定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成24年7月12日(木)

午前10時00分 午後0時20分


第2 出席者 松原委員長、長谷川、田尾、髙木、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、警備局長、
情報通信局長
審議官(交通局担当)、首席監察官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、7月25日付け人事案件1名について説明があり、原
案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「鹿児島県警察の警部補が、酒気帯び運転をした
として、6月26日に現行犯逮捕された事案等に関し、同県警察は、
国家公安委員会の了承が得られれば、7月12日、監督責任として、
地方警務官の警察署長を本部長注意の措置とする予定である」旨の説
明があり、原案どおり了承した。

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を
要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内
容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)福島復興再生基本方針(案)について

官房長から、福島復興再生基本方針(案)について報告があった。

(3)第30回オリンピック競技大会参加選手・役員について

官房長から、第30回オリンピック競技大会開催における警察職員
の参加選手・役員について報告があった。

(4)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(2)で説明のあった鹿児島県警察の警部補に
よる酒気帯び運転等事案に関し、「同県警察は、7月12日、同警部
補を懲戒免職処分とする」旨、「石川県警察の巡査部長が、酒気帯び
運転をしたとして、6月29日に通常逮捕された事案等に関し、同県
警察は、7月13日、同巡査部長を懲戒免職処分とするとともに、監
督責任として、上司を本部長注意の措置とする予定である」旨、「岡
山県警察の巡査部長が、酒酔い運転をしたとして、6月15日に通常
逮捕された事案に関し、同県警察は、7月12日、同警部補を懲戒免
職処分とするとともに、監督責任として、上司を本部長注意の措置と
する予定である」旨及び「岡山県警察の警部補が、暴力団組長らと共
謀して器物損壊をしたとして、4月6日に緊急逮捕された事案等に関
し、同県警察は、7月12日、同警部補を懲戒免職処分とするととも
に、監督責任として、上司らを所属長訓戒等の措置とする予定である」
旨の報告があった。
 山本委員より、「岡山県警察の警部補が、暴力団組長らと共謀して
非違事案を起こしたということであるが、自分としては、普段接して
いる警察官の中にこのような者がいるとはとても思えない反面、暴力
団にやらせて金まで騙し取るようなことをする者が、普段は全く善良
な警察官として仕事をしているということができるのか。普段でも多
少こうしたことが窺われるということはないのか。どうしてこのよう
なことをする者が出てくるのかが分からない。非違事案の防止という
ことで、現在尽力がなされていると認識しているが、現実にこのよう
な事案が出てくると、我々の認識と違う実態があるのではないかとい
うことが懸念される」旨の発言があり、首席監察官から、「この警部
補については、主に警察署で暴力犯捜査担当の刑事として長く勤めて
いた者であるが、共犯者の暴力団組長とは、30年ほど前に業務の過
程で知り合い、それ以来、刑事と捜査協力者のような形で付き合いが
続いていたということであり、現所属に着任するまで、二人の癒着に
は気づかなかったということである」旨、官房長から、「この二人は
飲み仲間になってしまっていて、警察官としては乱れている部分があ
ったと考えられる」旨の説明があった。
 長谷川委員より、「飲酒運転の事案がこれだけ出てくるというのは、
事故を起こしたから発覚しているわけであるが、事故を起こさず発覚
していないものが実際はもっとあるということではないのか」旨の発
言があり、長官から、「そのようなケースもあり得ると思う。発覚し
た者は、『どうせばれないだろうと思った』などと供述している」旨
の説明があり、長谷川委員より、「飲んだら絶対運転してはいけない
ということを、もっと徹底しなければならない」旨の発言があった。

