中野国家公安委員会委員長就任記者会見要旨

1 日時 平成23年1月14日(金)23:04~23:33

2 場所 警察庁第一会議室

3 概要  今般、国家公安委員長、公務員制度改革担当大臣、拉致問題担当大臣を仰せつかりました中野寛成でございます。急遽、任命をされた感がありまして、少々戸惑っている部分もありますが、しかし、極めて重大な問題を抱えた三部門でございますから、それぞれに誠意を持って渾身の力を込めて、その解決、またいずれも努力をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

      特にこの三点においては、先ほども官邸における会見でも申し上げましたが、まず国家公安委員長としては、菅総理からの指示につきましては、国民の安全を確保すること、そのために治安の回復に全力で取り組んでもらいたい。また、先般来、問題になっております機密情報の漏えい事案、これを踏まえて再発防止策を講じるようにということでございます。これについても鋭意、研究会等、また捜査を含めて努力をしているところでございますし、残念ながら警察からの漏えいが想定される蓋然性が否定できないという状況でございますので、真剣な捜査を行っているということでありますので、これを督励してまいりたいと思います。

また、警察は国民の人権・生命・財産を守るための実力行使の機関でもあります。しかし、実力行使というのは、その使い方を間違いますと諸刃の刃のように、より深刻な、人権を守るための行為が権力によって人権を侵害するという結果を生みかねないという諸刃の刃の立場にあります。よって、間違いは許されない。よって、全国の職員が襟を正して、緊張感を持って今後の治安に当たっていただくということを強く求めたいと思っております。

また、総理の指示の二番目ですが、公務員の天下りを根絶し公務員が真の国民の奉仕者として働きがいを持って、その能力を存分に発揮するという体制をつくっていかなければなりません。公務員の、特に国家公務員の労働基本権に関する措置、この公務員の労働基本権というのは、これは今、正に研究を重ねているところでありますが、古くは現行憲法が制定されましたときの憲法議会において既に、この公務員の労働基本権をどこまで認めるか、どこまで保障をするかということは、当時から大きな議論になったテーマであったと聞いております。その後、日本も社会が安定をし、そして民主主義が成熟をし、公務員制度も進んでまいりました。その中で、しかし時代にそぐわないシステム、時代にそぐわない制度というものがあるとすれば、それはいつまでも温存をしていることではなくて、これを勇気を持って改革をしていく。それは、公務員サイドからすれば、権利と義務の在り方について、権利も拡大をするけれども義務もそれに見合った負担が生じるということも含めて、権利・義務の関係の在り方、そして機構の上では人事院の存在も、将来はこれをなくしていく。そして、実質的な労働基本権をその中で確立をしていく。このような改革を進めていくことは、大変、歴史的にも微妙な問題もはらんでおりますから、これはあらゆる学識経験者を始め、多くの皆さんの意見も聴取をしながら、世論をまとめていく、意見をまとめていく、その努力が必要であろうと思っております。慎重に、かつ、しかし大胆にこの問題には取り組んでまいりたいと思います。

拉致の問題でありますが、国の責任において拉致の問題は、当然解決をしなければなりません。言うまでもなく、国家主権の侵害であると同時に、被害者の皆さん、御家族の皆さんにとっては、正に憤りを抑えきれない。また、やるせない人権侵害であるわけでありますから、ありとあらゆる方途を講じなければなりませんが、しかし相手は正に独裁国家であり、日本とは政治体制が極端に異なる国でもあります。これを相手にして、開かれた民主国家である日本が、世論を背景にしながら、あらゆることを重ねていかなければいけませんけれども、しかし、なかなかにもって御しがたい相手であることは否定ができません。これは単に、日本だけではなくて、国際世論により一層訴えるとともに、特にアメリカや韓国等とも協力をし、また中国等の理解も得、国連機関等を通じて今後とも懸命の努力を重ねていく。制裁措置等も、日本だけではもう限界に、やり得ることは全部やっているというぐらいにいろんなことをやっていると思いますが、これは国際社会の協力があることによって、より一層効果を上げることができると思っておりますので、そういう努力を重ねていきたいと思います。以上、まずは私なりの決意を申し上げた次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。

