定例委員会の開催状況

第1   平成210日(木)

午前10時00分 午前1155

第2 出席者 林委員長、佐藤、吉田、葛西、長谷川、田尾各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、

警備局長、情報通信局長

首席監察官、国家公安委員会会務官

第3  議事の概要

  議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「9月20日付けを始めとする地方警務官等150名の人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(2)犯罪被害者支援法施行規則の一部を改正する規則案について

官房長から、8月7日から9月5日までの間に実施した犯罪被害者支援法施行規則の一部を改正する規則案に対する意見募集の結果及び同規則案について説明があり、原案どおり決定した。

(3)国家公安委員会委員長に対する行政文書開示請求に関する決定について

国家公安委員会会務官から、国家公安委員会委員長に対して8月17日になされた行政文書の開示請求に関し、国家公安委員会においては、開示請求に係る行政文書を保有していないため、不存在につき不開示とする旨の説明があり、原案どおり決定した。

(4)国家公安委員会委員長に対する異議申立てに関する情報公開・個人情報保護審査会への諮問について

国家公安委員会会務官から、国家公安委員会委員長が行った行政文書の開示決定に対して1月16日付けでなされた異議申立てに関し、行政機関情報公開法第18条の規定に基づき、情報公開・個人情報保護審査会に諮問を行うことについて説明があり、原案どおり決定した。

(5)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。

  報告事項

(1)警察庁長官に対する開示請求の決定等について(行政機関情報公開法関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関係の開示請求に対する決定について報告があった。

(2)時代の潮流と治安上の課題に関する検討会中間報告書について

官房長から、警察大学校警察政策研究センターに置かれた検討チームが、社会経済的諸条件の変化が治安に与える影響について検討した結果の報告があった。

吉田委員より、「一度目を通したが、大きなサプライズはなかった。しかし、警察は過去のデータを分析することには実績があるが、未来の動きを予測するという観点で書かれた報告書はこれまでにないことであり、いい観点だと思う。大綱方針を決めるとか、長官であれば、年頭の訓示のとき、裏付けがあれば、より説得力を増すと思う。今回は警察政策センターでまとめたが、今後もどこの部局でもいいが、アニュアルレポートのような形で出せるようにならないか」旨の発言があり、官房長から、「過去においては、その時代を見据えてこれから何をすべきかという発想で、70年代には『70年代の警察』、80年代には『80年代の警察』というものを作成していたが、最近は作成していない。アニュアルレポートのような形にするのは困難であるが、いずれ時代の流れの中で警察が何をすべきかというものをまとめることが今後必要となってくるのではないか」旨の説明があった。

葛西委員より、「私は、吉田委員とは逆の印象を持っている。重回帰分析という手法で分析をしているが、データがあって真ん中を想定するときには当たる確率も高いが、将来を想定する方法としては不適切ではないか。重回帰分析で犯罪の傾向が分かれば、警察はいらないのではないか。経済が停滞すれば、経済事犯が増えるということは重回帰分析でなくても分かることである。地べたを歩いて情報を取るとか、あるいは直感的、大局観に基づいて今後どういう傾向となるのかという脅威の本質を見極めることが重要ではないか。皮膚感覚、直感、大局観などを備えるように幹部をいかに訓練するかということが一番大切なことだと思う」旨の発言があり、次長から、「情勢をどう認識して、どう分析していくかについては色々な方法があり、重回帰分析は一つの方法、検証方法であると思っている。色々な指標を使いながら、今後の治安の流れがどうなっていくのかを考える、そういう癖を付けることが大事であり、今回は一つの試みと理解していただきたい」旨の説明があった。

長谷川委員より、「日本には、警察や政府とは独立に、法律、心理学、社会学、経済学と全てを集めた統合的なものとして社会の犯罪を見る犯罪学科、犯罪学教室、犯罪学の総合的な講座や研究センターがないということが、大きな問題だと思う。社会現象全体として捉える研究センターや学科もないというのは本来あるべきものが欠けていることから、そういうものができるように働きかけていくことが今後大事ではないかと思う」旨の発言があった。