(5)平成24年上半期の刑法犯認知・検挙状況と今後の犯罪抑止対策に
ついて【暫定値】

生活安全局長から、平成24年上半期の刑法犯認知・検挙状況と今
後の犯罪抑止対策について報告があった。

(6)サイバー犯罪に対する警察と民間事業者の共同対処の推進について

生活安全局長から、「サイバー犯罪の認知、捜査、再発防止等にお
ける警察と民間事業者の連携強化を図る「サイバー犯罪に対する警察
と民間事業者の共同対処」について、都道府県警察に対し「共同対処
に関する指針」を示し、全国警察において民間事業者との共同対処を
推進する」旨の報告があった。
 山本委員より、「非常にいい方向に向かっており、是非充実させて
もらいたいと思う。ただ、サイバー犯罪の発生を予防していくという
観点からみたときに、警察と民間事業者だけで行われているという点
が気になる。警察としては、犯罪に当たるか否か、当たるとすればど
のようにこれを防ぐかということに重点を置くが、サイバー空間の組
立てに関係する省庁等にも、現状をよくみてもらうということが必要
ではないかと思う。現実にサイバー犯罪がどのように起こっているの
か、関係する民間事業者はどのような対応をしているのかといったこ
とについて、具体的に知ってもらうことは、サイバー空間の組立てに
関する政策決定にとっても意義のあることであり、警察と民間事業者
間のみの取組に止めるのはもったいないのではないか。犯罪の予防と
いうのは、警察だけがやるのではなく、関係機関等や地域社会におい
ても取り組まなければならないことである。そのように意識してもら
うためにも、連携先を広げていくことは有益であると思う」旨の発言
があり、生活安全局長から、「委員御指摘のとおりであり、そのよう
な方向で更に進めてまいりたいと思う。サイバー空間の在り方を構築
している部門というのは、いろいろなところがあり、省庁で言えば、
総務省や経済産業省、警察庁も犯罪抑止の観点から取り組んでいる。
本件のスキームについても、関係省庁、事業所管省庁へ十分な説明を
行い、実態と施策の必要性について概ね共有した上で進めているとこ
ろである。更に、一般ユーザーの方も含めて幅広く広報啓発活動を進
めてまいりたい」旨の説明があった。

(7)工藤會傘下組織組員らによる大量覚醒剤等取引事件等の検挙につい

刑事局長から、工藤會傘下組織組員らによる大量覚醒剤等取引事件
等の検挙について報告があった。

(8)オウム真理教関係警察庁指定特別手配被疑者の再逮捕について
(警視庁)

