定例委員会の開催状況

第1   平成20年1225日(木)

午前10時00分 後005

第2 出席者 佐藤委員長、佐藤、吉田、葛西、長谷川、田尾各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、警備局長、情報通信局長

長官官房審議官(交通局担当)、首席監察官、

国家公安委員会会務官、情報公開・個人情報保護室長

第3  議事の概要

  議題事項

(1)        人事案件について

官房長から、「12月26日付け地方警務官2名の人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(2)「国家公安委員会及び警察庁における政策評価に関する基本計画(案)」等について

官房長から、「国家公安委員会及び警察庁における政策評価に関する基本計画(案)」、「平成21年度政策評価の実施に関する計画(案)」、「平成21年度実績評価計画書(案)」及び「総合評価書 警察による国際協力の推進(案)」について説明があり、原案どおり決定した。

(3)行政文書不開示決定及び保有個人情報不開示決定に係る異議申立てに関する決定について

国家公安委員会会務官から、国家公安委員会委員長が行った行政文書不開示決定に対してなされた平成20年6月20日付けの異議申立て並びに国家公安委員会委員長が行った保有個人情報不開示決定に対してなされた平成20年4月18日付け及び6月20日付けの異議申立てについて、それぞれ、情報公開・個人情報保護審査会からの答申を踏まえ、棄却することとしたい旨の説明があり、原案どおり決定した。

(4)国家公安委員会委員長に対する異議申立てに関する情報公開・個人情報保護審査会への諮問について

国家公安委員会会務官から、国家公安委員会委員長が行った行政文書及び保有個人情報の不開示決定(いずれも形式不備のための不開示)に対して平成20年10月9日付けでなされた異議申立てに関し、それぞれ、行政機関情報公開法第18条及び個人情報保護法第42条の規定に基づき、情報公開・個人情報保護審査会に諮問を行うことについて説明があり、原案どおり決定した。

(5)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「12月18日の国家公安委員会の審査の要求を受け、警察庁懲戒審査会は、12月22日、福島県警察の警視正によるセクシャル・ハラスメント事案の審査を行った」旨の説明があり、その決定事項が答申された。

これを受け、吉田委員より、「処分については、答申された内容でよいと思う」旨、長谷川委員より、「処分はこれでよいが、組織内部で、セクシャル・ハラスメントが発生するような文化にならないように取り組んでほしい」旨、発言し、同警視正を減給処分とすることを決定した。

(6)犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案に対する意見の募集について

刑事局長から、エクスパック等を利用して現金等を郵便物受取サービス業者へ送付させる手口の振り込め詐欺事案等に対処するための犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令案に対する意見公募手続について説明があり、原案どおり決定した。

(7)「道路交通法改正試案」等に対する意見の募集について

長官官房審議官(交通局担当)から、高齢運転者の交通安全を支援する対策を更に充実させるための道路交通法改正試案等に対する意見公募手続について説明があり、原案どおり決定した。

(8)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。

 2  報告事項

(1)警察庁長官に対する開示請求の状況等について(行政機関情報公開法関係)

情報公開・個人情報保護室長から、12月19日までの間に警察庁長官に対してなされた行政文書の開示請求の状況及び開示請求に対する決定について報告があった。

(2)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(3)犯罪対策閣僚会議(第12回)の開催結果について

官房長から、12月22日に開催された犯罪対策閣僚会議(第12回)の内容等について報告があった。

(4)平成21年度警察庁予算(案)及び平成20年度補正予算(第2号)(案)の概要について

官房長から、平成21年度警察庁予算(案)及び平成20年度補正予算(第2号)(案)の概要について報告があった。

(5)監察の取扱い事案について

首席監察官から、警視庁の巡査長が被留置者から要求され、居室内にたばこ、携帯電話等を提供するなどした事案に関し、警視庁は、12月26日、同巡査長を停職処分とするとともに、監督責任等として、上司4名を警務部長訓戒等の措置とする予定である旨の報告があった。

