国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年8月30日(火)10:46~11:14

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本年1月14日に菅内閣の一員として国家公安委員会委員長、公務員制度改
革担当大臣及び拉致問題担当大臣を命ぜられ、全力を尽くしてまいりましたが、
本日をもって退任することとなりました。この約8か月間、皆様には本当にお
世話になり、厚く感謝を申し上げます。

   国家公安委員会委員長としては、国民の安全の確保を第一に考え、東日本大
震災への対応、警察基盤の強化、捜査手法・取調べの高度化を図るための研究、
暴力団対策の推進、犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部改正、サイ
バーインテリジェンス対策の推進等々、昨今の治安情勢に対応した様々な施策
に全力で取り組んでまいりました。

   中でも、東日本大震災への対応につきましては、私自身が就任早々でありま
したけれども、全国警察が一体となって被災者の救出・救助、住民の避難誘導、
交通の規制、御遺体の身元確認、被災者の支援、生活の安全と安心の確保、警
察情報通信機能の維持等に取組み、特に原子力災害に関しましては、原子炉建
屋に対する放水活動、正に危険を顧みず飛び込んでいったあの事は私も終生忘
れることはないと思います。原子力発電所周辺区域における避難誘導、捜索・
検問活動等を実施してきたわけでありますが、私自身も被災地における警察活
動を自らの目で確かめるため、宮城県及び福島県を視察し、予算・人員の確保
を始め治安の体制整備等に取り組んできたところであります。

   過酷な環境の中で、文字通り不眠不休で任務を遂行する警察職員の活躍に対
し、閣僚、政府関係者はもとより、多くの国民の皆様からも讃辞と謝辞が寄せ
られましたことを国家公安委員会委員長として大変誇りに思った次第でありま
す。併せてそれに先駆けてニュージーランドにおける大震災につきましても救
助隊を派遣したところでありました。

   国民の治安に関する不安と警察に寄せられる期待は、誠に切実なものであり
ますので、今後も全国警察職員の一層の奮闘・御努力を期待してやまない次第
であります。

   次に公務員制度改革担当大臣といたしましては、時代の変化とともに歴史的
使命を果たし終えた部分を退場させ、新しい時代の要請に応える部分を新たに
加えていくという姿勢で改革に取り組んでまいりました。本年4月には、国家
公務員制度改革推進本部において改革の「全体像」を取りまとめ、6月3日に
は、関連4法案の閣議決定・国会提出にまで至ったところであります。法案は、
残念ながら今通常国会での成立は難しい状況でありますが、臨時国会において
速やかに成立することを期待したいと考えております。法案の取りまとめに当
たっては関係職員を始め、政務三役みんなが心を一つにして日本の公務員制度、
新しい時代を迎えるために信賞必罰を明記し、国民の理解を得られる体制に作
り変えるとともに、公務員自らがやりがいのある、張り合いのある、そういう
公務員制度になるように協議し、努力をしてまいりましたが、法案としてしっ
かりとまとめ上げることができたことは誠に嬉しい限りであります。

   また、現行の再就職等監視委員会については、5月26日に同意人事案を国
会に提示いたしたものの、未だ採決もされておりません。再就職等規制違反行
為の監視に万全を期すため、同意人事案の速やかな採決をしていただくことが
必要だと考えております。国会において御了承いただけることを例え通常国会
の最後の議案としてもこれが採決されることを期待をいたしているところであ
ります。

   拉致問題担当大臣といたしましては、一昨年10月に設置いたしました拉致
問題対策本部の下、拉致問題の解決に向けて、関係予算の増額及び事務局体制
の強化を図り、徹底した情報の収集・分析や韓国・米国を始めとする関係各国
との緊密な連携、被害者御家族との密接な意見交換などに努めてまいりました。

   しかしながら、今なお拉致被害者の救出には至っておらず、御家族には大変
申し訳なく思っております。

   この件につきましては、特に次期政権下におきましても、引き続き、被害者
の一日も早い帰国を目指して努力をしていただきたいと思っております。また
いかなる立場にあろうとも私自身、今後ともこの問題解決に向かって努力をし
てまいりたいと思います。

