国家公安委員会委員長離任記者会見要旨

1 日時 令和元年9月11日(水)12:32~13:03

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要   九州北部等で発生をいたしました令和元年8月の前線に伴う大雨による油の流出、これによりまして被害を受けました住家の被害認定につきましては、その調査における留意事項をまとめて、本日朝、佐賀県大町町に通知をいたしました。
 当該通知におきましては、水害による被害に、油による被害を加えて判定することが可能であるということ、それから調査方法等に疑義が生じた場合には、必要に応じて、内閣府で相談に応じること等をお伝えをしております。
 これによりまして、油が流出し、長期間浸水の被害を受けた住家のうち床上浸水以上の住家につきましては、概ね被災者生活再建支援法の対象水準になるのではないかというふうに思われます。引き続き、住家の被害認定調査が適切に実施されるよう支援してまいります。
 とりあえず以上でございます。

 先ほどの閣議におきまして、辞表の取りまとめがございました。昨年の10月2日に就任させていただいて、国家公安委員会委員長、それから国土強靱化担当及び防災担当大臣という、そういう立場で約1年間、全力で取り組んでまいりました。
 今日をもって離任をするわけでございますけれども、皆様方には大変お世話になりましたことをあらためて心から感謝を申し上げたいと思います。
 まず国家公安委員会委員長という立場でございます。大変厳しい社会情勢の下で、世界一安全な日本にしていこうではないかと、そういう思いを込めて色々な分野で取組を行ってまいりました。
 特に、2020年東京大会だけにとどまらず、その前のラグビーがもうすぐ始まります。さかのぼると、G20というのがございました。その前には平成から令和へというようなことで、警備ということにつきましては、大変重要なイベントがたくさんあったわけでございますけれども、何とか粗相なく終えることができました。
 これは現場の警備を含めた警察の職員の皆様、例えばG20で言えば、大阪府警を中心に、全国から警察官集めての警備になったわけでございますけれども、そういった皆様方の尽力によって、警備というのは表に見えにくいところで一生懸命やっていかなければならないということでありますけれども、そういったことを一つ一つこなしてしていただいて、大きな問題もなく、そういったことを乗り越えられた。これからまだ残っておりますから、まさに油断することなく、その警備体制は続いていくわけでありますけれども、そういったことで対応ができたということを、大変に、職員の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。
 総理からもその点については慰労の言葉をいただいたことは、私もトップとして大変嬉しく感じたところでもございました。
 あと、大きな事件がございました。川崎で純粋無垢な子供たちを、まさに理不尽という言葉では表せないような形で殺傷する、そういう事件がございました。私も川崎の現場にもまいりましたけれども、本当に辛い思いをしてまいりました。それに続いて、京都アニメーションにおきましては、大勢の皆様方があのようなことで犠牲になってしまったと、今もまだ心癒されてないと思っておりますけれども、そういった案件にも、我々真摯に取り組んでいかなければなりませんでしたし、特に御遺族の皆様方に対してのしっかりとした手当てを、カバーをしていくということ前面に押し出しての対応策を整えました。けれども、それで命が返ってくるわけでもございませんし、それから川崎の案件につきましては犯人が自分で命を絶つというような状況、また京都アニメーションにつきましても非常に重傷を負ってというような状況でありますけれども、そういった困難の中でありますが、なんとしても動機を究明していかなければならない、そして事件の全容を解明していかなければならない、そういう強い意志をもって今日までやってきたということでございます。
 これもまた、現場で努力をいただいた皆様方に心から感謝をしたいと思いますし、引き続いて警察としてできることは全力を挙げて対応していく、そんな形で取り組んでいかなければならないと思っております。
 あと印象に残ったことで、今回ドローン対策含めた3本の法律がございます。
 最初の法律は、私の地元にも関係の深い中国四国の管区警察を合併するということでございましたけれども、それによって捜査に支障が起こさないような、そういう体制をしっかり築き上げる前提での対応だということでございまして、地元の皆様方にも御理解いただいて、その法案を通すことができました。
