国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成23年12月22日(木)12:11~12:29

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。議題事項につ
いては、「人事案件」、また「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部
を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令案等
に対する意見の募集について」でございます。報告事項については、お手元の
とおりでございます。

  大臣と長官にそれぞれお伺いいたします。北朝鮮の金正日総書記の死去に対
する一連の対応についてお伺いしたいと思います。まずは、長官にお伺いした
いのですが、この問題に関しましては特別放送の情報があった時に、警察庁か
ら大臣の方に連絡がいっていなかったとか、また大臣が安保会議に出席されな
かったということについて色々と議論がありますけれども、一連の事実関係を
改めてお伺いしたいということと、安保会議は大臣並びに警察庁からもどなた
も出席しておられなかったと伺っていますけれども、これは警察からの情報が
官邸に届いていなかったということを意味するのか、どうなのか。さらに、一
昨日、大臣が「このようなことは二度とないようにしたい」というふうに仰ら
れましたけれども、再発防止策についてどのようにお考えなのか、長官の所見
も併せてお聞かせください。それと大臣に対しましても、今回の問題に関しま
して、事務方のミスというふうなことを官房長官も仰られています。官僚に対
する責任転嫁ではないかという見方も出ておられますけれども、そのことにつ
いての大臣の御所見も併せてお聞かせください。

答  (長官)ちょっと長くなりますけど、お尋ねの件について御説明を申し上げ
ます。まず警察庁では、当日12月19日10時過ぎ、正確に言うと10時1
2分であったようですけれども、北朝鮮において正午からいわゆる特別放送な
るものが行われるという情報をキャッチいたしました。しかし、その中身が不
明確というか、分からなかった、不明だったものですから、その確認のために
関連の情報収集を進めるとともに、様々な事態を想定しながら、取るべき措置
について検討を進めてきたところであります。しかし、内容が不明であるとい
うことから、大臣にはその内容が明らかになり次第、御報告するということで
この段階では御報告をしなかったと、差し控えたというところでございます。
その後、正午になりまして御承知のように、金正日氏が死去したという特別放
送が行われたわけでございまして、これを受けて警察庁では、12時05分に
警備局長を長とする警備対策本部を設置して、所要の対応を取ったところでご
ざいます。大臣に対しましては、12時06分に第一報を入れて、秘書官を通
じて入れてございますけれども、この時、大臣は東京に向かう列車の中におら
れたというふうに承知をいたしております。そして、12時25分頃というふ
うに聞いておりますけれども、内閣官房から警察庁に対して、13時から安保
会議を開催するという旨の連絡がございました。警察庁では、その旨大臣に御
連絡を申し上げるとともに、内閣官房には、大臣は概ね10分程度遅れますと
いう御連絡を入れたところでございます。大臣は、13時ちょっと前に東京駅
にお着きになられて、直ちに官邸に向かい、13時10分頃には官邸に着かれ
たわけでございますけれども、相前後してというか、ちょうどその時間帯くら
いに安保会議が終了したということでございます。なお、安保会議には、大臣
が遅れるけれども間に合っていただけるだろうというような前提で、我々事務
方を出席させていなかったことは事実でございまして、今後、大臣の出席、欠
席に関わらずでありますけれども、必要な場合には警察庁の事務方、関係幹部
が出席できるような方向で、現在、内閣官房と調整を進めているということで
ございます。

   それから御質問の二つ目で、警察庁の情報が届いていなかったのではないか、
というお尋ねでございますけれども、大臣は官邸に到着後、直ちに総理室に向
かわれて、警察庁が対策本部を設置したということと、関連の情報収集や警戒・
警備に努めているということを報告していただきまして、その場で総理から必
要な指示を受けて、その後、大臣から警察庁にも指示の内容は伝達されている
ところでございます。他方で、事務的にも、警察庁としては対策本部設置後に、
安保会議が開催される前から官邸の対策室に対して、また、総理秘書官等に対
して警察庁の対応ぶり等について逐次報告を行ってきておりまして、官邸等と
の情報共有は適切に行われていたということでございます。こういったことで、
警察庁としては、金正日氏の死去に伴って必要な措置は講じておりまして、我
が国の治安の維持のためには万全を期しているところでありまして、会議に出
席できなかったからといって、何ら治安上の問題が生じているわけではないと
いうことを是非御理解賜りたいと思っております。

   そして、最後に大臣から「今後、このようなことが起きないように」という
再発防止策について、言及がございましたけれども、大臣の御趣旨は安保会議
に大臣が出席していないときに、事務方も出席していなかったということを指
して言っておられるものと承知をいたしております。今後の対策でございます
けれども、安保会議には議員である大臣がやむを得ない理由によって出席でき
ない場合における代理の規定は設けられておりません。ただ、議長、これは内
閣総理大臣でございますけれども、議長は関係者の出席を求め、関係者という
のは役所の役人も含めてでございますけれども、出席を求めて意見を述べさせ
ることができるという規定になっておりますので、今後、必要があるときには
警察庁長官、ないしは警察庁次長が関係者として出席できるようにしたいと考
えております。現在、そのための決定が迅速かつ円滑に行われることとなるよ
うに、内閣官房と調整をしているという状況でございます。また、出席する議
員、大臣でございますけれども、大臣を補佐するために、当該省庁の関係幹部
が随行するということも許されているようでございますので、必要な場合には
警備局長等の関係幹部が随行することができるように、そのための手続が迅速
かつ円滑に行うことができるように、現在、内閣官房と調整を進めているとい
うことでございます。