(3)監察の取扱い事案について

首席監察官から、警視庁の巡査長が同僚の腕時計を盗んだとして8月20日に通常逮捕された事案等に関し、警視庁は、9月9日、同巡査長を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、上司を警視総監注意の措置とした旨、福岡県警察の巡査部長による飲酒ひき逃げ事案に関し、同県警察は、9月15日、同巡査部長を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として、上司を本部長訓戒の措置とする予定である旨及び今回の福岡県警察の飲酒ひき逃げ事案を始め、最近、警察職員がアルコール依存状態にあったことが疑われるような事案が複数発生していること等を受けて、飲酒運転事案の絶無について通達を出す予定である旨の報告が、交通局長から、福岡県警察の事案に関し、捜査経過の報告があった。

吉田委員より、「飲酒運転事案の絶無について通達を出さざるを得ないというのは実に情けない話である。こうした不祥事を起こす警察官に言いたいのは、日本人というのは昔から恥の文化を持っている。こんなことをやると個人の恥、家族の恥、社会の恥だということで、踏みとどめてきた。それが最近すごく希薄になったような感じがする。恥を知れと大きく言いたい」旨の発言があり、長官から、「全く情けない話である。今回の通達は、アルコール依存が疑われる職員による飲酒運転事案の構造にメスを入れ、鋭く切り込もうとしている」旨の説明があった。

葛西委員より、「アルコール要注意人物については常時見ているが、トラブルを起こすことが多い。気が付く、監視する、指導するところまでいくが、ちゃんと止めるためには、あと一つ何かが不足しているような感じがする。通勤で車を運転してはいけない、禁止するというのはいいと思うが、命令としての効果があるのか」旨の質問があり、首席監察官から、「通勤であることから、広い意味で職務の範囲内に入ると考えている。福岡県警察では、職員にも健康診断の受診義務があり、アルコール依存の場合は治療する努力義務があるということを強く言って、それにも従わなければ、処分を考えたいとさらに踏み込んでいる」旨の説明が、長官から、「今までは単に指導であったが、指導に服さない場合は次の段階に上がるとなれば、アルコールを断つのではないか」旨の説明があり、佐藤委員より、「アルコール依存状態になり、健康体で職務することができないということは、警察官としての適格性を失っているということであり、それに応じた対応をしていかなければならない」旨の発言があった。

(4)電車内における痴漢事犯対策の推進状況について

生活安全局長から、電車内における痴漢事犯対策について、大規模都府県警察における最近の主な取組みと今後の取組みの報告があった。

葛西委員より、「防止対策が色々とあるが、極めて抽象的であり、やっているという形にはなるが、実効的な抑止力にならない気がする。監視カメラを付けることにも抵抗が強いと思うが、付けたところで顔は写るが、下の方が写らないのではないか。痴漢の被害に遭う人は大抵繰り返し遭うとの話であり、また、痴漢をする方も繰り返すという例が結構あるとのことである。その情報を受け、例えば、女性の警察官を被害者の傍に配置し、現行犯で逮捕して、一罰百戒で厳罰に処するというのが一番効果的ではないか」旨の発言があり、官房長から、「痴漢事犯については、今年最高裁で無罪事件が出たことを契機に既に通達を出し、委員御指摘の方法でも対応しているところである。一罰百戒的な検挙を含め、効果的な抑止策、防止策を組み合わせて、この種事犯を減らしていきたい」旨の説明が、生活安全局長から、「同じ女性が何度も被害に遭う例が確かに見られることから、被害申告を警察にきちんとしていただくことも重要である。何度被害を受けても親にも言えない、学校の先生にも言えない、ましてや警察に言えない、ということを悩んでいる人がいると思う。そのような人のために、被害を申告しやすい環境を作るのが大事なことであるので、環境を整えるようにしていきたい。それから、防犯カメラについては、満員の場合、手の動きは写らないと思うが、後の捜査で誰がどこにいたかということは、証拠として使える可能性があると思う」旨の説明があった。

(5)平成21年度総合セキュリティ対策会議について

生活安全局長から、総合セキュリティ対策会議では、「インターネット・オークションにおける盗品の流通防止対策」を平成21年度のテーマとして検討を行う旨の報告があった。