 次に自動運転、これにつきましていろんな議論がありましたけれども、時代の流れの中で、自動運転の位置付けというものを、私どももしっかり理解をする、ただしその時に考えておかなければならないことは、安全というものをしっかりと我々見極めた上で技術革新に対応できるような、そういう流れを築き上げていく、そのための法案整備というようなことだったと思っておりますけれども、その点につきましても非常に良い議論ができました。そしてこれから次の段階に向かって対応も必要になってくると思いますが、とりあえず今回の自動運転についての法案が整ったということ、成立したということを大変嬉しく思います。
 もうひとつ、ドローンの改正法案、これもですね、いろんな観点、特に我々が一番意識したのは、いわゆるラグビーのワールドカップあるいはまたオリンピック・パラリンピック、そういった場所でのドローンの運行と言いましょうか、そういったことが危険性を及ぼすというようなことにならないように、そのためにある程度飛行制限をしていかなければならない。それと連動した形で、自衛隊あるいは米軍の基地上空についても、そういった対応をしていかなければならない。ちょうど辺野古の問題と相重なって、いろんな議論が起こりましたけれども、やはり我々はこのドローン対策というのは、今回だけではなくて将来に向けて、しっかりとした対応策を考えていかなければならない。特にテロ対応ということにつきましては、非常に悩ましい問題が将来惹起するのではないかと思っておりますので、法案が通りましたけれども、もう次の改正法案に向けての準備が始まっているということでございます。そういった意味におきましては、そのような改正案、これも対応することができたということは、私に与えられた職務を遂行する、そういう形になったことを大変嬉しく思っております。
 それともう1点、先ほど事件のことを申し上げましたけれども、事故もたくさんございました。特に子供を巻き込むような、そういう交通事故というものが多発いたしまして、あるいはまた高齢者の皆様方が運転する、そういう車の事故もございました。いろんな場面場面の事故がありましたけれども、何としても交通事故から、国民の皆様方の生命を守っていくんだと、安全を守っていくんだと、そういう強い意識を持ってこれからの対策をしっかり立てていかなければならないということで、交通事故対策にも全力を挙げてきたということでございます。これはまた引き続いて対応をしていかなければならないと思っております。
 それから災害対応。後ほどまた防災の方でも申し上げますけれども、警察官まさに自らの命を懸けて住民の皆様方の安心・安全を確保するために全力を傾けて対応していただいたと、そういう場面がたくさんありました。その点について悲しい出来事もありましたけれども、そういったことを乗り越えて、今後とも警察官がその職責をしっかりと果たして、災害から住民の皆様方の命を守るという強い意識を持ってこれからも対応してくれるものと思っているところでもございます。
 警察官が様々な分野で訓練を重ねたり、あるいはまた、先ほど申し上げたような事故とか事件で捜査本部を立ち上げて懸命に努力をされている姿を、私もずっと見てまいりましたけれども、本当に彼らがまさに全力を挙げて取り組んでもらっているということ、このことについては大変誇らしく思います。これからも警察官、一部いろんな問題もありましたけれども、それと同時に、何よりも国民の安心・安全を守るために頑張っている姿を間近で見てまいりましたので、彼らがさらに働きやすいような、そういう体制を築くために、私どもは離任いたしましてもしっかりと応援団として頑張っていかなければならない、そういうふうにも思ったところでございます。
 あとは、災害と国土強靱化でありますけれども、昨年、本当に多くの災害がございました。大阪北部地震あるいはまた西日本豪雨、さらには北海道の胆振東部の地震、もちろんその前にも台風21号による大きな被害等々がございまして、日本国どこにいても災害に見舞われないことがないというような、そういう印象を強く受けたわけでありますけれども、私も就任後、そういった場所に度々足を運びまして、非常に厳しい状況である、なぜにこんなに多くの命が奪われたのかということの検証、あるいは、どういうふうにしてその命を守っていったら良いのだろうかというようなことも含めて、度々現地に足を運ばせていただきました。
 そして、今年になっても災害は続いておりまして、新潟・山形方面の地震、これもありましたし、あるいはまた、九州北部では度々大雨に襲われておるというような状況もございました。長崎あるいは鹿児島、そしてまた佐賀等々にも足を運ばせていただいて、特に総理から、政府調査団として行ってくれということで、各省庁の皆様方とともに現地へ行って、その対策については早くに対応ができるような、そういう体制を持って現地に行くと。もしも災害が起こった場合には、内閣府からも先遣隊を直ぐに派遣してということで、各災害に先遣隊を派遣する。そしてまた、各省庁もそういった対応をしてくれる。したがって、受入れ側の市町村、大きな災害が起こったら何をしていいか分からないという場面も多々あるんですけれども、そういったときに、政府が派遣したメンバーが全力を挙げて支援していくことがいかに頼りになったかということを、現場の市町村長さんを始め役所の皆様方からもお聞かせいただいて、大変にそのことについては嬉しく思いましたけれども、今後ともそういう形で進めていきたいというふうに思います。
