定例委員会の開催状況
第１ 日 時 令和５年６月１日（木）
午後１時００分 ～ 午後２時４０分
場 所 国家公安委員会室
第２ 出席者 谷委員長、櫻井、横畠、宮崎、竹部、野村各委員
露木長官、緒方次長、楠官房長、山本生活安全局長、渡邊刑事局長、太刀川交通局長、原警備局長、河原サイバー警察局長、島﨑技術総括審議官
佐野審議官（犯罪被害者等施策担当）
第３ 議 事
（１）人事案件について
人事評価を実施した。
（２）第１６回犯罪被害者等施策推進会議の開催及び同会議決定案について
審議官（犯罪被害者等施策担当）から、第１６回犯罪被害者等施策推進会議の開催及び同会議決定案について説明があり、原案どおり決定するとともに、仮に、本日の定例会議後に、犯罪被害給付制度の抜本的強化に関する検討の部分において、定例会議で説明した範囲内での文言の追記がなされた場合については、委員長専決により処理し、委員にその旨通知することを決定した。
宮崎委員より、「最も被害者に近い市町村レベルにおける被害者の負担軽減のためのワンストップでの対応が重要なポイントになるが、警察庁は司令塔としてどのようなバックアップができるのか」旨の発言があり、審議官（犯罪被害者等施策担当）から、「どこで被害に遭っても同様の支援を受けられ、さらに被害者の負担を可能な限り軽減する支援を提供する、いわゆるワンストップサービスの実現は、被害者にとって非常に重要であると認識している。司令塔として、いわゆる特化条例の制定や、見舞金制度の整備を各市町村に促すとともに、被害者支援に携わる人材の育成にも取り組んでまいりたい」旨の説明があった。
委員長より、「この推進会議で政府全体の方針を決め、具体的な施策については各省庁でしっかり取り組んでいかなければならない」旨の発言があった。
横畠委員より、「司令塔機能について、実務を担う警察庁で体制を強化する、と記載されているが、具体的にどうするのか。被害者支援はもちろん重要な事項であるが、警察庁の教養厚生課は、職員の教養のまさに司令塔を担っており、最近の若い警察官の不祥事案等の状況を見ると、警察職員の教養については一層強化する必要があるのではないか」旨、櫻井委員より、「警察行政は、罰則との関係で刑事手続中心の捜査に重点が置かれてきたが、一般行政である被害者支援行政を通じて、警察庁が組織として更に成熟することを期待する」旨の説明があり、官房長から、「組織改正には、スクラップ・アンド・ビルド等、一定の制約があるが、被害者支援はもちろん、若手の育成を含めた警察職員の教養や厚生についても実質的に機能強化ができるよう、知恵を絞ってまいりたい」旨、長官から、「犯罪被害給付行政は、刑事手続と表裏一体のところもあり、警察行政の核にあるべきものと皆が思えるような組織運営をしてまいりたい」旨の説明があった。
（３）特定技能２号の対象分野追加について
刑事局長から、特定技能２号の対象分野追加について説明があり、原案どおり決定した。
横畠委員より、「特定技能制度は、外国人労働者が日本人労働者と同じように、労働者としての権利がしっかり保障されることを目指した制度であり、技能実習制度とは異なることを認識していただきたい」旨の発言があった。
（４）国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について
国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。
２ 報告事項
（１）国会の状況について
官房長から、国会の状況について報告があった。
（２）監察の取扱い事案について
滋賀県警察の巡査部長による詐欺等事案及び巡査による窃盗事案に関し、同県警察は、同巡査部長及び同巡査を免職処分とする予定である旨の報告があった。
（３）長野県中野市における銃器等使用連続殺人事件について
刑事局長及び生活安全局長から、長野県中野市における銃器等使用連続殺人事件について報告があった。
