国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年3月18日(金)11:20~11:56

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要   本日の閣議は、官房副長官等の人事の手続や質問主意書に対する答弁書のことなど事務手続を短時間で終わりました。あとは、当然のことながら災害対策のことでございますが、閣僚懇で情報交換はありましたが、これも特に今報道されている内容にほとんど尽きていると思いますので省略をして、むしろこの機会に警察でやっておりますこと、また皆さんの御関心であろうと思われますことについて御説明、御報告を申し上げたいと思います。

まず、被災地における燃料・食料品等の輸送についてであります。災害応急対策の的確かつ円滑な実施のため、東北道、常磐道等の一部区間を緊急交通路に指定し一般車両の通行を禁止いたしております。他方で、その目的は燃料・食料品等を運搬する車に対して通行許可証である標章を交付し、特にタンクローリーへの標章交付については、既に現地の検問所で、もう一目瞭然ですので渡して貼ってあげるということなどもして迅速化に努めております。引き続いて、緊急交通路を確保しつつも被災地の生活への悪影響が最小限度に止まるように努めてまいりたいと思います。なお、より一層の交通規制解除について御要望があるところでございますが、昨日も少し申し上げましたけれども、特に東北道、常磐道の一部、かなり常磐道は傷んでおりますので全線開通はまだできておりません。東北道につきましても、白河辺りの前後を中心にして路肩が両方壊れておりますので、片道一車線を辛うじて使っているということでございます。この交通量は、ピーク時に約300台から500台が限界でありますが、既に現在432車両通過をしておりまして、この上にいろんな緊急車両等が少しでも加わりますと、もはや容量を超えてしまいます。容量を超えてしまうということは、高速道路が壊れて、物理的に全面通行止めになってしまいます。言うならば、現在、限界ギリギリのところで何とかこれを持たせながら、そして一方では国交省が徹夜でやっております突貫工事ができ上がるのを待って、迅速に道路が耐えられる能力に応じてそれを拡大していきたいと思います。もう既にピークの能力の限界にほとんど近づいております。300台から500台というところが432台ですから、もう既にその能力の限界ギリギリまできているということです。全面開放をもし行いますと、道路の更なる損壊や渋滞の危険が起こりまして、その場合には緊急通行車両も通れなくなり、被災者への物資輸送ができなくなる。原子力災害への対応に行けなくなるということを憂慮しながら、今ギリギリの線でコントロールしているところでございます。そして、今申し上げましたように高速道路の補修を待っているところでございます。今後とも、情勢の変化に的確に対応するように迅速に努力をしてまいりたいと思います。先般も、経済界の大物が何か「臨機応変にやれ」なんて言っておられましたけれども、もうそれどころの話ではない。臨機応変、それをむしろ越えたようなことをやっておりますが、これ以上やって最悪の事態を招くことはしたくないと思います。そこは是非、皆様によって御理解を賜りたいと思います。なお、緊急通行車両の交付件数は、3月17日現在で7万3,516件、これが全て利用されているとは限りませんけれども、現在、この案件であれば本当に必要だろうというものについて既に7万3,516件交付をしているということであります。ちなみに、緊急輸送関係が3万687件の41.7パーセント、施設等復旧関係が1万6,858件の22.9パーセント、救難・救助関係が1万3,051件で17.8パーセントということで、トータルは約82パーセントとなっておりまして、その他はどうしても救急を要することについてでございます。

次に交通関係ですが、残念ながら計画停電中に、自家発電で信号が点滅しているところもありますが、それができていないところは最大限、警察官を配置して手信号で交通整理をいたしておりますが、しかしそれが完璧に全部できているわけではありませんので、それができていないところで残念ながら昨日、今日の2日間で2人の死亡事故、また2人の重傷事故が起こっております。現在、警察で掌握しているこの間の交通事故は、死亡事故2件、重傷事故2件でございます。これは、必要とあれば具体的なことは交通局から御報告をさせます。

次に、昨日行われました東京電力福島第一原子力発電所における放水作業についてであります。昨日午後7時、いろいろ紆余曲折がありましたが、こういう時の手続というのは本当に迅速にやらなければいけませんけれども、やはり幾つかの反省点はあります。昨日も御質問がありましたが、本来の任務ではないわけですので、これをサポートする者が必要でありますが、それらのことについては、全てが終わってからその欠陥を整理して是正していく必要があると思います。こちらとしては、だいぶ注文もしたいところがあります。

