定例委員会の開催状況

第1   平成2017日(木)

午前1000分 午前11時35分

第2 出席者 泉委員長、佐藤、吉田、葛西、長谷川、田尾各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、警備局長、情報通信局長

首席監察官

第3 議事の概要

1 議題事項

(1)犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案について

官房長から、犯罪被害者等基本法の趣旨を踏まえ、法目的の拡充等を内容とする犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案について説明があり、原案どおり決定した。

(2)警察捜査における取調べ適正化指針(案)について

刑事局長から、「警察捜査における取調べの適正化について」(平成19年11月1日付け国家公安委員会決定)を受け、警察庁において警察捜査における取調べの適正化に向けた施策を検討し、取りまとめた「警察捜査における取調べ適正化指針(案)」について説明があり、同指針案について審議した。

吉田委員より、「指針にある施策を実施していく上で、一つには、運用の問題がある。取調べに関する監督担当者と監督を受ける捜査担当者との間には一定の緊張関係が必要だと思うが、本部と警察署であればともかく、両者がともに同一の警察署に所属していると、なれ合いになってしまうことはないか」旨、質問し、官房長から、「警察署の取調べをすべて本部の担当者が監督するというのは現実的ではない。監督を受ける者とは別部門の者が監督を担当することにより、一定の緊張関係が出てくると考えられる」旨、刑事局長から、「留置業務は、かつて捜査部門が担当していたが、これを総務・警務部門に移管した。いわゆる捜・留分離であるが、同じ警察署内であっても当初は捜査側から不満が出るくらいに分離は徹底しており、その後、捜査側も分離の趣旨を十分に理解し、両者の適切な緊張関係の下、捜・留分離がうまく機能している」旨の説明があった。

葛西委員より、「適正捜査は、捜査側が自律的に技術を向上させて問題のないように努力していくべきものであり、全体としてうまく機能することが重要なのであって、緊張関係の顕在化自体が目的ではない。取調べとその監督の関係は、潜在的に緊張関係があること、つまり、組織として、取調べに対する監督を行う仕組みがあるということが監督対象行為の抑止力になるということであろう」旨、発言した。

吉田委員より、「指針にある施策を実施する上で、もう一つ、教育の問題がある。捜査員は、『刑事魂』という言葉に表れているように、それぞれ自分のやり方に自信を持っている人が多いはずである。そのような捜査員に対して、適正捜査について教育するといっても、今更何だ、ということになりかねない。どのように教育をしていくのかということも問題ではないか」旨、発言し、刑事局長から、「監督対象行為を列挙して終わりということではなく、これらをどう具体的に示していくかが重要だと考えている。いずれにせよ、任意性を否定されかねない行為については、やってはいけない行為としてきちんと仕分けをすることには意味があると考えている」旨の説明があった。

田尾委員より、「今回の指針では、捜査指揮における問題について、どのように対応すべきだとしているのか」旨、質問し、刑事局長から、「幹部の捜査指揮の在り方への対応としては、幹部の教育や自覚が重要であるが、今回の指針は、取調べそのものに着目するもので、捜査指揮の在り方について、指針の中で直接具体的に言及しているわけではない」旨の説明があった。

佐藤委員より、「取調べについての苦情の申出が監督対象行為の発見の発端となることが多いのではないかとの説明があったが、そうであるならば、苦情についての報告の仕方や記録の仕方にも見直しが必要になるのではないか」旨、質問し、官房長から、「監督対象行為に係る苦情の取扱いなどについて整理する必要がある」旨の説明があった。

長谷川委員より、「富山事件及び志布志事件に共通した捜査上の問題点として、私が最も重要だと考えるのは、物的証拠、実証的根拠に重きが置かれず、被疑者の供述を偏重している点にあるように思う。人間の心理として、自分が証明しようとしていることに肯定的な証拠は重要視するが、否定的な証拠は見逃す傾向がある。両事件はそういう面が悪く働いた結果ではないか。取調べの適正化はきちんと行うべきであるが、物的証拠に重きを置くということを再徹底すべきである」旨、発言し、長官から、「委員のご指摘は当然の前提である。その上で、物証が得にくい事件や構成要件上立証に供述が不可欠な事件など様々な事件があり、取調べが重要であることは間違いないところであるが、その取調べの在り方が問われている。今回の指針は、そのような中で、適正な取調べをいかに実現していくかについて取りまとめたものである」旨の説明があった。

