国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年5月26日(木)12:06~12:17

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は全員出
席でございます。議題事項については、人事案件について説明があり、原案ど
おり決定をいたしました。報告事項については、お手元の資料のとおりの報告
が警察庁からございました。いろいろ報道上は賑やかな出来事が、また深刻な
問題も報道されておりますが、また御質問によって私からお答えするもの、具
体的な事象等については特に長官からお答えすることもあろうかと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

  大臣にお伺いします。先般、法務大臣が刑事司法制度の在り方について法制
審に諮問をされました。布川事件の無罪判決などもあり、取調べの可視化が改
めて注目されているところですけれども、これに関しましての警察の取組みに
ついて御所見をお伺いしたい。

答  (大臣)布川事件については報道を通じて、また経緯の報告は聞いておりま
す。いずれにしても警察としても大変苦労の多い事件だったと思いますし、ま
た被疑者とされた皆さんの御苦労もあったと思います。また裁判も御苦労いた
だいたと思います。いずれにしても事件というのが大変悲惨な被害を受けた被
害者がいらっしゃるという事実は変わらないわけですから、迅速に的確にその
真相が解明をされ、然るべき司法的処理がされるということが一番望ましいわ
けでありますが、このことにつきましては内容の云々は別にいたしましても今
日まで至っているという、そのこと自体については大変残念なことだというふ
うに思います。だからといって一気呵成に可視化というふうになるかと言いま
すと、真相の究明そして治安能力というのをより一層高めなければなりません
ので、両面があるというふうに思います。そういうことから、既に私の下で部
外有識者からなる研究会を設け、可視化実施国の持つ捜査手法の導入等につい
ても併せて、幅広い観点から検討しているのは御存じのとおりでございます。
昨年の2月から始まり2年間の研究会ということでやっておりますし、先般は
中間報告がなされたところでございますけれども、いずれにせよ国民の人権を
いかに守るかという点と、そして治安をいかに維持していくか、この治安を維
持することも大きな意味での国民の人権を守ること、そのことであります。こ
れを両立させるためにどうすべきかということの視点から活発に御議論をいた
だいているわけであります。今後、これまでの議論を踏まえつつ、取調べの高
度化・可視化や捜査手法の高度化について、より具体的な検討をしていただく
こととしておりますが、一方で法務省の方でも法制審議会に法務大臣が諮問を
行うというかたちがありまして、検察という場、そして警察という場、しかし
共通してるところが多いわけでありますので、いずれにせよそこは相互に連携
もとりながら、情報の交換もしながら研究の成果も交換をし、そして協力して
やっていくべきものだというふうに思います。よって、法制審議会の今後の諮
問でいろいろと御議論いただきますメンバーのところにも、警察が今日までこ
ちらの研究会で積み重ねてまいりました研究についても、当然その御検討の素
材にしていただくということにいたしているところでありまして、4月15日
に法務大臣とお会いをいたしました。今後お互いの検討を尊重し、これまで以
上に連携しながら進めていこうとの申し合わせをしたところでございます。お
互いに独走するのではなくて、お互いの立場を尊重しつつ、また意見の交換を
懇ろにしながら、先ほど申し上げました治安の維持を的確にやって国民全体と
しての人権権益を守ること、同時に一方では冤罪というかたちで被疑者の人権
を損なうことがないようにする、これは十分に注意をしていく必要があるとい
うふうに思います。

  長官にお伺いします。公選法事件に絡みまして埼玉県警において不適切な取
調べが行われた疑いがあるという趣旨の指摘が報道されております。これにつ
きましての御所見をお聞かせください。

答  (長官)御指摘のような報道がなされたことは承知しております。埼玉県警
察に対しては、所要の捜査を進めるとともに報道で指摘されたことを含めて必
要な調査を行うよう指示しております。

  長官に伺います。本日、公安委員会で報告があった今度本格実施される全国
協働捜査方式について、改めて意義と今後の取組課題について御所見をお聞か
せください。

答  (長官)御案内のとおり、昨年10月1日から行っていた試行結果について
は、全国協働捜査方式での捜査というものが効果的であるということが明らか
になったといえます。

  今年の春から、都道府県警察に350人のサイバー犯罪対策担当の警察官を
増員したことに加えまして、この度、警視庁情報追跡班の捜査体制を強化する
ことにより、本格実施に移行する予定であるわけであります。

  今回の捜査方式というのは、警視庁において集中的に初期捜査を行って、そ
の上で各都道府県警察に引き継ぐという点において、現在の警察の枠組みを維
持しつつではありますが、都道府県間の捜査協力の方法を飛躍的に進化させ、
警察捜査の新しい領域を切り開くものでありまして、日本警察にとって新たな
挑戦であると、私は思っております。

  本方式が真に効果をあげることによって、サイバー犯罪の検挙が大幅に増加
し、サイバー空間における国民の安全・安心の確保に繋がることを期待したい
ですし、警察捜査の新しい領域を切り開くものであるという意味でも、大いに
期待したいと思います。

  長官にお尋ねをいたします。警視庁がやっている東京の整形美容外科をめぐ
る業務上過失致死事件についてであります。家宅捜索をしたところ、その捜査
対象の側に捜査資料の写しがあるのが見つかりました。当該医者側には警視庁
の出身者もいるなどということが指摘をされておりますけれども、こういうあ
ってはならないようなことが発覚したわけでありますが、この件についての長
官の御所見と今後どのように解明していかれるのかお聞かせください。

答  (長官)捜査対象として捜索した病院から捜査資料が発見されることという
のは、捜査機関としてはあってはならないことであると認識しております。

  警視庁においては、業務上過失致死事件の本事件の捜査に従事した職員や病
院関係者からの聴取など、所要の調査を徹底し、その結果に基づいて厳正に対
処することとしていると承知しております。

  いずれにしても、このようなことは二度とないように厳正に対処したいとい
う方針です。