定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成23年7月21日(木)

午前10時00分 午前11時40分


第2 出席者 長谷川、田尾、髙木、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、

警備局長、情報通信局長

首席監察官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)「平成22年度実績評価書(案)」等について

官房長から、「平成22年度実績評価書(案)」及び「平成22年
度政策評価実施結果報告書(案)」についてそれぞれ説明があり、原
案どおり決定した。

田尾委員より、「実績評価書について報告される度にいつも議論さ
れていることであるが、『目標となる指標を立て、達成度を測定する』
という評価の仕方が警察行政全般にわたって行われているところ、警
察行政というものは、このような方式には必ずしもなじまないところ
が多いのではないか。もう少し、評価になじむような形で、テーマを
絞り込んだり、あるいは簡易化するという方法の方が良いのではない
か。個別に見ると、例えば、実績評価書の17ページには、風俗関係
事犯の検挙件数及び検挙人員について検証し、達成が十分とは言い難
い旨の評価がなされているが、風俗関係の事犯というものは認知件数
や発生件数は元々出ない性質のものであり、全体としての治安状況が
落ち着いてくると、風俗事犯の取締り件数自体もまた減ってくるであ
ろうし、そうでない場合もあるかもしれないのであるから、『検挙等
の人員が多くなれば達成し、そうでない場合には目標に届かない』と
いう評価の方法が果たして良いのかどうか疑問である。これと同様の
ことが、少年非行防止対策、銃器・薬物対策の項目でも見られるが、
検挙件数や押収の量といったものが多いとか少ないとかといったこと
によって、目標達成の判断が可能かと言えば、一概にはそういうこと
は言えないのだろうと思う。そういった、実績評価になじまないもの
を対象にしすぎているきらいがあると思うので、その点について、政
策評価委員会の方でもう少し検討していただいた方が良いのではない
かと思う。一方、例えば交通の関係では、交通事故の発生件数のみを
取り上げ、違反の取締り件数は取り上げていない。また、警備局関係
では、指数としては下回っているが、個別のケースにおいて的確な対
策をとっているから、目標はおおむね達成したと評価している。そう
したことも一つの工夫だと思う」旨の発言があり、官房長から、「御
指摘の点については、正にその議論が政策評価研究会でもなされてい
る。また、警察としてはこれまでも評価の方法に工夫をしてきており、
以前に比べ、御指摘のような傾向は減ったとは思うが、なかなか代わ
るべき適当なものが見つからないということもあって、御指摘のよう
な指標による評価を続けているところである。一方、警察庁の各担当
部局の立場としてみると、そもそも取締り件数が治安水準に直結しな
いというのは認識した上で、政策的に、『今年はこれくらいやらねば
ならない』という目標を立てた場合には、一応、それが指標としてそ
れなりの意味を持つであろうということがあるので、現状ではこうい
う形になっている。委員御指摘の点については、警察庁としても問題
意識を持っており、今後とも、研究会でももみながら、工夫をしてい
きたいと思う」旨の説明があり、交通局長から、「交通警察分野の政
策評価については、違反取締り件数を取り上げると、『検挙のための
検挙』というような話に結びつきやすいため、交通事故の発生の抑止
と結びつけたような形でできるだけ行うよう、過去からも議論してい
る」旨の説明があり、官房長から、「警察行政には、交通事故防止対
策のように、対策の成果自体が目に見えるものへの対策を行うものと、
例えば薬物・銃器対策のように、それ自体が潜在する性質のものへの
対策を行うものがある。後者について、どのように政策としての目標
を決めて、どうやれば実績について評価できるかということについて
の工夫の仕方が問題なのだと思う」旨の説明があった。

長官から、「政策評価は、10年以上にわたって行われている施策
であるが、元々、警察行政の政策評価は難しく、警察活動自体が政策
評価に本質的になじまないという基本的な認識はある。しかし、この
施策は政府全体で行うものであり、警察でも、分野ごとにそれぞれ少
しずつ工夫しながら、定量的な切り口を入れてきたところである。委
員御指摘のとおり、全体の警察活動を評価するという意味では、この
方法では捉えきれてはいないと思うが、これに限りなく近付こうとい
う努力をしてきたところである。現在は、もう一度原点に戻り、もう
少し違う角度から評価を行ってはどうかという、そういう流れの中に
ある。もっと新しい切り口で行ってはどうかということについては、
深く考えていく必要があると思う」旨の発言があった。

