定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成28年7月14日(木)

午前10時00分 〜 午前11時45分

 

 

第2 出席者 河野委員長、長谷川、奥野、川本、北島、木村各委員

金長官、坂口次長、栗生官房長、種谷生活安全局長、

三浦刑事局長、井上交通局長、沖田警備局長、川邉情報通信局長

樹下組織犯罪対策部長

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)「平成27年度実績評価書(案)」等について

官房長から、「平成27年度実績評価書(案)」及び「平成27年度政策評価実施結果報告書(案)」について説明があり、原案どおり決定した。

北島委員より、「昨年と比較してほぼ同様と言えるが、ややパフォーマンスが下がり、各業績指標で△の評価が増えた点は気になる」旨、木村委員より、「業績目標で2つの△の評価が気になる。例えば、「政治・行政・経済の構造的不正の追及の強化」の業績目標はなぜ△と評価されたのか」旨の発言があり、官房長から、「具体的には、贈収賄、談合等の事件の検挙件数が目標に達しなかったためである」旨、長官から、「例えば、「総合的な犯罪抑止対策の推進」では、刑法犯認知件数が戦後最少だったにもかかわらず◎と評価しないなど、かなり厳しい指標を設定したために△が多くなった」旨の説明があった。

川本委員より、「検挙件数のようなアウトカム指標は、設定の仕方が難しい。昨年度から指標を実質化していたことから、厳しい評価となるため、△が増えたことはむしろよいことと思う。また、有識者による政策評価委員会については、警察業務をいろいろな方に知っていただくよい機会だと思うので、積極的に新しい方をメンバーに加えていただきたい」旨の発言があった。

奥野委員より、「警察の業務は、元々評価が難しいとの側面があるが、これまで以上に目標を高く掲げ、しっかりと精査をした上で△が増えたということは、むしろ評価制度が前進しているものと受け止めている。今回、実績評価の手法が改善されたことを評価したい」旨の発言があった。

 

(2)平成29年度警察庁予算概算要求重点項目(案)について

官房長から、平成29年度警察庁予算概算要求重点項目(案)について説明があり、原案どおり了承した。

 

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)APWGに対する海外偽サイト等の情報提供の開始について

生活安全局長から、海外サーバに開設された偽サイト等に関する情報について、7月15日から国際的な団体のAPWG(フィッシング対策ワーキンググループ)にも提供を開始することとした旨の報告があった。

 

(2)廃棄食品の横流しに係る食品衛生法違反等事件の検挙について

生活安全局長から、廃棄物処理業者らが廃棄物として処理委託を受けたビーフカツを食品として販売していた事案について、7月12日、愛知県・岐阜県警察合同捜査本部は、食品衛生法違反(無許可食肉販売)及び詐欺罪で、廃棄物処理業者ら3名を通常逮捕した旨の報告があった。

 

(3)第24回参議院議員通常選挙の違反取締りについて

刑事局長から、第24回参議院議員通常選挙の違反取締りについて報告があった。

奥野委員より、「買収のような旧来型の違反は減少傾向にあるのか」旨の発言があり、刑事局長から、「これも先ほどの議論と同様ではあるが、検挙件数を見る限りでは少し減少傾向にあると思われる」旨の説明があった。

 

(4)偽造カード使用の窃盗(払出盗)等事件について

刑事局長から、5月15日、全国1都1府15件において、コンビニエンスストア等に設置された現金自動支払機(ATM)で、海外の銀行の顧客情報を用いて作成された偽造カードが不正使用され、約18億6千万円が引き出された事件について報告があった。

委員長より、「実質的な被害者は誰になるのか」旨の発言があり、刑事局長から、「南アフリカ共和国所在のスタンダード銀行である」旨の説明があった。

奥野委員より、「約1,700台のATMから一斉に現金を引き出すということはかなり組織的な犯行であり、被害総額が約18億6千万円と巨額であることも考えると、捜査を徹底して事案を解明する必要がある。また、日本が狙われやすい状況にあったとすれば、その点を分析して効果的な再犯防止をとれないか」旨、木村委員より、「システム的にブロックすることはできないか」の発言があり、組織犯罪対策部長から、「今回、日本が狙われた理由は判然としないが、一つにはATMでの一回当たりの引き出し限度額が他国と比べて高いことがあるのではないか。この点、いくつかの金融機関で既に引き出し限度額を引き下げるなどして対応しているものと承知している。本件は現在捜査中であるが、特殊詐欺グループの関与の度合いを含め、引き続き全容解明に向け所要の捜査を進めてまいりたい」旨の説明があった。

長谷川委員より、「1箇所で数百万円を引き出しているが、同じ場所で複数の者が引き出したのか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「1人が1箇所で複数回にわたり現金を引き出した結果、数百万円の被害額に及んだものと考えられる」旨の説明があった。

 

3 その他

(1)刑事局長から、昭和60年1月に発生し、後に被告人が有罪となった殺人事件について、本年6月30日、熊本地裁が再審開始を決定したが、7月2日、検察庁が即時抗告した旨の報告があった。

 

