国家公安委員会委員長(代理)記者会見要旨

1 日時 平成28年6月2日(木)11:30~11:40

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要   本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。河野委員長は海外出張のため欠席でした。議題事項については、「第三次児童ポルノ排除総合対策(案)」などについて説明があり、原案どおり決定いたしました。その他、警察庁から報告事項について、報告がございました。

問 長官にお尋ねします。東京都小金井市でアイドル活動をしていた女子大生に対する殺人未遂事件が発生しました。事件の発生に際して、警察の対応について批判の報道もございます。事件の警察の対応について長官の御所見をお願いします。

答  (長官)本件は、5月21日、小金井市内のライブハウスにおいて、タレント活動をされている女性が、男性に刃物で刺されるなどして重傷を負った事案でありまして、被疑者は現場において現行犯逮捕されております。
 大変痛ましい事件であり、被害者の方に心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い回復をお祈りいたします。
 本件に至る過程とその間の警察の対応の詳細につきましては、捜査の結果を待つ必要がございますが、いずれにしても、警察が事前に相談を受けていながら重大な結果を防げなかったということは重く受け止める必要があると認識しております。
 ライブ活動をしている方とそのファンという関係や、SNSへの書き込みという形態であるなど、通常のストーカー事案とは異なる面があったとは思いますが、どんな場合であっても、被害者の身に迫る危険を正しく判断し、被害者を守るのが警察であります。
 現在、警視庁において、本件の相談対応、あるいは110番対応等につきまして、その詳細の確認を進めており、今後改善すべき事項を精査しているところであります。これを踏まえて、警察庁においても、その教訓を全国的に共有するなど、この種事案への適切な対応の徹底を図ってまいりたいと考えております。

問 長官にお尋ねします。内戦が続くシリアで行方が分からなくなっているフリージャーナリストの安田純平さんと見られる写真がインターネット上に投稿されました。安田さんを拘束しているのは武装組織のヌスラ戦線と見られていますけれども、これについて写真が本物かどうかや、撮影された状況、安田さんの安否などについてどのように把握され、対応されているのかお聞かせください。

答  (長官)警察では外務省等関係機関と連携して情報収集に努めているところであります。
 引き続き、関係機関と協力をしつつ、対応に全力を尽くしてまいる方針であります。事案の性質上、これ以上のコメントは控えたいと思います。

問 長官にお伺いします。岡山市で先日、神戸山口組傘下組織の幹部が射殺される事件が発生しました。3月に警察庁が山口組と神戸山口組が対立状態にあると認定してから初めて発砲事件で死者が出たことになります。事件の所見と対策についてお願いします。

答  (長官)両団体の対立抗争に対しましては、市民の安全を守るべく警戒活動を徹底するとともに、3月7日以降、集中取締りによりまして、双方の構成員を5月29日現在でありますが463人逮捕し、また、4月15日には神戸山口組を指定暴力団として指定するなどして、防遏に努めてきておりますが、先日、岡山市内で神戸山口組傘下組織の幹部が何者かに銃器で撃たれ死亡するという事件が発生しております。
 現時点で被疑者は不明でありますが、対立抗争の可能性があると見ており、仮にそうであれば、3月7日以降初の射殺事件となります。実行犯に止まらずトップの関与も含めて徹底した捜査を行う方針であります。
 また、この事件が対立抗争激化の引き金になる可能性もあると見て、全国で警戒と取締りによる防遏力を強化するため、発生当日、都道府県警察に対しまして、市民の安全確保のための警戒の強化、抗争事件を含めた組員の大量検挙、長期隔離による組織の弱体化、そして特定抗争指定暴力団としての指定等に向けた準備等の指示を行ったところであります。
 今回の事件の背景はいまだ不明でありますが、対立抗争の激化につながらないよう、万全を尽くしてまいる方針であります。

問 長官にお伺いします。先日、伊勢志摩サミットが無事終わったところです。厳しい国際テロ情勢下で米国大統領の広島訪問が重なって過去にないような大変厳しい、難しい警備だったかと思います。無事、大きなトラブルもなく何よりだったかと思いますが、今回の警備を振り返られてどう評価されていらっしゃるかと、警備での課題や教訓等、今後の警備にどのように活かしていくか、オリンピックも控えていますし、次のサミットもあろうかと思います。教訓課題をどう引き出すかも含めて、教えてください。

答  (長官)伊勢志摩サミット並びにオバマ米国大統領の広島御訪問に伴う一連の警備は、前段警戒を含めて長期に及びましたが、懸念された国際テロや、反グローバリズム勢力、極左、右翼等による妨害事案、サイバーテロ等の発生もなく、無事終了いたしました。
 この間、首脳会議の開催地である伊勢志摩、アウトリーチ国を含む全ての首脳が利用されました中部国際空港、あるいは、その両者を結ぶ沿道、そして米国大統領が初めて訪問した広島市等においては、様々な規制や検問等によって、市民、利用者の方々、関係事業者に御不自由や負担をお掛けし、また、警備に対して大変な御協力をいただきました。警備が成功した第一の要因は、この御協力であり、深く感謝を申し上げたいと思います。
 次に大きかったのが現場の力だと思います。今回のサミットは、国際テロ情勢が非常に厳しい中で行われたことに加えまして、最近のISIL等の大規模テロの発生状況に鑑み、全国の膨大な数のソフトターゲットに対する警戒も必要となりました。さらに、サミット2週間前に、現職の米国大統領による初の被爆地・広島への訪問が決定するなど、警備的には大変厳しい面がありましたが、関係機関、事業者等との連携と全国警察の努力により、完遂することができたものと思います。部隊によっては、4月初旬の外務大臣会合から、熊本地震、伊勢志摩サミット、そして広島へと、転進を重ねたところもありましたが、全ての部隊員が士気高く任務を全うしてくれたと思っております。
 今後は、9月に予定されております2件の関係閣僚会合の警備に万全を尽くす必要があります。また、サミットが終了しても、国際テロの脅威には変化はありません。特に、2019年ワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてのテロ対策等の強化は、日本警察にとっての大きな課題であります。これらの大会は、期間が非常に長く、かつ、海外からも選手・役員に加え、多数の要人や観客が来日し、数万人規模の競技施設や関連イベント会場が連日警備対象になるなど、その警備規模は、サミットをはるかに超えるものと見ております。また、警備の必要性が、試合や競技の開催地のみに止まらないということは、今回のソフトターゲット対策の全国的な必要性から見ても明らかであります。
 今後、今回のサミット警備の総括を行いまして、教訓事項を将来に活かすとともに、昨年策定いたしました「国際テロ対策強化要綱」に基づく情報収集力、水際対策の連携、部隊対処能力、官民連携等の強化を加速し、また、ソフトターゲットを含めた社会全体の対テロ強靭化を促進するなど、東京オリンピック・パラリンピック競技大会等を見据えたテロ対策の強化に努めていく方針であります。