問  大臣、この度は御就任おめでとうございます。二点、お伺いしたいと思います。まず一点目は、今、警察において取調べの可視化というものが大変大きな議論になっておりまして、捜査当局からは取調べの可視化については弊害があるという指摘もあるんですけれども、これについて大臣、この後どういうふうに進めていくべきだとお考えなのかというのが一点目です。二点目は、犯罪死を見逃さないために死因究明の在り方について議論がなされておりますが、警察庁以外にも他の省庁も絡む問題も含んでいるんですけれども、これについて大臣どのように進めていこうとお考えなのか、その二点についてお伺いします。

答  可視化の問題については、大変微妙な問題をはらんでいると思います。私自身、個人的には建設的というか前向きに取り組んでいきたいと思っておりますが、これ一人警察だけの問題だけでは止まりませんで、これは検察も同じような立場にあると思います。また、一方よく識者が指摘をいたしますように、可視化は部分可視化であれば、都合の良いところだけを可視化して都合の悪いところは隠すということも起こり得て、むしろそのことによる弊害というものが憂慮されるという指摘をする人もおります。そういう意味では、やるとすれば全面可視化ということのほうが多くの国民の皆さんには納得をされやすいことかと思います。

しかし、捜査をするほうからすれば、言うならば諸外国でも、その可視化を進めているところにおいても、その捜査のやり方について、別の権限の枠の拡大、例えばおとり捜査の問題など、そのような捜査の在り方について、いろんな工夫がなされているわけでありますから、それらを総合的にメリットとリスクのバランスをとる。そして、リスクを最小限度にし、メリットを拡大をしていくための検討が必要だと思います。よって、これから検察、法務省とも連携を取りながら、その研究を進めてまいりたいと思っております。

それから、犯罪死の認定のことにつきましては、これもまた大きなテーマとなっておりますし、最近はよくテレビドラマ等でもこのことが取り上げられることが多くなっていると思います。解剖医の問題もありますし、司法解剖の能力が日本はまだまだ不十分であるという指摘もされております。これは、厚生労働省を始め他省庁との関係もございます。しかし、この犯罪死の在り方について間違いますと、それもまた亡くなった方の人権、そして、またそのことが曖昧であるがために犯人を取り逃がすことにもつながるリスク、これらのことを総合的に考えますと、やはりこれは、その能力を高めていくことは喫緊の課題だと思いますので、これらのことについては、いろいろ財政的な措置も必要でありますし、決してそれは少ない財政措置で済むものではないと思いますけれども、しかし国民の安心を守るためには、それらのことは避けて通れない大きなテーマだという認識を持っております。

問  拉致問題についてですが、元の中井大臣、柳田大臣ともに、例えば情報収集に力を入れたり、あるいは柳田大臣は御家族と役所との溝をなるべく埋めようと定期的に会合を持ったりといろいろな努力をされてきましたけれども、中野大臣におかれましては御家族との関係はどのような形で接していかれるか。あるいは、これだけは成し遂げたいという思いについてお聞かせ下さい。

答  既に御家族とお会いしたいという申し入れの手続をしております。先ほど、そのお会いしたいという申し入れのペーパーを作ってサインもしたところでございます。一時も早くお会いをしたいと思っております。中井大臣、柳田大臣がやってこられたことは大変必要なことでありますので、特に中井大臣が始めた情報収集能力を高めたことはかなり大きな成果も上げつつあると思います。ただ、拉致被害者の皆さんの帰国に、まだ成果として結び付いていないということは大変残念でありますが、しかし、それらの情報を収集することによって国際社会に対する説明能力、説得力もより一層高まって来ると思いますし、相手に対する反撃力も高まっていくことだと思いますので、これらのことは、より一層、継承・発展をさせていきたいと思います。また、御家族の皆さんのお気持ちは、私も二人の娘、ちょうど横田めぐみさんと似たような世代の娘がおりまして、人の子の親として本当に憤りを禁じ得ませんし、またやるせない気持ちが大変募っております。何とか御家族の皆さんとも少しでも、より一層御家族の皆さんのお励ましに役に立つことならば何でもやりたいという気持ちを今持っております。しかし、一番は全員揃って御帰国いただくことのために諸外国の協力も得ながら、より一層相手に圧力を加えていくと、その上で対話に引き出すことが大事だと思っております。

