定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成23年2月17日(木)

午前10時00分 午前11時45分

第2 出席者 中野委員長、葛西、長谷川、田尾、髙木、山本各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、

警備局長、情報通信局長

首席監察官

第3  議事の概要

  議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「3月3日付けを始めとする地方警務官等285名の人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「警視庁渋谷警察署の警部補らが、被留置者の身体検査を怠るなどして危険物品を留置施設内に持ち込まれた事案に関し、警察庁長官は、本事案を惹起せしめた監督責任により、同警察署長を懲戒手続きに付する必要があると認め、本日、国家公安委員会に申立てを行う」旨の説明があり、その結果、国家公安委員会において、懲戒審査会に審査を要求する旨を決定した。

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、内容を一部修正の上、その内容を了承した。

  報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)携帯電話販売店に対するフィルタリング推奨状況等実態調査の結果について

生活安全局長から、児童が使用する携帯電話に係るフィルタリングの普及を図るための取組みの一環として、携帯電話販売店に対するフィルタリング推奨状況等実態調査を実施し、その結果を取りまとめたことについて報告があった。

山本委員より、「業者あるいは代理店に対する働き掛けと併せて、保護者に対して、フィルタリングを採用することによって犯罪に巻き込まれる可能性が大きく減るという情報、そして、子どもがフィルタリングを嫌がったとしても、フィルタリングを設置した上で、範囲の設定を調節することにより、犯罪に巻き込まれる可能性が大きく減るという情報が届くような広報を、是非していただきたい。フィルタリングの有無で大きく被害を受ける可能性が変わってくるということが、分かり易く伝わるような報道をしてもらえるような努力もしていただきたいと思う」旨の発言があり、髙木委員より、「調査の結果によれば、業者ごとにばらつきが大きい。もちろん、販売員に対するトレーニングなど下地づくりも必要なので、今すぐどうするというものではないだろうが、成績の悪い業者に対しては、強く要請する必要があると思う」旨の発言があり、田尾委員より、「フィルタリングは、『青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律』においていわゆる努力義務という形になっていて、規制が緩いことから、警察の方でアクションを起こさないといけないというような状況になっているので、これに起因する被害が減らないとか増えていくような状況ならば、未成年に対してはフィルタリングを義務付けるという形にした方が良いのではないかと思うので、その点を含めて検討していただきたいと思う」旨の発言があり、長谷川委員より、「出会い系サイトその他に関して、これだけ警察サイドが苦労している中で、さらにフィルタリングまで警察が主体となって配意しなければならないことに疑問が残る。そもそも、一義的に子どもを守る責任があるのは誰なのかという問題であり、それは親の責任である」旨の発言があり、委員長より、「保護者がしっかりしていれば、フィルタリングに限らず、学校教育を始めとして大部分の問題は解決すると思うが、その保護者の意識をいかに高めるかという努力は、あらゆる分野でしないといけないと思う」旨の発言があり、生活安全局長から、「御指摘のとおりである。子どもを守るのは保護者であるので、学校やPTAとも連係して保護者に働き掛けているほか、中央レベルでは文科省に枠組みの中に入ってもらい、いろいろ広報啓発に取り組んでいるところであるが、なかなか保護者の胸にまで届いていないのが実態である。そこで、携帯電話を実際に買いに来る販売店の現場であれば、フィルタリングの設置を徹底できるのではないかとの発想の下に、今回の試みとなった。引き続き、保護者に対しても、注意喚起等に力を入れてまいりたい」旨の説明があった。

(3)平成22年中の出会い系サイト等に起因する事犯の検挙状況について

生活安全局長から、「平成22年中の出会い系サイトに起因する事犯の検挙件数は1,025件で、前年と比べて178件減少した。また、出会い系サイトを利用して犯罪被害にあった児童は254人で、前年と比べて199人減少した。他方、コミュニティサイトを利用して犯罪被害にあった児童は1,239人で、前年と比べて103人増加した」旨の報告があった。

(4)目黒区上目黒住宅内老夫婦殺人等事件について(警視庁)