葛西委員より、「この事案は基本的なことができていない典型であり、問題点は3つに要約できる。1つめは、そもそもこの人物が警察官として適性を欠いているということ。2つめは、彼は上司ではなく被留置者の言うことを信じた、つまり、組織内で上司に対する信頼感が失われているということ。3つめは、あまりに無知であったということ。悪い人物の要求に一つ応じれば、次々とエスカレートしてすべてを失うということは、世の常識であるが、警察のように悪と対峙する組織では、基本中の基本であるはずである。それが十分教えられていなかったということである。最も基礎的な部分が弱いという典型例であり、戦訓として徹底すべき点が凝縮されている事案である」旨、発言した。

(6)平成21年における街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策の基本方針について

生活安全局長から、本年11月末までの治安情勢及び平成15年1月から推進してきた「街頭犯罪及び侵入犯罪の発生を抑止するための総合対策」の推進状況を踏まえて決定した平成21年における街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策の基本方針について報告があった。

(7)平成20年(1月~11月)の110番通報の概要等について

生活安全局長から、本年11月末現在で、約814万件(前年同期比-0.8%)の110番通報を受理したが、各種照会等緊急の対応を要しないものが全体の約25.6%であったことから、「110番の日」における広報活動等により、その適切な利用を促進することとしている旨の報告があった。

(8)銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律の一部施行に向けた準備状況について

生活安全局長から、12月5日に公布された銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律のうち、所持の禁止の対象となる剣の範囲の拡大に係る規定が平成21年1月5日から施行されることに伴い、その施行に向けた準備状況について報告があった。

(9)高齢運転者の支援に関する検討委員会報告書について

長官官房審議官(交通局担当)から、9月から4回にわたって開催された「高齢運転者の支援に関する検討委員会」において報告書が取りまとめられた旨の報告があった。

10)路車協調による安全運転支援システムの実用化に向けた大規模実証実験の実施について

長官官房審議官(交通局担当)から、官民連携した安全運転支援システムの実証実験が各地で計画されており、東京では、来年2月、マスコミ、一般参加者を対象とした展示会、公道試乗デモ等が実施される旨の報告があった。

11)麻生内閣総理大臣の伊勢神宮参拝に伴う警護警備について

警備局長から、麻生総理大臣は、平成21年1月4日、伊勢神宮参拝のため、三重県を訪問する予定であり、これに伴い、所要の警護警備を実施する旨の報告があった。

3 その他

(1)刑事局長から、厚生労働省関係者に対する殺人等事件及び千葉県東金市における女児死体遺棄事件の捜査状況について報告があった。

(2)吉田委員より、「本年最後の定例会議なので、来年を展望して3点申し上げたい。まず、政治情勢では、来年は衆議院総選挙が行われる。現在も既に政治のきしみが相当出ており、場合によっては政権交代とか政界再編といったことも起こり得るのかもしれない。政権が変わるようなことがあれば、旧悪を暴くというようなこともあって、いろいろな動きが出るかもしれない。さらに、経済情勢も深刻であり、このような時期であるからこそ、特に治安が大切である。警察としても、正念場ではないかと思う。

次に、国家公安委員会・警察庁についてみると、警察改革の時期から10年が経過することになる。当時、批判を受けた組織的な問題点やいわゆる悪しき慣行などの問題は、ほぼ一掃され、かなりの成果を上げたと思う。一区切りついたという感じがしており、国家公安委員会としても、警察を管理する上での新たな戦略目標のようなものを樹立する時期ではないかと考えている。

3つめは、制度的なものとしては、5月から始まる裁判員制度がある。素人が裁判に参加するというものであり、大きな改革である。従来にない体験をすることになるかもしれないが、適切に乗り切っていただきたい。

次に、本年に関して申し上げる。今年最大の眼目であった北海道洞爺湖サミット警備は、問題もなく大変よくやった。また、北京オリンピック聖火リレーは、世界各地で混乱があった中で、長野ではランナーが無事に走ることができた。刑事関係では無差別通り魔殺人事件が次々に起きた。また、深夜帯に引きずり殺人ともいうべきひき逃げ事件が発生した。いずれも犯人を検挙したが、もし通り魔事件の犯人を取り逃がすようなことになれば、社会不安は計り知れないものである。また、交通死亡事故もピーク時の3分の1に減少させるなど、総じて言うならばよくやった、やればできるじゃないかと感じている。

