国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 令和4年8月25日(木)13:49~14:17

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要   (大臣)安倍元総理に対する銃撃事件の発生を防ぐことができなかったこと、極めて重く受け止めております。この事件を受け、国家公安委員会の指導・管理の下、警察庁において、このような事態の発生を防ぐことができなかった要因の検証と、今後の警護の強化に向けた見直しの検討を行ってまいりました。
 そして、国家公安委員会においては、警察庁からの報告を受け、本日までに、本日を含め、臨時会を含め11回にわたり、活発な議論を重ねてまいりました。
 様々な角度から、多様な視点から、鋭い質問・意見、特に厳しい指摘も相次いだところでございます。国家公安委員会は、本日、警察庁から検証・見直しに関する報告書を受け取るとともに、これまでの議論を踏まえ、警護に関し基本的事項を定める警護要則を抜本的に見直すことといたしました。
 また、本日、警察庁からの報告を受けて、国家公安委員会で合意した文書についてお配りしておりますので、また目を通していただければと思います。
 来月には安倍元総理の国葬儀、また、来年の5月にはG7サミットが控える中、要人の警護に責任を有する警察を所管する大臣として、このような事態が二度と起こることのないように、新たな警護要則に基づく措置を確実に講じ、警護に万全を期すよう、警察庁を指導してまいりたいと、そのように考えているところでございます。冒頭以上でございます。
 (長官)私からも冒頭、一言発言をさせていただきたいと存じます。
 まずもって、選挙遊説中の安倍元総理が銃撃を受けまして、亡くなられたという重大な結果を招いたことを極めて重く受け止めております。ただ今、大臣のお話にもございましたとおり、警察庁ではこの事案を防ぐことができなかった要因の検証と、今後の警護の強化に向けた見直しの検討を行い、その状況を、随時、国家公安委員会に報告をし、御指導を賜ってまいりました。
 そして本日、国家公安委員会に対して、検証・見直しに関する報告書を提出し、国家公安委員会からは、これまでの御議論を踏まえ、警護に関する基本的事項を定める警護要則を抜本的に見直すという御決定をいただいたところでございます。
 来月には安倍元総理の国葬儀、また、来年の5月にはG7広島サミットが控えております。警察といたしましては、このような事態が二度と起こることのないよう、新たな体制の下で、新たな警護要則に基づく措置を着実に実施していくことが必要だと考えております。
 人心の一新を図るべく、私自身については、本日、国家公安委員会に辞職を願い出ました。今後、閣議での御承認を仰ぎたいと考えております。その他の関連人事につきましても、今後、所要の手続が済み次第、公表をさせていただくことといたしたいと考えております。私からは冒頭以上でございます。

問  大臣にお尋ねします。ただ今御報告があったとおりかと思いますが、今回の警察庁による検証・見直し作業、報告書がまとまったわけですが、これまでの、事件発生後、警察庁の対応について、どのように評価と言いますか、考えていらっしゃいますでしょうか。今回の報告書については、十分な内容であるとお考えかどうか、その点をお願いします。

答 (大臣)事件発生以降、警察庁においては、国家公安委員会からの指示の下、「検証・見直しチーム」を立ち上げ、組織を挙げて、本件警護の問題点を明らかにするとともに、今後の警護の強化に向けた見直しを検討してきたものと承知しております。御存じのとおりかと思います。
 国家公安委員会においては、警察庁からの報告を受け、臨時会を含め11回にわたって、各界の豊富な経験と高い見識を有する委員が、活発で濃密な議論を行ってまいりました。
 その結果、本報告書においては、このような事態の発生を防ぐことができなかった要因について、しっかりと検証が行われたとともに、それらを踏まえた具体的かつ多角的な見直しの方策が盛り込まれたものと評価しております。単なる一般の報告書レベルではなく、十分に練れたものと評価しております。

問  関連してですが、報告書の内容として、今後の改善策がまとまったわけですが、具体的にはどういうふうに、その実行に向けて警察を指導していくか、その点のお考えをお願いします。

