国家公安委員会委員長記者会見要旨
1 日時 令和7年2月6日(木)11:26~11:38
2 場所 警察庁第4会議室
3 概要 本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。案件については、令和6年の犯罪情勢についてなどがございました。以上でございます。
問 大臣にお尋ねしたいと思います。今お話のございました、令和6年の犯罪情勢につきまして、詐欺等の財産犯が前年と比べて約6割増えて4,000億円に達するなど、例年にない特徴もみられました。改めまして、犯罪情勢全体の傾向ですとか特徴について、そして、それらへの大臣の受け止めをお願いいたします。
答 (大臣)刑法犯の認知件数の総数につきましては、平成15年から減少が続いてまいりました。令和3年が戦後最少となったわけでありますが、それから3年連続で増加してきているところでありますが、令和6年は約74万件ということでございました。
この増加している部分については、特徴がありまして、自転車盗や万引き等の窃盗犯が増加してきており、全体を押し上げる結果となっております。街頭犯罪が増加している一方で、侵入犯罪は減少しております。強盗につきましては、認知件数としては横ばいではあるものの、SNS等で実行犯を募集する手口による凶悪な事件が相次いで発生いたしました。財産犯につきましては、被害額が、先ほど御指摘あった約4,000億円と、平成元年以降、平成14年が最も高かったわけでありますが、この水準を大きく超過して、平成以降最も多額となってまいりました。こうした状況が国民の治安の体感に悪影響を与えているものと認識しております。
犯罪の手口の傾向といたしましては、SNS等による犯罪実行者募集のほか、インターネットバンキングやマッチングアプリの悪用等、インターネット上で提供される技術やサービスが犯罪インフラとして悪用される実態がみられ、これらへの対策が喫緊の課題であると認識しております。
こうした社会情勢等に応じて大きく変化する犯罪情勢を的確に捉えた上で、犯罪対策を強力に推進し、「世界一安全な日本」を実現することで、国民の期待と信頼に応えてまいりたいと思います。
問 長官にお尋ねします。昨年の特殊詐欺、それからSNS型投資・ロマンス詐欺の状況がまとまりました。被害が止まらずに非常に深刻な状況かと思います。手口の特徴では、例えば、マッチングアプリを使ったロマンス詐欺の急増、それから、大臣からもございましたが、インターネットバンキングの悪用等もあります。全体の状況をどのように受け止めていらっしゃるか、それぞれの詐欺についての手口や特徴について、それを踏まえて、警察としてどういうふうに取組を進めていくか、国民への注意の呼び掛けも含めましてお考えをお願いします。
答 (長官)大きく4点についてお尋ねをいただいたと思います。まず、詐欺被害の現状認識についてでございますが、先ほど大臣からも御発言がございましたとおり、令和6年の財産犯の被害額は約4,000億円ということで、これは刑法犯の認知件数が過去最悪であった平成14年当時の財産犯の被害額を超えております。
これは、令和6年中の特殊詐欺の被害額が約722億円と、過去最悪であった平成26年の約566億円を大きく上回り、SNS型投資・ロマンス詐欺につきましても、被害額は約1,268億円と、前年の約3倍に増加し、これらの詐欺だけで被害額が約2,000億円に上っていることによるものであります。このように詐欺をめぐる情勢は極めて深刻な状況にあり、このことが国民の体感治安を悪化させる大きな要因の1つになっていると考えております。
これらの詐欺は、人の信頼を逆手に取り、財産を奪い取る卑劣な犯罪であり、匿名・流動型犯罪グループが関与し、多額の犯罪収益を得ているとみられることから、警察にとっては正に喫緊の課題であると認識しておりまして、検挙・抑止の両面で早急に対策を強化する必要があると考えております。
次に、これら詐欺の特徴・手口でございますが、まず、特殊詐欺につきましては、メッセージアプリを利用して偽の警察手帳でありますとか、逮捕状の画像を送り、警察官であると信用させ、捜査に必要であるとした上で現金等をだまし取る手口のオレオレ詐欺が増加しております。また、現金等の交付の形態といたしましては、手渡し型が減少した一方で、振込型の認知件数が前年比で約1.7倍に増加し、特に被害額500万円以上では、インターネットバンキング利用の振込が約6割に上っております。