昨日午後7時、東京電力福島第一原子力発電所3号機に向け、当初は4号機ということで行ったわけですが、結局上空から見たり、いろいろな情報を分析した中で、4号機よりも3号機のほうが緊急性が高いということで、急遽3号機に向けて機動隊員が高圧放水車によって放水を行いました。約44トンの水を放水しきりました。3号機に水は届いたものの、使用済み燃料プールに届いたかどうかは確認できませんでした。その後、現場にいた隊員から線量計のアラームが鳴ったとの報告を受け、現場指揮官の判断により作業を中断、撤収をしたものであります。44トンの水は、車に積んでいる水だけではなくて、直近にプールがありまして、それを汲み上げ連動させて、プールもかなりなくなるまでの44トンを放水しきったということです。その上に続けてやるとなると、そのプールにまた水を入れてもらわなければなりませんが、この間に向こうの事情で時間が40分とか1時間かかると、その間待機しているということもありますので、そういう総合的な判断、それから自衛隊の消防車が到着して続けてやれる体制ができたということもありますので、こちらのほうは一旦撤収をいたしました。なお、放水作業を行った警視庁機動隊が受けた放射線量については、現在精査中ではありますものの、現時点では、隊員の安全管理上特段の問題が生じているという報告はございません。今回のような大規模災害に対しては、それぞれの機関が持てる全ての力を最大限に活用して、政府の総力を挙げて対策に取り組むことが必要であるということで、本来の任務を越えて行ったということでありますが、今後も警察として何ができるのかを積極的に検討してまいりたいと思っております。

  放水の関係ですが、届いたもののプールに届いたかは確認できなかったということですが、結果的に失敗したということなのか、評価的なことは大臣はどうお考えなのでしょうか。

答  評価は、これから現地の東電なり担当のほうでされるものと思います。我々の高圧放水車でできることを精一杯やりきったということでございます。

   44トンの水が、当初の目標には当たっていたという解釈でよろしいのでしょうか。

答  御存知のように、警視庁の放水車は消防車とは違いますので、いわゆる角度の限界があります。そういうこともあって、できるだけ可能性の高い所を狙って放水をしたということでありますが、それがどこまで届いたのかの検証をするというところまでの権限と能力はこちらにはございません。自分達でできることの精一杯の努力をしたということです。

   昨日の警察庁の話でも、今後、放水車を出さないというようなことを言われておりましたけれども、その方針というのはどうでしょうか。

答  それ以上に能力を持っている自衛隊の消防車及び消防庁関係の特殊な消防車も出動をいたしておりますので、現状必要とされる作業により向いている車が到着をし始めておりますので、警察の機動隊の車がそれよりもより優れているということではない。いわゆる役割が違いますから、そういう意味で撤収をしているということであります。いわゆる代替の方途ができたということであります。

   放水のプールに届いたかという関係ですが、大臣がお聞きしているのは、一部しか届かなかったのか、十分に届かなかったとか、ニュアンス的にはどう届いたと報告を受け、どうお考えでしょうか。

答  そこまでは、私自身は検証しておりませんが、先ほども申し上げましたけれども、3号機に水は届いたけれども、使用済み燃料プールにまでは届いたかどうかということは確認をできておりません。その検証は、こちらでできる範囲ではなくて、こちらとしては要請を受けたことについて精一杯やりきりましたということまでであります。その後の、検証については然るべきところにお尋ねしていただければと思います。

   今の関連でありますけれども、今回の作戦に警察が出るということの経緯ですけれども、私共が聞いている限りでは、3月15日に東京電力から警察庁に今回の放水車を貸してくれと、翌16日に操作をする人間、即ち警察官を出してくれということだったんですが、今申し上げた経緯で正しいのかどうか、それから3月15日以前に内閣として警察の出動を検討して指示したのかどうかについて教えて下さい。

答  事の経緯につきましては、全てを詳らかにしているところではありませんけれども、警察に高圧放水車があるという判断を誰がしたのか、そこまでの検証はしていませんけれども、本来は東電がそれを使ってやりたかったのだろうと思います。そして、警察が東電の人に操縦法を訓練するということを最初に検討をしたと聞いておりますが、しかしそれが結局もう間に合わないということもあって、それでは機動隊にということで政府のほうから要請があったということであります。

   政府からの要請というのは、3月16日ですか。

答  そうですね。一昨日の朝です。

   自衛隊の消防車が間に合わないから、警察が最初に行ったということなんでしょうか。

答  まず発想として、自衛隊はヘリコプター、そして消防については、消防というのは地方自治体の消防ですから。

   自衛隊の消防車という意味ですか。

答  いえ、自衛隊の消防車というのは、発想はあとだったと思います。先日も申し上げましたが、まず強力なものを使いたいということで警視庁の放水車の12気圧が最高でありまして、他のはだいたい8気圧ですので、何とかより強力なものをと、しかしそれではもう間に合わないと、4号機対策ということで始めたけれども、3号機のほうが4号機以上に危険が高まっているわけでありますが、それらのことを考えて、そういう動員台数を増やしたものとこちらは思っております。総合判断については、私はタッチしておりません。