答 (大臣)このような、本当に悲しいと言いますか、事態が二度と起こることのないように、要人の警護に責任を有する警察を所管する大臣として、新たな警護要則に基づく措置を、それこそ警護要則を抜本的に見直すだけではなく、新たな要則に基づく措置が確実に現場においても講じられ、警護に万全を期すよう、しっかりと警察庁を指導してまいりたいと思います。
 また、併せて、技術革新等による今後の社会の変化や新たな脅威に的確に対応すべく、警護に常に最新の知見を取り入れつつ、不断に見直しを行っていくよう、警察庁を指導していきたいと思います。

問  もう1点お尋ねします。今回の問題で警察庁、それから現場の奈良県警、関係した幹部等の責任について、どのようにお考えでしょうか。

答 (大臣)本日、報告を受けた検証結果を踏まえ、奈良県警察の責任のある者に対しまして、然るべき処分を行うこととなりました。間を置かずに、また警察庁から御説明の場を設けさせていただくことになると承知しております。

問  長官にお尋ねします。進退のことを伺う前に、今回の報告書の内容について、長官として、評価と言いますか、十分だとお考えでしょうか。

答 (長官)警察庁におきましては、先ほどから、御説明申し上げているとおり、今回の事案の発生を受け、次長を長とする「検証・見直しチーム」を設置いたしまして、現地において関係者の聴取であるとか、あるいは客観資料の収集であるとか、本件警護について徹底した調査を行って、その問題点を明らかにいたしました。また、今後講じるべき具体的な対策を検討してきたということでございます。
 この過程におきましては、外国の警護の実態の調査であるとか、あるいはベテランの警護経験者からも御意見をお伺いするなどしまして、非常に多面的な検討を尽くしてきたと考えております。
 そして、その上で、その状況については、累次、国家公安委員会にも御報告を申し上げ、先ほどから、申し上げてきたとおり、様々な厳しい御意見を賜わりつつ、御指導を賜ってきたというところでございます。
 そのような過程を経て、この報告書をまとめ上げたということでございますが、今般の検証において、既に御案内のとおり、警護計画や、その前提となる危険度評価に不備があること、あるいは、現場指揮官の指揮が十分でなかったこと、そういった問題が明らかとなり、さらにこの問題の根底には、これまで、長年にわたって行われてきたわけでございますが、もっぱら都道府県警察の責任で警護を実施する現在の仕組みに限界が生じていることがあると考えているところでございます。
 見直しにおいては、このことを真正面に捉えまして、警察庁の関与の抜本的強化を主な柱とする新たな警護警備の在り方を打ち出し、また、新たな警護要則の制定を導きました。
 私としては、現時点において、概ね満足できる内容ではないかと考えております。しかしながら、警護をめぐる様々な情勢は、また変化していくわけでございます。そうした情勢変化に的確に対応した警護を今後も常に目指していかなければいけないと考えておりますので、警護の在り方につきましては、不断の見直しが必要であるという認識も併せて持っております。

問  今出ました要則を全面的に改正するわけですが、特に要則について、都道府県警察の現場にどのように浸透させ、実効性を持たせるか、その点についてお考えをお願いします。

答 (長官)今回の検証・見直しを通じて、現在の警護が抱える問題というのは、相当程度洗い出されたというふうに認識をいたしております。まずは、報告書に記載された内容を確実に実行していくことが重要だと考えております。
 そしてその内容は、新警護要則にも反映されているということでございます。具体的には、警護を都道府県警察に委ねてきた運用を抜本的に見直し、警察庁において、情報収集・分析し、警護上の危険度を評価する、警護計画の基準を作成する、そして、警護計画案の報告を都道府県警察から受けた上で、必要に応じ修正を行う、体系的な教養計画を作成し、高度な訓練を実施することによって、警護員の能力向上を図る、そういったことの取組によりまして、警察庁の関与の強化を図るとともに、警察庁と都道府県警察における体制の強化、あるいは、装備資機材の充実等の取組を進めるということになります。
 そういった中で、新たに制定した警護要則に基づく新たな警護警備の在り方について、直ちに都道府県警察に対して通達の発出を行います。また、近々に本部長会議の開催を予定しておりまして、そういったことをはじめとしまして、各種会議を開催いたしますし、また、実務担当者に対する指導・教養というものも速やかに行って、この趣旨・内容の徹底を図ってまいりたいと考えております。
 こうした取組によりまして、今後の警護において、同様の事態を二度と発生させないようにしたいと、こういう決意を持っているところでございます。