(2)組織犯罪対策部長から、諸外国の組織犯罪対策制度について報告があった。

委員長より、「組織犯罪対策を進めるとしたら、暴力団対策法の次はどのような法制が考えられるか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「現在の暴対法は、いわゆる暴力的要求行為の規制と、対立抗争等による市民生活に対する危険の防止という、大きくこの二つを目的にしている。このうち、特定危険指定や特定抗争指定のように非常に危険な団体に対して、より有効な規制は可能かというアプローチは、一定程度考える余地があると思うが、具体的にどのような規制がより効果的なのかは検討が必要である。また、暴対法の話ではないが、福岡県警が工藤會のトップに対して税という点からのアプローチをしたということは、これまでにない良い例だった。イタリアと同様のアプローチができるかということについては、非常に高いハードルがあると思われるが、彼らの持っている資産そのものに切り込んでいくような手法は、今後研究する価値があるのではないかと考えている」旨の説明があった。

木村委員より、「根源的には、犯罪組織は人的資源を断つことが重要だと思う。資金源の遮断も重要だが、組織における両面の資源を断つための制度を何か作ることができないか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「各国の制度は、それぞれの犯罪組織の実態を踏まえて議論されている。例えば、マフィアは殺戮の手口そのものが極めて残忍であったり、裁判官や検事をも殺害するなど、非常に危険な団体だということで、国民の理解を得てこのような法制度になっていると思われ、マフィア型結社そのものにそれだけの危険性を認めるような実態があるのだろう。暴力団についてこれと同列に、加入するだけで犯罪を構成するほどの実態を見いだすことはなかなか難しい。暴力団を壊滅するのに有効な具体的なアプローチを考えることは簡単ではないが、今後、様々な研究をして参考にしていきたい」旨の説明があり、木村委員より、「日本では、海外の組織犯罪対策法制のような取締りよりも、現在の制度を拡大しながら少しずつ対策を進める方がいいということか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「現在の暴力団対策の中でも、なかなか暴力団の実態がつかみにくくなってきている。彼らの実態をより克明に解明し、あるいは資産状態について割り出すための様々な新たな手法がないかということについては、今後も研究していく必要がある」旨、刑事局長から、「日本は、結社の自由ということについては、かなりセンシティブである。暴力団として看板を掲げている団体を直接規制する、要するに加入しただけで罪にするということが日本の社会の中で受け入れられるかという問題はあると思う」旨の説明があった。

川本委員より、「日本では暴力団を指定して管理をするという考え方で、結社への加入を処罰するという海外の考え方とは大きく異なっている。日本では、そのような体系しか制定し得ないのか」旨の発言があり、刑事局長から、「暴対法立法時に、暴力団以外の団体に適用されるのではないかという社会的な懸念があり、これを払拭するために、指定という方式で、きちっとした枠をはめて、その構成員に規制をかけるといったアプローチになった。それはそれで、これまで一定の有効性を保ってきたと思うが、今は構成員としての認定がなかなか難しくなってきているという問題もあり、この暴対法的なアプローチだけでは、将来的にも難しいのかもしれない」旨の説明があり、委員長より、「指定暴力団に指定された団体に加入したら罰を科すということはどうか」旨の発言があり、刑事局長から、「そうすると、罰則を遡及適用することはできないので、現在構成員である者については別途の措置が必要となる」旨の説明があった。

木村委員より、「全ての暴力団を網羅できないにしろ、刑事法で暴力団を犯罪化することはできないのか」旨の発言があり、官房長から、「イタリアでは、マフィアが犯罪組織として社会的な実態があり、そのように認知されていることから刑事法で犯罪化できているのではないかと思われる。日本では、犯罪目的の組織という意味での犯罪組織の特定が難しいこと、さらに、共謀罪を創設する制度案の動向も考慮すると、刑事法で暴力団を犯罪化することには、なかなか困難な面があるように思われる。むしろ日本では、捜査手法を強化することにより対処しようとしており、警察庁でもこの方向で、通信傍受の拡大や合意制度の創設等に努力してきた」旨、長官から、「現在の暴力団対策法の定義では、犯罪目的で結成された組織であることを暴力団の要件としていないため、そのように考えている限りでは、犯罪化できないと思われる。また、定義を改正しても、犯罪目的の結社であることを立証することが非常に困難である。一方、海外の捜査手法はかなり参考になるものがあるので、研究の価値はあると思う」旨の説明があった。

川本委員より、「暴力団が介入する隙をできるだけ少なくすることも必要である。例えば、倒産法制はかなり複雑なため、暴力団が介入してくる。警察庁は、他省庁と連携しながら、対症療法にとどまらず、全体感を持ってそれらの法制を検討するべきではないか」旨の発言があった。

北島委員より、「2点申し上げたい。一つ目は、一部、暴力団を犯罪化すべきとの意見もあるが、暴力団対策法により暴力団を指定した上でチェックするという方法はおおむね国民に理解されていると思うので、国全体としては現在の法制度をしっかりと運用していく方向でよいのではないかということ。二つ目は、共謀罪の創設については、国際テロ対策にも有効で、これにより捜査手法が広がることを期待できるということである。いずれにせよ、最近の刑事司法制度の改正も踏まえると、まずは運用ぶりをしっかりと見てから判断するべきと考える」旨の発言があった。