国家公安委員会委員長記者会見要旨(警察関連部分のみ)

1 日時 平成23年8月9日(火)19:07~19:21

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  昨日か一昨日に法務大臣が取調べの可視化について発表をされましたので、
そのことについて若干のコメントをさせていただきたいと思います。先週木曜
日8月4日、取調べの可視化や捜査手法の高度化等に関し、法務大臣と協議を
行い、その中で法務大臣から法務省の可視化に関する省内勉強会による最終取
りまとめについて御説明をいただきました。

   私からは、可視化の実現に当たっては、国民の人権の保護と治安の維持の両
方の視点を両立させるべきであると、国民の人権の保護は最重要でありますが、
併せて治安の維持も国民の人権の保護のためには欠かすことのできないことで
ありますから、その両方がしっかりと両立するということが大切であるという
ことを強調させていただき、今般の最終取りまとめは検察の公訴官としての観
点も踏まえて、法務省の立場で作成したものと理解をいたしているということ。
いずれにせよ、取調べの録音・録画に係る制度設計は、私の下で進めておりま
す研究会や法制審議会における議論を踏まえて結論が出されるものと承知をい
たしておりますということを申し上げ、さらに、検察における可視化の試行的
拡大に関しては、特に裁判員制度対象事件が検察・警察一体となって捜査を尽
くすべき重要凶悪事件でありますことから、運用に当たって真相解明に支障を
来さないよう配意が必要であるということを重ねて申し上げました。

   本件は、我が国の捜査の在り方に関する重要な検討であり、今後、お互いの
検討を尊重し、これまで以上に法務省と警察が連携しながら進めていくことと
なったものであります。そのような認識でおります。

  取調べの録音・録画についてなんですけれども、大臣が仰ったように今回法
務省が対象とする事件というのは検察と警察が一体となって調べなければいけ
ないもので、録音・録画については警察側も試行はしてますけれども、否認事
件というのはそれこそ途中で犯行を認める供述を始める可能性があったりする
こともあって、試行の対象に警察はしていませんけれども、今回検察は否認事
件を含む全事件を試行とはいえ可視化の対象にすると言っているんですけども、
そこのことが警察の取調べの方にも悪影響を与えるということはないんでしょ
うか。そこら辺の懸念はありますか。

答  そのような悪影響を与えることがないように検察としても御注意をいただき
たいということは申し上げているわけでありまして、警察は警察としてしっか
りと自らの役割を果たせるように今後とも努力をしていく。また、検察で試行
されるわけですから、これはこれで参考にも十分させていただきたいというふ
うに思っております。江田法務大臣とお会いしたときにもある意味で警察は一
片の証拠、材料を起点としてあらゆる場面を想定した捜査に入るわけでありま
すから、言うならば端緒として切り開くのは警察の仕事でありますし、まして
や容疑者の皆さんとも警察官の言うならば正に人生観も含めて全力を尽くして、
人間関係を構築し、信頼関係とまではいかなくても人間関係の中でその真相に
迫っていくという、ある意味例えが正しいかどうか分かりません。ただ、その
まま法務大臣が申し上げた言葉を言いますと、検察は知情意でいえば知の世界、
警察は情の世界という部分がかなり特色としてあり得るのではないかというこ
とで、検察と警察を同一視する発想でこの問題を考えないでいただきたいとい
うことは念のために申し上げたところであります。

  今の取調べの可視化についてですが、警察は中野大臣の下で当面研究会を続
けていて、これは来年の2月か3月までということですけれども、その研究を
続けてって警察が今やっている可視化の試行の在り方、つまり裁判員裁判対象
事件かつ被疑者が自白をしているというようなものは、当面は変えないという
ことですか。念のためにお伺いします。

答  我々としては、その研究会の結論を待って、警察としてのスタンスを決めて
いくわけでありますから、当面、警察として何かを変えるという状況にはあり
ません。同時に警察としては、色んな尋問をしているところへ不規則に、ある
いは抜き打ちで、その様子を観察に行ったりということなどを含めて警察は警
察で、日頃からそれに代わる努力をしているということは、皆さんよくご存知
だと思います。我々も民主党としてのマニュフェストには、可視化は掲げてお
りますので、その方向性は私も否定するものではありませんが、捜査能力や治
安能力が落ちるということになりますと、そのことが国民の人権を侵害すると
いうことに繋がっていくわけでありますから、あくまでも我々としては、治安
能力を減少させることがないように可視化を進める時には、同時にDNA型デ
ータベースをしっかりさせるとか、いろいろな捜査方法について近代化、充実
させていくということも併せてあるだろうということも思っておりますので、
方向性は方向性として堅持しつつ、そこに至ります内容については十分慎重に
捜査能力の減少を来さない努力も平行して行っていきたいと思います。