問  消防は地方自治体の所属であるというようなことを今仰ったんですけれども、最初の協議の段階で警察の特殊車両が出なければいけなかった理由というか、消防が見送って警察が出たという結末みたいなのがあるんですか。

答  いえ、消防が見送ったということではありません。消防にも、どの段階で要請をしたかはわかりませんけれども、それは順を追って作業を進められたと思います。ただ、警察への要請が自衛隊への要請の次に早かったということであります。

問  自衛隊の次に警察に来たということですか。

答  そうです。

問  放水の件ですけど、大臣は先ほど「警察の本来任務を超越したオペレーションであった」旨を仰いましたが、例えば警察法の中に、警察は個人の生命、財産を守るといったことがあると思いますが、そういったことも含めて、これは警察の本来任務をどう超越するのかということなんですけど、超越していたという御認識でよろしいのでしょうか。

答  警察の本来任務というのは、性格的なものの解釈と法律の枠内であるかどうかという解釈とがあると思います。私達は本来の警察の任務、今仰った国民の生命、財産を守るという任務、本来の任務であるとして出動しました。法律の枠内であるという解釈をした上で、これを行動に移したということでありまして、我々としては法律の枠内であるという見解は変わっておりません。本来の任務を超越というのは、高圧放水車はこういう用途というのはなくて、言うならばよく報道されていますが、過激派のデモであるとか、そういう過激な行動に対してこれを収めるためとかというふうに作られているわけです。そういう意味で、本来の用途とは違う用途にその放水車を使ったということであって、警察の本来の任務を超越したという意味ではありません。

問  ちょっと分かりにくかったのですが、警察の本来任務を超越したと仰った、その主旨をお伺いしたいということだったんですけど、今、放水車のことを仰ったんですけど。

答  失礼しました。警察の任務の中の本来のもの、その本来ものというのは、例えば高圧放水車であれば、高圧放水車の任務というのがあるわけですから、今回の場合は、高圧放水車の車両の本来任務を超越して活用しました。警察の本来の任務を超越したという意味ではないです。

問  今日の閣議や閣僚懇の中で、昨日の自衛隊や警察の活動についての反応ですとか、菅総理からの何か言葉はありましたか。

答  自衛隊、警察を始め皆さんに大変御苦労をいただいておりますということの感謝の表現は、冒頭に総理からしていただきました。

問  大臣御自身としてのお気持ちは、いかがですか。

答  言うなれば限界を超えるぐらいの活動を警察としては精一杯やってもらっていると、足らざるところを、より一層地方からも応援をしてもらっているということでありまして、各警察官も正に我が身のことを忘れてというぐらいに皆が頑張ってくれていると思っております。

問  冒頭で、先ほど大臣は「こちらとしては注文したいところもある」というようなことを仰ったんですけれども、これはどういうことでしょうか。

答  より一層スピーディーに、効率的に機能を動かす、そのための方途というのを今回のことを貴重な経験として考えていく、貴重な教訓になる部分がかなりあるという意味であります。今そのことでトラブっているという意味ではありません。

問  今のことに関連しまして、大臣は、今回のまず教訓についてどのようなことが考えられるのかということと、それと、今仰ったように大変時間がかかりましたけれど、その時間がかかった原因はどこにあるのかということをお聞かせ下さい。

答  教訓というのは、今回正に未曾有の阪神淡路大震災でも体験したことのない未曾有のことが起こり、かつ原発事故というものがそれに加わったわけでありまして、結局ここまでの甚大な災害や事故というものが今まで想定されていなかったことがたくさんあるんだろうと思います。ですから、常にこれらのことが起こりました時には、そのことを教訓として、また次に備えていくということは常に必要なことだろうと思っております。今回時間がかかったこともそうでありますけれども、それらのことを、やはりしっかりと我々は記録と記憶に留めて、将来への備えに参考にしなければならないと思っております。

問  緊急交通路の物流の関係ですが、昨日トラックに関してはフルオープンにしていきたいという御発言がありましたけど、進捗状況と具体的にどういうことを検討されているのかお聞かせ下さい。

答  国交省が今、突貫工事をやってくれておりますので、それを待ちたいと思います。督促をしておりますし、また大畠国交大臣も現場を督励していると聞いております。私の立場で、あと何日かかるかということは申し上げる知識はありません。

