定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成24年12月13日(木)

午前10時05分 午後0時20分


第2 出席者 田尾、髙木、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
警備局長、情報通信局長
首席監察官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「愛知県警察の警部補が、女性警察官に対してわ
いせつな行為をしたとして、11月25日に通常逮捕された事案等に
関し、同県警察は、国家公安委員会の了承が得られれば、12月14
日、監督責任として、地方警務官の上司を本部長注意の措置とする予
定である」旨及び「奈良県奈良警察署における留置業務不適正事案に
関し、同県警察は、国家公安委員会の了承が得られれば、12月20
日、監督責任等として、地方警務官の警察署長等を本部長注意の措置
とする予定である」旨の説明があり、原案どおり了承した。

(2)「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部
を改正する政令案」に対する意見の募集について

生活安全局長から、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関す
る法律施行令の一部を改正する政令」を定めるに当たり、行政手続法
第39条の規定に基づき政令案を一般に公表し、意見を募集するため、
募集期間、政令案の概要等について説明があり、原案どおり決定した。

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を
要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内
容を了承した。

2 報告事項

(1)警察庁長官に対する開示請求の決定について(行政機関情報公開法
関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関係
の開示請求に係る決定について報告があった。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(1)で説明のあった愛知県警察の警部補によ
る強制わいせつ等事案に関し、「愛知県警察は、12月14日、同警
部補を懲戒免職処分とする予定である」旨の報告があった。

(3)平成24年11月末現在の刑法犯認知・検挙状況と今後の犯罪抑止
対策について【暫定値】

生活安全局長から、平成24年11月末現在の刑法犯認知・検挙状
況と今後の犯罪抑止対策について報告があった。

(4)インターネットを利用した犯行予告・ウイルス供用事件に係る誤認
逮捕事案の検証結果等について

刑事局長から、インターネットを利用した犯行予告・ウイルス供用
事件に係る誤認逮捕事案の検証結果等について報告があった。

(5)取調べの高度化・適正化等に係る取組について

刑事局長から、取調べの高度化・適正化等に係る取組について報告
があった。

(6)海部郡蟹江町地内強盗殺人事件被疑者の逮捕について(愛知県警察)

刑事局長から、平成21年5月に発生した海部郡蟹江町地内強盗殺
人事件の被疑者の逮捕について報告があった。
 山本委員より、「被疑者の逮捕に至ったことはよかったと思うが、
この被疑者が、本件犯行から本年10月に他県警察において逮捕され
るまでの間、どのような在留資格が与えられ、何をしていたのか、ど
のように日常生活を送っていたのかということについても十分調べた
上で、在留行政に対して、要請すべきところがあるのかどうか、是非
検討してもらいたい」旨の発言があり、刑事局長から、「現在捜査中
である」旨の説明があった。
 山本委員より、「日本の安全・安心という観点からみた場合、この
被疑者のような非常に危険な人物が日本に来ているという印象を受け
ることから、在留行政を担当する省庁に対しても実態を伝えておいて
もらいたいと思う。このような事件が引き起こされる前に何か手は打
てなかったのかという感じがする」旨の発言があった。

(7)第46回衆議院議員総選挙の違反取締りについて

刑事局長から、第46回衆議院議員総選挙における違反取締りに関
し、これまでの検挙・警告状況について報告があった。

(8)福岡県で発生した拳銃使用による事業者襲撃事件の検挙について

刑事局長から、福岡県で発生した拳銃使用による事業者襲撃事件の
検挙について報告があった。

(9)北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射への対応について

警備局長から、北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射へ
の対応について報告があった。

(10)「原子力安全に関する福島閣僚会議」をめぐる動向と警察措置につ
いて

警備局長から、「12月15日から17日までの間、福島県郡山市
において「原子力安全に関する福島閣僚会議」が開催される予定であ
り、所要の警察措置を実施する」旨の報告があった。

3 その他

(1)生活安全局長から、神奈川県逗子市におけるストーカー事案相談対
応経緯に関し、神奈川県警察における確認状況、今後取り組むべき施
策の検討状況等について報告があった。
 長官から、「捜査書類の記載方法等をよく指導していきたい」旨の
説明があり、山本委員より、「起きたことをもとに、今後の取組を検
討していくことが重要である」旨の発言があった。
 田尾委員より、「保護観察に付する場合の特別遵守事項について、
よく実態を確認してみるべきである。また、裁判実務として、執行猶
予の取消には時間がかかるというのが実情であると思われる」旨、前
田委員より、「執行猶予が取消となり、実刑となっても、いずれ出所
することになる。あとはすべて警察の対応というのは、大変である」
旨の発言があった。
 山本委員より、「いずれにしても、関係機関とよく情報共有すべき
である」旨の発言があり、生活安全局長から、「警察、関係機関とも
その点は認識しており、現在協議を行っているところである」旨の説
明があった。