櫻井委員より、「猟銃等の所持許可に際しての調査においては、近隣住民等へ聞き取りされるが、銃の所持者が周囲の人との接触があまりない場合には、調査にも限界があり、そこが課題になってくると思う」旨、竹部委員より、「一旦猟銃等の所持許可を受けた者が、その後、生活や対人関係で変化をきたし、適格性を欠いていくような流れをどう把握するのかがポイントだと思う。個人は集団に属することで自分の弱さを補完すると同時に集団は個人の強さを束ねて目的に向かう。その中で、個人は集団によって管理されていくので、猟銃の所持者には、猟友会やクレー射撃協会等の何らかの集団に所属し、継続的に活動する義務を課すことも考えてはどうか」旨、宮崎委員より、「個人の資質や健康状態を見極めることは非常に難しいので、猟銃等を簡単に取り出せないよう公的機関で保管するなど、ハード面での対策をすべきではないか」旨、野村委員より、「前線で働く警察官やその御家族にも動揺が広がっていると思うが、警察官の装備という観点から、何か検討しているのか」旨、横畠委員より、「今回の事件では熊撃ちにも使う極めて強力な猟銃が犯行に使用されたが、このような強力な銃については、毎年猟銃の使用実績を報告させ、実績がない場合には所持許可の取消しができるようにすべきではないか。また、業務で使用する以外の強力な猟銃については、射撃場を保管場所に指定するなど、使用と保管の接着度を高め、私的な領域に銃を持ち込ませないための制度上の工夫がいるのではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「本件被疑者に対する猟銃等所持許可に際しての調査では問題はなく、周辺調査の難しさを感じている。また、猟友会等の団体への所属や猟銃の保管管理・点検の在り方などについては、関係者との議論を深め、検討させていただきたい。警察官の装備や必要な訓練等、十分ではない部分があれば、警察官の対応能力向上につなげられるよう取り組んでまいりたい」旨の説明があった。
（４）天皇皇后両陛下の岩手県行幸啓（第７３回全国植樹祭御臨場等）に伴う警衛について
警備局長から、６月３日から４日までの間、第７３回全国植樹祭御臨場等のため、天皇皇后両陛下が岩手県へ行幸啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛を実施する旨の報告があった。
（５）和歌山県和歌山市雑賀崎漁港における警護に関する報告書について
警備局長から、和歌山県和歌山市雑賀崎漁港における警護に関する報告書について報告があった。
横畠委員より、「まず、本件は、最高レベルの警護対象者である内閣総理大臣に対して爆発物が投擲され、これが爆発したというものであり、本件警護においては、警護対象者については無事退避させることができ、また、現場にいた民間人１名及び警護員１名が負傷したが軽傷にとどまったところであるが、これらは偶然の結果であり、警護対象者の直近にまで爆発物が投げ込まれることを許したことは、それ自体、警護の失敗とも言うべき深刻かつ重大な事態であると言わざるを得ない。次に、本件は、昨年７月８日に発生した安倍元総理に対する銃撃事件を契機として、新たな警護要則の制定を始めとする警護についての抜本的見直しが行われ、警察庁の関与、警護態勢等の充実、警護に関する理解と協力の確保等が図られ、警護の強化のための具体的措置が執られている中で発生したものであり、しかも、安倍元総理に対する銃撃事件においては手製の銃器が使用され、本件においてはやはり手製の爆発物が使用されており、組織的背景や必ずしも高度の専門技能を持たない、いわゆるローンオフェンダーが高い殺傷力を有する危険物を隠し持って警護対象者に近づき犯行に及ぶという、正に同様の事案が繰り返されたものであって、極めて遺憾と言うほかない。今後は、特に爆発物、銃器等の高い殺傷力を有する危険物の持ち込みを現実のものとして想定して対応することが必要である。本件のような警護対象者が選挙関係の集会等に参加する場合における警護の実施については、手荷物検査など警護に関連して主催者等において実施すべき措置があるほか、制服警察官の配置など警察による措置であっても、実態として、主催者等の理解の下で実施することが求められるものがあることから、主催者等との緊密な連携が不可欠である。本件においても主催者等との間で所要の要請や協議が行われているが、実際の警護の態勢は、主催者等による来場者の限定・識別の措置に過度に依存したものであったと言わざるを得ない。