刑事局長から、平成23年1月10日に発生した、目黒区上目黒内における住宅内老夫婦殺人等事件について、捜査状況等の報告があった。

葛西委員より、「本件の検挙は極めて困難だろうと思っていたが、よく被疑者を逮捕することができた。捜査の過程では、防犯カメラが多大な貢献をしたということであり、これは大変な威力である。今後の防犯カメラの整備のために、良い材料になったと思う」旨の発言があり、長官から、「本件被疑者の逮捕については、首都圏で多数の防犯カメラが張り巡らされていることも寄与しているのであるが、地方においてはこれだけのネットワークはないと思う。そうした意味で防犯カメラを増やしていくことは大事だと思う」旨の説明があった。

山本委員より、「本件については、発生時点では『これは極めて厳しいだろう』という印象を受けたけれども、被疑者が逮捕されたということで、捜査関係者は大変よくやってくれたと思う。敬意を表したい」旨の発言があった。

(5)平成22年中の薬物・銃器情勢について

刑事局長から、平成22年中の薬物・銃器情勢について報告があった。

(6)第16回アジア・太平洋薬物取締会議(ADEC-16th)について

刑事局長から、「2月22日から2月24日までの間、都内のホテルにおいて、第16回アジア・太平洋薬物取締会議、略称『ADEC(エーデック)16』を開催する。これに、33か国2地域3国際機関が参加する予定である」旨の報告があった。

3 その他

(1)生活安全局長から、栃木県警察における警察官の拳銃発砲による死亡事案の判決について報告があった。

髙木委員より、「本件判決は妥当なものであり、良かったと思う。ところで、同様の問題を抱えている佐賀県から、同県知事名で国家公安委員会委員長宛に『付審判事件に係る弁護士費用の公費支出に関する考え方について』という照会があり、先月、国家公安委員会の考え方を回答したところであるが、これを受けて、佐賀県は何らかの予算措置をしたのか。また、今後もこの種の判断を求められるような事案は発生するであろうと思うが、法的にも、あるいはその対応の仕方というような意味でも、考え方等について、若干のケース・スタディを含めて整理・検討しておく必要があるのではないかと思うが、どうか」旨の発言があり、官房長から、「県知事からの照会については、回答後、特段の動きはないが、すぐに弁護士費用が予算化されるということにはならないと思う。武蔵野市長による給水拒否の水道法違反事件に係る訴訟費用の公費負担を違法とする最高裁の判断が示されて以来、各知事部局とも公費負担に対して慎重になっている。そこで、個人に負担させないためには互助会で援助するしかないということで、ほぼ全県、そういった仕組みを作っている。また、付審判の決定が相次いでなされた時期に、これに係る費用負担に関し、国家公安委員会において、『組織として支援しないというのは非常に問題ではないか。互助会ではなく、正に、当局そのものが支援すべきなのではないか』との議論があり、栃木県警察では、この議論を踏まえて、知事部局と粘り強く交渉した結果、付審判事案に係る費用に対して補助金が出せることになった」旨の説明があった。

髙木委員より、「そのような枠組みに問題がないのであれば異存はない。ただ、犯罪の疑義があるからこそ付審判決定がなされるのだから、付審判事案に係る費用を機械的に公費で負担するということの是非について、詰めておかなければならないのではないかと思う」旨の発言があり、葛西委員より、「全国斉一に県費で手当てすることが困難なら、例えば、警察本部長に、『非常対策費』のようなものを国の予算で渡しておき、こういった事態に備えてはどうか。警察活動において、公務執行妨害をする者に対しては、警察官は立ち向かうしかなく、『被疑者が反撃したら逃がしてもいい』ということにはなり得ない。このように裁量の幅が限られる中で、警察が組織として正当な業務行為を行ったと認めているのであるから、当然合法性の推定を受けると思うので、『有罪判決が出るまでは、正当行為として、組織が支援することに問題はない』と言えるようにも思えるが、その辺りを法的に詰めなければいけないと思う」旨の発言があった。

官房長から、「付審判決定されたら、どのようなケースであっても費用を公費で負担するというわけにはいかないと思う。そこで、制度としてはどこかで一線を引かなければならないが、栃木の場合では、『裁判において、有罪が確定したときには、負担された費用の返還を求めることができる』旨の担保措置をとっている。そもそも、付審判決定がされるということは、告訴事件としては既に不起訴になっていることが前提であるので、この点からすれば、まずは正しい職務執行がなされたであろうという推定の下に費用を公費負担しておき、有罪になった場合には県に返還させるという栃木の仕組みは妥当なものではないかと思う。ただ、日本の警察制度は、自治体警察であるという前提の下、各種の経費は基本的に県費で賄い、特定の経費だけが国費で賄われるという仕組みになっており、付審判に係る費用は前者に該当する。警察庁の音頭で、全国斉一に行わせることになじみにくいことから、栃木のケースをモデルケースとして、徐々に広げていくよう、各県において、知事部局に対して働き掛けることが妥当ではないかと考えている」旨の説明があった。