   (大臣)今、長官から事実関係について、御報告があったとおりでございま
して、私があの時ここで申し上げたのは、そういう事務方から伺った事実関係
をそのまま述べさせていただいたということでございます。したがって、責任
云々ということを申し上げたつもりも全くありませんし、そんな事実もなかっ
たと思っております。「こういう状況です」ということですので、私は「こう
いう状況でございました」と、こう申し上げたところです。

  長官にお伺いします。10時12分に、正午に特別放送があるという情報を
キャッチされて、中身が不明なので報告は差し控えたということでしたが、そ
れ以外に何か報告しなかった理由というのはあったのでしょうか。

答  (長官)それ以外には、特にございません。

  その正午に特別放送があるという情報自体の価値については、どのように思
っていらしたのでしょうか。

答  (長官)担当部局としては、特別放送というものが行われたという前例につ
いて調べてみたところ、金日成氏が亡くなったケースのみであるということは
承知をして、そういったこともあり得るという前提では進めていたようであり
ますけれども、ただ何が出てくるかということは分からなかったのは事実でご
ざいまして、その段階では、まだ上げるのではなくて、もう少し見極めた上で
上げようというふうに考えたと聞いております。

  今日の公安委員会で、暴力団対策を進めるために様々な施策の報告があった
と思うんですけど、その点について大臣にお伺いします。

答  (大臣)暴力団対策については、今、排除条例がすべての都道府県で制定さ
れるなど、社会全体で暴力団排除の機運が高まり、またそのことが実際に推進
されておりますが、一方それに伴って、暴力団との関係遮断を図ろうとする企
業等に対するけん銃発砲事件といったような凶悪事件が相次いで発生しており
市民社会に対する大きな脅威となっているという認識の下、このような情勢に
的確に対応するため、もちろん暴力団の取締りはもとよりでございますけれど
も、今回制定されました保護対策実施要綱や暴力団情報の提供に関する通達に
基づいて、暴力団との関係遮断を図る企業等に対しては、適切な情報提供を実
施していき、保護対策を徹底して社会全体での暴力団の排除を一層推進するよ
う警察庁を指導してまいりたいと思っております。

   また、暴力団対策法の改正を、今進めているところでございますので、次の
通常国会で、是非とも成立をさせたいと考えているところでございます。

  長官にお尋ねします。今、山岡委員長が仰った暴力団対策についてでありま
すが、保護対策については、かねて長官が絶対に守らなければ排除は進まない
という決意を述べておられますが、今回のPOという専従の警戒員を張り付け
ることの難しさが一方であろうかと思うんですが、そのぶん人を割くと捜査の
要員が減じられるということもあるでしょうし、やる側にしてみたら警戒の薄
いところを狙うこともあります。今回の保護対策強化の狙いと成算についてが
一点。それから、暴力団の情報提供でありますが、かなり細分化をして提供し
ようという姿勢はよく分かるのですが、いわゆる密接交際者、その他は認定が
難しいと思うんですが、この辺の狙いとどう徹底していくのか、お聞かせくだ
さい。

答  (長官)まずは保護対策の強化についてでございますけれども、前から繰り
返し述べているように、全国の都道府県で暴排条例が施行されるなど、暴力団
排除の機運が非常に高まっているという現状にあって、社会全体で暴力団排除
を進めていこうという運動を我々は進めておりますけれど、そういったことの
ためには、暴力団との関係を断ち切ろう、遮断しようという方々の安全を守る
ことは不可欠な基盤であると考えております。

   勇気をもって暴力団と手を切ろうという方々に、暴力団から危害を加えられ
るということは絶対にあってはならないわけであり、それを防ぐのが我々警察
に課せられた使命であると認識をしております。

   今回、保護対策を強化するということにいたしたわけでございますけど、狙
いは、一つには、人を割いて捜査が手薄になるのではないかとお話がありまし
たけども、暴力団担当部門だけでなくて警察が総力を挙げて、保護対策を推進
しようということが、一つの狙いであります。もう一つは、新たに身辺警戒員
というものを指定することによって、警戒体制をより強化しようということに、
その狙いがあるわけでございます。今後、全国の担当者を集めて、その趣旨の
徹底を図るとともに身辺警戒員の訓練を実施するなどして関係者の安全確保に
全力を期したいと考えております。

   なお、昨日、福岡県警で身辺警戒隊を発足させましたが、これは、組織犯罪
対策部門のみならず、機動隊員を大幅に繰り入れて行うとしたものでございま
すので、御参考までに申し上げておきます。

   二つ目の情報提供でございますが、今申し上げましたように暴排機運が高ま
っているわけでございまして、事業者等による暴排活動が進むとともに全国で
条例が施行されて暴力団排除の機運が高まっているということでありまして、
そしてその反映として暴力団に関する情報を提供して欲しいという警察に対す
る要請が高まっていると思います。社会全体で暴力団排除を進めようという取
組を今進めておりまして、現に進められているわけですけど、警察としてはこ
れを全面的に支援をしていかなければならない。このためには、暴力団に関す
る情報というものを積極的かつ適切に提供していくということが、是非とも必
要であると思っております。

   今回の施策でありますけれども、まず条例上、様々な方々に暴力団排除のた
めの義務が課せられているわけでありますが、義務の履行を支援するためにも
警察が情報提供を行うということをきちんと明記するということが一つありま
す。

   それから暴力団の活動が多様化して不透明化していることに鑑みまして、共
生者とか暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある人の情報も提供するこ
とを明記することなどによって、積極的な情報提供を行うということでござい
ます。

   社会全体で暴力団排除を進める上で、今申し上げた保護対策と情報提供とい
うのは、非常に密接な関係にあり、暴力団排除を進める上で是非とも必要な手
段でございますので、今後とも適切な暴力団排除のための保護対策の徹底と情
報の提供ということを進めることによって、効果的な暴力団排除活動を進めて
まいりたいと考えております。