国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 令和5年6月1日(木)15:11~15:23

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。案件については、和歌山県和歌山市雑賀崎漁港における警護に関する報告書についてなどでございました。
 この報告書に関してですが、令和5年4月15日に和歌山市内で実施された岸田内閣総理大臣の警護中に爆発物が投てきされた事案について、本日、警察庁から報告書が提出されました。
 国家公安委員会においては、警察庁から4月以降毎週、報告を受け、事実関係の確認、分析・評価、警護に関する課題及びその解決策について、活発な議論を重ねてまいりました。
 その上で、報告書では、警護対象者が参加する講演、演説等については、爆発物等が攻撃の手段として使用されるおそれがあることを想定した上で、これまで以上に警護対象者と聴衆との間の距離を十分かつ確実に確保するとともに、手荷物検査等の安全対策がより実効的に講じられる必要がある旨が記載されております。
 また、今後の措置として、
○ 主催者等への要請項目の明確化、適切な場所の選定など、主催者等と緊密に協力した警護の実施
○ 聴衆の安全確保
について記載されております。
 このほか、警察庁からの報告を受けて、国家公安委員会で合意した文書、ステートメントにつきましては、お配りしているとおりであります。
 要人の警護に責任を有する警察を所管する大臣として、警護要則に基づく措置を確実に講じて、警護になお一層万全を期すよう、改めて警察を指導してまいりたいと考えているところでございます。以上です。

問  大臣にお伺いします。今お話がありましたとおり、4月に和歌山で起きた岸田総理への爆発物の投てき事件の報告書が公表されましたが、これまで国家公安委員会でどのような議論がなされたでしょうか。また、報告書を踏まえ、要人サイド、警察サイドそれぞれに、どのようなことを求めていくでしょうか。更に報告書には、警察が演説場所について、屋内会場を優先的に選定するよう働き掛けることや、グータッチ等を実施することは避けることが望ましい旨を説明するといったところなど、政治家側にとっては、なかなか受け入れるのが難しいことも今後の取組として盛り込まれておりますが、大臣は政治家としてどのように受け止められ、対策の実効性が確保できるとお考えになるかどうかをお伺いできればと思います。

答 (大臣)本事案の発生以降、今日まで、
○ 事実関係の確認
○ 「計画段階での課題」と「現場における課題」についての分析・評価
○ 聴衆の安全確保に関する課題についての分析・評価
○ 課題に関する解決策
などについて警察庁から報告がなされ、本日、報告書が提出されたところであります。
 この過程で、委員からは、
○ 爆発物が聴衆の中に持ち込まれれば、聴衆も被害に遭うことになることから、爆発物を所持している者を警護対象者や聴衆に接近させてはならない。
○ 警護に責任を有する警察として警護対象者の安全を確保する必要があるが、政党にも警護対象者の安全確保に向けた協力を働き掛けてほしい。
○ また、警護対象者の安全確保を図りつつ、あわせてその場におられる聴衆の安全確保を図る必要がある。
といった様々な意見があり、活発な議論を重ねてきたところであります。
 お尋ねの件に関しては、警護対象者にあっては、報告書で示されている安全対策について、個別の現場の状況、警察からの働き掛け等に応じて、適切に対応していただきたいと思っているところであります。
 また、警護について責任を負う警察に対しては、主催者と十分に連携して安全対策を講ずるとともに、現場における警護員の警戒等を通じて、警護対象者及び聴衆の安全確保に万全を期すよう指導してまいりたいと思います。
 政治家側にとっては、なかなか受け入れづらいという御発言がございましたが、しかし、昨年の安倍元総理、今年の岸田総理へのこういう事件を踏まえるならば、政治家側、私も政治家でございますが、十分、より安全と言いますか、聴衆の方も含めて、そういう思いを共有してるかと思いますので、そこのところは、十分警察と主催者とは、話し合うことによって良い方向に行くものと期待しております。

問  長官にお尋ねします。報告書についてですが、昨年7月に安倍元総理銃撃事件があって、それを踏まえ教訓として警護の在り方を全面的に見直して、警護の取組を強化している中で、今回の事件が起きました。そして再度、報告書に至っているわけですが、その経緯を踏まえて今回の報告書をどのように受け止められているか、また、報告書を踏まえてどのように取組を進めていくかお考えをお願いします。

答 (長官)今大臣からお話もございましたが、警察庁としても、昨年制定された新警護要則の下で警護態勢の強化を図っていたにもかかわらず、わずか1年足らずのうちに今回の事案が発生してしまったことを重く受け止めております。
 そうした思いの中で、今回の報告書を取りまとめて、本日、国家公安委員会に提出いたしました。報告書の主なポイントは、2点であります。
 一点目は、演説会の主催者等との連携の強化であります。主催者等が講じる安全対策の実効性を確保するために、警察から主催者等に対して、
 ○ 適切な演説会の実施場所を選定していただく
 ○ そして、その実施場所に応じた安全対策を講じていただく
ということを個別具体的に働き掛けを行った上で、主催者等と警察の双方が講ずる措置を警護計画にしっかりと盛り込むことといたしました。
 二点目は、聴衆の安全確保であります。主催者等に対して、万一の場合に備えて避難経路の事前設定を求めるといったことや、私ども警察としても、警護員に有事の際の避難誘導に当たるべき任務を明確に付与する、こういったことを通じて、聴衆の安全確保に関する警察としての対応を明確化した上で警護計画に反映することといたしました。
 警察といたしましては、主催者等とこれまで以上に緊密に連携した警護を実施することにより、警護対象者と聴衆、双方の安全確保に万全を期してまいりたいと考えています。

問  5月25日に長野県中野市で起きた事件ですが、この事件では警察官2人を含む4人が亡くなられたが、まず、長官としての受け止めと今後の対応についてお伺いできればと思います。また、被疑者が所持していた猟銃の許可手続には問題がなかったということですが、新たな規制等を検討されるか、また、銃等に対する警察官の安全確保策について長官のお考えをお伺いできればと思います。

答 (長官)今お尋ねの事件でありますが、殺傷能力の極めて高い刃物や猟銃が凶器として用いられ、臨場した警察官2名を含む4名の方の尊い命が一瞬にして奪われてしまいました。
 このような蛮行に対しては強い憤りを禁じ得ません。お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々に心よりお悔やみを申し上げたいと思います。
 この2名の警察官の殉職につきましては、正に痛恨の極みであります。彼らの高い使命感には、心打たれるものがあります。
 今、お尋ねのありました猟銃等の所持許可の手続でございますが、それ自体につきましては、法令の規定にのっとって行われており、現時点、問題があったとの報告には接してはおりませんが、いずれにしても現在、長野県警察において、捜査を進めているところであります。
 まずは、全容解明に向けて捜査に鋭意取り組んでまいりたいと考えますが、その上で、捜査の結果も踏まえながら、どのようにすれば今回のような事案を防止できるのか、という点についても検討を進めてまいりたいと考えております。