顧みて改めるべきである。今後は、主催者等には爆発物、銃器などの持ち込みの危険が現実のものであることを説明し、主催者等において実施すべき措置が実効的に行われる必要があることについて理解を得るとともに、警護について責任を負う警察として、民間人である主催者等による措置をしっかりと取り込んだ緻密な警護態勢を構築する必要がある。本報告書は、本件警護を真摯に振り返り、そこからできる限りの貴重な教訓を引き出しているものと評価することができる。警察庁には、本報告書に記載された「警護対象者及び聴衆の更なる安全確保に向けた取組」を迅速かつ確実に実施し、警護に万全を期すことを求める」旨、櫻井委員より、「主催者等との連携については、理解してもらうまでコミュニケーションをとり、応分の負担で警護計画を作ることが大切である。また、聴衆の安全確保については、一般人がいるという前提で、視野を広げて、より安全な警護、警備に当たっていただきたい。報告書の作成に当たって、警察庁と国家公安委員会との間で濃密なやり取りをしてきたが、今後も、諸課題への対応に当たっては、国家公安委員会として知恵を出しつつ、警察ともコミュニケーションを図ってまいりたい」旨、宮崎委員より、「報告書をもって事態が収束したわけではなく、さらなる次元に進めるためにも、この報告書が画餅に帰さぬよう、今後の手立てを考え、実効性を持った運用ができるよう、神経を注いでいただきたい」旨、竹部委員より、「昨年の奈良事案後の新聞に掲載されていた国松元警察庁長官のインタビューで、「守るべきものは守られなければならない」と言及されていた。警護対象者は正にこれに当てはまる対象であるが、今回の事案を受けて、聴衆を含む一般人もその対象に加わった。警護要則が改正され、警護の強化が図られているが、現場はこれからも「何か起きる」との緊張感を持ち続けてほしい」旨、野村委員より、「濃密な議論を経て、良い報告書となったと思う。早急に主催者等と連携をしていかなければならない。都道府県警察にもしっかりと指示し、連携を深めていただきたい」旨の発言があった。
委員長より、「本件については、事案発生以降、警護の状況等について詳細な報告を受けて国家公安委員会として議論を重ねてきたところ、本日の報告を受け、コメントを取りまとめた」旨の発言があり、以下、読み上げた。
令和５年４月１５日、警察が警護を実施している中、選挙応援のために和歌山市内の演説会場を訪問していた内閣総理大臣に対し、聴衆の中に紛れていた者が爆発物を投擲し、その後、当該爆発物が爆発する事案が発生したところ、内閣総理大臣に怪我はなかったが、現場にいた民間人１名及び警護員１名が負傷した。
新たな警護要則に基づき警護が行われていた中で、このような事案が発生したことは誠に遺憾という他はなく、警察庁はこの事態を深刻に受け止めなければならない。
国家公安委員会においては、当時の警護の状況について、和歌山県警察及び警察庁による事実関係の確認、警察庁によるその分析・評価、課題抽出及び解決方策の検討経過について詳細な報告を受け、議論を重ねてきた。
その結果、警護対象者の安全確保のためには、昨年発表された警護の検証・見直し報告で示された措置をより実効的に推進することが必要であると認められた。すなわち、警護環境が一段と厳しさを増す中において、警護対象者及びその関係者との連携を従来より一歩踏み込んで、より強力なものとすることで、警護について責任を負う警察として警護の実効性を高める必要がある。また、警護対象者のみならず聴衆や一般民間人に危害が及ぶリスクが増大している現実を直視し、国民の理解を得ることを通じて、要人警護及び一般民間人の安全確保も含めた総合的な警備を構築する必要があると考えられる。
警察庁には、警護要則に基づき、警護に万全を期すよう改めて求めるとともに、警護については、社会の変化や新たな脅威に的確に対応すべく、常に最新の知見を取り入れつつ、緊張感を持って不断の見直しを行っていくこと、また、警護対象者に加え、聴衆及び一般民間人の安全確保についても、特段に留意する必要があることを認識した上で、今後の総合的な警備の実施に当たることを求める。
委員長より、「警察庁においては、これを踏まえて、警護の実施に万全を期してもらいたい」旨の発言があった。