問  もう1件お伺いします。今回の問題では、現場の奈良県警、それからSPを派遣した警視庁、この両警察に対しては、検証、見直し作業など、どういう形で進んできているのでしょうか。

答 (長官)奈良県警は、今回の検証におきまして、既に検証としては終えたわけでございますが、奈良県警察、あるいは、警視庁に対して、我が方のチームからの聴き取り等をさせていただき、それに対しては非常に真摯に対応していただいたということでございます。
 また、その検証・見直しの過程ではございますが、当然、奈良県警あるいは警視庁のみならず、全国警察においては、本件事案の発生を受けまして、既に警護の強化を図っているということでございますが、併せて、この新警護要則、先ほど申しましたとおり、しっかりと都道府県警察にも定着させて、二度とこのような事案を起こすことのないように、万全を期してまいりたいと考えているところでございます。

問  もう1件、進退について、先ほど御自身から本日辞職願いを出されたということで、人心の一新を図るためとおっしゃいました。御自身の責任について、改めて、どのようなお考えで辞職を決断されたのか。それから、この事件発生から1か月半余り経つわけですが、この時期に、このタイミングで辞職願いに至ったお考えをお聞かせください。

答 (長官)本件発生直後、7月12日だったかと思いますが、この場(記者会見)で、私が当時、その時の思いを申し上げたわけでございます。この事案、非常に重大な結果を招いたことに、それを極めて重く受け止めているということと、併せて、都道府県警察を指導監督する立場にある警察庁長官としての責任は誠に重いと申し上げました。そして、私が果たすべき責任というのは、今回の警護警備の問題点をしっかりと洗い出して、そして、具体的な対策を検討し、このような重大な事案が二度と起こることのないよう、警護警備の強化に向けた見直しを行うことであり、そして私は、それに全身全霊をかけて取り組むと申し上げたかと思います。
 本日、既に公表させていただいているとおり、検証・見直しの報告書もできあがり、また、これまでの警護要則を廃止いたしまして、新たな警護要則を制定させていただいたわけでございます。こうした新たな取組を開始するに当たって、人心を一新して、そして、新たな体制で警護に臨むべきだと私は考え、本日、国家公安委員会に辞職を願い出たということでございます。
 いわば、今回の事件を受けて、検証・見直しをする中で、私ども警察は警護を一から出直そうという覚悟を決めたわけでございます。新たな体制、このタイミングで人心を一新するというのは、むしろ当然のことではないかと私は考えております。

問  また検証結果に戻ってしまうのですが、結果では、1発目が銃声と認識できなかったことから、2発目までの間に警護措置を執れなかったことは困難であったと言わざるを得ないという結論に至っていると思います。一方で、一部では、1発目の明らかな異音を認識した時点で警護対象者を守るために動くべきだったのではないかという意見もあります。長官のお考えをお聞かせください。

答 (長官)検証結果について、もう既に御案内のとおりだと思います。正確を期す意味で、記載内容に忠実にお話を申し上げたいと思います。
 この検証におきましては、身辺警護員等において、1発目の発砲の際に即座に状況を把握して警護対象者の退避等の防護措置を執るなどしていれば、警護対象者に危害が加えられるという結果を阻止することができた可能性はなかったとはいえないが、身辺警護員等が被疑者の接近を認識しておらず、かつ、1発目の発砲音を銃器によるものと即座に認識するに至らなかったことから防護措置を執るまでに遅れが生じたと認定いたしまして、この状況下では、2発目の発砲により本件結果を阻止することは困難であったと評価をいたしております。
 すなわち、1発目の発砲の前の段階で、身辺警護員等が被疑者の接近に気付いているべきであった、その必要があったというのが、まず第一であると、そういう評価をしているわけでございます。
 また、警護対象者の直近におりました警視庁警護員につきましては、1発目の発砲音を銃器によるものと認識しなかったが、振り返って被疑者の存在を認めて防護板を掲げながら射線に入ろうとしておりまして、咄(とつ)嗟(さ)の動きができていなかったものではないと考えております。
 いずれにしましても、今回の警護における問題のうち、現場における警護の問題を改善する方策としましては、冒頭にも申し上げましたが、警護員の能力向上は重要でございます。
 今後、警察庁において、銃声等の識別、あるいは瞬時の回避措置など、突発事案が発生した場合における措置に関する高度な教養訓練を、警察庁自ら実施するということで考えているところでございます。