   以上、この約8か月、それぞれの役所の仕事に対する思いでありますが、こ
の間、御協力いただきました皆様には心から感謝を申し上げます。

   大臣退任により立場は変わりますが、これからも国民の生活と安全を守る警
察活動、公務員制度改革及び拉致問題対策が一層強力に行われますように、今
日までの御縁を大切にしながら、しっかりと支援をしてまいりたいと思います。

   終わりに、在任中の御厚誼に改めて感謝申し上げ、退任の挨拶といたします。
どうも本当にありがとうございました。

  震災対応は非常に良かったと思うんですけれども、先ほどの放水の件などに
ついて触れてらっしゃいましたが、改めて震災の現場で活動されている警察官
の方々に対する思いというものをお持ちであれば最後にお伺いできますか。

答  いざ鎌倉という言葉がありますが、一旦このような大災害が起こりましたと
き、その他の時も同じですが、正に警察は一つの家族だとこんな印象を受けて
おります。特に、現地に派遣をいたしました若い警察官の皆さん、また女性警
察官の皆さん、それを指揮する幹部警察職員の皆さんが本当に被災者の皆さん
の気持ちになって、御遺体捜索についても自ら積極的に提言し取組みもなされ
ると、そして、女性警察官も正に被災者の気持ち、被災者に寄り添って、本当
に頑張っていただきました。そして、そのうえに被災者の皆さんからの感謝の
言葉をいただいて、自らが大きな達成感と使命感を感じ、また、それぞれの日
頃の持ち場に帰りましてからも、職場の同僚にそのことを伝え、そして警察職
員が正に一体となって活躍をされ、警察学校の諸君もそうでありますし、OB
の皆さんもそうでありますし、そしてまた派遣されるに至らなかった皆さんも
自らが正に物心両面に渡って色んな物を出し合い、持ち寄り、そして頑張って
くださった、そのことが私にとりましては終生忘れることのできない思い出に
なるというふうに思っておりまして、心から敬意を表し、また感謝をしている
ところであります。

  冒頭で拉致問題についての発言があったんですが、大臣御自身として、この
7か月半で少しでも前に進められたと思うこと、逆に大きくやり残したと思う
ことについてお伺いします。

答  拉致問題というのは、我々がいかに取り組んでも、いかに内容やその活動、
情報収集やいろいろな工作活動が充実をし、進展をしても実際に被害者の方が
この日本の領土を踏むまでは、何の成果も無かったという表現をしなければな
らないというふうに思っております。そういう意味で、私としては正に残念無
念であります。しかしながら、内容につきましては、その環境整備、外務省と
の情報交換、また外務省や総理を通じての諸外国への働き掛け、また私ども自
身からのアメリカ、韓国を始めとする諸方面に対する働き掛け等々、精一杯努
力をしてきたというふうに思っております。ただ、この問題だけは、成果とし
て、結論としてどなたも残念ながらまだこの日本の古里の領土を踏んでいない
のでありますから、このことについて成果を申し上げることは残念ながらでき
ない、そのことが残念であります。

  2点お伺いします。1点目は、昨日、菅総理が文科省の方に朝鮮学校に対す
る無償化適用の手続をされましたけど、唐突感があるので拉致被害者の方はか
なり反発をしているということですが、このことについての総理のやり方につ
いての受け止めをお聞かせください。2点目は、新しい首相になられる野田代
表についての期待を伺わせてください。

答  1点目は、昨日朝、官房長官から連絡がありました。総理が文科大臣と会っ
てそのような措置を講じられたということです。昨年、菅総理が決断をして始
められたことでありますので、自分の在任中に一つのけじめをつけるというこ
とのようでありますが、私としては、そのような環境が新たに整ったとも思い
ませんし、そういう意味で断固反対ということは申し上げました。しかし、こ
れは権限は文科省にあり、そして特別な権限を持って総理がストップを掛けて
おったという事項でありますので、事前に私どもに報告があるということでは
ありませんでした。そのことでは大変残念に思っております。そして、次期総
理への期待は、大震災の被災者の皆さんに寄り添うがごとく、是非とも被害者
の皆さんの御健在のため、また御帰国のために、あらゆる手段を講じる努力を
総理自らがしていただきたいと思いますし、そしてまた御家族の皆様にも、し
っかりとそのお気持ちに添えるような体制であっていただきたい。これは先ほ
ども、昨日代表に就任された野田代表には、閣議の部屋で申し上げたところで
あります。