委員長より、「いずれにしても、本件のようなことが警察官を萎縮させるようではいけない」旨の発言があり、官房長から、「弁護士費用以外の面で言えば、少なくとも警察においては、栃木の本件事案は、裁判になったといえども結論が出るまでは警察官の行為は正当であったとの考えに立っている。例えば、警察官が起訴されても、休職はさせずに勤務させているし、裁判所に行くのも仕事と位置付けて、旅費も支給するといった扱いをしているので、その延長線上の考え方ということかもしれない」旨の説明があった。

(2)警備局長から、警察庁長官狙撃事件捜査の検証結果について報告があった。

(3)委員長より、「御案内のとおり、葛西委員は、近く御退任となるので、葛西委員に御挨拶をお願いしたい」旨の発言があり、葛西委員より、「5年間、無事、役割を終えることができた。いろいろと本当にお世話になり、御礼を申し上げる。この5年間、自由に発言や質問をしたが、ひとえに、警察に対して、いかに強い警察になってもらうことができるかという観点で、お話をさせていただいたところである。そして、5年が経って、相互に、共感を持ちつつ仕事を終えることができて、大変良かったと思う。着任時はちょうど警察改革の最中であり、かつ、昨年の秋までは警察改革が続いていたわけであるから、警察改革のまっ只中にいたようなものであるが、その中で印象に残っているのが、『公安委員会というものが、警察といかなる距離にあるべきか』ということが、随分議論されていたことである。中には、『公安委員会の事務局は、警察の中にあってはならない』とか、『公安委員会は、警察を監視するのが任務である』といった主張もあり、当時はなかなか大変だったと思うが、最近その話は落ち着いて、警察と公安委員会というものは、あたかも取締役会と執行役員のような関係といった雰囲気になってきており、大変良かったと思う。公安委員会は、政治と警察の組織の間の中立性を担保する、言わば『ちょうつがい』のようなものとして、ますます役割が強まると思うので、自由闊達な活動を期待したいと思う。また、警察は、不祥事に対してはどちらかというと受け身で、何とか要請にこたえ、叱声にいかに対処するかという姿勢が、警察改革のときには強かったと思うが、警察改革も一つの区切りを経て、これからは、一方で要請にこたえながら、一方で主体的に、重点的に、戦略目標を決めて、戦力を集中するところは集中できるような体制になっていくのではないかと思う。是非、強い警察と、その警察を立派に管理する公安委員会ということで、御活躍されることを、心から祈念している。また、これからも、私は、警察並びに公安委員会の皆さん方は、自分の仲間であると思っているので、もし何か、お役に立つようなことがあれば御協力したいと思う。どうもありがとうございました」旨の発言があり、委員長より、「私自身が、着任間もないので、これまでの葛西委員の御業績や、これまでお聞きしたことに、私なりの所感を込めて、御挨拶を申し上げたい。葛西委員には、平成18年2月から5年間、国家公安委員の重責を果たしていただいた。先生に御就任いただいた平成18年は、治安再生への道筋を確実なものとするため、警察を中心に、政府を挙げて治安対策を推進している時期であったと承知している。御就任以来、現在に至るまで、先生におかれては、会社トップとしての豊富な御経験及び高い御見識に基づき、治安対策上の諸課題について多角的な視点から、御指摘を頂くとともに、的確な御示唆を賜り、とりわけ、警察のあるべき姿や組織のリーダーの在り方については、厳しい中にも、温情あふれる貴重な御意見を多数頂いたとお聞きしている。また、大変御多忙の中、全国各地に赴き、都道府県の公安委員との意見交換を積極的に行われたほか、各都道府県警察の視察を通じて、職員の士気高揚にも御配意いただいたところでもある。国家公安委員会の審議を大変充実したものとしていただいた、その御尽力に対し、心から、敬意と謝意を表するとともに、今後ますますの御健勝、御活躍をお祈り申し上げ、御挨拶とさせていただくこととしたい。どうもありがとうございました」旨の送別の言葉があった。