長谷川委員より、「毎年、評価書が出る度に、『これだけ分厚いも
のがありながら、何なのだ』ということについては、公安委員の皆が
疑問に思っている。また、担当官の労力も大変だと思うので、是非長
官の御説明のような工夫をしていただきたい」旨の発言があり、髙木
委員より、「民間でも、様々な評価の仕方があるが、定数的あるいは
定量的な評価になじむものと、それよりもっと大切な要素がある評価
対象を仕分けして行っているところが多いのではないかと思う」旨の
発言があった。

前田委員より、「評価の対象として29項目あるが、これらは警察
庁が選定したのか」旨の発言があり、官房長から、「そうである」旨
の説明があり、前田委員より、「それならば、項目数を削減してはど
うか。多くの項目を挙げると、なじまないのも入らざるを得なくなる。
そうすると、結局はせっかくの作業結果も役に立たないということに
なる。例えば、警察庁の重点目標を立てたらそれについてのみ評価す
るなど、評価になじむもののみに項目を絞り込んで、そのほかは、総
論的・横断的に評価するなど、少し項目を特化しないといけないので
はないか。29もの項目があると、それぞれの担当官は、一生懸命書
かないとサボっているようになってしまうため、その分量がどんどん
重くなってしまい、結果として組織として利用しにくいものになって
しまう。この評価書が、今後の警察行政のアクションに結びつくよう
なものにしないと、せっかく労力を傾けたものが生きないと思う」旨
の発言があった。官房長から、「これは法律に基づいて行っているも
のであり、所管行政全体を一応網羅して評価を行ってきた」旨の説明
があった。

山本委員より、「各委員の御発言は、本件が法律上作成義務がある
ことは承知した上で、警察庁が作った評価書やその努力に対しての意
見というよりも、『所管官庁である総務省に考え直してもらうなどの
再検討が必要だ』という意識があって、それを何とか形にするために
どうしたら良いかという立場からの意見であるので、そのように理解
していただきたい」旨の発言があり、長谷川委員より、「本件につい
ては、毎年、同様の指摘がなされ、同様の御説明を受けているところ
である。確かに、法で定められた作業であり、警察庁だけが自由に行
うことができるものではないということは分かるが、せっかくこれだ
けの労力を払って評価を行うのであるから、この先効果的に活用でき
る形になっていった方が良いと思う。これが委員皆の意見である」旨
の発言があった。

(2)人事案件について

官房長から、「7月31日付けを始めとする地方警務官等17名の
人事案件について発令していただきたい」旨、「8月5日付けを始め
とする内閣承認人事5名の人事案件について内閣に承認を依頼してい
ただきたい」旨、「8月5日付け、警視総監の任免について内閣総理
大臣に承認を依頼したい」旨及び「8月5日付け、警視総監の任免に
ついて東京都公安委員会に同意を求めるよう依頼したい」旨の説明が
あり、原案どおり決定した。

(3)自転車通行環境の整備について(標識標示令改正案に対する意見募
集等)

交通局長から、「自転車通行環境の整備状況等も踏まえ、道路標識、
区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正するに当たり、7月2
2日から8月20日までの間、その改正案を一般に公表し、意見を募
集することとしたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