警備局長から、オウム真理教関係警察庁指定特別手配被疑者高橋克
也の再逮捕について報告があった。

3 その他

(1)生活安全局長から、滋賀県における自殺した中学2年男子に対する
いじめ事案に関し、事案の概要、滋賀県警察におけるこれまでの対応
及び今後の対応について報告があった。
 長谷川委員より、「これまで多くのいじめをめぐる事件が起こって
いるが、文部科学省においては、学校の中でのいじめ対策としてどの
ような対策を立てているのか。学校での自律的な対処というのがあり、
それを越えてしまったときに警察が対処するということになるのだと
思うが、その境界のところで学校側としてはどう判断するかというこ
とについて、文部科学省はどう考えているのか。警察だけで、警察が
どう対処すべきか考えるのではなく、学校側の対応と連携すべきだが、
その点はどうなっているのか」旨の発言があり、生活安全局長から、
「最近では、平成18年頃にいじめをめぐる事件が相次いで発生した
ことから、文部科学省から、全国の知事や教育長等に対して、警察等
の関係機関との連携も含め、いじめ対策への取組の徹底について指示
が出されているものと承知している。本件は、既に不幸にして自殺と
いう事案が発生してしまったものであるが、このような事態を防止す
ることが重要であり、そういう観点からも、警察と学校、教育委員会
との連携は積極的に図っているところである。例えば、警察署で、管
内の学校と連絡協議会を設けて情報交換等を行ったり、個別に学校と
警察署との間で、同様の枠組みを設けるなどの取組を進めてきている。
本件に関しては、どのような実態にあったのか、これから確認してま
いりたい」旨の説明があった。
 髙木委員より、「一義的には学校や教育委員会でしっかり対応され
るべきものであるので、警察としても、その点を配慮しているわけで
あるが、警察のそのような姿勢がきちんと認識されているのか」旨の
発言があり、生活安全局長から、「本件については、昨年10月に事
案が発生し、学校や教育委員会において、事実調査やアンケート調査
等が行われたということであり、警察としても、亡くなられた生徒の
保護者が相談に来られたことから、学校や教育委員会関係者等への事
情聴取を行ったと報告を受けている。ただ、個人情報等との兼ね合い
などから、学校側と詳細な情報共有というところまでは至っていなか
ったのではないかと思われる」旨の説明があった。
 前田委員より、「警察としては、このような事案に対する基本スタ
ンスを決めておかなければならないのではないか。何かあったら警察
がいきなり対応するというのは介入し過ぎであろうし、学校側から求
められて警察が対応するというのは、それはそれでよいが、今回のよ
うな事案を踏まえると、基本スタンスがなければ現場も対応に困るの
ではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「基本的なスタン
スとしては、いじめの問題に関しては、学校の中で起こっていること
であり、いじめの防止対策、発生した場合の事実確認、調査及び再発
防止等については、一義的には、教育の場で対応されるということを
尊重すべきであると考えている。そのようなことを踏まえた上で、違
法行為、刑事責任を問うべきものがあるという場合は、警察として、
厳正に捜査や少年法に基づく調査を行うことになる」旨の説明があっ
た。
 前田委員より、「基本的なスタンスを明確にしておかないと、現場
の判断任せになる。今回の事案では、様々な報道がなされているが、
これまでに警察としてどのような対応をしてきたのか」旨の発言があ
り、生活安全局長から、「滋賀県警察の報告によれば、亡くなられた
生徒の保護者が昨年10月に相談に来られた後に、学校や教育委員会
関係者等に対していじめの実態等について聴取したという事実はある
が、それらにより犯罪事実の具体的な日時、場所、行為者等を特定す
るところまでには至らなかったとのことである」旨、長官から、「こ
れまでの保護者からの3回の相談状況や、学校側とどのようなやり取
りをしてきたのかといったことについては、まだ詳細に把握していな
いので、これからよく事実関係を調べていきたいと考えている。警察
の基本スタンスとしては、生活安全局長が申し上げたとおり、やはり
教育現場における問題でもあることから、警察が闇雲に入っていくと
いうわけにはいかないが、犯罪行為があるということであれば、被害
児童・生徒や保護者等からの申し出や学校の対応状況等を踏まえなが
ら、警察として、どのような手立てを講じるのかということは考えな
ければいけない。その場合も、いきなり捜査で対処するのかどうか、
いろいろな方法があり得ることから、具体的な事情に応じて対応方針
を考えていくことになる」旨の説明があった。
 髙木委員より、「警察に被害届の受理を拒否されたと報道されてい
るが、事実はどうなのか」旨の発言があり、長官から、「この点につ
いても現時点ではまだ詳細ははっきりしていない。滋賀県警察からは、
被害届の提出には至らなかった旨の報告があるが、当時の状況につい
てもう少しよく調べてみたいと思う」旨の説明があり、髙木委員より、
「昨年10月の事案が、今になっていろいろ出てきて報道されている。
いじめの問題に関しては、警察としては確かに被害届がなければ動き
にくいのかもしれないし、もちろんケース・バイ・ケースで判断しな
ければならないと思うが、いじめの問題が起こったときには、学校と
警察で相互に役割分担するといった物差しのようなものはできてもい
いのではないかと思う」旨の発言があった。
 田尾委員より、「長崎ストーカー殺人事件をめぐる対応のときも問
題になったが、被害届の取り扱いをどうするのかということについて
は、警察行政を行うに当たって曖昧なままになっているのではないか。
本来、被害届はどのように扱うべきなのかという基準のようなものを
決めておかないと、これからまた同じような問題が出てくると思う。
第一線としては、後に事件として成り立つかどうかという処理の点を
考えると、簡単に被害届を受理するわけにはいかないということが根
本にあるのかもしれないが、それが往々にしていろんな批判の元にな
っている。基本的には、被害届を受理したからといって必ずしも事件
として立件するという形に結びつくものではないと思うがどうなのか」
旨の発言があり、刑事局長から、「被害届があっても、事件になると
は限らないが、被害届は形式的に、構成要件的事実が記載されていれ
ば受理しなければならない」旨、官房長から、「現在、長崎ストーカ
ー殺人事件に係る事案を踏まえ、警察庁内につくった施策検討委員会
において、この問題も取り上げて検討しており、基本的には、被害届
は即時受理する、明白な虚偽や著しく合理性を欠くものを除いて、事
実がある程度特定されて、被害の訴えがあれば、これを受理するとい
うことを明確にしたいと思っている。捜査を進めていくと事実が違っ
ていたりする場合があるが、それは捜査において書類で訂正すれば良
く、そのようなスタンスにする方向で検討中である」旨の説明があっ
た。
 田尾委員より、「本件のようなケースの場合、被害届を出す方とし
ては、誰がどういう犯行を行ったか特定できないという問題がある事
案だと思うが、そこは考えるべきである」旨の発言があり、官房長か
ら、「犯罪事実が特定されない場合、即座に被害届受理というわけに
はいかないと思うが、警察としては、学校から聴取するなどの対応を
行い、事実が特定されるようになれば、被害届ということになる。本
件の場合、どのような状況であったか、まだ把握していない」旨の説
明があった。
 山本委員より、「生徒が亡くなるという結果が起きたわけであるか
ら、起きたことに対して、どのように理解し、再発を防ぐためにはど
のようなことに気をつけなければいけないのかということを、生徒達
にも考えさせなくてはならないのではないかと思う。その中で、もし
犯罪行為があるということになれば、当然、学校側から警察に対して
申告があって然るべきであるし、そのような対応がなされているとい
う前提で、噂のような話で直ちに警察が学校へ入っていくというもの
ではないというのが、これまでの皆の理解であったと思う。他方、仮
に犯罪行為があったにもかかわらず、それが表に出てこないという実
態がもしあるとすれば、警察が教育活動を慮って抑制的でなければな
らないという前提が崩れていることになる。したがって、学校の中の
自浄作用、教育効果を十分考えた対応ということがきちんと機能して
いるのかどうかということがやはり大切であるし、これまでは機能し
ているという前提で警察は動いていると思うが、今後は、その辺りに
も注意して対応していく必要があるのではないかと思う」旨の発言が
あった。

