定例委員会の開催状況
第1 日 時 令和7年3月6日(木)
午前10時00分 〜 午前11時20分
場 所 国家公安委員会室
第2 出席者 宮崎、竹部、野村、横畠、秋吉各委員
楠長官、太刀川次長、森元官房長、檜垣生活安全局長、谷刑事局長、早川交通局長、筒井警備局長、逢阪サイバー警察局長、堀内技術総括審議官
第3 議 事
1 議題事項
(1)「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係国家公安委員会規則の整理に関する規則案」について
「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係国家公安委員会規則の整理に関する規則案」について説明があり、原案どおり決定した。
(2)神戸山口組の指定の確認について
刑事局長から、神戸山口組の指定の確認について説明があり、原案どおり決定した。
(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について
国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。
2 報告事項
(1)国会の状況について
官房長から、国会の状況について報告があった。
生活安全局長から、令和6年における生活経済事犯の検挙状況等について報告があった。
秋吉委員より、「利殖勧誘事犯や特定商取引等事犯は、一件当たりの被害者の数が多く、被害者自身がその被害になかなか気付きにくいという特徴があると思われるが、被害が拡大する前に早期に対策を講じられるよう消費生活センター等の関係機関と連携しているのか」旨、横畠委員より、「利殖勧誘事犯や特定商取引等事犯では、被害を受けてから警察に相談するまでに1か月以上かかっているものが多い。それだけ手口が巧妙化しているということだと思われるので、関係省庁等とも協力して、最近の犯行手口を踏まえた注意点を周知させるなど被害防止のための広報、啓発を一層進めていただきたい」旨、竹部委員より、「著作権侵害事犯の検挙事件数が減少しているが、ストリーミングや海賊版等の実態を把握しづらい面もあり、被害はかなりのものがあると思う。被害の数値化が難しい面もあるが、何らかの指標を用いて被害実態を国民に周知することが重要である。また、生成AIの商品化が進む中、生成物と著作権の関係も議論となるので、サイバー警察局と連携を深めて取り組んでいただきたい」旨、宮崎委員より、「匿名・流動型犯罪グループの実態解明や突き上げ捜査には、グループの関与が判明した悪質リフォーム業者を端緒とするのも有効だと思う。また、統計だけでは具体性に乏しいので、実例を交えて、世の中に響く、実感が湧くような報告の工夫をお願いしたい」旨、野村委員より、「統計の公表には、業務成果の報告と国民への啓発の二つの側面があるが、対前年比等の数値を前面に出しても国民には響きづらいので、公表に際しては見せ方として事例を中心とするなど、一工夫していただきたい」旨の発言があり、生活安全局長から、「消費生活センターとは常々緊密に連携して対応している。利殖勧誘事犯等は、犯人側が正規の事業を装っているため、被害に気付くのが遅れることが多いので、被害拡大防止のためにも業所管省庁と連携して対策を進めてまいりたい。著作権侵害事犯の被害は数値化が困難だが、被害実態を明らかにするための見える化を検討してまいりたい。悪質リフォーム事犯の検挙を通じて匿名・流動型犯罪グループの関与も明らかとなってくるので、関係都道府県警察で情報交換をしながら、組織犯罪対策部門とも連携してグループの全体像を明らかにしてまいりたい。また、御指摘を踏まえ、広報資料の作り方を検討してまいりたい」旨の説明があった。
(3)令和6年における犯罪収益移転防止法の施行状況等について
刑事局長から、令和6年における犯罪収益移転防止法の施行状況等について報告があった。
野村委員より、「貸金庫が脱税やマネロンの温床となっている面もあると思うが、警察庁と金融庁で対策を進めているのか」旨、横畠委員より、「多くの犯罪、特に組織的な犯罪のほとんどは金目当てで敢行されており、マネロン対策は犯罪の抑止、検挙のための有効、不可欠のツールになっている。近年、疑わしい取引の届出件数が急増しており、これは金融機関など特定事業者による協力の成果だと思われるが、他方、これを受ける警察庁の事務負担も増大しているのではないか。これまでの実績を踏まえ、届出事項の見直しを含めてAIの一層の活用を進めていただきたい」旨、秋吉委員より、「FATFの第4次対日相互審査の有効性審査結果で、4段階評価の下から2番目と評価されている項目については、何が不十分で、その改善に向けてどのように対応するのか」旨、竹部委員より、「疑わしい取引に関する情報を端緒としたり、活用したりした検挙件数が5年間で倍増しているのは、警察の取組の練度の向上と、特定事業者との連携が奏功してきている結果だと思う。