定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成29年3月9日(木)

午前10時00分 〜 午前10時55分

 

 

第2 出席者 長谷川、奥野、川本、北島、木村各委員

坂口長官、栗生次長、三浦官房長、山下生活安全局長、

井上交通局長、村田情報通信局長

中村組織犯罪対策部長、加藤外事情報部長

 

 

第3  議事の概要

 

1 議題事項

(1)銀行法施行令等の一部を改正する政令案による犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令等の一部改正について

組織犯罪対策部長から、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」の施行に伴う、仮想通貨交換業に係る業務を「特定業務」とすることなどを内容とした犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令の改正案等所要の下位法令の改正案について説明があり、原案どおり決定した

 

(2)情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係国家公安委員会規則の整備に関する規則案について

組織犯罪対策部長から、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」の施行に伴い整備される関係国家公安委員会規則案について説明があり、原案どおり決定した

 

(3)犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部改正について

組織犯罪対策部長から、簡素な顧客管理を行うことが許容される取引等に関する所要の規定の整備を行うための「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」の改正案について説明があり、原案どおり決定した。

 

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

 

(2)監察の取扱い事案について

官房長から、1月31日、岐阜県警察の警部補が酒気帯び運転等をしたとして通常逮捕された事案に関し、3月10日、同県警察は同警部補を免職処分とする予定である旨の報告があった。

 

(3)平成28年における少年非行、児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について

生活安全局長から、平成28年における少年非行、児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について報告があった。

北島委員より、「今回は、これまで個別にとりまとめていた少年非行、児童虐待、児童の性的搾取の3つのテーマを一つにまとめているが、少子高齢化が進む中、少年の問題を我々がどのように考えるべきかという観点から多角的に捉えられたという点で良かった。この中で、刑法犯少年の包括罪種別では、ほぼ全ての罪種で減少していることに注目したい。また、児童虐待、児童ポルノ事件は増加し、深刻な状況にあるので、今回報告されている対策をしっかりと進めてもらいたい。なお、先日、奥野委員と行った神奈川県警察への視察で、多数の児童が被害に遭った先般の児童ポルノ事件の検挙について説明を受けたが、インターネットホットラインセンターがよく機能していることが分かり、良かった」旨の発言があった。

木村委員より、「児童虐待については、近年、増加傾向にあることに加え、被害児童が大人になっても精神的なダメージを癒すことがなかなかできなかったり、自分の子どもを虐待したりするなど長期的な影響を及ぼすこともあり、注目すべき問題だと思う。また、近年増加した理由についての分析結果も併せて示すようにしていただきたい。さらに、現在、有識者会合で検討している危険度判断のアセスメントツール等について説明していただきたい」旨の発言があり、生活安全局長から、「通告児童の態様別では、心理的虐待が圧倒的に増えてきている。児童の面前でDVが行われたものについては、子どもに対する心理的虐待としてきちんと通告していることが全体の増加に反映されている。一方で、他の身体的虐待、性的虐待も増加しているので、委員御指摘のように、詳細な分析はしっかりしていかなければいけないと思っている。児童虐待が大きな社会的問題として取り上げられ、国民への啓発、また我々も含めて関係機関の取組が強化されたことにより、認知が増えているという点はあろうかと思う」旨の説明があり、木村委員より、「児童虐待は家庭内の問題であるために防止しにくい面があるが、その点はどのように考えているか」旨の発言があり、生活安全局長から、「予防という点では非常に難しい。児童相談所、市町村等と連携しながら啓発するとともに、深刻な状況になる前に兆候を見つけて、重篤な被害を防止していくことが重要である。児童相談所は通報電話の番号を統一するなどの機能強化をしている。我々も積極的に相談、通報するよう広報しており、さらに対応を強化してまいりたい。アセスメントツールについては、部外の有識者にも参加していただき、児童の外的な状態だけではなく、家庭環境や親の状況といった点を含む危険性の着眼点について取りまとめたものである。また、児童相談所に派遣等された警察OB等が、警察と児童相談所の間に入って非常に良い連携が行われている事例があり、それをベストプラクティスとして資料に掲載している」旨の説明があり、木村委員より、「今後、児童虐待が更に増加していくのではないかと懸念される状況にあるので、是非、強力に取り組んでいただきたい」旨の発言があった。

川本委員より、「対策に掲げられている「非行少年を生まない社会づくり」については、とても大切なことだと思う。より理解を深めるために、「少年」とは男児のみを示すイメージがあるので、女児を持つ親に対する働きかけも考慮して、広報の場では「非行少年・少女」と言い替えてはどうか」旨の発言があり、生活安全局長から、「特に、広報啓発の場などでは、御指摘を踏まえて対応したい」旨の説明があった。

