国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 平成24年9月6日(木)12:30~12:42

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。委員は、全員
出席です。議題事項については、「人事案件について」、「鳥獣被害防止特措
法に係る共同命令案等について」の説明があり、原案どおり決定いたしました。
その他警察庁から報告事項について、報告がありました。

      このうち、「北朝鮮による拉致容疑事案と警察の取組」については、北朝鮮
が拉致を認めて間もなく10年が経過します。被害者の御家族の心情に思いを
いたすと、拉致容疑事案の全容を解明し、被害者の早期救出を図ることが必要
であります。今後とも、拉致容疑事案の全容解明等に向けた諸対策を推進する
よう警察庁を督励してまいります。

      以上です。

  長官にお伺いします。拉致を北朝鮮が認めてから10年と節目の年ですけれ
ども、所感と今後の見通し等についてお伺いします。

答  (長官)10年前に第1回の日朝首脳会談が開かれまして、その結果、拉致
被害者5名が帰国されました。そして、2年後の平成16年には第2回目の首
脳会談が開かれて御家族8名が帰国ないし、来日をするということで、この時
点で拉致問題は大きな進展を遂げたと思っています。しかしながら、その後、
ほとんど進展を見ていないということは誠に残念であると思っています。被害
者、そして、御家族の皆様の心中は察して余りあります。

   警察では、これまで13件19名を北朝鮮による拉致容疑事案と判断いたし
まして、このうち8件11名について逮捕状を得て、国際手配を行うなど、所
要の捜査を推進しているところでございます。

   これ以外に「北朝鮮によって拉致されたのではないか」などの相談や届出が
あった事案についても、所要の捜査・調査を推進しているところでございます。

   警察では、今後とも、拉致被害者の早期救出、事案の真相解明、そして、被
疑者の検挙等のためできる限りの努力をしてまいりたいと考えています。

   そこで、この日朝首脳会談、北朝鮮が初めて拉致を認めて謝罪してから10
年が経過するに際しまして、これを機会に更に対策を強化するという意味もご
ざいまして、来週12日には大臣にも御出席いただきまして、全国警察の拉致
問題対策担当の課長を集めて会議を行うほか、私も11日、12日には新潟県
に出張いたしまして、現場の視察、また、捜査員の督励を行ってきたいと考え
ています。

  大臣にお伺いします。本日、今年上半期の暴力団情勢が公表されましたが、
改正暴対法の施行を見据えた今後の対策について御所見をお聞かせください。

答  (大臣)平成24年上半期にあっても、特に九州においては、前年に続いて、
暴力団による銃器や手りゅう弾を用いた対立抗争や事業者襲撃等事件が後を絶
たず、暴力団犯罪捜査に従事していた元警察官が銃撃される事件も発生するな
どして、暴力団情勢は、依然として極めて厳しい状況にあると認識しておりま
す。

   北九州地区においては、本年4月から全国警察が機動隊を福岡県に派遣し、
保護対策、検問、警ら等を強化しておりますが、事業者襲撃等事件については
残念ながら検挙に至っていないものが多く、地域住民の方々に安心して生活し
ていただくには至っていない状況と考えております。

   今後は、本年7月に成立した改正暴力団対策法も効果的に活用しながら、引
き続き、暴力団に対する取締りを強化するとともに、適切な暴力団情報の提供
や暴力団排除活動に取り組む方々の安全確保の徹底等により、暴力団排除活動
を積極的に支援するなど、暴力団の弱体化・壊滅に向けた取組を更に進めてま
いりたいと考えます。

   これに加え、暴力団の危険な活動を抑止するためには、捜査の実効性を高め
ることが重要であり、通信傍受の拡大等捜査手法の高度化の検討にも努めてい
るところであります。今後、こうした検討が実を結ぶよう最大限の努力をして
まいりたいと思います。

  長官にお聞きします。脱法ドラッグの件についてですけれども、今年に入っ
て脱法ドラッグを吸引して事故ですとか、検挙が増えているのですが、警察と
しての何かお考えですとか、対策などについてお願いします。

