国家公安委員会委員長記者会見要旨

1 日時 令和7年3月13日(木)12:10~12:21

2 場所 警察庁第4会議室

3 概要  本日の国家公安委員会定例会議の状況について申し上げます。案件につきましては、令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等についてなどがございました。以上でございます。

 

問  大臣にお尋ねしたいと思います。盗難特定金属製物品の処分防止法案が閣議決定されましたが、ここに至るまでの経緯や背景、それから、今後法案に期待される効果について、お聞かせいただけますでしょうか。

答 (大臣)昨今、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗が増加をしております。令和6年の金属盗の認知件数が2万701件となりまして、令和2年の約4倍となっています。
 この種の事案の多くは、不法滞在外国人グループらによって広域的・組織的に敢行されており、また、一部の悪質な買取り業者の存在がこれを助長しているなど、治安上の大きな課題となっております。
 そこで、警察庁では、有識者からなる「金属盗対策に関する検討会」を開催し、同検討会の提言を踏まえた形で、法案が先般閣議決定されたところでございます。
 この法案は、一定の金属くずの買受けを行う営業に係る措置や犯行用具規制の新設等を内容とするものであり、法案が可決・成立した暁には、金属くず買受業に係る措置により、窃盗犯による盗品の処分、現金化が困難になることから、金属盗が大きく減少することが期待されるとともに、犯行用具規制により、警察官による、いわば先制的な対処が可能となるものと考えておりまして、かなり抑制効果が期待できるものと考えております。
 今後は、国会において速やかに法案の審議がなされ、早期に可決・成立することをお願いしてまいりたいと思っております。

問  大臣にお尋ねします。今ございました昨年のサイバー情勢、今回の情勢の特徴と大臣の受けとめ、特徴を踏まえて警察として取組をどう進めていくか、お考えをお願いします。

答 (大臣)まず、極めて深刻な状況であるという認識をしております。御指摘の主な特徴といたしましては、国家を背景とする暗号資産獲得を目的としたサイバー攻撃や、金融機関等の重要インフラ事業者等に対するDDoS攻撃によるとみられる被害が相次ぎ発生をしたこと、また、ランサムウェアの被害報告件数が引き続き高水準で推移したこと、そして、SNS上に犯罪実行者募集情報が氾濫したほか、能登半島地震の際には、偽の救助情報等も拡散しております。
 警察においては、これまでも、北朝鮮サイバー攻撃グループによる暗号資産交換業者への攻撃に関する注意喚起、サイバー特別捜査部を中心とした国際共同捜査によるランサムウェア被疑者の検挙、インターネット・ホットラインセンターによる犯罪実行者募集情報の削除依頼の推進等を行い、つまり検挙と抑止の両面から取組を進めてまいりました。
 今後も引き続き、体制や資機材の整備を図りつつ、取組を強力に推進していくことはもとより、今国会に提出されているサイバー対処能力強化法案が成立した場合には、警察においてもアクセス・無害化措置を担うこととなることを見据えて、必要な人材の育成・確保を更に加速化させるなど、国家公安委員会の管理の下、サイバー対処能力の一層の向上を図っていくよう警察を指導してまいりたいと思っております。

問  長官にお伺いいたします。オンラインカジノについての実態調査の結果が公表されました。今回の結果の特徴と受け止めについてお願いいたします。また、あわせて、昨今、芸能人やスポーツ選手等著名人による利用が明らかになるなど、社会に蔓延している実態がうかがえますが、今後、警察としてどのように対処されていくか、御見解をお願いいたします。