 そして、防災という意味で、私どもも特に感じたことは、情報発信がいかほどに適切に行われているかということについての再検討はしていかなければならないということを感じ取りました。
 いろんな部署から、いろんな情報が逐一発信されるわけでありますけれども、受け手の住民からいきますと、その情報が混乱を呼ぶような、そういう場面もあったんだということをしばしば耳にいたしまして、もう少し政府側として分かりやすい情報発信に努めてもらえないかというようなこともございました。
 そんなことで、中央防災会議の下のワーキング・グループでいろんな議論をいたしましたけれども、最終的に皆様御案内のとおり、警戒レベルの1から5ということで、それを取り決めていわゆる分かりやすい発信体制が築かれたのではないか。3ならば、高齢者はもう避難だよ、4ならば全員が避難だというようなこと。これは、それをもって避難勧告ないしは避難指示につながっていくわけでありますけれども、そういったことを私ども首長さんにお願いしたのは、空振りを恐れずに、先んじてそういった避難勧告、避難指示を出してもらうように、そのための一つの基準として、今回の警戒レベル1から5というものを活用してもらいたい、そんなことを申し上げてまいりましたけれども、そういう動きをすることができました。
 それから南海トラフも、これ首都直下もそうなんですけれども、一体全体それが起こったらどうなるんだということで、その議論が、例えば避難する場合だって、東の方で起こったら、かなり高い確率で西に連動していく。そのときに西の皆様はどうしたらいいんだというような、そんな議論が多々なされました。最終的には、東でマグニチュード8以上の地震が起こったら西にも連動する、逆もそうなんですけれども。そういったことで、避難を総理の方から指示は出してもらう。ただし、これも1週間。なぜ1週間かと言われましても答えはないのでありますが、取りあえず1週間逃げてもらうという、そういうことを取り決めをいたしまして、今後また南海トラフの地震等々、首都直下もそうでありますけれども、しっかりと議論を重ねて、実際に起こった場合にどういうふうにしたら良いのかというシミュレーションみたいなのも、住民の皆様と一緒に、ボランティアの皆様と一緒に、いわゆる官民連携をして対応していくということをこれからも引き続き考えてまいりたいというふうに思うところであります。
 今、ボランティアの話をしましたけれども、このボランティアについては今も佐賀辺りでも大勢の皆様来られました。ボランティアの皆様方が非常に効率的に対応ができるような、そういう横の連携をしっかりとってもらいたいということで、JVOADというところがあるんですけれども、そこが中心になってボランティア、どういうふうに配備をしていくかということについて、これからも平時、連携プレーをとっていこうということに相なりました。そんな動きが出てまいりまして、シンポジウムの開催をしたり、あるいはまた優良事例の公表等々も行ってきたというところでもございます。
 それと、先ほど申し上げたワーキング・グループの中で、警戒レベルの話をいたしましたけれども、一番そのときに皆様方が意識をされたのは何かというと、それは自分の命、自らの命は自ら守るんだと、そういう意識付けをしっかりやっていかなければならない。そのことについて、これは東京大学の片田先生からの発案でございましたけれども、これなかなか悩ましいのでありまして、公はどうするんだいというようなことを言われそうでありますけれども、そういったことも含んだ上で、でもあえて自分の命は自分で守る。すなわち直ぐに逃げなければならないというような、そういうことをしっかりと住民の皆様方にも御理解いただくように我々も努力をしてまいったところでもございます。
 それから、国土強靱化の話を併せてしたいと思いますけれども、昨年来のあのような災害がございましたので、総理の方から指示がございました。日本列島重要インフラ、しっかり再度点検をしてもらいたいと。そして、その後にその点検場所でやらなければならないことをしっかりやろうということで、国土強靱化に向けて防災・減災3か年緊急対策ということで、3年を一つの限度にして、特別の予算を組んで事業費7兆円ベースのいわゆる対応をしていくということを決定いたしました。今現在、2か年で5兆円位の予算ができておりますけれども、令和2年度にも残りの対応をしていくべく今、各部署でいろいろ議論している真っ最中であります。したがって、是非こういったことをベースにして少しでも強靱化に向けての対策を講じていきたいというふうに思います。
 3か年の後どうするんだという議論もかなり巻き起こっております。軽々な話はできませんけれども、まず3か年で全ての対応はできません。したがって、その後どうするかということはこれからしっかりと議論をしていって、そして国民の皆様方の命を守るということを前提にした議論をしてまいらなければならないというふうに思っているところでございます。