答  (長官)いわゆる脱法ドラッグを吸引して、様々な事故・事件が発生してい
ることについては、大変憂慮しているところでございます。

   御承知のように、脱法ドラッグといっても、中には麻薬であるとか、指定薬
物の成分を含むものもあるわけでございまして、こういったものについては、
引き続きその取締りに努めてまいりたいと考えております。

   このほか、脱法ドラッグを販売している店舗について、関係機関と連携しな
がら、更に実態の把握に努め、そして、また必要があれば指導・警告を行うと
いう措置もとってまいりたいと考えております。

   さらに、関係省庁に対しまして、脱法ドラッグの指定薬物としての早期指定
であるとか、また、脱法を許さないという意味では、いわゆる包括指定をやっ
ていただくように働きかけを行ってまいりたいと考えております。

  長官にお尋ねします。取調べの録音・録画の実施状況、4月以降の4ヶ月分
が取りまとまりましたけれども、否認事件にまで拡大をして、対象事件に対す
る実施件数が801件と、昨年に比べてかなり拡大しているペースですけれど
も、この状況についての受け止めと可視化が取調べに与える影響あるいは今後
の可視化の方向性について、長官の御所見をお伺いします。

答  (長官)取調べの録音・録画の試行については、平成20年ころから私共、
ずっとやってきているわけでございますけれども、特に本年の3月に決定いた
しました「捜査手法、取調べの高度化プログラム」、これに基づいて試行の拡充
を図ったところでございます。すなわち、裁判員裁判対象事件についてその拡
充を図るとともに、裁判員裁判対象事件であるか否かにかかわらず、知的障害
を有する被疑者についての試行も行うこととしたわけでございます。

   本年7月末までの状況でございますけれども、本日の国家公安委員会で御説
明したところでございます。内容は今お話があったように、裁判員裁判対象事
件について申し上げますと、試行は4月から拡充をしておりますけれども、4
ヶ月間で801件について録音、録画が行われております。これは、昨年の同
期間に比べると約3倍に増えているところでございます。そして、これは、こ
の期間中における全裁判員裁判対象事件の6割以上に当たるということでござ
います。

   また、知的障害者が被疑者である事件については、試行は5月から始めまし
たけれども、この3ヶ月間で、わずか3ヶ月間という短い期間でございますが、
264件について実施をされているという状況でございます。警察における取
調べの録音・録画というのは、供述の信用性そしてまた任意性の立証に資する
ということを目的に行っているものでございますけれども、こうして試行の件
数が増えているということは、そうした趣旨が現場によく理解をされ、そして、
また趣旨に添った運用がされているということではないかと私は評価をしてい
るところでございます。しかしながら、問題点として、実施回数が1件当たり
1回というものが多いということに見られますように、より様々な場面につい
て試行を行うべきではないかと考えております。また、知的障害を有する被疑
者については可能な限り幅広く録音・録画の試行を行っていくべきと考えてお
ります。警察庁としましては、今お話があったような取調べに与える影響を含
めて、録音・録画のメリット、デメリットを検討するために、各都道府県警察
に対しては、より積極的にこれを行うように指導してまいりたいと考えており
ます。

  長官に聞きたいのですが、児童虐待についてなんですけれども、今日、発表
の公安委員会にありましたけれども、児童虐待の数が急増していることについ
て、何かお考えですとか対策等についてお願いします。

答  (長官)理由というのは、はっきりとよく分からないんですけれども、良い
方で理解するとすれば、より積極的な通報や届出がなされた結果であるかもし
れないと思っております。

   さらに、関係機関の連携というものも進んだということではないかと思って
ますけれども、いずれにしても、大事なことは、どの機関であれ、できるだけ
早く虐待の兆候・情報というものをキャッチして、お互いが連携をしながら早
期に介入して解決を図るということだと思っていますので、そうした意味での
関係機関との連携というものを更にこれから強化していかなければいけないと
考えております。