国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年6月9日(木)11:27~11:42

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は全員出
席でございます。議題事項につきましては、犯罪による収益の移転防止に関す
る法律施行規則の一部を改正する命令案について説明がありまして、原案どお
り決定をいたしました。報告事項につきましては、各業界における暴力団排除
の取組状況について報告がありました。

 これから大変重要な時期に向かいますし、若干、基本的な考え方を述べさせ
ていただきたいと思います。これまでも暴力団排除の仕組みを構築してまいり
ましたが、今般、銀行、不動産及び建設の各業界におきまして契約における暴
力団排除条項の導入、排除範囲の拡充など、取組みを更に進めていただくこと
となりました。この取組みは一般的な取引のみならず、震災復旧・復興事業に
おける暴力団排除に資するものと期待をいたしております。各業界と連携を強
化し、暴力団排除条項の導入が確実に進みますように取組みを推進してまいり
たいと考えております。この件は、安藤長官が大変熱心に取り組んでおられま
すが、今回の被災地におけるこれら対策につきましては、単に被災地の中のみ
ならず、これに関連する各業界の守備範囲は全国展開をしている企業が多いわ
けでありますので、そういう意味でも思わぬところからこれらに食い込んでく
るおそれもありますから、しっかりと目配りをし、対策を講じていかなければ
ならないということもあります。また、同時に各都道府県で暴力団排除の条例
を作っていただいていることは、警察としても大きな武器になるというふうに
思いますが、それらのものをフルに活用をして万全を期していくということで
あります。以上です。

  大臣と長官にそれぞれお伺いいたします。東日本大震災の発生から間もなく
三ヶ月が経ちまして、この間、警察は人命の救助、行方不明者の捜索等に全力
を挙げてこられました。これまでの警察の活動を振り返っての御所見と今後の
見通し等についてお聞かせください。

答  (大臣)正に全国警察が一丸となって、この問題に取り組んだ三ヶ月であっ
たというふうに思いますし、関係職員及び現場の警察官の皆さんに心から私か
らも敬意を表したいと思います。特に、警察におきましては、全国から被災地
に部隊を派遣するなど、おおむね被災三県で約8,000名、全国から派遣を
いたします部隊が約4,500名前後というのがベースだったと思いますが、
組織を挙げて各種警察活動に全力を尽くしてきたところでありまして、被災者
の方々や国民の皆さんの御期待にお応えできるよう努力し、また皆さんからの
いろいろなお手紙等を拝見いたしますと、大きな成果を挙げてくれたものとい
うふうに評価をいたしております。また、その間、本来であれば警察の守備範
囲なのかどうかというような事案にもぶつかることがあるわけでありますけれ
ども、国民の生命・財産を守る、安全を守る、また地域の平和を守ると、その
ことに資することであるならば、その解釈の範囲を拡大をしてでもというぐら
いの気持ちで、ありとあらゆる問題に積極果敢に取り組んでくれた三ヶ月間で
あったと思います。

 この月曜日に宮城県に参りました。県警本部長ほか各地方から派遣されてい
る部隊の皆さんにも会いましたけれども、適宜休みもとらないといけないよと、
あなたが健康を害したんでは本来の対策が打てなくなってしまう、十分自愛を
しながらその作業に専念してもらいたいというふうに、こちらから言わなけれ
ばいけないくらいに正に昼夜を分かたず努力をしてくれたというふうに思って
おります。他方、発災後三ヶ月を迎えるわけでありますが、未だ8,000名
を超える方々が行方不明ということになっております。警察としては行方不明
者の捜索等に懸命に当たっているところでございます。若干、私が日頃の統計
を見て感じることでありますが、最近は死者の数が増えるよりも行方不明者の
数が減る方が数字の上では多い、すなわち地方の行政能力も復活してきて、行
方不明者が実際健在であるけれども、手続上それが銘記されていないことなど
も含めまして、行方不明の方々の無事が確認されるその数が御遺体の発見によ
る死者の数が増えるよりも多くなっております。死者数と行方不明者数を合算
しがちですけれども、そうではなくてこれらの数というのは今報告されている
数よりも、やがていくらか減ってくるという期待感も一方では持っているとこ
ろでございます。警察としては、引き続き組織を挙げて被災県警察に対する支
援体制を十分に確保いたしますとともに、行方不明者の捜索、検問、パトロー
ル、犯罪の取締り、先ほど申し上げました特に暴力団対策など、各種活動を強
力に推進をし、被災者の方々や国民の皆さんの期待に十分に応えてまいりたい
というふうに思います。自衛隊の皆さんや消防の皆さんの応援部隊は、一つの
目途を付け、一つのけじめを付けた中でそれぞれ引き上げられますが、警察は
むしろこれから警察本来の任務をより一層綿密に、そして拡大をして取り組ん
でいかなければいけない宿命を担っている、その使命感を持って今後にまた臨
んでいきたいというふうに思っているところであります。