  大臣が頻繁に替わることについての受け止めについてお聞かせください。

答  決してそれは良いことではないと思います。できることならば、拉致担当大
臣というよりも、総理自身が頻繁に替わるのではなくて、これらの問題に対し
て継続性を持って、北朝鮮をはじめ、御協力をいただく他の国々に対しても対
応し続けていくことは大事だと思っております。私も就任早々、替わりました
ことに対するお詫びを御家族の皆様に申し上げたところでありますが、いずれ
にせよ、これは超党派で国家の責任として取り組むべきことでありますから、
担当者が替わろうと替わるまいと日本政府、又は国会の超党派の一致した協力
の下にこれからも精力的に取り組んでいくべきものと思います。言うなれば次
善の策ということかもしれませんが、総理が替わろうと担当大臣が替わろうと
あくまでも、この主張、この基本姿勢、そしてこのための努力は終始継続して
いくものだと思います。また、私もそういう気持ちを持っていろいろな活動の
中で、政府与党というのではなくて、政府・国会一体となってという気持ちで
超党派の議員連盟の皆さん、救う会の皆さんと、そういう意味では党派を越え
た気持ちで協議もし、取り組ませていただいたつもりでございます。

  取調べの可視化、あるいは捜査手法の高度化の問題について、これから議論
が本格化すると思いますが、大臣としては、今後こうした議論がどのような方
向性を持って展開していくことを期待されますか。

答  これは、前々の中井大臣の当時に研究会をつくって、警察は警察として諸外
国の事例も含めて検討しているところであります。検察は検察としての立場で
法務省が御検討のようでありますが、警察と検察というのは、ある意味、似て
非なるものがあります。一片の証拠、一片の事案を基にして、昨日の野田さん
の演説ではありませんが、泥臭い捜査から警察は始めるわけであります。警察
が捜査をしてまとめたものを改めて精査するといいますか、まとめ直すといい
ますか、そして訴訟を提起するという検察の立場とは、自ずから違いがあると
思います。検察と警察を一体として同じように可視化の問題を同じスピードで
進めるということには、やはり問題があるというふうに思います。ですから警
察は警察としての意見を法務省にも述べるように、色んな委員会等には派遣を
いたしておりますけれども、検察は検察の立場からの御検討をされるものと思
いますし、この前、言葉がふさわしいかどうか分かりませんが、法務大臣の話
をいたしました時に、あえてこじつければ、「知情意」という言葉あるけれど
も、知の検察、情の警察、そして政治がその中に意をどう加えるかということ
なんだろうというふうに思います。警察の立場からいたしますと、冤罪を生ん
ではならないという人権問題と治安能力が低下し犯罪が多数発生をすることに
よって多くの国民に被害を与えるという人権侵害という両面からの人権侵害を
防ぐ、これが両立をしなければなりませんので、警察としては可視化の問題で、
なかなかやりにくいことが起こるとすれば、それに代わる、又はそれを補完す
るいろいろな手法、これは国際比較もしながら研究をいたしておりますが、そ
れらのことも併せて、取調べの高度化をいかにこの機会に図るかという視点を
もって研究が進められて然るべきものというふうに思っております。

  今後の国家公安委員会委員長になられる方に期待されることをお聞かせくだ
さい。

答  2つの面から申し上げることができると思います。一つは、現在大震災もあ
りましたが、全国の警察が心を一つにして頑張っていこうという一体感が大変
醸成されていると思います。そのことを大切にし、一人一人の警察官に至るま
で、その使命感、そして真剣に頑張った後の達成感、そういうふうなものを是
非もたらしていただきたいというふうに思います。また一方で、最近、特に暴
力団関係の事案がクローズアップされております。これはかなり深刻でありま
す。これについては、警察としてより一層努力が必要だというふうに思ってい
るところであります。当然のことながら、まず東日本大震災の復旧復興に当た
っての治安面からの最大限の努力というのは、第一義的に直面している喫緊の
課題だということは申し上げるまでもありません。