定例委員会の開催状況
第1 日 時 令和7年5月22日(木)
午前10時00分 〜 午前11時25分
場 所 国家公安委員会室
第2 出席者 坂井委員長、宮崎、竹部、野村、横畠、秋吉各委員
楠長官、太刀川次長、森元官房長、檜垣生活安全局長、谷刑事局長、早川交通局長、筒井警備局長、逢阪サイバー警察局長、飯濱技術総括審議官
小笠原審議官(国際担当)
中村生活経済対策管理官
第3 議 事
1 議題事項
(1)人事案件について
人事評価を実施した。
(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について
国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。
2 報告事項
(1)国会の状況について
官房長から、国会の状況について報告があった。
次長及び審議官(国際担当)から、第9回日越治安当局次官級協議の開催結果について報告があった。
宮崎委員より、「国際関係を深化させるために個人のつながりは欠かすことのできないものなので、構築した関係を大切にしてもらいたい。ベトナムも犯罪に厳しい国内感情を持つ国であるので、一部のベトナム人が日本で罪を犯していることがベトナム国内の一般市民にも正確に伝わるよう、日本からの情報発信の仕方に工夫が必要だと思う」旨、竹部委員より、「日本に居住する外国人をどのように日本社会に統合していくかということが大きな政策課題となる中で、犯罪の検挙活動と犯罪に起因する問題の根本的な解決といった両面から取り組む必要がある。後者については、特にベトナム側における技能実習生等の悪質な送り出し機関やブローカーの取締りが重要であり、また、日本でも外国人を受け入れる以上、教育や日本語学習のシステムをしっかり整え、社会統合につなげていかなければならない。ベトナム政府との連携推進をお願いする。ところで、日本国内で犯罪を敢行した犯罪グループのベトナム人の首魁がベトナム国内で逮捕された場合、その後の身柄の手続はどうなるのか」旨の発言があり、次長から、「日本で罪を犯したベトナム人に指示を出していた首魁がベトナム国内にいる場合は、日本とベトナムは犯罪人引渡しに関する条約を結んでいないので、自国民不引渡しの原則にのっとり、基本的に日本からの要請に基づいてベトナムの国内法を適用して同国内で代理処罰されることになると思われる。今後も継続して行われる両国間のハイレベルや実務者間の協議等において、いただいた御意見を反映してまいりたい」旨の説明があった。
(3)匿名・流動型犯罪グループ対策に係る体制の強化について
刑事局長から、匿名・流動型犯罪グループ対策に係る体制の強化について報告があった。
横畠委員より、「匿名・流動型犯罪の特質として、使い捨ての末端実行者からの突き上げ捜査は、いわば最も守りの堅いところを攻めるわけで、大きな困難を伴うものであることから、この度の強化された体制による警察組織を挙げての「インテリジェンス捜査」に期待したい。この種の犯罪は金銭目的で行われており、その収益は種々の隠蔽手段を講じつつも組織の中枢幹部の管理下に入り、さらに、風俗営業その他の事業資金として運用されるなど、様々な経済活動に環流しているというのが実態であると思われ、こうした資金の流れを順方向、逆方向の双方から解明することは、組織全体の解明、中枢幹部の特定、検挙につながる有力な手段となる。警察庁を中核、司令塔として広く情報を収集し、これを的確に分析する態勢を確立するとともに、国内外の関係機関との連携を更に強化し、マネロン規制をはじめあらゆる法令を駆使してその実態を解明し、これを突破口として組織の解体を進めていただきたい」旨、竹部委員より、「この取組で匿名・流動型犯罪グループの首謀者の動きを止めることができれば効果は絶大だと思うが、犯罪のビジネスモデルが有効なままだと別のグループが当該モデルを利用してしまうので、政府が一体となってこうしたモデルを無効化する取組が必要である。暴力団と異なり実態を伴わない勢力の制御には困難が伴うが、首魁への資金の流れを断つことが一番効果的であり、このモデルは使えないと思わせる手立てを構築できるかがポイントとなる」旨、野村委員より、「警察の本気度が伝わる踏み込んだ体制構築であり期待している。警察組織が中長期的に変容を迫られている中でのプロセスの第一歩だと思うが、首都圏に捜査員を拠出する道府県警察の反応について伺いたい」旨、宮崎委員より、「仮装身分捜査等の新たな捜査手法を活用していくことになるだろうが、整理された法的根拠の下で、捜査員を含め捜査そのものが適正に行われるよう、適宜検証しつつ進めていく必要がある」旨、秋吉委員より、「期待される取組だからこそ成果を出さなければならないという思いが強くなるだろうが、成果を焦る気持ちは時に行き過ぎた捜査につながりかねないので、幹部がしっかりと捜査員をグリップしていただきたい」旨の発言があり、刑事局長から、「御指摘のとおり、資金の流れは組織解明の重要なポイントとなる。あらゆる法令を活用して取締りを進めつつ、関連省庁等に協力を仰いだり、外国機関との情報交換を積極的に進めたりするなどして組織の解明に努めてまいりたい。また、これまでは、道府県警察が首都圏の犯罪グループの主要メンバーに対する捜査を展開したくても体制や地理的、時間的な問題に直面してきたこともあり、全国警察として首都圏に人員を拠出して捜査を進めることへの意欲や理解は相当深まっている」旨、長官から、「御指摘のとおり、今回の取組の背景には、匿名・流動型犯罪グループのビジネスモデルを根本的に壊滅しなければならないという問題意識がある。先の犯罪対策閣僚会議で決定された「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」の検討においては、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺、インターネットの不正送金に係る犯罪グループの一連の行為とそれぞれの各段階において所管省庁が講ずるべき対策を対比させて「見える化」を図ったが、今後、警察の取締りを通じて犯罪グループの新たな手口等が明らかになった場合には、所管省庁に情報共有し、制度の穴を埋めるよう検討を促すなど、社会全体として対策を進めてまいりたい」旨の説明があった。