問  通行証の対象を拡大するという考えはあるのでしょうか。

答  次々に拡大はしてまいりました。先ほど申し上げましたように、通行証の交付もどんどん増えております。それから一昨日、タンクローリーは外見で分かりますし、積んでいる物も当然特定されているわけでありますので、これは警察署で交付してもらう手続は省略して検問所で、一目瞭然ですから、あとの通行に支障がないように標章をその場で交付して貼ってあげるということをしているということです。

問  今後、更に拡大するというお考えは。

答  道路の耐久力が、拡大をされればそれに応じて、スピーディーに迅速に拡大をしていくと、常に常にその能力の限界にチャレンジをしていると、臨機応変にどころの話ではないという気持ちでやっております。 

問  放水に戻って恐縮ですが、先ほど44トンの水を撃ちきったということですが、これまでの説明だと、タンクの4トンは1分から2分位で撃ちきるということですが、44トンは本来的なタンクからということではないので少し時間がかかっていると思いますが。

答  車に積んでいるタンクは4トンです。別途、プールが側にありまして、そこが40トンです。それを自動的に汲み上げながら放水するという形をとって合わせて44トンです。

問  どれくらいの時間がかかったかという報告はありましたか。

答  フル稼働で撃ちきったということは事実ですけれども、何分かまでは聞いておりません。

問  緊急交通路に関する話ですが、警察が交付する緊急交通路を通行できる標章を持っているところに優先的にガソリンを供給するという事態があって、中にはガソリンを目当てに緊急通行証を申請してくるという動きもあると聞いているんですけど、その辺りのことについてどのようにお考えでしょうか。

答  そういうことはしてはならないし、やってはならない話だと思いますけど、そういう噂が飛び交い始めたという話は承知しております。何も緊急交通路の標章は、そのためにやっているわけではありませんし、そのための権限なり効力を持っているものでありませんので、それを誤解して、または意図的に噂が流されているか分かりませんが、そういう噂が一部で流れているということは聞いております。

問  今日の閣議の後に総理執務室に入られておりましたが、何の件でしょうか。

答  原発の対応です。

問  昨日の報告ということでしょうか。

答  情報交換と体制の整理です。

問  具体的にはどういったお話でしょうか。

答  私は途中で出てまいりました。と言うのは、海江田経産大臣や担当している細野君や総理、防衛大臣とか、直接そのことに最先端で携わっている人に絞って議論を詰めてもらおうということで、私や総務大臣はそれをサポートしている役割ですので、少数で決めてもらって要請をもらおうということで途中で帰ってまいりました。

問  今の件で、一度放水車を撤退した上で、更にサポートできることがあるということかと思うんですが、どういう点を大臣はお考えでしょうか。

答  警察がやっている仕事というのは、膨大なものがあるわけです。もちろん命を救うこと、それから要請を受けているのは、タンクローリーが行きましても、結局タンクローリーの運転手さんが襲われたとか、またガソリンスタンドで混乱が生じるのを恐れて暫く休みたいということで断られたなどという話が飛び交ってきております。それらのことも我々としては、それが噂であれば、噂を押さえなければいけませんし、そういう危険性があれば、未然にそういう要請があるところへ行ってやらなければなりません。それから、御遺体の問題がありますから検視の問題もありますし、そして、既に始まっているのが、支援を口実にした振り込め詐欺、そういうものも起こり初めているというようなこともあります。本来これまで続けております任務に、新たなそういうことも含めて検討をしているということであります。もちろん検討といっても、もう既に実際に対策に取り組んでいるものは、もちろんありますけれど、振り込め詐欺の問題などというのは、今日まで常態的にやってきておりましたから、その体制を強化するとかいろんな問題がありますが、より一層具体的なことは現在検討中です。

問  運転手が襲われたという話は、噂のベースでですか、それとも警察として確認された事実ですか。

答  それは噂の段階で、襲われる恐れがあるので嫌がっている運転手さんがいるとかという話を聞きました。これはしかし、第二次的というか、実際に遭ったという人から聞いた話ではありません。そこは、我々としては、ちょっと噂に近い話ですが、しかし、あり得る話であるということで警戒をしております。

問  総理執務室の件で、原子力の件で集まっている大臣とのお話ということでありましたが、原子力の面で警察が何かサポートできる部分があるということで入っていたのではないんでしょうか。

答  あるかもしれませんし、また昨日まで関わっていたわけでありますので、そう意味で入っていたと、何かそれが参考になることがあるかどうかまだ分かりません。追加措置について、どういうことがあるかは、まだ分かりません。