問  朝鮮高校の授業料の無償化についてお伺いしたいんですが、前の中井大臣、柳田大臣は反対だったんですが、中野大臣はどのようにお考えでしょうか。

答  これにつきましては、特に日本の場合は先般ヨンピョン島に対する北朝鮮からの爆撃をきっかけにして、その支給作業をストップしているわけでありますが、同時にそれ以上に、やはり北朝鮮という国は、私から言わせれば、私は若い頃から「左右の独裁主義と対決する」という言い方を常にしてまいりましたが、正にその独裁国家が日本の主権を侵害し、そして拉致被害者の皆さんや御家族の皆さんの人権を無視しているわけでありますから、これらのことを総合的に勘案して、今の御質問の件は判断すべきであろうと思います。ですから、これは極めて慎重に取り組む必要があると思っております。

問  現時点では、どちらかとは言えないということでしょうか。

答  まだ、それを支給するための条件は整っていないと思っています。

問  それと、先ほどの会見で、総理からの指示書に四項目があったと仰っていましたが、先ほどは三項目しか仰っていませんが。

答  ごめんなさい。4項目、いわゆる公務員の天下り、公務員に関することなんでありますが、せっかくの御質問でありますが、お読みします。「官民人材交流及び再就職等監視の組織等の見直しに関する事務を担当させる」ということで、この天下り根絶等々に関してのことが付言されているということであります。

問 拉致問題についての質問なんですが、この1年間で担当大臣がいろいろ代わられたということがあって、特に御家族の方は今度の担当大臣がどういう方だろうと思っていると思うので、これまで確か拉致の問題に取り組まれてきたと思うんですが、これまでの拉致に対する取組みを教えて下さい。

答  私自身、この前まで4年間浪人中でありましたし、そういうこともあって必ずしも継続的にこの運動に参加をしてきたとは言えませんが、少なくともその意識において、というのはこの問題を最初に取り上げた西村真悟君にしろ、今、失踪者捜索の委員会をやっております荒木君にしろ、昔からの私どもの仲間でございますし、そもそもインドシナ半島のポルポト政権に対するインドシナ難民を救済する運動、これも独裁主義に対する人権を守ろうとする運動から始まり、私どもの昔の仲間達が始めた運動でもありますので、そういう意味でもこの問題は、その昔からの仲間である中井君や柳田君がたまたま担当した、継続した問題でありますけども、大臣が代わろうと代わるまいと、これは日本の国の責任においてやるべきことという意味で、大臣が誰であろうと、代わろうと代わるまいと、これは継続して真剣に取り組んでいかなければならないテーマだと思っておりまして、そういう意味では、今日までの活動を継承をし、より一層強化をしていくという気持ちで取り組んでいきたいと思っております。

問  暴力団対策についてお尋ねをいたします。御承知のように、今、警察は国内最大の暴力団である山口組、それを支える弘道会という組織に対して壊滅を目指して様々な取締りを行っているところであります。今年は、その山口組のトップが4月にも刑期を終えて出所をするというようなタイミングもこれありでございまして、委員長の暴力団についての思い、また対策について御所見があればお伺いしたいと思います。