また、銀行口座の悪用が大部分と言って良く、今後、口座開設時等の本人確認はマイナンバーカード(ICチップ)等により厳格化していく一方、引き続き、民間や国際的な連携強化を通して疑わしい取引を捕獲する網の目をできる限り小さくしていただきたい」旨の発言があり、刑事局長から、「貸金庫の問題については、年1回作成している犯罪収益移転危険度調査書において、そのリスクをこれまでも記載してきたが、今後公表となる危険度調査書における評価の在り方や、検討すべき点などを金融庁と協議してまいりたい。疑わしい取引に関する情報の分析については、AIを活用しているが、更なる効率化が図られるよう技術担当部門とも検討を進めてまいりたい。FATFの第4次審査で評価の低かった項目のうち、例えば、マネー・ローンダリング対策については、いわゆるマネロン罪の法定刑を引上げ、検察庁とも調整の上、全国でも取締りを強化しており、訴追されるケースも増加しているので、この点を次の第5次審査でもしっかりとアピールしたい。金融機関等の意識向上により、積極的な情報提供が推進され、警察でも情報を積極的に活用しようという意識が浸透してきているので、引き続き取組の練度を高めてまいりたい」旨の説明があった。
宮崎委員より、「統計は単に定期的に数字を示すだけでなく、社会で関心が高まっている問題に対して、統計から得られたデータをどのように活用していくかが重要である。また、適切なタイミングで社会の関心が高い事案の背景にあるデータを提示することで、国民のより深い理解を促すことができる」旨、横畠委員より、「世間の関心が高いいわゆる闇バイトや悪質ホストクラブの事案の捜査の過程で疑わしい取引の届出が役立ったというようなことがあれば、積極的に広報してもよいのではないか」旨の発言があり、刑事局長から、「御指摘を踏まえ、国民や金融機関の職員等が、疑わしい取引に関する情報の重要性を実感できるよう、アピールの仕方を引き続き考えてまいりたい」旨の説明があった。
(4)サイバー人材確保・育成方針について
サイバー警察局長から、サイバー人材確保・育成方針について報告があった。
野村委員より、「民間企業がジョブ型の雇用に移行するのに伴い、官民間の高度専門職の処遇の差がどんどん広がっていくので、キャリアパスを明確にして早急に取り組まれたい。また、将来的に技官のバックグラウンドの者もトップになれる可能性があるといったメッセージが発信できることを期待している」旨、横畠委員より、「実際の捜査に当たるサイバー人材の確保、活用は極めて重要で、キャリアパス管理を 含めてその方針を取りまとめたことは時宜を得たもの。この分野の技術は日進月歩で、また、実際の犯罪予防や対処の場面では民間の関係事業者との協力が不可欠であるので、官民の人的交流はとりわけ重要だと思われる。なお、「技術」についての知見は、政策・施策の立案や組織管理に当たる警察幹部においても必須のものであることに留意して いただきたい」旨、竹部委員より、「サイバー警察局とサイバー特別捜査部を中心として、全国都道府県警察のサイバー人材を一体化しバーチャルな組織を構成して運用していく中において、こうした組織における都道府県警察職員のキャリアパスの定義をしっかり考えておく必要がある。また、組織を機動的に動かすためには、サイバー警察局等による都道府県警察のサイバー人材の人事評価が当該人材の都道府県警察における評価に適切に反映されるシステムが必要であり、しっかりとした仕組みを構築していただきたい。その上で、5年後、10年後に向け、バーチャルの組織としてどの程度サイバー人材を増やしていくイメージを持っているのか伺いたい」旨、秋吉委員より、「一般的に、地方から警察庁に異動となる時期がいつになるかということは、人生設計において重要な事柄であり、職員の事情や希望を考慮して、長いスパンでの人生設計を組織として共に考える仕組みがあれば良いと思う」旨、宮崎委員より、「特別の専門スキルを持つサイバー人材は分野間の流動性が低いので、個々の専門性を考慮した人材活用が求められる。また、司令塔には技術的なスキルよりも、全体的な概念の理解とリテラシーに基づき、立場に応じた指導・教養が必要である。さらに、技術は急速に発展するため、司令塔には全体の動きを見て、発想を転換させながら人材を指導、育成していくことが求められる」旨の発言があり、サイバー警察局長から、「技官にも捜査部門を経験させており、サイバー分野での警察官と技官の垣根は低くなると考えており、職員の異動についても、本人の意思を確認しながら柔軟に対応してまいりたい。都道府県警察職員のキャリアパスの管理や職員の評価は、基本的には都道府県警察が実施するものと考えているが、今後相当数の増強をイメージしている国と地方の体制の在り方にもリンクするので、御指摘を踏まえつつ、警察庁の関与が見える工夫を検討してまいりたい。警察ではフォレンジックの人材に重点を置いてきたが、民間企業では専門性が細分化されていることも踏まえつつ、能動的サイバー防御を見据えた人材確保にも努めることとしたい。御指摘を踏まえ、司令塔たる幹部に、リテラシーを備え、最新の知見に基づいて指導することの重要性を周知してまいりたい」旨の説明があった。