佐藤委員より、「取調べの適正化に向けた施策の検討過程で、警察庁から都道府県警察に対して意見照会を行っているが、都道府県警察は、回答に当たって各都道府県公安委員会の意見を聞いているのか」旨、質問し、長官から、「逐一確認したわけではないが、当然、それぞれ公安委員会にも諮っていると思う」旨の説明があった。

委員長より、「本件については、本日の議論をしっかり受け止めていただき、次回の定例会議でもう一度議題としたい」旨の発言があった。

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)イラク警察研修(鑑識)の実施について

官房長から、「1月21日から29日までの間、イラク内務省警察本部等の警察職員6名を対象に、鑑識分野に焦点を絞った研修を実施する」旨の報告があった。

(3)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「鳥取県警察の警部補が、平成19年12月21日、酒酔い運転をした事案に関し、同県警察は、1月17日、同警部補を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、上司を本部長注意の措置とする予定である」旨の報告があった。

(4)「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方について」の取りまとめ及び意見の募集について

生活安全局長から、平成19年10月に設置された「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止研究会」(前田雅英座長)が取りまとめた「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方について」と題する報告書の概要等について報告があった。

(5)交番相談員運営要綱の改正について

生活安全局長から、交番相談員をより一層効果的に活用するため、物件事故報告書の作成補助及び通学路等における子どもの見守り等の活動を新たに交番相談員の行う活動に加えることを内容とする交番相談員運営要綱の改正について報告があった。

(6)「富山事件及び志布志事件における警察捜査の問題点等について(案)」について

議題事項(2)の「警察捜査における取調べ適正化指針(案)について」と併せて、刑事局長から、富山事件及び志布志事件が抱える警察捜査の問題点等を抽出し、取りまとめた「富山事件及び志布志事件における警察捜査の問題点等について(案)」について報告があった。

田尾委員より、「志布志事件の捜査の問題点の中で、捜査指揮の問題として、『細部にわたり捜査状況を掌握していた警部が、捜査途中で長期間にわたり自ら被疑者取調べに従事することもあった』との記述があるが、これはどういうことか」旨、質問し、刑事局長から、「捜査全体を把握し、運営・指揮する立場にあるはずの捜査幹部が、一人の被疑者の取調べに没頭してしまうなど、捜査指揮全体をマネジメントする体制が不十分であったということである」旨の説明があった。

吉田委員より、「選挙違反事件は、本部長指揮事件であるが、本部長は、最高責任者として、自分が指揮しているという当事者意識をもって、実質的な捜査指揮を行っているのか。形式に流れるということはないか」旨、質問し、長官から、「一般論で言うと、国政選挙の取締りの場合には、本部長がすべての警察署長を招致して個別に検討会を行った上で事件判断をするなど、本部長自身の指揮がないと本部長指揮事件の捜査は前に進まない。本部長に当事者意識がないということはあり得ない。むしろ、捜査の現場からやや距離を保ち、大局を見て、引くべきは引き、止めるべきは止めるという冷静な判断ができるかどうかが問題である」旨の説明があった。

(7)「自転車通行環境整備モデル地区」の指定について

交通局長から、各都道府県に「自転車通行環境整備モデル地区」を指定し、今後の自転車通行環境整備の模範となる事業を推進する旨の報告があった。

(8)「交通事故死ゼロを目指す日」に係る交通対策本部決定について

交通局長から、昨年12月に取りまとめられた「生活安心プロジェクト」の中で、交通安全に対する国民の更なる意識の向上を図るため、新たな国民運動として「交通事故死ゼロを目指す日」を設けることとされたことを受け、その実施日及び実施内容について定めた交通対策本部決定(平成20年1月11日)の概要等について報告があった。

3 その他

(1)刑事局長から、「暴力団排除運動の中心となっていた会社役員が、昨年10月19日、鹿児島市内の路上で刃物様のもので刺された傷害事件について、鹿児島県警察は、捜査本部を設置して捜査中のところ、実行犯1名を割り出し、今月16日、逮捕した」旨の報告があった。

(2)吉田委員より、栃木県警察の機動捜査隊員が、今月14日、コンビニのトイレ内にけん銃等を置き忘れた事案に関し、「現在、銃砲管理の徹底に向けた総点検を実施している中で、このような事案が起きたことは誠に遺憾である。しかも、帰隊後も置き忘れたことに気が付かなかったというのはどういうことか。けん銃や弾の管理に問題はないのか」旨、発言し、刑事局長から、「事実関係をきちんと把握した上で適切に対応したい」旨の説明があった。

委員長より、「同種事案の再発防止のため、具体的な対策を検討してほしい」旨の発言があった。