(2)官房長から、兵庫県警察の留置施設内における被留置者の死亡事案
の発生について報告があった。
 髙木委員より、「本事案について、様々な報道がされているが、T
シャツで自分の首を絞めたということであるが、そのようなやり方で
自殺することができるのか」旨の発言があり、刑事局長から、「過去
にも同様の例はあるようである。特に伸縮性の強い衣服であれば、一
度きつく締めるとそのままの状態で窒息に至るようである」旨の説明
があり、髙木委員より、「そうであれば、留置場の中で着用させる衣
服について、今後何か検討する必要があるということになるのか」旨
の発言があり、次長から、「現状では被留置者が様々な衣服を留置場
内に持ち込んでいるため、規制は難しいところである。ただ、衣服に
よる首吊りといった自殺事案が散見されることから、被留置者が着用
する衣服に関して、工夫する余地はあるのではないかと思う」旨の説
明があった。
 髙木委員より、「まだ解明しなければならない事件が多く残ってい
た被疑者であっただけに、このような結果となり残念である」旨の発
言があり、官房長から、「御指摘のとおりである。今回どこに問題が
あったのかということは徹底して調べることにしている。今回、報道
等で指摘されているのは、特別要注意者の処遇の在り方についてであ
るが、兵庫県警察では、今回は10分に1回の頻度で巡視をするとい
うものであった。警察庁からの通達や指導、各都道府県警察の規程上
では、いろいろな態様のものがあり、24時間対面監視する場合もあ
れば、テレビカメラを設置した留置室に留置して監視する場合もある。
ただ、そのような処遇をしようとするときは、他の被留置者のプライ
バシーにも関わることから、単独留置することとなる。今回の場合、
兵庫県警察では、死亡した被留置者は同房者がいた方が精神的に安定
するということを考慮して、複数留置とすると判断したようである。
そうすると、あとは、どれだけきちんと巡視をしていたのかというこ
とになるが、これまでに報告を受けている限りでは、高い頻度で巡視
が行われていたのではないかとは思われる。しかし、自ら首を絞めて
自殺を図ったのであるから、何らかの動きがあった可能性はある。た
だ、相当体を動かしたり、声を出して同房者が起きたというようなこ
とについては、現在のところ確認できていない」旨の説明があった。

(3)刑事局長から、京都府舞鶴市における女子高校生殺人等事件に係る
無罪判決について報告があった。

(4)交通局長から、12月2日に発生した中央自動車道笹子トンネル(
上り線)天井板崩落事故に伴い一部区間で通行止めを実施中のところ、
下り線を使用した対面通行による暫定開通予定及び交通安全対策につ
いて報告があった。