さらに、インターネットバンキング利用の振込の増加に伴い、窓口での声掛け等の抑止対策の機会が失われていること、それから、インターネットバンキングの利用の振込限度額がATM利用の振込より高額であるといった事情を背景として、1件当たりの被害額が高額になっていること。さらに、被害者を欺罔する際に用いられる手段として、特にオレオレ詐欺におきまして、携帯電話に対する架電が前年比で約14倍となり、全体に占める割合も約4%から約34%に急増しております。さらに、これは特殊詐欺全体でありますが、犯行に利用された国際電話番号は前年比で約3.5倍になり、全体に占める割合も約34%から約59%に急増しているなどの特徴がみられます。
次に、SNS型投資・ロマンス詐欺つきましては、当初の接触手段として、SNS型投資詐欺では、SNS上のバナー広告等をクリックするといったものが典型的な例でありましたが、そういった手口が減少する一方、SNSで見知らぬアカウントからのダイレクトメッセージに応答して、それを契機として詐欺被害に遭ってしまうといった事例が増加しております。また、SNS型ロマンス詐欺におきましては、マッチングアプリのダイレクトメッセージで接触することが増加しております。現金等の交付形態としては、インターネットバンキング利用の振込が認知件数の約6割となっておりまして、全く接触しない形で詐欺被害に遭うという事例がみられるところであります。
次に、警察における対策についてでございますが、まず、取締りにつきましては、これら詐欺事件に関与している匿名・流動型犯罪グループの指示役・首謀者の検挙に向けた捜査を強力に推進する必要があると考えております。具体的には、警察庁の匿名・流動型犯罪グループ対策を担当する審議官を司令塔といたしまして、特殊詐欺連合捜査班、通称TAIT(タイト)を活用した、全国警察が一体となった迅速かつ効果的な捜査を推進するほか、海外当局との捜査共助等の推進による海外拠点の積極的な摘発、徹底した犯罪収益の剝奪等をしっかりと実施してまいりたいと考えております。
次に、抑止対策でございますが、警察としては先ほど申し上げたとおり、詐欺事件による被害額が過去最悪となっていることを大変重く受け止めておりまして、社会全体で対策を講じていく気運を更に醸成し、警察と関係省庁、金融機関、通信事業者、SNS事業者等が連携して対策を一層強化することが大変重要であると認識しております。
具体的には、国際電話の着信のブロック等によって犯人からの電話を直接受けないための方策でありますとか、金融機関における取引モニタリングを活用した被害拡大防止策等を、引き続き、強力に推進するとともに、先ほど申し上げました最新の手口の変化等を踏まえながら、インターネットバンキング申込み時の注意喚起でありますとか、利用限度額引上げの申込みがあった場合の確認の徹底、さらには、マッチングアプリ利用者に対する注意喚起や、アカウント開設時の本人確認の徹底等を、金融機関やマッチングアプリ事業者に働き掛けるほか、関係者が連携して更に効果的な対策を講ずることができないか、鋭意検討を進めて、速やかに実施に移せるものについては行ってまいりたいと思っております。
最後に、国民の皆様にお願いしたい対策でありますが、最近の手口を踏まえ、特に、3点お願いしたいと思います。
第1に、詐欺電話を受けることがないようにするため、海外から国際電話を受けることがない方につきましては、固定電話については国際電話の取扱いを休止する申込みを実施していただくとともに、携帯電話につきましても、国際電話の着信規制が可能なアプリを積極的に利用していただきたいと思います。
第2に、警察官がメッセージアプリで警察手帳や逮捕状の画像を送るといったことは決してございませんので、警察官をかたる者から電話があり、そのような話があった場合には、それは詐欺ですので、絶対に金銭等の要求には応じないでいただきたいと思います。
第3に、SNSやマッチングアプリを通じて連絡を取り合うようになり、直接面識のない人から投資を進められ、インターネットバンキング等で送金するように言われた場合には、詐欺を疑い、すぐに家族や警察に相談をしていただきたいと思います。
このほかにも、SNSやスマートフォンの普及に伴い、犯罪者が、国民の皆さんに容易に接触を図り、詐欺を敢行することが可能となっており、誰もが被害を受ける可能性があると考えております。
警察におきましても、詐欺の手口の変化に応じた情報発信をタイムリーに行っていきたいと思っておりますし、現在行っているものを更に強化してまいりたいと思いますので、国民の皆様には、こうした情報に目を向け、少しでも怪しいなと感じたら、すぐに警察に相談をしていただきたいと思います。