問  犯罪というのは、特に個人的犯罪というのは社会の病弊が原因になっていることが多いと思います。例えば、経済的理由であるとか家庭的理由であるとか。ただ暴力団、特に組織暴力団というのは、言うならば社会的な病理現象とは別に、意図的に集団を組んで犯罪を犯す、場合によっては若者にそういう教育を加えるということも含めて、これは大変許し難い、極めて大きな犯罪組織だと言っても過言ではないと思います。そういう意味で、警察としても公安委員会としても、今年は特に、最近力を入れておりますが、今年は特にその力量が問われると言いますか決意が問われると言いますか、そういう重大な年を迎えているということではないかと思います。よって、私もそのことを意識して督励してまいりたいと思っております。

答  まず、日本の警察に対する印象、どのような印象をお持ちだったのかというのが一点と、二点目は、先ほどもありましたけれども、警察の資料の流出の問題で、問題が明らかになってから3ヶ月ぐらいが経っているんですが、未だに解決しないということについて、どのように対処していくべきか改めてお聞かせ下さい。

問  私は、今も日本の警察は世界的に見ても大変優秀な警察機構だと思っております。量はともかくとして、質については特にそうだと思います。そのことの信頼をより一層深めるとともに、その信頼に、特に国民の信頼に応え得る警察の体質というものをより一層強化していく必要があると思います。ただ、長年の組織・機構というのは、場合によって、例えば戦後の混乱期に生まれた一つの習慣、前に話題になりましたが、例えば裏金の問題であるとか、それらは、その時代、それが生まれた時代には一つの弾力的な、または人間関係をつなぐ中和剤と言いますか、そういうことから生まれた経緯があったかもしれません。しかし、今、時代とともに、そのようなことが許されない、また必要としない時代を迎えている。その時代の変化に十分注意しきれないで、惰性、またそれが慣習化してしまっているということがあれば、これはやはり厳しくお互いに戒め合わなければいけないと思います。また、最近、いろんな犯罪が多発している部分もありますが、これらについては、例えば新しい捜査技術、例えばサイバーの問題であるとかインターネット絡みの問題等は、これは正に先端技術とのイタチごっこという一面もあると思いますので、それらの質を高める、能力を高めるということも一方では必要なんだと思います。

そして、機密漏えいの問題は、これは意識の問題でもありますが、同時に機密漏えいを防ぐシステムをつくることも、これはまた心掛けなければいけないことでありますので、今、そういう検討をなされていると承知をいたしておりますけれども、それらのことも合わせた総合的努力を重ねていきたいと思います。

答  警察のメインの業務とは言い難いかもしれないんですけれども、自殺問題について内閣が重点を置いておられるのでお尋ねします。自殺対策のタスクフォースに国家公安委員長の立場で前任者の方が入っておられて大きな役割を担われていたと思うんですけれども、特に今、警察の持っている自殺統計の原票を内閣府に提供して分析をするということが新しく進みつつあると伺っております。それも含めて、自殺防止に警察のマンパワーなり能力を新たに活用できるようなことを何かお考えの部分がございましたらお願いします。

問  自殺の原因というのは、今、大変に経済的に落ち込んでいる状況の中で、経済的理由によって生まれる自殺者というのがやはり大変多いと思います。ただ、病気が原因であったり、家庭的事情があったり、または人間関係において悩みがあったり、自殺の原因というのは実に多岐にわたると思いますが、警察の持っている知識、そういうものがその中の幾つかの要因に役に立つとするならば、それは積極的に協力をすべきことではないかと思います。前任者がやってきたことは、それらについては是非継続をしたいと思いますが、併せまして経済的理由ということになれば、これは警察というよりも、より一層、経済対策や中小企業対策や税制・予算面でいろんな手段を講じて経済の活性化を図っていくことが大変重要なことだと思います。よって、警察はそういうものを原因として生まれた結果を追い続けていくところがありますけれども、その原因となる部分については、警察以外の分野にも積極的に提案をして、その自殺の要因を、社会的要因をなくす努力を、むしろ併せてやっていきたいと思います。