定例委員会の開催状況
第1 日 時 令和7年3月27日(木)
午前10時00分 〜 午前11時10分
場 所 国家公安委員会室
第2 出席者 坂井委員長、宮崎、竹部、野村、横畠、秋吉各委員
楠長官、太刀川次長、森元官房長、檜垣生活安全局長、谷刑事局長、早川交通局長、筒井警備局長、逢阪サイバー警察局長、堀内技術総括審議官
松坂政策立案総括審議官
第3 議 事
1 議題事項
(1)令和7年度国家公安委員会及び警察庁における政策評価実施計画(案)について
政策立案総括審議官から、令和7年度国家公安委員会及び警察庁における政策評価実施計画(案)について説明があり、原案どおり決定した。
横畠委員より、「警察庁の政策評価において、各局ごとに評価項目を設定するだけでなく、近時、特に重要性が増大している部門横断的な取組についての評価が必要であることについては、昨年3月28日のこの委員会でも申し上げたが、今般これが明記されたことは適切だと思う。その上で、実際に部門横断的な取組の実績や成果を評価するための指標、手法等について工夫をしていただきたい」旨、宮崎委員より、「警察庁の政策評価はPDCAサイクルが明確であり、また、社会の動きに敏感に反応し、業績目標の最初の項目に「匿名・流動型犯罪グループに対する取組の推進」を設定するなど独自の工夫が盛り込まれていて先進的だと思う。体感治安やレピュテーションリスクなどの非数値要素についても、政策評価の目標としての「見える化」につなげていただきたい」旨の発言があった。
(2)国家公安委員会・警察庁新型インフルエンザ等対策行動計画等の改正について
警備局長から、国家公安委員会・警察庁新型インフルエンザ等対策行動計画等の改正について説明があり、原案どおり決定した。
秋吉委員より、「行動計画等で定められた各種措置については、今回のコロナ対応として既に作成されたものがあるのであれば、状況が安定しているうちに改正を踏まえた見直しや整備が不十分な部分に対応しておくことが重要だと思う」旨、横畠委員より、「今の時点で行動計画等を整備しておくことは重要だが、新たな計画もいざというときの実効性を担保するためには平素の訓練が必要であり、特に警察が行う「支援」の訓練は、関係機関と共同して行わなければならないと思われるが、そのような予定はあるのか」旨、竹部委員より、「コロナ禍で経験した犯罪の傾向や日本人の行動様式を踏まえ、今後起こり得る事態に対しても、決して焦らず冷静に目線を上げて対応していただきたい。警察官もエッセンシャルワーカーであるが、新種のインフルエンザワクチンが製造された段階で医療従事者と同じように優先的な接種が配慮され得るのか。また、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言時における都道府県知事から警察への協力要請は、大規模な動員を伴うようなものがあり得るのか」旨、宮崎委員より、「コロナ禍は社会に大きな衝撃を与え、生活の質だけでなく犯罪の質をも変化させ、SNSの急激な普及や新たな手口の詐欺の出現などの背景にコロナ禍を指摘する声は大きい。当時の状況を教訓として、今後も新たな犯罪の芽となり得るものに目を配り、国全体の対応を踏まえながら効果的な対策を講じていただきたい」旨の発言があり、警備局長から、「現時点において具体的な訓練を予定しているものではないが、行動計画等に基づき知事部局等とも連携して必要な訓練を行うよう全国警察を指導してまいりたい。警察官のワクチン接種については、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて必要な調整を行うこととなっている。都道府県知事からの協力要請については、警察として治安確保にしっかり対応できる態勢を維持しつつ、臨時医療施設や予防接種会場での警戒活動、患者や検体の搬送支援などへの対応を想定している。また、まん延防止等重点措置に伴い、飲食店等へ営業時間短縮が要請された場合は警察官の同行も想定されるが、いずれも大量の人員を投入することにはならないと考えている。コロナ禍を契機とした社会の変化に加え、各種技術や犯罪の質も変化していることを踏まえ、現時点での行動計画等をしっかりと運用しつつ、将来の社会情勢に想像力を働かせて対応してまいりたい」旨の説明があった。
(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について
国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。
2 報告事項
(1)国会の状況について
官房長から、国会の状況について報告があった。
(2)国家公務員総合職の中途採用の実施結果について(令和7年度採用)
官房長から、国家公務員総合職の中途採用の実施結果について報告があった。
