国家公安委員会委員長(代理)記者会見要旨

1 日時 令和6年3月21日(木)11:54~12:02

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。松村委員長が欠席のため、私が代理をいたします。案件については、令和5年における組織犯罪の情勢についてなどがございました。以上でございます。

問  長官にお尋ねします。組織犯罪情勢がまとまったところです。暴力団勢力は引き続き減少している一方で、匿名・流動型犯罪グループが暴力団と連携しながら、協力しながら活動を活発化させている状況にあります。薬物情勢は、大麻の検挙が初めて覚醒剤の検挙を上回るという、そういう意味でも昨年の組織犯罪情勢は転換期に当たる年と思います。こうした情勢への受け止め、そして取組についてのお考えをお願いします。

 答 (長官)組織犯罪情勢は、大きく変容しております。特に今お話がございましたが、「匿名・流動型犯罪グループ」、それから「大麻」、この2つがキーワードであるというふうに思います。
 まず1つ目の「匿名・流動型犯罪グループ」についてでありますが、これは非常に匿名性が高い、組織の構成員すらはっきりしない、特に犯罪の実行役をその都度SNSなどで募集してその者らに犯罪を実行させるというような特徴があるグループであります。団体の構成員がはっきりとしている暴力団を中心に据えてきた組織犯罪対策の在り方を大きく転換させなければならない、そういう今時期にあるんだろうというふうに思います。
 これに対決する我々警察の組織体制、これも変えていかなければなりません。組織犯罪対策部門が中心になるのはもちろんでありますが、風俗関係等の取締部門、サイバー捜査部門、あるいは強盗・窃盗・詐欺等の捜査部門、こうした関係部門が垣根を取り払って一体となって実態解明を図り、あらゆる法令を駆使して取締りを徹底していくことが必要であるというふうに思います。
 それから2つ目のキーワードの「大麻」でありますが、検挙人員が過去最多となりました。統計を取り始めた昭和33年以降、初めて覚醒剤事犯の検挙人員を上回りました。大麻事犯の検挙人員のうち、20歳代以下が約7割を占めております。若年層における乱用拡大が依然として深刻な状況にあるというふうに思います。
 大麻取締法等の一部を改正する法律が今年施行されます。一定の要件の下で新たに施用行為が処罰の対象になるということであります。こうしたことも踏まえまして、警察では、大麻乱用に歯止めをかけるべく、取締りはもちろんでありますが、これに加えて、関係機関と連携をしつつ、若年層が大麻の有害性を正しく認識できるように、改正法の趣旨を踏まえた積極的な情報発信や啓発、それにSNS等インターネット上の大麻取引情報の排除等を一層推進していきたいと思います。
 組織犯罪は治安に対する重大な脅威であります。警察としては引き続き情勢の変化に的確に対応できるように、体制の整備・構築を進めていきたいと考えております。

問  長官にお伺いします。「キャッシュレス社会の安全・安心の確保に関する検討会」の報告書がとりまとめられました。クレジットカードの不正利用等が深刻化する中で、警察として今後、その報告書を踏まえまして、どのように取り組んでいくか、お考えをお聞かせください。

答 (長官)社会のキャッシュレス化が進展をしております。そうした中で、令和5年中の状況をみますと、インターネットバンキングに係る不正送金被害が約87億3,000万円と過去最多となりました。また、クレジットカードの不正利用被害額も、特殊詐欺の年間被害額これが約441億円でありましたが、これを超えるペースで増加をしており、過去最多となる公算が強まっております。こうした被害が大きく増加している厳しい情勢をまず前提としなければならないと思います。
 今お尋ねのありました検討会では、このような被害を減少させるための効果的な対策として、サービス利用者が被害に遭わないような環境の整備、もう1つが警察における対処能力の向上、この2つの観点から、提言をいただいたところであります。
 1点目の利用環境の整備に関しましては、インターネットバンキングに係る不正送金被害の約半分は、暗号資産交換業者が金融機関に設けている口座への不正送金であるという実態がございます。この実態を踏まえまして、既に警察では「暗号資産交換業者への不正送金」の防止に向けて金融機関に対策を要請しているところであります。このほか、フィッシング対策としては、次世代認証技術、例えばパスキーの普及促進を図るといったことなど、フィッシングサイト等にアクセスしないようにするための方策も強化していきたいと考えております。
 2点目の警察の対処能力の向上に関しましては、生成AIを活用してフィッシングサイトの判定を高度化・効率化するための方策でありますとか、EC事業者との間で不正取引に関する情報共有を進める方策等について、具体的な検討を進めているところであります。この検討の結果を踏まえて各種対策や捜査を引き続き強力に推進していきたいと考えております。
  キャッシュレス社会の安全・安心の確保に向けて、関係機関、団体、事業者と必要な調整等を進めつつ、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。