(5)前田委員より、「「警察改革の精神」の徹底のために実現すべき施
策の一つである警察署を中心とした都道府県警察の業務の合理化の検
討のため、警察署長の勤務実態の調査が行われているが、これに関し
て若干申し上げたい。一つは、署長としてやってもらいたい本来業務
があると思うが、現状では本来業務を実施できる環境にはないという
のが実態であると思う。本来業務ではないものに半分以上時間を費や
している状況にあり、これに本来業務を合わせると、休むなと言うの
に近い。元々の業務の効率化という観点から、本当に署長が行わなけ
ればならない業務であるのかどうかという仕分けを、是非してもらい
たい。署長が行わなくてもよいと思われる業務については、署長の業
務から外してもらいたい。もう一つは、署長は土日もほとんど出勤し
ている実態にあり、平日と比べて少ないとはいえ、かなりの勤務時間
となっているようである。もちろん警察署によってかなり程度の差は
あるのだと思うが、いずれにしても、警察庁が現状のままでいいと考
えているのでなければ、署長が休みを取れない状態を解消しなければ
ならないのではないかと思う。土日に休むことができない最大の原因
は、留置場の巡視があるからだと思うが、これは速やかに代替案をつ
くる必要があるのではないか。業務の中には見直しに時間を要するも
のもあり、個別にいろいろな工夫をしないと改善できないと思われる
が、少なくとも、土日に必ず行わなければならないとしている業務に
ついては、他の方策を検討すべきではないか。やはり、署長という現
場の責任者が、疲れ果てた状態で正常な判断を下すことは困難であり、
きちんと陣頭指揮させるためにも、まず見直しができるものから見直
しをしてもらいたい。本件について、警察庁ではどこが責任者となっ
て検討しているのか。他省庁主管の根拠規定によるものなど見直しに
中長期的な時間を要するものは別として、いつまでに見直しを行うこ
とにしているのか」旨の発言があり、官房長から、「この署長を中心
とした業務の見直しに関する検討は長官官房において行っている。見
直しの期限としては、現在、警察庁内で協議を進めており、都道府県
警察からも意見を聴いているところであるので、今年度中に行いたい
と考えている」旨の説明があった。
 前田委員より、「来年3月までかかるというのは、遅いのではない
か。やめると決めればやめればいいのではないのか」旨の発言があり、
官房長から、「署長の業務としてもっていることによって、その業務
を把握することができると言う署長もいることから、そのようなこと
も踏まえながら検討しているところである」旨の説明があり、前田委
員より、「そのような意見も分かるが、警察庁においてきちんと判断
してもらいたい。やらなければならない業務というのは、それはそれ
であって当然だが、それも量の問題であると思う」旨の発言があり、
官房長から、「できるものから段階的に見直していくという御指摘を
踏まえ、そのように進めてまいりたいと思う。また、土日の勤務実態
については御指摘のとおりであり、留置場の巡視は、署長か副署長が
必ず行うこととしているが、その際、滞留している業務を処理したり、
非番の署員を呼んで、いろいろな話を聞いて身上把握に努めたりする
機会としているという実態があるようであり、半日程度は出勤してい
ることになっていると思われる」旨の説明があった。
 前田委員より、「そのような実態になっているのであれば、やはり
早く見直しに着手しなければ、放置していてはいつまで経っても改善
されない。やはり、署長にやってもらいたい業務はあると思う。きち
んと訓示をしたり、部下の指導教養を行うといったことが、ほとんど
時間がないためにできていないということは署長も分かっているはず
である」旨の発言があり、官房長から、「基本的には、形式的に署長
が確認するというようなものについては、署長が行わなくてもよいの
ではないかと思っており、検討している。ただ、署長が署員と接する
機会は土日に出勤したときであるといった意見もあり、そのようなこ
とも考慮しなければならないのではないかと思う」旨の説明があり、
前田委員より、「マネージメントの仕方もいろいろあり、個人差もあ
るので、全て一律にする必要はないと思うが、明らかに不要と思われ
るような業務については見直さないと、いつまでも改善されない。民
間においても重要な職に就いている者は簡単に休むことはできないが、
それ以上に署長は重い仕事を担っているわけだから、もう少し負担を
軽減させる必要があると思うので、速やかに検討してもらいたい」旨
の発言があった。

(6)田尾委員より、「平成19年12月に国家公安委員会委員に就任し
て以来、5年間、皆さんとともに、警察の在り方や将来について考え
ることができたことは大変光栄に思っている。国民から信頼される警
察、あるいは国民の理解や支持、共感が得られる警察という観点から、
定例会議において意見を申し上げてきたところであるが、この5年間
を振り返ると、そこへ到達するには、非常に容易ならざるものがある
ように感じている。警察全体を評価すると、活動の面では、国民の信
頼を高めるような数々の業績を挙げていると思うが、他方、そのよう
な信頼を損ねるような不祥事も発生しているところである。要するに、
一方で信頼を築きながら、他方でこれを損ねるというような構図とな
ってしまっており、非常に残念で、一日も早くこの状況から抜け出し
て、誇れるような警察を是非つくってもらいたい。これからは一人の
市民として、警察を見守っていきたいと思う。大変お世話になったこ
とに感謝申し上げる」旨の挨拶があり、髙木委員より、「本日は委員
長が欠席のため、代わりに、委員会を代表して私から挨拶させていた
だきたい。田尾委員には、平成19年12月から5年間、国家公安委
員会委員の重責を果たしていただいたが、この間、元判事、高等裁判
所長官としての高い御見識に基づき、治安対策上の諸課題について、
様々な御指摘をいただいた。田尾委員の在任期間は、刑法犯認知件数
や交通事故死者数等は減少が続き、全般的な治安情勢は改善が進む一
方で、九州北部を中心に緊迫する暴力団情勢への対策、子どもや女性
が被害者となる犯罪への対策、増大するサイバー空間の脅威への対処、
通学路における交通安全対策、東日本大震災への対応等、様々な治安
課題に直面した期間であり、田尾委員からは警察の運営について的確
な御示唆をいただいた。また、幾つかの事案を契機として、警察にお
ける捜査の在り方が議論となったが、田尾委員からは、警察の捜査の
あるべき姿について、豊富な法律的知識に裏打ちされた貴重な御意見
・御示唆を多数いただいた。また、田尾委員は温かい人柄で警察庁の
良きアドバイザーとなるとともに、全国各地に赴き、都道府県の公安
委員との緊密な連絡、意見交換に努められたほか、各都道府県警察の
視察を通じて、職員の士気高揚にも配意していただいたところである。
これまでの田尾委員の御尽力に対し深く御礼を申し上げるとともに、
今後益々の御健勝、御活躍をお祈り申し上げる」旨の送別の言葉があ
った。