 あとは先ほど長崎とか、あるいは鹿児島に行った話をしましたけれども、被災地に行ってつくづく感じたことは、やはり事前防災、国土強靱化ですね、そういったことをやっている箇所はやはり災害には強くなっています。したがって、長崎五島列島で先般行ったときに、以前、これは平成元年でありますけれども、以前降った雨量よりも多くの雨量が降ったけれども、死者も出ておりませんし、それから災害も極めて軽微に抑えることができたということ。あるいはまた鹿児島、これは平成5年でありますけれども、大水害に見舞われた。大勢の皆様が亡くなられましたけれども、今回はそのとき以上の雨量を確認しておりますけれども、災害としては当時のレベルと比べたらはるかに低く抑えられたというようなことで、地元の知事さんや、あるいは首長さんも声を合わせて、やはり強靱化の対策を打ってもらったところでは人の命がしっかり守れるんだと。砂防なんかは余り表に出ませんので、特に公共事業の言わばロスが多いのではないかとか、無駄な公共事業だなんていうことを言われた時期もありましたけれども、確実に砂防が人の命を守っている、そういったことが全国多々事例がございますから、やっぱり我々はやるべきことは極力、予算で限界ありますけれども、それでも国民の皆様方の御理解いただいて、防災に対しての対策を講じていかなければならないと改めて感じたところでもございます。
 あとは私、もう一つ担当いたしておりますのが、死因究明等の担当大臣ということでもございます。これにつきましては本年6月に死因究明等推進基本法、これを全会一致で可決、成立いたしました。来年度からは内閣府から厚生労働省に事務が移管されるということでございますけれども、死因究明等の取組が更に強化されるということを期待をしているところでございます。
 いろいろ雑多なことを申し上げましたけれども、この1年間大変厳しい状況の中で皆様と一緒に仕事をしてまいりました。先ほど総理からも御慰労いただいて、そしてこの分野は大変だねと、緊張感を常に持って対応していかなければならないということでありまして、そういった意味では、まあまあ何とかこの1年間、自分なりの仕事をすることができたということにつきましては、本当に心から皆様方に感謝を申し上げたいと思いますし、退任した後もですね、警察に対しても、あるいはまた防災に対してもしっかりとこれからも知見を積み上げていって、そしてお役に立てるように努力をしてまいりたいということでございます。以上長々恐縮でございましたが、退任に当たっての私の御挨拶にかえたいと思います。

問   国家公安委員会委員長として今いろいろと印象に残ったテーマ等を挙げていらっしゃいました。改めて、在任中最も印象に残った出来事あるいはテーマは何でしたか。それから、少しやりきれなかったかな、やり残したかなという感をお持ちの部分がもしあれば教えてください。もう一点、警察の業務それから現場の警察職員と接してこられたわけですけど、退任に当たって警察庁あるいは全国警察職員に対してメッセージがあればお願いします。

答  まず印象に残ったことは先ほどたくさん申し上げましたので、その一つ一つはすべて私にとっては極めて大きな印象でございます。特に極めて辛いこと、川崎の事件、あるいは京都の事件、そういったことも印象が非常に強くあります。大きな交通事故もありましたから、まずは我々がスローガンにしておりますけど、世界一安全な国、日本というようなことを実践するために我々もさらに努力しなければならないということと、それからああいう事件については、どういう形で努力していったらいいのか、非常に悩ましいところもありました。それをよくよく分析をして、もちろん個別の事件の動機解明、全容解明するということが前提条件になりますけれども、その中で今後どういうふうな対策を講じていったらいいのかということについて、これからもしっかりとした議論をしていきたいというふうに思いました。
 あと、現場の職員は本当に一生懸命頑張っています。お巡りさん、私、その言葉が大好きなのでありますが、交番にいるお巡りさんがまさに近所の子供たちまでしっかり目配りをして守っている。本当に身近にお巡りさんが感じられる。したがって交番の役割も非常に大事なんだけれども、交番が襲われる。もうややこしい時代になったものだなと。そのことを乗り越えてお巡りさん、警察官は、しっかりと国民の真意に応えるような仕事をしていかなければならない、本当に日々大変な仕事をしていると思われますし、私の周辺にいるSPの連中も大変苦労しながら動いているという、そういう現場もありますし、それやこれや考えた時に、やっぱり警察官という皆様方を、しっかりと、いわゆる仕事がしやすい環境整備を、私どもは整えていかなければならないし、その検証制度もしっかりとしていかなければならないなということは、これは個人的に私自身感じたところでもございます。