
ということを考えなくてはならないのかもしれない。ただ、先ほども
申し上げたが、新しい捜査手法や新しい情報の収集といったことを認
めてもらう必要があることを念頭におくと、そのような情報が漏れて
しまうという心配をさせるというのは、こういうことをやらせてくれ
と要望するときの障害になりかねない。その両面を是非意識して対応
してもらう必要があると思う」旨の発言があり、交通局長から、「委
員御指摘のとおりである。本来、謝罪したいから被害者の連絡先を教
えて欲しいというような要望があった場合には、一度被害者の方に連
絡を取り、了解を得た上で教示するというのが原則であり、これまで
も再三にわたり指示してきたところである。また、今回のような特に
大きな事案の場合は、被害者対策班も対応に加わっていることから、
上司や被害者対策班に相談があれば、防ぐことができたのではないか
と思われる。今後このようなことがないように、機会あるごとに指導
を徹底してまいりたい」旨、次長から、「今回情報を漏らした署員は、
まさに交通事故係の者であり、そのようなことに慣れているはずの者
がなぜこのようなことをしたのか、よく事実関係を調べて対応したい」
旨の説明があった。
 長谷川委員より、「そのようなときにどうすればよいのかというこ
とについては、マニュアル的に決まったものが何かあるにもかかわら
ず情報を漏らしたというのであれば、その署員個人だけの問題だった
のか、それともそのようなことが本当にみんなきちんと理解している
のかどうかということが問題ではないか」旨の発言があり、長官から、
「この署員はベテランであるが、被害者支援の観点からも、人間の常
識としても当然わきまえておかなければいけないことが、上司の了解
も得ずに行われていたことから、御指摘の点についても考えていかな
ければならないと思う。これから調べることにしているが、これだけ
大きな事故であり、世間が注目している事件でもあるのに、こんなに
安易に教えてしまうというのはやはり理解しがたい」旨の説明があっ
た。
 長谷川委員より、「このようなことをしていては、本当に警察の信
用は失墜し、尊敬されなくなってしまうのではないか」旨の発言があ
り、官房長から、「普通の現場ではこのようなことは起きていないと
思う。そういう意味では、我々の常識からすると全く理解しがたい」
旨、次長から、「ベテランであり、交通事故が発生すれば、相手方の
了解を得て連絡先等を教示するといった対応をこれまでも取ってきた
はずであり、今回のケースはやはりおかしいと思う。いずれにしても
しっかり調査させることとしたい」旨の説明があった。

(10)野田内閣総理大臣の米国訪問に伴う警護警備について

警備局長から、「野田内閣総理大臣は、4月29日から5月2日ま
での外遊日程で、日米首脳会談等のため、米国を訪問する予定であり、
所要の警護警備を実施する」旨の報告があった。

(11)情報セキュリティ政策会議第29回会合の開催について

情報通信局長から、情報セキュリティ政策会議第29回会合に関し、
議題となった政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準群の
改定に伴い警察の情報セキュリティポリシーの改正作業を進めること
などについて報告があった。

3 その他

(1)官房長から、国家公安委員会委員長のベトナム訪問について報告が
あった。

(2)交通局長から、4月17日に大分県別府市内で発生した大分県公安
委員会委員長の関係する交通事故について、交通事故の概要、今後の
捜査等について報告があった。

(3)警備局長から、国際テロ対策に係るデータのインターネット上への
掲出事案に関する国賠訴訟の状況について報告があった。