国家公安委員会委員長(代理)記者会見要旨

1 日時 平成23年11月17日(木)11:40~11:50

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の委員会定例会議の状況について申し上げます。本日は、委員長を含
め全員出席でありますけれども、山岡委員長が国会用務のため、すぐ退席し
ましたので、代理で会見を私の方で行わせていただきます。議題事項につき
ましては、二点ほどありまして、「警察庁長官等の評価手続について」これ
は毎年春、秋に行われている手続でございます。それから「国家公安委員会
委員長に対する行政文書開示請求」が1件ありましたけれども、これについ
ての判断でございます。原案どおり決定いたしました。報告事項につきまし
ては、お手元の資料のとおりでございます。

  長官に伺います。来週の月曜日にオウム真理教の遠藤被告の最高裁判決の
期日が指定されております。これをもって、一連のオウム事件で逮捕起訴さ
れた人物の司法判断が出揃うことになるんですが、まだ逃亡犯がいるとはい
え、これで一つのタイミングと思いますので、これを機に改めて一連のオウ
ム真理教事件の社会的な位置付けと、オウム真理教事件が警察組織に与えた
影響であるとか、教訓であるとか、反省点について、御所見をお聞かせくだ
さい。

答  (長官)一連のオウム真理教事件というのは、正に宗教団体の衣をまとっ
たテロ組織が殺人事件を含む数々のテロ行為、違法行為を行い、そしてまた
特に松本サリン事件や地下鉄サリン事件といったような事件に象徴されます
ように、化学兵器を使った大量無差別殺戮テロ事件を引き起こして、社会を
大混乱に陥れたという事件であります。そういった意味で我が国の犯罪史上、
例をみない誠に凶悪な事件であったと考えています。

   教訓事項として、まずやはり挙げなくてはならないのは、様々な困難な状
況があったにせよ、こういった大規模で組織的なテロ事件というものを未然
に防げなかったということが、警察にとって最大の教訓事項であろうと思っ
ています。私は就任の時にも警察の仕事、責務、究極の目的というのは何か
と言えば、それは犯罪や事故を予防すること、未然に防ぐことだと申し上げ
ましたけれども、特にこういった組織的で悪質な暴力的破壊行為、テロ行為
というものを未然に防ぐということは、我々にとって極めて重大な責務であ
ると考えております。結果として、それができなかったということは、我々
警察にとって最も大きな教訓事項であったと言わざるを得ないわけでありま
す。今後は、何としてもこういったような事件を再び起こさないために、我
々は全力を挙げていかなければならないと考えているところでございます。

   それから、捜査の観点から申し上げますと、こういった広域的な組織犯罪
に対して、全国警察を挙げて一体となって対処するという態勢において十分
でない部分がありましたし、また、化学兵器といわれるような凶器に対する
我々の知識も必ずしも十分でなかったというような反省点もあるのではない
かと思っています。

   こういった点については、既に法制度の整備とか、組織体制の強化が図ら
れておりますし、また専門家の育成も進めておりますし、装備資機材も整備
を図りつつあるということでありますけれども、繰り返しになりますが、こ
ういった事件については未然に防ぐということが最も大事でありますので、
そのために必要な情報の収集・分析活動であるとか、また必要な捜査活動と
いうものを積極的に推進していかなければいけないと考えています。いずれ
にしましても、今お話があったように今回一連の裁判が終了することになる
わけでありますけれども、未だ逃亡を続けております警察庁指定の特別手配
被疑者3名の検挙に全力を挙げなければいけませんし、またオウム真理教団
は依然として松本智津夫の教義を維持しているとみられますので、これに対
する情報収集活動、そしてまた必要な捜査活動を、これからも進めていかな
ければいけないと考えております。

  長官にお尋ねします。今日の委員会の報告事項にもありますけど、愛知県
警が摘発をした戸籍法などの違反事件でありますが、これには法律を遵守す
べき司法書士、元弁護士が、その特権を悪用して、しかも弘道会を捜査して
いる愛知県警の捜査幹部や警察官の戸籍関係の書類を入手した事案でありま
す。背景の解明はこれからでしょうが、司法書士、元弁護士が関与し、狙わ
れたのが警察官であるということを踏まえて、この事件について長官の御所
見をお願いいたします。

答  (長官)今、御質問されたことに中身は尽きるわけですが、今回の事件は、
司法書士事務所の経営者、探偵事務所の経営者が共謀して、司法書士として
の資格を悪用し、なおかつ文書を偽造して個人の戸籍謄本であるとか住民票
等を不正に、かつ、おそらく大量に取得した事件であろうと思っております
が、愛知県警が11日に5人を逮捕したところでございます。現在、愛知県
警では事件の全容解明に努めているところでありますけれども、その中で全
国の複数の探偵業者が、途中に何段階かあるようでありますけれども、結果
的には、この被疑者達に依頼をして住民票を取得しているという事実が判明
しておりますし、また、御指摘があったように愛知県警で暴力団捜査を担当
している捜査官、警察官の住民票が不正に取得されていたということも確認
をされているわけであります。申すまでもなく司法書士は、公正かつ誠実に
その業務を行うこととされておりますし、探偵業者も個人の権利、利益を侵
害することがないように行わなければいけないと規定をされているわけであ
りますけれども、こういったものが、むしろ逆に犯罪のインフラとして利用
された可能性があるわけでありまして、極めて悪質であると考えております。

   今後、愛知県警では、暴力団の組織的関与も含めて捜査を徹底していくこ
とにしておりますけれども、司法書士業界であるとか探偵業界においても解
明された事実に即して、こういった事案が今後再び発生することのないよう
に自主的な対応・措置を講じていただくことが必要ではないかと思っており
ます。

   なお、探偵業者は公安委員会の監督下にあるべき業者でありますけれども、
仮にそういった探偵業者が探偵業務に関して不正な行為を行っていたとすれ
ば、言語道断でありまして、そういった事実がもし判明すれば、警察として
厳正に対処していきたいと考えています。