竹部委員より、「こうした採用は継続が大事。人材を育てて組織文化に変化をもたらすことは、将来の警察庁を担う人材を育成するためにも重要である。また、国家公務員の給与水準の引上げが議論されている。そのこと自体支持するが、どこの世界においても給与水準の引上げは生産性の向上とセットでなければならない。国家公務員が国家の経営に関する成果を高レベルで生産していく環境づくりに国民や国会がコミットする必要があるが、一方、国家公務員側の基盤をなすのが人材であり、難問山積に対して迅速的確に答えを出すのに最低限必要なのが人材の多様性である。引き続き、新卒、中途、あるいは特別採用でもこうしたことを念頭に置いて進めていただきたい」旨、横畠委員より、「しっかりと人物を見極めて採用し、大切に育てていっていただきたい」旨、宮崎委員より、「文化的背景が異なる人材が入ることは組織の活性化に役立つと思う。新卒採用者とは異なる問題や悩みを抱えることもあると思うので、周囲のバックアップをお願いしたい」旨、野村委員より、「国家公務員の待遇改善に向け、官民のギャップを埋めるための給与水準の引上げの議論がある一方、民間にはジョブ型雇用が広がっており、警察においてもジョブ型専門職としての能力評価の導入が必要となっていくのではないか」旨、秋吉委員より、「多くの意欲ある人々が受験しているのであれば、今後採用人数を拡大していくことも検討してほしい」旨の発言があり、官房長から、「多様性が加わることで業務の生産性が高まることを期待している。今回は係長級1名の採用となったが、情勢を踏まえながら採用枠の拡大についても柔軟に検討してまいりたい。受験者の多くは、民間企業等で経験を積む中で社会に貢献したいという気持ちが育まれ、確固たる意志を持った人々であり、そうした思いに応えるためにも、バックアップを含めしっかりと人材育成に取り組んでまいりたい。現在、警察庁ではサイバー分野において官民人事交流を進めているところ、特殊な技能が生かされる職種を中心に様々な採用・任用形態について継続して研究してまいりたい。中途採用を継続し、今後取組が定着してくれば、意欲や適格性を備えた受験者が更に増えると思うので、人物本位の採用に柔軟に取り組んでまいりたい」旨の説明があった。
交通局長から、令和7年春の全国交通安全運動の実施について報告があった。
秋吉委員より、「状態別・年齢別の死傷者数が、歩行中は7歳、自転車乗車中は16歳がそれぞれ飛び抜けている状況を踏まえると、体験型の交通安全教育が対策として重要かつ有効だと思うので、映像やバーチャル体験などの工夫も進めていただきたい」旨の発言があり、交通局長から、「体験型の教育は、小学校に警察官が出向いて行うものが典型的であり、保護者を含め小学校の新入生に対する安全教育が大切だと考えている。また、児童に対して、車両の運転者から死角となる場所を理解させるような体験型の取組も進めてまいりたい」旨の説明があった。
3 その他
(1) 高齢者の1日のATM利用上限額の制限について
横畠委員より、「詐欺被害を防ぐため、75歳以上は一日当たりのATM利用限度額を30万円とすることを警察庁が検討しているという報道があるが、状況を説明していただきたい」旨の発言があり、刑事局長から、「昨年決定された「国民を詐欺から守るための総合対策」で、高齢者のATMでの振込・引出制限等の推進が掲げられており、これを踏まえ、関係省庁や全国銀行協会などと議論を進め検討している」旨の説明があった。
横畠委員より、「検討中とのことだが、年齢による一律の利用制限には疑問がある。度の過ぎた悪しきパターナリズムに陥るのではないか。警察として犯罪被害の防止は重要な課題であるが、あくまでも悪いのは犯罪者の方であり、たとえば、性犯罪を防止するためということで女性の服装について「指導・助言」などすれば、「余計なお世話」どころか個人の自由に対する侵害だと言われるのではないか。詐欺被害の防止は重要であるが、年齢で一律に人の日常生活上の行動を制限することは過剰な規制だと思われる。一定の年齢で区切られた「老人」をおよそ一人前の人間とは見ないという点で差別的であり、さらに、近時、銀行等の店舗が整理統合され、窓口は混雑し、その手数料も高く設定されていることから、制限対象者には実害が生じ得る。他方、先月公表された「令和6年の犯罪情勢」によれば、特に被害額が増大しているいわゆるSNS型投資・ロマンス詐欺の被害者は、40代から60代までが大宗を占めているなど、詐欺被害は年齢によるというものでもない。これらを踏まえ、金融機関が、個人顧客に対して、取引実績等の個別の事情も考慮しつつ、インターネットバンキングを含めて一日当たりの振込限度額等を縮小していることは、顧客を守るための合理的な措置として理解することができる。しかし、年齢で一律に取引を制限することは、これとは異なるのではないか。仮に、年齢でATM利用限度額を制限するのであれば、個別の申出により、一般の個人顧客に対する制限と同じ条件で利用限度額の引上げを認めるようにするとか、インターネットバンキングの取引については、年齢による一律の制限は設けないといった配慮が求められるのではないか。丁寧に検討を進めていただきたい」旨、秋吉委員より、「高齢者自ら利用上限額を決められるようにすべきではないか。制限したとしても、解除できる自由も保証する必要があり、一律の制限は問題が多いと感じる」旨、宮崎委員より、「振り込む側でなく、振り込まれる側の口座の規制強化にシフトすべきではないか」旨の発言があり、刑事局長から、「高齢者の方に不便を強いることになるので、丁寧に検討してまいりたい。他方、きめ細かな制度を整えることによって金融機関側も負担が増える可能性があるので、御指摘を踏まえて更に検討を進めてまいりたい」旨の説明があった。
(2) 末尾「0110」の電話番号からの詐欺電話について
宮崎委員より、「最近、末尾「0110」の電話番号で、特に警視庁新宿警察署の電話番号を偽装した詐欺電話が多く発生していると聞くが、警察に対する信頼に関わるので、厳正に対処していただきたい」旨の発言があった。