奥野委員より、「刑法犯少年の検挙人員が7年連続で減少し、戦後最少を更新したとの報告を聞いて、戦後長らく続いてきた少年非行の実態も相当変わりつつあるとの印象を強くした。未だに少年同士の悲惨な事件も起きているが、全体としては、深夜に街を徘徊したりたむろしたりする少年が減少し、警察の現場でも、補導を中心とした従来の少年警察活動も様変わりしていくのではないか。特に、街頭犯罪よりも児童虐待や児童ポルノ事件等が増えており、今後、全国に配置されている少年補導員の仕事が大きく変わらざるを得ないだろう。一方、児童ポルノ事件の増加を懸念する。最近はスマートフォンを利用して知り合った者に騙されて、自撮りした画像を送信して被害に遭う少女も多い。家庭で保護者が子どもに対し、インターネットの危険性についてしっかりと教育できていないからだと思う。インターネット世界の怖さについて、学校でしっかりと教えるしかないと思うので、関係機関と連携して、インターネット利用に関する教育を見直してもらいたい」旨、北島委員より、「対策に掲げられている「情報モラル教育」とはどのような内容なのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「情報モラル教育については、学習指導要領にも書かれており、文部科学省も、実例を集めて授業用の資料を作成している。現場でどのように生かされているかはよくわからないが、警察が多様な機会を捉えて、現場の実態も踏まえながら連携するという、地道な取組が必要と考えている」旨の説明があり、奥野委員より、「警察では、交通安全教育と同様に、学校を訪問して情報モラル教育を実施しているのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「スクールサポーターが学校と連携しつつ非行防止教室等の機会に実施している。また、スマートフォンのことやコミュニティサイトのことをよく知っている大学生のサイバー防犯ボランティアが、自分の経験等に基づきながら、被害防止教室などで児童に語りかけるという効果的な取組もなされているので、これを全国に広めていきたい」旨の説明があり、木村委員より、「子どもだけではなく、親に対する教育も重要ではないか。教育委員会と連携して、防犯の問題についても、親はどういうところに気を付けるべきかについて情報を提供するなど、親の教育にも取り組むべきだと思う」旨の発言があった。

 

(4)平成28年における風俗環境の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について

生活安全局長から、平成28年における風俗環境の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について報告があった。

北島委員より、「風俗営業事犯の巧妙化、潜在化が進み、なかなか摘発が難しい状況となっているが、是非、知恵を出して頑張っていただきたい。また、コンピュータ・ネットワーク利用のわいせつ事犯の検挙が高水準で推移しているが、インターネットホットランセンターが機能しており、警察も全国共同捜査方式により全国警察を挙げて捜査しているとのことで、この分野での対策を推進してもらいたい。さらに、訪日外国人の増加や2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催も控えていることから、繁華街、歓楽街の環境浄化についてもしっかりと進めていただきたい」旨の発言があった。

 

(5)国家戦略特別区域法等改正案について

交通局長から、自動車の自動運転等の有効性の実証を行う事業活動に対する援助に関する規定を整備することなどを内容とする「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」の概要について報告があった。

川本委員より、「技術の発展のレベルに関して、国民の理解があまり正確ではないことから、国民が期待する姿と現実の自動運転とがかけ離れ、安全を確保するために必要な規制が国民からの批判の対象となるのではないかと懸念する。安全確保は非常に重要なので、規制緩和についても、運用面で対応できるものについて、ニーズをよく汲み上げて対応していただければと思う」旨、奥野委員より、「特区での自動運転実証実験については、完全な無人自動車が走るのではないかと理解している方も少なくないのではないか。実際には、運転席には人がいなくても、遠隔操作で監視する人が緊急停止するというレベルで想定されているようなので、その点については、もっと広報して誤解を生じさせないようにするべきである」旨の発言があり、交通局長から、「安全を確保しつつ、技術開発を促進する観点や御指摘の点を踏まえて、適切に対応してまいりたい」旨の説明があった。

 

3 その他

 (1)議事終了後、奥野委員より、「御案内のとおり、長谷川委員におかれては、任期満了により近く御退任になる。長谷川委員より御退任に当たっての御挨拶を賜りたい」旨の発言があり、長谷川委員より、「任期中の10年の間で世の中が急速に変わったと思う。10年前にはスマートフォンも無く、また、東日本大震災を境に災害に対する考え方も激変したように思われる。警察活動がどのように行われているかについて理解を進めていく中で、時には違和感を感じつつも意見を申し上げてきた。10年間で定例会議のメンバーも大きく変わったが、様々な方とお会いできて楽しかった。警察庁の今後の御活躍をお祈りさせていただくとともに、一層よい世の中になるよう、皆さんで努力を続けていきましょう。私も頑張りたい。本当にありがとうございました」旨の挨拶があった。

奥野委員より、「本日欠席されている委員長に代わって、一言申し上げさせていただく。長谷川委員が就任された平成19年は、刑法犯認知件数が戦後最少となるなど治安が改善しつつある一方、裁判員裁判の導入等司法制度改革への対応や、取調べを始めとする警察捜査の在り方について変革が求められていた時期でもあった。着任以来今日まで、長谷川委員におかれては、豊富な国際経験と高い御見識に基づき、多角的な視点から貴重な御指摘、御示唆をいただいた。中でも、統計データの分析に関しては、専門家としての鋭い御意見をいただいた。私は約4年間をお付き合いさせていただいたが、取調べの録音・録画の問題で、英国の参考事例を引き合いに出し、我々の視点では思いつかないようなお考えを述べられたことが強く印象に残っている。御多忙な方だったが、全国各地を視察され、各都道府県警察の公安委員や幹部とも意見交換され、特に女性警察官との対話を大切にされて、女性の士気高揚に配意していただいた。これまでの国家公安委員会の活動への御尽力に改めて感謝申し上げるとともに、今後は研究者、教育者として益々の御健勝、御活躍をお祈り申し上げる。本当にありがとうございました」旨の送辞があった。