(2)刑事局長から、福岡県筑紫野市における銃器使用殺人事件の発生に
ついて報告があった。

(3)刑事局長から、神奈川県警察による教会敷地内における入管法違反
事件の取扱いに関し、事案の概要、教会関係者からの要請・抗議の内
容、及び基本的人権に留意した適切な警察活動の推進を指示する通達
の発出等について報告があった。
 前田委員より、「今回の事案を受けて、基本的人権に留意した適切
な警察活動を行うよう通達を発出するということであるが、宗教活動
を妨害した事実はあったのか。むしろ不法に立ち入ったということの
方が重要であり、それを反省すべきなのに、基本的人権の尊重の方を
指示するのはおかしいのではないか。まずは立ち入ったこと自体を反
省するべきではないのか」旨の発言があり、刑事局長から、「御指摘
のとおり、立ち入ったことは問題であったと思っている。その点を含
め、他の県警はこの事案を知らないことから、事実関係等が分かるよ
うな形でしっかりと示すことにしたい」旨の説明があった。
 前田委員より、「信教の自由を妨害するために警察が何かやったわ
けではないので、混同しないようにした方がよいと思う」旨の発言が
あり、刑事局長から、「不適正に立ち入ったことによって、立ち入っ
た施設の方々の活動を妨げる結果となったが、その施設が教会であっ
たということである。信教の自由を含む基本的人権は言うまでもなく
尊重すべきであり、警察活動もそれを踏まえて行わなければならない」
旨の説明があった。
 田尾委員より、「宗教施設に限らず、他人の敷地への立入りの問題
は、通常の警察活動において起こり得ることだと思うが、本件では、
何人も警察官がいたにもかかわらず、誰も問題だと感じずに職務執行
を行ったということであり、これではどのような教育をしているのか
ということになってしまう。このようなことはできるということと、
併せてこのようなことはやってはいけないということ、何が問題なの
かということもしっかり教えないといけないのではないか」旨の発言
があった。

(4)警備局長から、原発再稼働をめぐる抗議行動と警察措置について報
告があった。

(5)警備局長から、国際テロ対策に係るデータのインターネット上への
掲出事案に関する国賠訴訟の状況について報告があった。