問  長官にお伺いします。今回の再発防止策、見直し案について、なぜ今回の事件が起きるまでに、こういった見直しがされてこなかったのか。そういう点について、報告書には言及がありませんが、長官のお考えをお伺いできればと思います。また、不断の見直しが今後も必要とおっしゃられていますが、それは今回の、新たに導入される仕組み等で十分なのか、その他、気を付けるべき点があるのか。その点についてお伺いできればと思います。

答 (長官)この報告書が十分だと思うかという御質問は先ほどございました。その中で、やはり今回の問題というのは、警察庁が、大規模な警護以外の個別の警護という意味合いでもございますが、こうしたものについて、いわば都道府県任せにしていたということが、根本には問題があるということを申し上げました。今しがた、なぜそういうことを見直してこなかったのか、というお話でございますが、警護について、これまで重大な結果と言いますか、そういう事案がこれまで発生しなかったことをもって、そういうことに対する、いわば省みる思いというか、そういったものがなかったのかもしれません。これは真に私見でございますので、そういう理解でお願い申し上げたいと思います。
 そういったこともあるので、今回、警護要則の中にもはっきりと規定しておりますが、警護実施において、実は、色々なヒヤリハットの事案というのが起こっているはずであり、そういったものについてもきちんと警察庁に報告をさせることにしております。いわば、計画の段階から警察庁が関与し、そして実施の段階でも、色々な形で警察庁が関与し、そして最後、結果においてもチェックをして、改善点があればその報告を受けるという、一種のPDCAサイクルを今回実現できるのではないかと思っています。
 これまでは重大な結果が発生しなかったことをもって、それでよしとしてきた、そういう雰囲気というのは、それは私は否定できなかったと思います。ただ、今回それを大いに見直そうと、そういうことでございます。

問  長官にお伺いします。7月12日の会見の段階で、大変重く受け止めるというような発言をされたかと思うのですが、辞意を固めたタイミングについて、既にどの段階でお考えになっていたのかということをお伺いしたいのと、あと、国家公安委員会の中で、かなり厳しい意見も出たというお話があると思うのですが、長官の進退も含めて、警察庁側の責任を問う声も上がっていたのかという点についてお伺いできればと思います。

答 (長官)私の進退について、どのタイミングで意思を固めたかというお話でございますが、これは私の内心の問題でございますので、ここでお答えすることは控えたいと存じます。
 また、国家公安委員会で厳しい御意見が出たのは、あくまでも、この警護の現場における対応であるとか、正に計画策定の段階、あるいは決裁過程の問題であるとか、そういったことについて、非常に厳しい御意見を賜ったところでございます。
 他方で、警察庁におきましては、この具体的な警護については、直接関与していないというようなこともございまして、個々の職員について、何らかの責任を問議すべきという御議論はございませんでした。

問  長官にお伺いします。人心を一新するという理由をお伺いしたのですが、今回の長官の進退に関しては、今回の問題の責任をとっての辞職という理解でよろしいでしょうか。

答 (長官)様々受け止め方はあろうかと思いますが、私は先ほどから申し上げておりますとおり、この新たな警護要則を定め、新たな警護警備の在り方で、これから進めていくのだという状況の中で、新しい体制で、正に人心を一新した新しい体制で、この警護警備に臨むのが当然であろうという思いで、ここで職を辞する決意をしたということでございます。