(4)天皇皇后両陛下の埼玉県行幸啓(第75回全国植樹祭御臨場等)に伴う警衛について
警備局長から、5月24日から25日までの間、第75回全国植樹祭御臨場等のため、天皇皇后両陛下が埼玉県へ行幸啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛を実施する旨の報告があった。
(5)「サイバー対処能力強化法案及び同整備法案」の成立について
サイバー警察局長から、サイバー対処能力強化法及び同整備法の成立について報告があった。
横畠委員より、「国家公安委員会が、改正後の自衛隊法第81条の3第1項に規定された自衛隊による通信防護措置に係る要請又は同意をするについては、警察のみでは十分な措置を執ることが困難であるということを確認するということでよいか。また、参議院内閣委員会の附帯決議においても言及されているように、国家公安委員会は、改正後の警察官職務執行法第6条の2の規定による無害化措置について、これが適正に実施されるよう警察庁を「管理」することが求められている。もとより個別の措置について適否を判断するということは委員会の役割ではないが、無害化措置の適正な実施を担保するための手続をはじめ無害化措置の実施に係る原則や基本的な基準といったものを国家公安委員会規則として定めておくということは考えられるのではないか。具体的な措置について公表することが難しい分野における警察活動に対する国民の信頼を確保することにもつながると思われるので、検討をお願いしたい」旨、秋吉委員より、「サイバー攻撃の予測が難しいと言われる中で、警察官職務執行法第6条の2の要件の該当性に係る判断は困難を伴うと思う。国家公安委員会による厳格な監督を担保するため、例えば事前の兆候や要件に該当するための条件を整理し、類型化したり、チャート図にしたりして明確にしておくことも一案ではないか。自衛隊法第81条の3では、国家公安委員会が関与すべき場面として、自衛隊による通信防護措置に係る要請又は同意をする場面と、内閣総理大臣があらかじめ防衛大臣と国家公安委員会との間で協議させた上で通信防護措置をとるべき旨を命じる場面があるが、防衛大臣と国家公安委員会の協議の前提となる事項や内容、判断の基準となるべき事項等について、よく検討していただきたい。また、シミュレーションを実施するなど、事前の準備を整えておく必要性もあると思う」旨の発言があり、サイバー警察局長から、「自衛隊による通信防護措置に際しては、警察のみでは対処が困難又は時間を要するため、自衛隊が対処に加わる特別の必要があるかについて国家公安委員会は判断することとなる。アクセス・無害化措置に係る事後通知の具体的な方法を定めることとなる国家公安委員会規則については、御指摘を踏まえ、国家公安委員会の管理の下、アクセス・無害化措置が適正に行われること、公表すべき事項はしっかり公表するということを踏まえつつ、しっかり検討してまいりたい。また、個々の具体的な事案ごとに状況が異なるため、あらかじめチャート等で整理することは難しいかもしれないが、例えば既に仕込まれたマルウェアと指令サーバとの間で通信が行われている場合は、攻撃者の意図次第でいつでも攻撃が行われ得る典型的な事例である。防衛大臣との協議については、今後、防衛省と詳細を詰めていくところ、事前に準備すべき資料や決裁の手順等についてはシミュレーションを実施するなどして、委員の方々に事案が発生した際にどう対応するのかイメージを持っていただけるよう努めるとともに、様々なサイバー事案に係る説明等を通じてサイバーに関する理解を更に深めていただけるよう努めてまいりたい」旨の説明があった。
3 その他
(1)外免切替制度について
宮崎委員より、「外免切替制度で免許を取得した外国人による交通事故が最近続いて発生しているが、文化や習慣、考え方が異なる外国人に日本の環境・ルールに適応してもらうことが大事であり、スピード感を持った対応が必要だと思う」旨の発言があり、交通局長から、「外免切替制度については、交通ルールに関する知識・技能の確認や住所の確認が論点となっているところであり、前者については内容の充実化と審査の厳格化に向けた検討を行っている。また、後者については観光で滞在する外国人の外免切替を認めない方向とすることや、確認手続の厳格化も検討している。関係省庁とも連携し、外国人の方々にしっかりと日本の交通ルールを守ってもらえるよう取組を進めてまいりたい」旨の説明があった。
(2)議事終了後、5月26日をもって任期満了となる横畠委員より、「本日は、来週26日の任期満了を前に最後の定例会出席になりました。委員長及び委員各位並びに警察庁の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。また、様々な機会に都道府県警察及び各公安委員会の皆様をはじめ官民の関係の方々から現下の諸課題や対応などについてお話を伺うことができたことはとても有意義でした。この場をお借りして御礼申し上げます。「個人の権利と自由の保護」及び「公共の安全と秩序の維持」という警察の役割は、国民が安心して安全に暮らすことができる社会の基盤を成す最重要インフラです。近時の警察を取り巻く環境には大変厳しいものがあるといわざるを得ませんが、警察でしかできないことはもとよりしっかりと、警察だけではできないことは関係機関や民間と連携して着実に実施し、引き続き国民の期待と信頼に応えていっていただくようお願いいたします」旨の挨拶があり、委員長より、送辞があった。