他方、残念であったのは、最近、情けない警察官が散見されることであり、真剣に考えなければならない。法で許されて、けん銃も警棒も手錠も携行しており、普段、柔・剣道や逮捕術の訓練もしている警察官が、少年に逆襲され、けん銃を奪われてしまうようでは困る。精強であるはずの警察官に対する信頼が失われてしまう。けん銃の訓練なども、もみ合いの現場を想定するなど、より実戦的なものとし、けん銃や警棒を有効に使えるようにすべきではないかと思う」旨、発言し、官房長から、「けん銃の訓練は、最近では、映像を使って実際の場面を想定した実戦的訓練も行っている」旨の説明があり、長官から、「一人一人の技量を高める訓練ももちろん必要だが、組織として的確な対応ができるようにすることも重要であると思う。神奈川県の松田署で一時けん銃を奪われた事案について言うと、2対1でやられてしまうということも問題ではあるが、そもそも、深夜帯の暴走族取締りを松田署のような小規模署のパトカー1台で行うというところに根本的な問題がある。通信指令の適切な運用により、本部の交機隊の応援を求めるなどしないと、多勢に無勢でいかんともし難いということが生じてしまう」旨の説明があった。

(3)葛西委員より、「経済情勢が悪化し、日本企業も、今はレイオフなどをやるようになっている。昔は非正規雇用は少なかったが、最近は派遣労働の自由化が進み、そういった層がレイオフの対象となっている。私は、不況が短期間で克服されて、元のような状況になるということは恐らくなくて、現在のような状況は、今後10年くらいは続くのではないかという覚悟をすべきではないかと思っている。ちょうど、19世紀の体制から20世紀の体制へと移行する動きは、1914年に第1次世界大戦が起こり、ロシア革命があり、1930年代の大恐慌があり、さまざまな思想的な過激化などがあって、最終的には第2次大戦になった。31年間かかって、20世紀の米ソ冷戦体制ができた。今回は、1992年にソ連が崩壊し、一時的にユーフォリアが生じたが、今や大不況になっている。アメリカの金融工学を駆使したバブル的な需要に牽引されて色んな国がものすごく栄えているように見えたが、いざはじけてみると、全部それはアメリカのバブルによって潤ってきたということが分かってしまった。これに代わる実像が出てくる可能性はほとんどなく、デフレ型の経済は相当長く続くのではないか。前回の例で言えば、第2次大戦が起こって初めて元に戻ったのであり、そうでない場合は、生活のスタイルが一変するような大きな変化がないと、事態は進展しないのではないか。そうなってくると犯罪の形もかなり変わってくる。例えば、しばらく忘れられていた極左やカルト宗教といったタイプのものが活躍しやすい環境が、来年以降、だんだん深刻化するのではないか。それ故、秋葉原事件のような不可解な事件も起こるが、一方、極左と極右の連携というような動きも出るのではないか。不穏な動きがやりやすいような環境が出てきたというようにそういう勢力自身が思っている、という感じがある。したがって、私は、警察は、個別の事件を処理するというだけではなく、情報収集を進め、時代の潮流のようなものを見逃さないようにし、それに対する対応を怠らないようにしてほしい。そういう時期に差し掛かりそうな気がする。現下の状況は簡単には変わらない。日本だけではなく世界中で政治が混乱しているが、日本は特に著しい。そういう中で、何が起こるか。杞憂であればよいが、考えておいた方がよいと思う」旨、発言し、長官から、「個人的見解であるが、来年の課題は色々あるものの、そのような当面の課題とは別に、世界的な金融危機が我が国の実体経済にも大きな影響を与えており、こういう情勢を踏まえ、もう少し中長期的に、治安のかく乱要因としてどのようなものがあるか、そのような不安定化要因を除去する方策があるのかどうかなど、先を見越して幅広く検討するチームを庁内に設置して検討する必要があると考えている。最終的な検討結果をどれくらいオープンにできるのかは別にして、議論しておかなければならない。派遣労働などの実態も、昔と比べて大きく変わっていることなどは、ニュースなどを見て知るような状況である。幅広く、いろいろな方の意見も伺い、今後どうなっていくのかということを、まずは手探りででも検討した上で、方向性を考える必要があるのであれば、考えていきたい。まだ具体像があるわけではないが、年が変わったらもう少し考えてみたい」旨の発言があった。