答 (長官)御指摘の調査研究の結果でございますが、国内において、オンラインカジノのサイトにアクセスした経験のある方のうち、約75%が実際に金を賭けており、これまでに金を賭けた経験のある者は、推計約337万人、年間の賭額は、推計約1兆2,423億円となっていること、さらには、オンラインカジノで金を賭けた経験のある者のうち、約4割は違法性の認識がなく、約6割に依存症の自覚があるといったことが明らかになっております。
 警察といたしましては、違法なオンラインカジノでの賭博がこのように蔓延している状況を極めて深刻に受け止めておりまして、厳正な取締りを一層推進するとともに、依存症対策といった観点からも、社会全体で更なる対策が不可欠であると認識しておりまして、特に、次の3点について取組を強化したいと考えております。
 まず、第1は、オンラインカジノの違法性についての周知徹底であります。オンラインカジノは、海外において適法に運営されているものであっても、日本国内からこれに接続して賭博を行うことは犯罪であります。引き続き、このことを様々な広報媒体を通じて、分かりやすい形でしっかりと周知をしてまいりたいと思います。
 第2は、違法なオンラインカジノの運営に関与している者に対する取締りの強化です。日本国内から接続し、賭博が行われているオンラインカジノサイトに関しましては、国内の決済代行業者や、オンラインカジノを宣伝することによって獲得したユーザー数に応じて報酬を受け取っているアフィリエイター等が運営に関与しているとみられるところでありますが、これらの者に対する厳正な取締りを一層推進してまいりたいと思っております。
 第3は、オンラインカジノサイトに関する情報を提供している者への対策の強化についてであります。日本語で、オンラインカジノの情報を発信しているリーチサイトやアフィリエイターの実態把握を更に進めた上で、オンラインカジノの利用を勧誘するなどしている者に対しては、そのような行為は賭博の幇助に当たる可能性があるだけでなく、賭博への依存症を助長するものであることから、決して行わないように警察からも働き掛けを行うといったことを、まず行いたいと思っております。さらに、関係省庁と連携いたしまして、日本国内に向けてオンラインカジノに関する情報が提供されることを抑制するための措置としてどのようなことが考えられるか、早急に検討を進めてまいりたいと思っております。
 いずれにいたしましても、警察としてこのような取組を強化することによりまして、社会全体で違法なオンラインカジノに対する対策をしっかりと前に進めていきたいと思っております。

問  長官にお尋ねします。オウム真理教による地下鉄サリン事件から、来週20日で30年が経ち、長い時間経っているわけですけれども、改めまして、この事件、それから、オウム事件に対する受け止め、警察としての取組、それから、時間の経過とともに事件の風化というものが懸念されるわけですけれども、そこをどう防ぐかという点も含めまして、お考えをお願いします。

答 (長官)地下鉄サリン事件の発生から30年を迎えるわけでありますが、改めまして、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族の方々に哀悼の意を表したいと思います。また、負傷された方々、今なお後遺症に苦しまれる方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 本事件は、サリンという殺傷能力が極めて高い有毒物質を使用して、多数の市民を無差別に殺傷した、残虐極まりない犯罪でありまして、国民の皆様には、計り知れない衝撃と不安をもたらしたものと認識しております。
 警察では、これまで、組織の総力を挙げて一連のオウム真理教関連事件の捜査に取り組み、教団代表以下信者多数を検挙したところであります。
 当時の捜査には多くの困難があったものと承知しておりますが、その教訓を踏まえて、各種法令の整備、科学捜査の向上、装備資機材の整備といった対策を推進してきたところでありまして、様々な観点から、その後の警察捜査の在り方に大きな影響を与えた事件であったと認識をしております。
 警察といたしましては、この一連の捜査等によって得られた教訓を今後もしっかりと受け継ぎ、同種事案の未然防止と対処に万全を期すとともに、新たな治安事象にも的確に対応してまいりたいと思います。
 また、先ほど御指摘ございましたが、警察といたしましても、この事件を風化させないことは極めて重要であると考えております。このオウム真理教の後継団体の動向については、引き続き、警察として重大な関心を払い、関係機関と緊密に連携し、実態解明と違法行為の厳正な取締りを行うとともに、警察庁のウェブサイトに、オウム真理教による過去の事件の経過等を掲載して周知を図るなど、特に、この地下鉄サリン事件を知らない若い世代を対象とした広報啓発活動を行ってまいりたいと思っております。今後とも、こうした取組をしっかりと継続してまいりたいと考えております。