 (長官)これまで、警察におきましては、東北3県警察に対して、延べ約4
7,000人の警察職員を派遣するなど、先ほど大臣からもお話しがありまし
たように、全国一枚岩となりまして各種活動に全力で当たってきたところであ
ります。

 警察としては、市町村等の行政機能や地域社会の防犯機能といった治安基盤
が崩壊した地域も少なからずある中、全国から派遣された部隊が、警察署、交
番とも一体となって、被災地における治安の確保に全力で対処してきたものと
評価しております。また、今次震災は、広範囲にわたる津波による被害や福島
第一原子力発電所における事故など、阪神・淡路大震災の経験をそのまま生か
すこともできない中、次々と変わる困難な局面にも柔軟に対処してきたものと
私は評価しております。

 震災直後の初動はもちろんでありますが、その後の活動においても全国的に
均質な現場執行力を有します日本警察が一体となり、有効に十分機能している
のではないかという感想を持っております。

 この度の震災というのは、まず被災地の復旧・復興等が相当長期化する見通
しであること、二つ目は従来の地域コミュニティが崩壊し、地域社会の犯罪抑
止力が弱体化していること、さらには福島第一原子力発電所周辺の警戒区域や
計画的避難区域におけるパトロール、侵入窃盗等の犯罪の取締りなど、いわゆ
る無人地帯で住民の安全と安心を確保するという、これまで経験のない新たな
課題に直面していることなどの特徴が見受けられるのではないかと思います。

 したがって、警察としては、こうした特徴を有する未曾有の大災害に際して、
現地での活動も相当長期化することが見込まれるところでありますが、引き続
き被災地の情勢等に的確かつ柔軟に対応するため、十分な態勢を全国警察挙げ
て確保して、各種警察活動を継続的かつ強力に推進してまいるという気持ちで
あります。

 いずれにしても、長期化するだけではなく、様々な新しい課題に直面をする
と思いますが、その困難を克服していくということが、我々の使命であると思
っております。

  長官にお尋ねします。茨城県で40数年前にあった布川事件についてであり
ますが、先日、元被告の男性二人に対する再審の判決があり、無罪の判決が確
定しました。伺いたいのは、このことについての長官の所見と再審無罪判決の
中では、捜査段階での取調べについて、誘導的なやり方があったと批判してい
るわけですけれども、そういうことについて警察としての検証なりをするのか
どうかというあたりについてお聞かせください。

答  (長官)本件については、公訴機関であります検察当局の判断により、控訴
が行われなかったものと認識しておりますが、無期懲役判決に対する再審無罪
判決が確定したことについて、厳粛に受け止めております。

 また本件は、昭和42年に発生したもので、当時としては所要の捜査を尽く
したものと思われますが、再審判決では、自白の信用性への疑問や客観的証拠
の乏しさが指摘されたところでありますが、これらの問題について警察では、
40年以上前の捜査の検証を行うまでもなく、この間、科学捜査・初動捜査の
高度化などによる客観的証拠の収集の徹底を図るなど、緻密かつ適正な捜査の
推進に努めてきたところであります。

 いずれにしても、今般の判決を真摯に受け止めて、今後とも、これらの取組
みの徹底を図ってまいりたい。引き続き、そうした努力を強力に推進していく
ことが我々の使命だと思っております。