髙木委員より、「最近、特に震災後、自転車が増加傾向にあり、か
つ、節電等で、道路が暗くなっていることもあり、車のドライバーか
らは、『自転車の危険運転が多発して、危なくて仕方がない』との声
をよく聞くが、実態として、自転車の危険運転についての処罰等はど
のようになっているのか」旨の発言があり、交通局長から、「そのよ
うな御意見があることは、十分承知している。まず、自転車の交通違
反の取締りをした後の手続については、しかるべき司法機関に送られ
るが、そこで何か処分を受けることは、実態上は少なく、毎年、全国
でいくつか罰金刑の処分を受けるケースがあるが、まれなケースであ
る。警察としては、自転車の交通違反、危険運転の問題について、自
転車の利用者が多様で、反則金になじむような免許証制度がある訳で
はないので、基本的には指導ということで対処しており、全国で年間
約200万件の指導警告書を出している。しかしながら、指導警告に
従わない運転者も、多くいるため、赤切符の処理を、昨年は2,00
0件程度行っている状況である。この問題の解決としては、自転車が
どこを走るのかという自転車の走行区間の確保・整備がポイントであ
ると思う。このため、自転車通行帯の整備等によって、自転車が安全
に通行することができる、歩行者と車から分離された空間を作れば、
自転車に乗る方も非常にスムーズに進むことができるし、車に乗る方
も安心して運転することができる。ただ、これは警察だけでできるも
のではないため、国土交通省や、自治体などとよく相談しながら行っ
ている分野である。警察が主体的にできる分野は、指導警告・自転車
のマナーの向上のための活動であり、これらにはここ数年、かなり力
を入れてやってきているが、今後とも力を入れてまいりたいと思う」
旨の説明があった。

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を
要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内
容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)犯罪対策閣僚会議(第18回)の開催について

官房長から、犯罪対策閣僚会議(第18回)の開催について報告が
あった。

(3)平成24年度警察庁予算概算要求重点項目(案)について

官房長から、平成24年度警察庁予算概算要求重点項目(案)につ
いて報告があった。

(4)国家公安委員会委員長の大韓民国訪問結果について

官房長から、国家公安委員会委員長の大韓民国訪問結果について報
告があった。

(5)トルコにおけるアフガニスタン警察官訓練への支援について

官房長から、トルコにおけるアフガニスタン警察官訓練への支援に
ついて報告があった。

(6)平成23年度第1四半期監察の実施状況について

首席監察官から、「警察庁が都道府県警察等に対して行った平成2
3年度第1四半期における監察の実施状況」について報告があった。

前田委員より、「監察は、基本的には、県警と管区警察局で、チェ
ックする体制になっており、これに加えて警察庁が別途監察を行うと
いう理解でよいのか」旨の発言があり、首席監察官から、「それぞれ
、業務の中で業務指導をやっており、その状況について、各県でどの
ように行われているかどうかについて点検している」旨の説明があっ
た。

前田委員より、「この報告書によれば、一週間前に警察庁から予告
をして監察に赴いているにもかかわらず、対策が講じられていないな
ど、何もしないでいた県があるということは、予告を無視したか、元
々の警察庁の方針自体を無視しているかのどちらかということになる。
監察を受ける現場に、警察庁の方針が浸透していないのではないか。
先般、留置施設の巡察の実施状況について報告を受けた際にも申し上
げたが、監察というのは、実施の結果、指導すべき部分を指摘するも
のであり、問題がなかったことを殊更に記述することはないと思う。
監察の結果は、次のアクションに向けてつながらなければ、意味がな
いので、報告書については書き方を工夫して、全体的にここが無視さ
れているのか、若しくはたまたまそこの担当官が無視したのかどうか、
あるいは、県ごとに指摘点にばらつきがあるのか、それとも全県ベー
スでばらついているのか、ということが分かるようにした方がよいと
思う。結果全体で見たときにどうなのかというのがないと、その結果
によって『この程度なら安心だ』、『仕方がない』、『相当重症だ』
という判断ができないと思う」旨の発言があり、長官から、「監察の
実施結果のまとめ方については、慣例的に本日報告したような形で行
ってきたが、委員御指摘のとおり、全体像がぱっと分かるように、作
り方を工夫してみたいと思う。守るべき事項には、不適合な点が多少
あってもいい許容範囲があるものと、そうではないものがあるが、今
回の監察項目である情報セキュリティについては、指摘事項があって
はいけない分野である。監察では、不備な点の指摘とともに、良好な
点の指摘も大事であるが、ただ、現在は、○か×かの評価になってし
まうので、全体的にどうなのか分かるように工夫することとしたい」
旨の説明があり、次長から、「事前に監察に行く旨言ってあったにも
かかわらず、何故対応ができていないのかは大事なことである。気が
付かなかったのか、知らなかったのか、知っていてやらなかったのか、
というところまで掘り下げる必要があると思う」旨の説明があり、情
報通信局長から、「今回の監察では、情報管理について、これまでの
簿冊の取扱い状況や、定期的なチェック事項についても見ているので、
事前通知があっても、過去を取り繕うことはできない。監察では、実
態を指摘される側面もある」旨の説明があった。