(6)警察大学校専科「取調べ専科」教養の実施について

刑事局長から、「警察捜査における取調べ適正化指針」に基づき、取調べに係る指導的立場にある警察官を対象とする専科教養を実施する旨の報告があった。

長谷川委員より、「警察大学校において取調べ専科の教養を実施することはとてもいいことだと思うが、子どもの犯罪被害者や被疑者に対する事情聴取は、特別に考えなければいけないことである。しかし、テクニックとか本来どうあるべきかについて全警察に浸透していないように聞いたので、子どもに関しても専門的に教養ができればと思うが、どのようになっているのか」旨の質問があり、生活安全局長から、「少年被疑者の取調べは、色々な特殊性もあり、これまでに色んな形で研究してきたものをまとめて、マニュアルのような形で都道府県警察には示しており、また、今の取調べ適正化の観点を踏まえて、各県の指導も行っている」旨の説明があった。

長谷川委員より、「取調べ専科の講師の中には、司法精神学、犯罪心理学の分野の方がいるが、人間が人間と会話をして真実を引き出すということについては、犯罪心理学という部門だけでなくて、社会心理学、認知心理学の分野でも研究は進んでいることから、良い人材を幅広く発掘した方がいいのではないか」旨の発言があった。

(7)第45回衆議院議員総選挙の違反取締状況について

刑事局長から、第45回衆議院議員総選挙の違反取締状況について、検挙状況・警告件数等の報告があった。

(8)芸能界からの違法薬物一掃に向けた取組みについて

刑事局長から、著名な芸能人による薬物事犯が相次いだことや長官による「芸能界関係者には、薬物事犯を一掃するよう再発防止に真剣に取り組んでもらいたい」旨の発言を受け、昨日、芸能関係3団体と警視庁等の関係機関の意見交換会が開催され、芸能界等からの薬物乱用根絶について相互に協力することで合意した旨の報告があった。

佐藤委員より、「芸能界ではこういうことがあっても仕方がないという受け止め方もあるようだが、そのような受け止め方をなくすように努力してもらうことが大事で、その観点から、先日の長官の発言は良かったと思う。また、政府においても芸能人を広報等に使うときには、例えば、宣誓をしてもらうなど、薬物についてはきちっとした対応も考えるべきではないか。後になって、知らなかったではすまないと思う」旨の発言があった。

3 その他

 (1)官房長から、平成21年度補正予算の執行状況等について報告があった。

(2)官房長から、千葉県警察において判明した不適正な経理処理の概要等について報告があった。

 佐藤委員より、「千葉県では、出入り業者の資料と千葉県の資料を突合して確認した結果、今までのような、警察の内部資料の調査のみでは分からなかったことが分かったと理解しているが、今後、全国的に業者の協力が得られる見通しがあるのか」旨の質問があり、官房長から、「本件のような確認の仕方は手がかりの一つと考えている。官庁会計というのは本来手続的に厳格なものであり、判断権者である上司にきちんと確認してもらう必要がある」旨の説明があった。

 葛西委員より、「例えば、事務用品は細かい物品がたくさんあり、年にどれくらい数量が必要で予算がこれだけであるとあらかじめ決めきれるものでなく、あるいはいつ購入するというのを年度予算で完全に仕切れる性格のものでないのではないか。一年前に物品を購入し、そこから使っていくと、不要な物品を購入するという結果にもなりかねない。会計のやり方をもう少しフレキシビリティの高いやり方にルール変更することによって、実態により近くて不正が起こりにくいような仕組みを考えられないか」旨の質問があり、官房長から、「官庁会計としてできないことはできないが、現場のニーズに応じられるような適正な方法を検討していきたい」旨説明があった。

 委員長から、「以前、岐阜県庁の裏金作りが問題になったことがあるが、それと千葉県の事案とは本質的に違うのか」旨の質問があり、官房長から、「平成14年の香川県以降いくつかの事案があるが、1個1個の不正行為の態様はそれぞれ異なっている」旨の説明があり、委員長から、「病原菌が薬に段々慣れてきて一つの薬で死なないのと同じように、段々巧妙になっていくということもある」旨の発言があり、長官から、「岐阜県庁の場合は、正規の予算では認められない経費の捻出目的で行われていたものであったが、千葉県の場合は、会計業務のフレキシビリティのために行われたものもあるようであり、そうした意味においては、岐阜県庁の事案とは大分異なるのではないか」旨の説明があった。