(7)平成23年上半期の懲戒処分者数について

首席監察官から、「平成23年上半期の全国警察職員の懲戒処分者
数は、合計166人で、その内訳は、懲戒免職16人、停職40人、
減給58人、戒告52人である」旨の報告があった。

前田委員より、「本件について公表すると思うが、その方法は工夫
をされた方がよいと思う。例えば、全体の件数だけを公表すると、業
務上の非違事案と私行上のそれでは、明らかに私行上のものが圧倒的
に多いのに、『警察の非違事案は166人もいる。警察はひどいぞ』
という評価につながってしまう。誤解されないために、過去のケース
と、業務上と私行上で分けた数字などの資料を出して、ミスリードし
ないようなリリースの仕方にした方が良いと思う。真面目な大多数の
警察職員のためにも、必要以上に悪く書かれることのないよう、きち
んと説明すべきである」旨の発言があり、首席監察官から、「委員御
指摘の数字については広報する予定であるが、御指摘を踏まえ、分か
りやすいものとなるよう工夫する」旨の説明があった。

前田委員より、「非違事案について、発生をゼロにすることが理想
であるが、ある意味、永遠の課題であり、そう簡単にはいかない。全
体として、実態を反映した広報を行ってもらいたい」旨の発言があり、
長官から、「警察改革からのトレンドを、目で見える形で分かりやす
く広報するなどの工夫をすることとしたい」旨の発言があった。

長谷川委員から、「警察官千人当たり何人が、非違事案を起こすと
いう計算になるのか」旨の発言があり、首席監察官から、「警察職員
千人当たりで約0.58人である。また、各県ごとでは、沖縄県が今
回は約2.82人と多かった。なお、警視庁では約0.49人であっ
た」旨の説明があった。

(8)自動車安全運転センターの役員選任に係る公募の実施について

交通局長から、自動車安全運転センターの理事長職に関し、現理事
長の任期が平成23年10月31日をもって満了することから、その
後任者について公募により選任することについて報告があった。

(9)皇太子殿下の平成23年度全国高等学校総合体育大会御臨場等に伴
う警衛警備について

警備局長から、「皇太子殿下は、7月27日から7月29日までの
間、平成23年度全国高等学校総合体育大会御臨場等のため、青森県
へ行啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を実施する」
旨の報告があった。

(10)台風第6号に伴う被害状況と警察措置について

警備局長から、「この度の台風の影響により、17府県で、死者1
人、行方不明者1人、負傷者56人の被害が発生した。警察庁、管区
警察局及び関係都府県警察では、災害警備連絡室等の体制を確立して、
被害情報の収集、行方不明者の捜索等所要の活動を行った」旨の説明
があった。

(11)東日本大震災に伴う警察措置について

警備局長から、東日本大震災に伴う警察措置に関し、これまでの特
別派遣部隊の数、行方不明者の捜索活動等について報告があり、関連
発言として、刑事局長から、主な被災地である岩手、宮城、福島3県
における死体取扱及び身元確認状況等について、生活安全局長から、
避難所において相談受理等に従事する特別派遣の女性警察官の活動状
況及び行方不明者の親族等に対し、死亡届に添付する書面を交付する
こと等について、交通局長から、前記3県における道路損壊等による
一般道の通行止めの解除状況について、情報通信局長から、各種警察
通信活動に関し、通信機能の維持・復旧の状況について、それぞれ報
告があった。

髙木委員より、「来週、地方視察の際に原子力発電所を視察する予
定があるが、震災後、原子力発電所の警備についての議論はどうなっ
ているのか」旨の発言があり、警備局長から、「全体の議論は、内閣
官房が中心となって、関係省庁で検討作業に入っている。警察の方で
は、まず、現状の把握から始めているところである。震災後の状況を
受けて、警察の体制の強化と合わせ、事業者に対しても、警備システ
ムをより堅牢なものにしてもらうよう、働き掛けを行っているところ
である。また、万一のテロ等の発生に備え、バックアップ体制も整え
ているところである」旨の説明があった。